ナジブ元首相に有罪判決、政局への影響必至

 ナジブ・ラザク元首相が7月28日、国営投資会社ワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)巨額資金不正流用事件に関連して高裁で禁固12年、罰金2.1億リンギの有罪判決を受けた。元首相経験者で初の刑事裁判で有罪となるという画期的判決であり、独立性に疑問がもたれていたマレーシア司法制度に対する国際的評判を回復するのに寄与すると賞賛の声が上がっている。

 2月末に希望同盟(PH)政権が崩壊し、国民戦線(BN)の中核である統一マレー国民組織(UMNO)や汎マレーシア・イスラム党(PAS)の支援を受けた国民連盟(PN)のムヒディン・ヤシン内閣が誕生したが、UMNOの復権と共に司法に圧力が加えられ、裁判が歪められるのではないかとの懸念の声が上がっていた。

 げんにナジブ氏の義理の息子で、1MDB資金の一部を流用したリザ・アジズ氏の裁判は今年5月に1億730万米ドルを返還することを条件に起訴が突然取り下げられ、世間では「ドロボーが盗んだ金の一部返したら無罪放免になるのか」と不満の声が上がった。

 シンガポール国際問題研究所のオー・エイサン氏は、「今回の有罪判決は1MDB関連裁判のベースとなるだろう」と指摘。ナジブ氏が抱えている残りの裁判、他のUMNO幹部の裁判にも影響を及ぼすとみている。

 しかしナジブ氏は控訴の意向を示しており刑は確定した訳ではない。実際、アンワル・イブラヒム元副首相(現PHリーダー)の裁判でも、当時の与党連合・国民戦線(BN)政権の圧力にも関わらず最初の同性愛裁判では逆転無罪が確定(職権濫用では有罪)している。

 豪タスマニア大学のアジア研究者、ジェームズ・チン教授は、「今回の有罪判決によって状況が変わる訳ではない。ナジブ氏は依然として国会議員のままであり控訴裁の判断を待つ必要がある」としている。

 確かに今回の有罪判決は一審判決に過ぎないかもしれないが、政局に与える影響は大きいと指摘する声は多い。

 前出のオー氏は、ナジブ氏の影響力がいまだ強いUMNOに支えられているムヒディン政権下で出た有罪判決という点に注目し、PH時代から汚職撲滅を訴えてきたムヒディン首相への支持が高まると予想。 フリージャーナリストのアニル・ネットー氏も同様の意見で、短期的にはムヒディン首相の立場が強化されるだろうとしている。

 PH政権から簒奪した「裏口内閣」といわれながらも新型コロナウイルス「Covid-19」対策で当初は成果を出して評価を高めたムヒディン内閣だが、長引くコロナの影響で失業、倒産などの経済問題に直面。国民から不満の声が再び上がり始めている。そうした中、今回の判決は「いずれ馬脚を現す、BN時代の政治に戻る」と批判的だった向きも見直すきっかけとなると期待する声が上がっている。

 ムヒディン政権支持の回復ということでみれば、BN政権時代の汚職追求に血道をあげてきた野党連合PHにとっては、有罪判決は痛し痒しといえる。PH構成党・民主行動党(DAP)のリム・グアンエン書記長はペナン・トンネル事業計画絡みで疑惑がもたれているが、仮にこれが与党側の差し金であったにしろ司法独立が曲がりなりに機能している以上、有罪判決が出てもこれまで主張してきた政治の司法介入を言い出しにくくなる。「南洋商報」のチン・フックセン氏は「野党側は司法正義への干渉だとして政権を批判してきたが、その武器を失う」と指摘している。

 ムヒディン首相にとっても、一時的に立場が強くなるにしても、今後さらにUMNOからの圧力にさらされ政権地盤自体が揺らぐ恐れがあり、手放しでは喜べない。

 UMNOのアハマド・ザヒド・ハミディ総裁(元副首相)は判決後、PNを友党として今後も支えるが参加はしないと言明した。ザヒド氏自身も訴追される身ということもあり、ムヒディン首相の「司法への不介入」方針に堂々と不満を表明した格好だ。多くの政治アナリストがザヒド氏の発言について「UMNOが抜ければムヒディン内閣は崩壊するとの脅し」と指摘している。

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エアアジア、KLーシンガ間のフライトを17日より再開

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 格安航空会社エアアジアは8月17日より、クアラルンプール(KL)ーシンガポール間のフライトを再開する。
エアアジアが3日に発表した声明によると、KLーシンガポール間の再開は、マレーシアとシンガポール両政府が、新型コロナウイルス「Covid-19」の感染拡大抑制ために途絶えているマレーシア・シンガポール間の通勤、業務・公用を目的とした往来について、早ければ8月17日に再開することで合意したことを受けたもの。エアアジアは8月17日の運行開始を予定しているが、政府の発表により変更もあるという。
KLーシンガポール間は1日1回 、ペナンやコタキナバル、クチン、イポーとシンガポール間は週1回運航する予定だ。ウェブサイトもしくは公式アプリで予約の受付を開始した。
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エアアジアグループは3日、全便全席で運賃が20%割引となるキャンペーンを9日まで開催すると発表した。渡航期間は17日から12月6日まで。
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国民の貯蓄は生活費4カ月分、マッキンゼー調査

【クアラルンプール】 コンサルタントのマッキンゼー・アンド・カンパニーは、30カ国で実施した家計、雇用不安に関する意識調査の結果を発表した。
マレーシアの回答者の貯蓄額は生活費の4カ月分かそれ以下だった。新型コロナウイルス禍を背景に、5月から6月にかけ雇用維持に関する不安は継続的に存在した。これはほかに国でも同様だった。
マレーシアの回答者は経済の現状について、中立的あるいは弱いとの見方で、この先3カ月間の個人の財政状況は現状維持か悪化を予想している
世界全体で、銀行から融資を取り入れている世帯のほとんどが返済遅滞に対する罰則の免除、また債権者による権利行使の差し控えを望んでいる。
国別の動きでは、カナダで51%の世帯が支出を減らし、19%が支出を増やしたが、インドネシアでは46%の世帯が支出を増やし、25%が支出を減らした。
(ザ・スター、8月2日)

中古車販売が過去最高、新型コロナの影響で

【クアラルンプール】 新型コロナウイルス「Covid-19」による景気悪化に対する不安からより安い車に人気が集まっており、中古車販売が過去最高を記録している。
マレーシア自動車信用組合連合会(FMCCAM)のトニー・コー会長によると、6月の販売台数は前年同月比100%の増加。7月も前年同月比20%増、前月比で30%も増加した。
政府の新車に対する売上税減税策も、これに伴う新車購入者による中古車下取りが増加したことによって市場活性化を後押しした。また感染を恐れた人々が、公共交通機関の利用を恐れて中古車の購入に走ったことも販売増に寄与した。
好調な中古車販売を受けて、電子化自動車検査センター(Puspakom)の車検が追いつかない現象も起きている。コー会長によると検査待ちの期間が5—7日に延びており、予約をキャンセルする事態も起きているという。
政府は6月15日ー12月31日の時限措置として、新車の売上税の大幅減免を発表。これを受けて6月の新車販売台数は前年同月比5.0%増の4万4,695台になり、前月比では94.7%の大幅増となった。
(ザ・スター、8月3日)

新型コロナ感染者が新たに2人、累計9001人に

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 保健省(MOH)は3日、新型コロナウイルス「Covid-19」の感染者数が前日から2人増えて9,001人になったと発表した。
新規感染者は国内で感染したマレーシア人だった。また新たに4人が退院し回復者数は8,668人に増加した。死者数は4日連続ゼロで、125人を維持した。
7月28日に感染者数が53人に上りレッドゾーン下にあったサラワク州クチンについて州政府は、2日付けで同エリアをイエローゾーンに引き下げた。サラワク州災害管理委員会によると同日時点の感染者数は39人。州内における他のイエローゾーンは▽サマラハン▽セリアン▽バウ▽ルンドーーの4カ所で、残りの35地区はグリーンゾーン下にある。州内にはアクティブなクラスターが、▽セントーサ(31人)▽クチン製造会社(8人)▽マンボン(7人)▽ストゥトンマーケット(7人)▽サトクマーケット(4人)▽液化天然ガス(LNG)タンカー「LNGジュピター」(3人)▽医療センター(3人)▽豪州メルボルンからの帰国者(3人)▽クチン港(2人)▽クチン建設会社(2人)ーーの10つ発生している。
■ケダ州で強化行動制限令(EMCO)発令■
インドのシバガンガイからの帰国者に関連したクラスタ(シバガンガイ・クラスタ)内で2日、新たに11人の感染者が確認され、ケダ州政府は、クバンパスのムキム、ホスバ、ビンジャルおよびパダン・テラプのカンポン・ウル、パダン・サナイに事実上のロックダウン(封鎖)である強化行動制限令(EMCO)を発令した。州政府の情報筋の話としてニュースサイト「フリー・マレーシア・トゥデー」が報じた。これに伴いクバンパスにあるホスバ国民中学校とホスバ国民学校、メガトデワ国民中学校とメガトデワ国民学校、パダン・テラプにあるクバン・パラス国民学校の5校が14日間閉鎖される。

自家用車内ではマスク着用不要、罰金は返還へ

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 8月1日から導入された公共の場におけるマスク着用義務化について、イスマイル・サブリ・ヤアコブ上級相(兼国防相)は3日、自家用車に乗っている場合には適用されないと言明。すでに違反に問われた場合は無効とし、徴収された罰金は返却すると発表した。

警察は自家用車内でのマスク非着用についても検問で摘発を行なっており、違反を指摘された人たちから「乗用車は公共の場所ではない」と不満の声が上がっていた。

サブリ氏は、マスク着用義務は社会的距離が保てない混雑した場所のみ適用されると言明。プライベートの空間である自宅や自家用車内、またサッカー場、海水浴場など社会的距離がとれる場所は違反に問われないとした。

マスク着用は新型コロナウイルス「Covid-19」の新規発生件数が再び増加傾向にあることから導入され、初日は127人が違反に問われて逮捕されたが、適用基準が明確でないと指摘する声が上がっていた。着用義務が適用されるのは公共交通機関や混雑した公共の場所が対象で、違反がみつかった場合には1,000リンギの罰金が科される。スポーツ中や2歳未満の幼児は免除される。

行動制限令中、4500社以上が事業を停止=副国取相

【クアラルンプール】 ロソル・ワヒド副国内取引消費者行政相は、新型コロナウイルス「Covid-19」抑制に向けた行動制限令(MCO)が発令された4月1日から7月19日の間に、4,500社以上が事業を停止したと明らかにした。
マレーシア会社委員会(SSM)によると、4月は278社、5月は1,565社、6月は1,595社、7月は1,107社が事業停止の届け出を行った。その一方で新規事業登録数が8万2,255件に上った。
29日の国会の質疑でワヒド副大臣は、経済の面で苦戦がある中、仕事を失った人もいたが、新たに収入を得るために事業を立ち上げた人も多くいたと説明。MCO中は外出が許されなかったため、新規事業の中には電子商取引やオンラインビジネスが多かったと述べた。
しかしマレーシア中小企業(SME)協会のマイケル・カン会長は、事業を停止する企業がさらに増えると予想。ワヒド副大臣の発表には、昨年事業を停止した企業数も含まれている可能性があるとして、正確なものではないと指摘した。
またマレーシア経営者連盟(MEF)のシャムスディン・バルダン専務理事は、新規事業登録数が増えても、全ての事業が営業をするとは限らないと指摘。事業停止や新規事業登録数よりも重要なのは、何社が存続できているかであると述べた。
(エッジ、7月29日、フリー・マレーシア・トゥデー、7月31日)

山九マレーシア、クラン港に「アジアハブセンター」を開設

【ポートクラン=マレーシアBIZナビ】 総合物流の山九(本社・東京都中央区)は7月31日、現地法人の山九マレーシアが、セランゴール州クラン港ウエストポートの物流センターに倉庫「アジア・ハブセンター」を開設すると発表した。
倉庫は高床式で、面積が2万平方メートル。2021年3月1日に開設を予定している。要員数は36人でうち1人が日本人。自由貿易区(FTZ)内に位置しているため、非課税による非居住者在庫や保管中の転売、荷姿変換および輸出入手続きの免除など荷主にとってコスト削減並びにリードタイム短縮が実現が可能となる。
山九は倉庫の開設に先駆け、同港のターミナルオペレーターであるウェストポーツと5月29日に契約を締結。6月1日よりTSP(トランシップメント・ステージド・ポスト)サービスの提供を開始した。現在、コンテナヤードにデバン(貨物を取り出す作業)しない状態で荷物を優遇条件で保管し、4週間のフリー期間を設け保管期間中に最終仕向け地を選択できるサービスを提供しており、今後は在庫期間が短い貨物をTSPサービス、長期間の保管が見込まれる貨物には「アジア・ハブセンター」を活用することで、アジア域内のサプライチェーン再構築のニーズに対応していく方針だ。
山九は、マレーシアでは税関による保税運送手続きの厳格化の動きが進んでおり、ハブ機能型倉庫はFTZ内の立地が必須となる可能性が高まっているとし、こういった顧客ニーズへの対応を目的としていると表明。今後の動向については、東南アジアにおけるグローバルネットワークの拡大および最適なサービスの提案を進めていくとした。

日系企業、半数が通常通りに回復=JACTIM&ジェトロ

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 マレーシア日本人商工会議所(JACTIM)とジェトロ・クアラルンプール事務所は7月30日、2020年度在マレーシア日系企業を対象とした新型コロナウイルス「Covid-19」対策に関する緊急アンケート結果を発表した。

 同調査は5月の第一回調査に続くもので、7月13日から17日にかけて会員企業585社を対象に行い、209社から回答を得た。
生産・稼働状況は、製造業、非製造業ともに約半数が「通常どおり」または「通常以上」と回答し、5月の前回調査から20ポイント以上の大幅アップ。5割未満との回答は1割を切り、前回調査と比較すると大幅な改善がみられた。ただ5—8割程度との回答も4割程度あり、完全な回復とはなっていない状況も分かった。通常以上の生産・稼働している業種としては、製造業では医療機器、電子部品、包装資材、非製造業では物流があった。
受注・調達に関しては、半数超の企業が国内外の顧客・供給先からの注文留保・減少を現状の課題に挙げた。オペレーション上の課題については、国内外の営業活動、新規ビジネス機会の減少を指摘する企業の割合が高く、「資金繰り難」、 「ワーカー不足」 、「ソーシャルディスタンスなど標準的運用手順(SOP)の確保」も多く指摘された。
売り上げに関しては、4—6月実積、7—9月見通しは5月調査に比べて全般的に回復傾向にあるが、2020年通年では製造・非製造業共に8割超が前年割れの見通しであることが分かった。
マレーシア政府による入国制限のため、入国待機・予定は673人に上り、前回調査(378人)から1.8倍に増加していることが分かった。入国制限が長期化、入国手続きの頻繁な変更や不明瞭化のためで、予定していた新規事業・取組に必要な要員が入国できず支障が出ているという声も上がった
マレーシア政府に対する要望としては、「入国制限の緩和」が最も多く、「駐在員の出国制限の緩和・撤廃」、「駐在員のビザ発給の迅速化」など入国関連の要望が多かった。同じく日本政府への要望においても、「駐在員の赴帰任、短期出張など、 ビジネスのための両国間の移動円滑化」がトップだった。