【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 テンク・ザフルル財務相は6日、下院議会に2021年度(2021年1月1日—12月31日)予算案を提出した。

新型コロナウイルス「Covid-19」対策などの支出増加のため、予算規模は過去最高の3,225億4,000万リンギとなり、今年度予算の2,970億リンギを255億4,000万リンギも上回った。2021年の歳入は2,369億リンギの見込み。なお今年の歳出は当初予算を177億リンギオーバーして3,147億リンギとなり、財政赤字の対国内総生産(GDP)比は当初の見込みの3.2%から6.0%に大幅に上昇した。

来年度の一般歳出は2,365億リンギで全体の73.3%を占めた。開発予算は690億リンギで全体の21.4%、このほか新型コロナウイルスの対策基金として5.3%に当たる170億リンギを割り当てた。予算のテーマは「我々の強さは我々の集団的勝利にある」で、▽国民の幸福▽ビジネスの継続性▽経済的回復力——の3つの柱に基づく。

新型コロナ第3波対策として10億リンギを計上。4億7,500万リンギを検査薬や消耗品の購入、3億1,800万リンギを個人用保護具(PPE)の購入、1億5,000万リンギを国家災害管理局(Nadma)にそれぞれ充てる。医療最前線のスタッフに500リンギの一時金を支払う。

低・中所得者向けの支援策「Kita Prihatin(私たちの関心事)」基金への拠出額をこれまでの200億リンギから650億リンギに増額する。

生活費に困窮している人に配慮し、従業員積立基金(EPF)の第一口座から向こう12カ月間、最大で月々500リンギの引き出しを認める。また2021年1月から従業員の最低拠出率を9%に引き下げる。このほか生命保険やタカフル購入、重大な疾病に際しては第2口座からの引き出しを認める。

年収5万—7万リンギを対象に所得税率を1ポイント引き下げる。140万人が対象になるとみられる。また最初の住宅購入に際する印紙税を、50万リンギを上限に免除する。

「プリンシプル・ハブ」の税制優遇条件緩和を2022年12月31日まで延長する。また選ばれた製造業におけるマレーシアへの移転に伴う税制優遇措置についても、2022年12月31日まで延長する。

国家デジタル・ネットワーク(JENDELA)に5億リンギ、2021—22年にかけブロードバンドサービス拡充のため74億リンギを計上する。ブミプトラ(マレー人および先住民族の総称)底上げに向けて46億リンギを割り当て、またブミ中小零細企業向けの融資に5.1億リンギ割り当てる。石油・ガスや航空宇宙産業などの高技術企業に30億リンギを充てる。

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■来年のGDP成長、6.5ー7.5%と予想■

財務省は同日、「2020/21年経済リポート」を発表。 2020年の国内総生産(GDP)成長率予想についてマイナス4.5%、2021年についてはプラス6.5ー7.5%とした。

産業別の今年のGDP成長率予想は、建設業が18.7%、鉱業・採掘業が7.8%、サービス業が3.7%、製造業が3.0%、農業が1.2%と全てマイナス成長の見込み。2021年は建設業が13.9%、サービス業と製造業が7.0%、農業が4.7%、鉱業が4.1%とすべてプラス成長が見込まれている。

失業率は昨年3.3%だったが、今年は4.2%に上昇することが予想されるが、来年は3.5%に下降することが見込まれている。

今年の消費者物価指数(CPI=2010年を100として算出)はー1.0%で、来年はプラス2.5%に転じる予想だ。