新型コロナウイルス「Covid-19」感染拡大で打撃を受ける産業が多い中、医薬品、医療機器、など商品自体のニーズの高まりから業績を大きく伸ばした業界も少なくない。一方、対面販売が難しい中で商品そのもののニーズというより販売メソッドが利用者の支持を集めた業界も多い。オンライン証券も販売メソッドの優位性で業績を伸ばした業界だ。このほど楽天トレードの最高経営責任者(CEO)に就任した三瀬和正さんに話を伺った。
在宅機会増加で口座数も増加
ーーCEO就任おめでとうございます。今年創業3年目で黒字化したということなんですが、新型コロナ感染拡大防止のために今年3月に行動制限令(MCO)が発令されてから証券取引口座開設が急増したそうですね。
三瀬:MCOになったため家にいることが多くなり、皆さん手持ちに余裕があるのかもしれませんね。上昇傾向にあるヘルスケア関連株で儲けようとお客様が一挙に入ってきたということですね。弊社だけが1日以内で口座が開設できます。他の会社は1週間とか下手したら1カ月かかりますので、すべてオンラインでできる弊社に口座開設が殺到したということだと思います。そういう人たちがヘルスケア関連の銘柄をトレードした。マーケットもググッと上がりましたので、その追い風を受けて黒字化ができたということです。
ーー4月末時点でシェアが5%だったということですが、これは証券取引市場全体の5%ということでしょうか?
三瀬:証券マーケットの中でリテールが占める割合が4割を占めますが、そのリテール・マーケットの中で弊社のシェアが5%ということです。今はシェアがさらに上がって6.7%になっています。弊社は法人は受け付けていません。
ーー今後も口座数は増えてきそうなんでしょうか
三瀬:弊社のビジネスモデルというはお客様をいっぱい集めてトレードして貰うというものです。口座開設数が増えていかないとビジネスが成り立たないのですが、コロナの影響もあって今も口座数は増えています。
特筆すべきはミレニアル世代参入
ーー従来型の証券取引と比べてネット証券取引の大きな特徴というのは何でしょうか
三瀬:フタを開けてみて僕もびっくりしたんですが、弊社のお客様の80%が40歳以下なんです。もっと熟年者が入ってきてくれるのかと思っていたのですが、ミレニアムと言われる若い世代が入ってきているのが特徴的です。全体の80%が華人なのですが、約60%未満以上が投資経験がない、もしくは投資経験3年未満のビギナーが入ってきていますので、新しいお客様を開拓したということができると思います。
ーーマレーシアが低金利であるというのは影響あるのでしょうか。投資先として株式を選ぶようになったとか?
三瀬:低金利はそれほど影響ないと思います。まずはお客様の頭には株で儲けたいというのがあるので、マーケットがホットであるということで入ってきていると思います。
ーーミレニアム世代が多いということは、ネットリテラシーが高いということが影響しているんでしょうね?
三瀬:こちらの人はほとんどがスマートフォンを使っていますね。 弊社は日本のスマートフォン用のプラットフォームを導入しているのですが、スマホを使った取引が全体の7割ぐらいでしょうか。ネット取引のいいところは取引手数料が安いということでしょうね。うちは最安の手数料を提供させて頂いています。
ーー御社はなぜ他社より安い手数料でできるのですか?
三瀬:なぜ安い手数料で出来るかと言うと、人件費を抑えたり、他のコストを抑えたりしているからです。他の証券ブローカーは社員がいっぱいいてマニュアルワークも多いし、対面の証券マンによる営業をやっています。うちと同じ手数料を提供するのは難しいと思います。
——御社は対面の証券マンが必要ない業態なので、スタッフはシステムエンジニアが中心ということになりますか?
三瀬:ITチームが半分を占めます。しかし何も投資家に情報を与えないというのもおかしいので、リサーチチームが毎日マーケットのアップデートをしたり、優良銘柄を探してきてお客様に月に2、3回推奨銘柄として紹介したりしています 。いわゆるスモール・ミッド・キャプ株をメインに、ファンダメンタルを見ながらリコメンドしています。
人気手数料の安さで業界をリード
——御社がプラットフォームとしている口座は「キャッシュ・アップ・フロント」と「コントラ」、「マージン」の3種類ですね。
三瀬:「キャッシュ・アップ・フロント」は日本でいうところの現物取引で、例えばお客様が1,000リンギを入金するとその範囲で株の売買取引ができます。特徴的なのは「コントラ」で、これはレバレッジを効かせることができます。例えば、お客様が1,000リンギを入金すると最高で5倍の5,000リンギまで株を買うことができます。ただしこの口座では2日以内に決済しないといけません。ショートタームの取り引きをする人、デイトレーダー向きですね。「マージン」に関しては、日本でいえば証券担保ローンのようなもの。お客様は株券や現金を担保として差し出すとファイナンサーからいくらまで取引していいよという許可が出ますので、その範囲で取引ができるというものです。これは決済期限がないので長い期間キープすることができます
——どの口座の利用が多いのですか?
三瀬:口座の数的には「キャッシュ・アップ・フロント」が多いのですが、「コントラ」がすごく人気があります。例えば日計り取引(その日に買った銘柄をその日のうちに売ること)ですが、買いの分の手数料しかかからない。片道半額です。他社でもやっていることろはありますが、元々の手数料が高いので弊社の方が優位です。
——三つの口座の割合はどれぐらいですか。
三瀬:弊社の口座は全部で14万5,000口座あるのですが、「キャッシュ・アップ・フロント」が11万5,000口座で、「コントラ」は約3万口座です。ただ「コントラ」はレバレッジ聞かせて大量に売買する人が多いのでトレーディングのボリュームは「キャッシュ・アップ・フロント」には及ばないもののかなりのポーションを占めています。
本記事は後編に続きます。