2020年は、マハティール・モハマド政権の崩壊にはじまる政治的混乱と新型コロナウイルス「Covid-19」感染拡大が2大ビッグニュースだった。3月に導入した行動制限令(MCO)で一度は抑え込んだにみえた新型コロナだが、9月のサバ州議会選をきっかけに再拡大。ついには再び移動規制を強化することになり、経済への影響が深刻化している。ムヒディン・ヤシン新政権は議席数が少ない少数与党ということもあって不安定な政権運営を強いられ、他の与党構成党からの突き上げに右往左往する状況が続いた。激動の一年間を振り返る2回シリーズの今回は下半期の巻。
上半期の記事はこちら 2020年マレーシアの出来事(上半期編)

早目に手を打った行動制限令(MCO)によって新型コロナ感染拡大の抑制に成功、経済への影響も見え始めてきたことから、徐々に正常化に向かうべきとの世論が強まったことで、6月10日から復興のための行動制限令(RMCO)移行したのに続き、7月1日から新たに水上テーマパークや映画館、スパなどの営業再開が認められた。タイやシンガポールとの国境規制についても解除の方向で動き出した。7月1日の新規感染者はわずか帰国者による1人だけとなり、政府も国民も出口戦略の方に関心が集まっていった。

ショッピングモールの客足も50ー70%回復。人の動きが再開されると共に、ホテル業界も徐々に予約が回復した。一方で、建設業界は23%ではまだ工事を再開できないという厳しい状況が続いた、中央銀行バンク・ネガラは景気回復を下支えすべく更なる利下げに踏み切った。

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しかし景気回復のスピードは鈍く、政府は9月いっぱいで終了する予定だった銀行ローンの返済猶予措置を失業者など特定のグループを対象に3カ月延長すると発表。さらに人手不足に悩む建設&農園&農業の3つのセクターにおける外国人雇用解禁を発表した。

同州野党・国民戦線(BN)の工作によってくら替え議員が相次いでいたサバ州では、追いつめられたシャフィー・アプダル首相が議会解散・州議会選挙に打って出た。ムヒディン首相率いる国民同盟(PN)とBNの連合軍が勝利したものの、選挙をきっかけに新型コロナ感染が再び拡大。外国人労働者宿舎のクラスターから広がり、本格的な感染第三波が始まった。


 

10月には首都圏などにに条件付き行動制限令(CMCO)を発令し、ついには全国規模でのCMCOへの逆戻りとなった。12月下旬になってもコロナの勢いは衰えず、1日当たり1千人の感染者がでている。

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コロナ拡大の不安が強まる中、野党だけでなく与党内部からもムヒディン首相に対する不満が増大した。このままでは国会運営が難しいと判断したムヒディン首相が法案成立せずに予算執行などが行なえる緊急事態宣言の発令を国王に提案するも、結局は「政治的対立を棚上げして面前のコロナ対策に協力して当たるべき」との国王の呼びかけもあって無事に予算案をはじめとする重要法案を可決して閉幕した。ただ解散・総選挙圧力には逆らえず、ムヒディン首相はコロナが終息したら速やかに総選挙を行なうと言明した。


 年が押し詰まった12月31日には、クアラルンプール(KL)ーシンガポール間の高速鉄道(HSR)事業についてマレーシア・シンガポール両国が計画を中止することで合意したことが明らかにされた。
(了)
(マレーシアBIZナビ編集部)

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