【ペタリンジャヤ】 行動制限令(MCO)が再導入されたことで国民は外出を控えるようになるため、政府から速やかな支援措置がない限り、国民経済を支えてきた多くの事業体が廃業する可能性が出てきた。
マレーシア小売チェーン協会は、MCO再導入は美容室、温浴施設、映画館など零細事業者の息の根を止めるものと懸念を表明。小規模企業にとり、賃金カット、企業規模縮小だけでは乗り切れないとした。
マレーシア・ホテル協会は、政府から速やかな支援がなければ多くのホテルが閉鎖を余儀なくされるとした。
マレーシア外食業エグゼクティブ協会(MFBEA)のヒシャム会長は、事業者が立ち直りつつあった矢先のMCO再導入で、これが2週間以上続くようなことがあれば、テイクアウトサービスを提供していなレストランは立ち行かなくなると述べた。
マレーシア・ムスリムレストラン経営者協会(Presma)によれば、会員企業の20 30%は廃業を決断した。
(ザ・サン、1月14日)
行動制限令は最長で4週間、新規感染者5百人以下目指す=保健省
【クアラルンプール】13日に発令された行動制限令(MCO)の第二弾、「MCO2.0」について、保健省のノール・ヒシャム事務次官は13日、最長で4週間となるとの見方を示した。MCOの発令により、向こう12週内に感染カーブが平坦化すると見込んでいるという。
ノール 事務次官は、昨年10月14日に施行された条件付き行動制限令(CMCO)では、感染拡大を抑えるのには不十分であったため、抜本的な対策が必要だと言明。政府が経済に及ぼす影響を考慮しており、2週間外出しないことで、感染の連鎖を断ち切ることができると考えていると述べた。そのため今回はMCOを2週間とし、最長でも4週間とすることを考えていると説明。経済的影響を考えるとMCOの延長はしたくはないが、感染の連鎖を断ち切ることは可能だと述べた。
またMCO終了後はCMCOに切り替えて、1日あたりの新規感染者数を500人まで減らしたいと表明。基本再生産数(R0)は現在1.16以上になっているとし、MCOにより数値を下げることができるとし、止むを得ず外出する場合は標準的運用手順(SOP)を遵守するように求めた。
(フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、1月13日)
新型コロナの新規感染者数、過去最多の3337人
【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 保健省(MOH)は14日、新型コロナウイルス「Covid-19」の新規感染者数が前日から3,337人増加し、過去最多となったと発表した。アクティブ感染者数は3万2,377人で、累計感染者数は14万7,855人となった。
州・地域別の感染者数はセランゴール州が最も多く1,036人だった。それに▽ジョホール州(460人)▽サバ州(389人)▽クアラルンプール(KL、257人)▽ペナン島(234人)▽サラワク州(180人)▽ネグリ・センビラン州(169人)▽パハン州(113人)▽ペラ州(92人)▽トレンガヌ州(89人)▽ケダ州(86人)▽クランタン州(85人)▽マラッカ州(85人)▽ラブアン(34人)▽プトラジャヤ(24人)▽ペルリス州(4人)ーーが続いた。ラブアンのみゼロだった。新たに1,710人が退院し、累計治癒者は11万3,288人となった。死者数は15人増えて、累計で578人となった。
保健省のノール・ヒシャム事務次官は13日、新たに11のクラスターを確認したと明らかにした。
セランゴール州の工場「タマン・インテグラシ」、「ジャラン・イジュク」クラスターではそれぞれ119人、99人の陽性を確認した。ジョホール州では工場「ジャラン・ラミ」、「コタ」、「タンジュン・メガ」クラスターではそれぞれ111人、57人、12人に陽性反応が出た。KLの警備会社「ジャラン・カストゥリ」と「ジャラン・タンバイ」クラスターではそれぞれ11人、23人の陽性を確認。ケダ州のスーパーマーケット「タマン・バティク」クラスターで9人、クランタン州の「ブキ・バカル」クラスターでは18人、ネグリ・センビラン州の結婚式に関わる「カンポン・テンガー」クラスターでは20人、マラッカ州の透析センター「マリル・ダイアリシス」では13人の感染を確認した。
2週間のMCO施行は経済に影響も昨年よりは軽度に
【クアラルンプール】行動制限令(MCO)の再施行についてエコノミストは、経済への影響は昨年3月から実施された初のMCOほど深刻にはならないとの見解を示した。
アライアンス銀行のマノカラン主任エコノミストは、第1四半期の国内総生産(GDP)予想を修正することになるが、MCOはわずか2週間のため経済縮小は回避できると述べた。また中小企業にとっては生存にかかわるため、業務継続を容認するのが望ましという。
バンク・イスラムのアフザニザム主任エコノミストも、経済回復にこれまでの予想より時間はかかるが、MCOの影響は昨年の1回目の施行ほど深刻にならないとした。
政府が経済活動を止める全面封鎖に乗り出さなかったことを評価する声もあり、マレーシア製造業者連盟は、業界の要請どおり経済主要5部門の活動を認めたことに謝意を表明した。
アフィン・ホワン・キャピタルは、感染が広まっている中、今回のMCOが延長される可能性に懸念を表明した。
(ザ・スター、ニュー・ストレーツ・タイムズ、1月13日)
新型コロナの軽症者、自宅隔離や療養が可能に=保健省
【プトラジャヤ】 アドハム・ババ保健相は12日、新型コロナウイルス「Covid-19」の感染者について、レベル1−2の軽症者の自宅隔離および療養を実施すると発表した。症状がある場合は通常通り病院での治療を行う。
危機対策および緊急対応センター、居住の州、自治体で特別組織を形成し、自宅での隔離および療養する軽症者に対応する。自宅隔離期間は10日間で、最終日に自宅でスクリーニング検査を行う。
アドハム氏は、自宅での隔離および療養を許可する前に、家の広さ、居住者数を確認すると説明。家族が標準的運用手順(SOP)を理解しており、自宅隔離が可能だと判断した場合に限り自宅隔離および療養を認めると述べた。一方で、十分な広さがなく、居住者が多い場合は病院で療養することになるという。
(フリー・マレーシア・トゥデー、1月12日)
2020年マレーシアの出来事(下半期編)
2020年は、マハティール・モハマド政権の崩壊にはじまる政治的混乱と新型コロナウイルス「Covid-19」感染拡大が2大ビッグニュースだった。3月に導入した行動制限令(MCO)で一度は抑え込んだにみえた新型コロナだが、9月のサバ州議会選をきっかけに再拡大。ついには再び移動規制を強化することになり、経済への影響が深刻化している。ムヒディン・ヤシン新政権は議席数が少ない少数与党ということもあって不安定な政権運営を強いられ、他の与党構成党からの突き上げに右往左往する状況が続いた。激動の一年間を振り返る2回シリーズの今回は下半期の巻。
上半期の記事はこちら 2020年マレーシアの出来事(上半期編)
早目に手を打った行動制限令(MCO)によって新型コロナ感染拡大の抑制に成功、経済への影響も見え始めてきたことから、徐々に正常化に向かうべきとの世論が強まったことで、6月10日から復興のための行動制限令(RMCO)移行したのに続き、7月1日から新たに水上テーマパークや映画館、スパなどの営業再開が認められた。タイやシンガポールとの国境規制についても解除の方向で動き出した。7月1日の新規感染者はわずか帰国者による1人だけとなり、政府も国民も出口戦略の方に関心が集まっていった。
ショッピングモールの客足も50ー70%回復。人の動きが再開されると共に、ホテル業界も徐々に予約が回復した。一方で、建設業界は23%ではまだ工事を再開できないという厳しい状況が続いた、中央銀行バンク・ネガラは景気回復を下支えすべく更なる利下げに踏み切った。
しかし景気回復のスピードは鈍く、政府は9月いっぱいで終了する予定だった銀行ローンの返済猶予措置を失業者など特定のグループを対象に3カ月延長すると発表。さらに人手不足に悩む建設&農園&農業の3つのセクターにおける外国人雇用解禁を発表した。
同州野党・国民戦線(BN)の工作によってくら替え議員が相次いでいたサバ州では、追いつめられたシャフィー・アプダル首相が議会解散・州議会選挙に打って出た。ムヒディン首相率いる国民同盟(PN)とBNの連合軍が勝利したものの、選挙をきっかけに新型コロナ感染が再び拡大。外国人労働者宿舎のクラスターから広がり、本格的な感染第三波が始まった。
10月には首都圏などにに条件付き行動制限令(CMCO)を発令し、ついには全国規模でのCMCOへの逆戻りとなった。12月下旬になってもコロナの勢いは衰えず、1日当たり1千人の感染者がでている。
コロナ拡大の不安が強まる中、野党だけでなく与党内部からもムヒディン首相に対する不満が増大した。このままでは国会運営が難しいと判断したムヒディン首相が法案成立せずに予算執行などが行なえる緊急事態宣言の発令を国王に提案するも、結局は「政治的対立を棚上げして面前のコロナ対策に協力して当たるべき」との国王の呼びかけもあって無事に予算案をはじめとする重要法案を可決して閉幕した。ただ解散・総選挙圧力には逆らえず、ムヒディン首相はコロナが終息したら速やかに総選挙を行なうと言明した。
年が押し詰まった12月31日には、クアラルンプール(KL)ーシンガポール間の高速鉄道(HSR)事業についてマレーシア・シンガポール両国が計画を中止することで合意したことが明らかにされた。
(了)
(マレーシアBIZナビ編集部)
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MCO下での操業、通産省に登録済みなら再申請は不要
【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 アズミン・アリ上級相(兼通産相)は12日、再び行動制限令(MCO)発令された地域で事業継続を希望する通産省管轄下の事業者について、通産省の新型コロナウィルス「Covid-19」情報マネジメント・システム(CIMS)に登録する必要があると述べた。
未登録の企業は12日午後3時からリンク(https://notification.miti.gov.my)で登録を受け付けている。すでにCIMSに登録済みの企業は再申請は不要だが、同じく12日午後3時から登録確認の通知をダウンロードする必要がある。
13日より再びMCOが発令されるセランゴール、ペナン、マラッカ、ジョホール、サバの5州と連邦直轄地では、操業が認められるのは▽製造▽建設▽サービス▽商業・運輸▽農園・一次産業 の5つの必需セクターの業種に限定される。
5つの必需セクターの詳細を公表したアズミン上級相は、「5つの重要な経済部門の事業継続を認める決定は、国の経済回復プロセスや事業の持続可能性の確保、失業の抑制、必需品へのアクセスを保証するため」と説明。「政府と民間は、感染の連鎖を断ち切るために協力しなければならない。これは国民の健康と安全を守りし、景気回復プロセスを加速するために不可欠だ」と述べた。
行動制限令の第二弾初日、検問設置で人の移動が減少
【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 行動制限令(MCO)の第二弾、「MCO2.0」がセランゴール州など5州と連邦直轄地に再び発令された初日の13日、地区を越えた移動が制限されたことから各地で人の移動が大幅に減少した。
セランゴール州ペタリンジャヤでは警察官300人を配備し、5本の道路を封鎖、4カ所の検問を設けたが、週内にも封鎖道路を7本、検問も11カ所に増やす予定、取り締まりの警察官も800人に増強する。
クアラルンプール(KL)市では、6つの地区に検問を合計39カ所設置。警察官1,291人を配置した。KL市政府(DBKL )は、市内の公園をすべて閉鎖した。
一方、ペナン州では、主要道路に検問が設けられたことからペナン島からペナン大橋に向かう道路で早朝から渋滞が発生した。
■他州からの自宅への移動、15日までは容認■
警察本部はMCO2.0が発令された時点で他州に滞在したまま帰宅できなくなった人に対し、希望すれば金曜日(15日)まで自宅への移動を宅を認める方針を明らかにした。
自家用車のほか、バスや鉄道を利用する人も含まれる。検問にあった際に事情を説明すれば通過を認める。取り締まりの警察官により幅広い裁量権を与えているという。
新型コロナの新規感染者数は2985人、セランゴールで837人
【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 保健省(MOH)は13日、新型コロナウイルス「Covid-19」の新規感染者数が前日から2,985人増加したと発表した。アクティブ感染者数は3万2,377人で、累計感染者数は14万4,518人となった。
州・地域別の感染者数はセランゴール州が最も多く837人だった。それに▽ジョホール州(535人)▽サバ州(450人)▽クアラルンプール(KL、289人)▽サラワク州(166人)▽パハン州(143人)
▽ネグリ・センビラン州(106人)▽ペナン島(105人)▽ケダ州(97人)▽クランタン州(85人)
▽マラッカ州(72人)▽ペラ州(61人)▽トレンガヌ州(27人)▽プトラジャヤ(11人)▽ペルリス州(1人)ーーが続いた。ラブアンのみゼロだった。新たに994人が退院し、累計治癒者は11万1,578人となった。死者数は4人増えて、累計で563人となった。
保健省のノール・ヒシャム事務次官は7日、新たに11のクラスターを確認したと明らかにした。
セランゴール州の工場「ジャラン・マナン」、「ペルシアラン・クアラ」クラスターではそれぞれ83人、44人の陽性を確認した。KLの警備会社「ウダラマ」クラスターでは21人、アパート「アイリス」クラスターでは11人、スーパーマーケット「ジャラン・キアラ」クラスターでは22人、透析センター「ダイアリシス・バトゥ」クラスターでは6人に陽性反応が出た。サラワク州の「ブキ・セクボン」クラスターでは21人、クランタン州ではセランゴール州への渡航者から発生した「カンポン・バダク」クラスターでは両州で39人の陽性を確認。クランタン州「タマン・ケサダル」クラスターで14人、プトラジャヤの透析センター「ダイアリシス・プトラ」クラスターでは10人、トレンガヌ州の「ペルミント・ハルモニ」クラスターでは8人の感染を確認した。
再度の行動制限令、国民には不満の発令
【クアラルンプール】 ムヒディン・ヤシン首相は13日から2週間の行動制限令(MCO)の再施行を発表したが、国民にはあきらめ感が広がり、事業者にはフラストレーションのたまる発表となったようだ。
発表に際しムヒディン氏は支援措置に触れなかった。国民、企業の蓄えも底をついており、国民生活、企業経営への影響は以前より深刻なものになる可能性がある。
国民感情を代弁するとしナジブ・ラザク元首相は、この先2週間を乗り切るための支援を政府に要請。「収入ゼロの中、数百万の国民に自宅で静かに過ごすことを求めるなら、何らかの支援措置を発表すべき」と述べた。
ソーシャルメディアでは現状を「前例のない事態」と表現することに対する反発が見られた。弁護士のリム・ウェイジエット氏は、標準的運用手順(SOP)が直ちに発表されなかったことを批判。「企業は発表を待たねばならず、憶測、混乱を招くものだ」と述べた。
(マレー・メール、1月12日)