厳格なロックダウンが必要、専門家が指摘

【クアラルンプール】 3回目となる行動制限令(MCO3.0)が12日付けで全国に拡大されたものの新型コロナウイルス「Covid-19」の新規感染者数が依然として増加傾向にあることから、医療専門家はより厳格なロックダウンを行なう必要があると指摘している。
ロクマン・ハキム・アブドラ元保健省副事務次官は、今年1月に実施したような中途半端な制限令ではもはや感染拡大を抑え込むのは難しいとした上で、1月のMCO2.0では感染抑制目標を達成できず、同時に発令された非常事態宣言も役に立たなかったと指摘。実際の制限は国民の州を跨いだ移動禁止と標準的運用手順(SOP)への準拠だけだったとし、散発的な発生に対処するための集中的なスクリーニングのような措置は行なわれなかったと批判している。
その上でロクマン氏はMCO3.0が新規感染を減らすのに役立つことは認めるものの、戦略がMCO2.0と同様であれば集団免疫を獲得するまでMCO4.0を実施する必要に迫られるだろうと指摘。それまでに経済が持ちこたえられるのだろうかと疑問を呈している
マラヤ大学のラジャ・ラシア経済学教授は、MCO3.0下でのガバナンスの弛みが経済の復活にとって助けになっていないと指摘。「昨年3月のMCO1.0ではSOPが厳しすぎたが、MCO3.0では反対に緩すぎてSOPが守られていない」とし、人の移動を取り締まるより人が多く集まる場所で取り締りを行なうべきと指摘している。
(マレーシアン・リザーブ、5月19日)

新型コロナの感染者数は6806人、2日連続で過去最多を更新

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 保健省(MOH)は20日、新型コロナウイルス「Covid-19」の新規感染者数が6,806人となり、2日連続で過去最多を更新したと発表した。アクティブ感染者数は5万171人で、累計感染者数は49万2,302人となった。

州・地域別の感染者数はセランゴール州が最も多く2,277人だった。それに▽クアラルンプール(KL、655人)▽ジョホール州(615人)▽サラワク州(608人)▽クランタン州(426人)▽ケダ州(417人)▽ペナン州(362人)▽ネグリ・センビラン州(291人)▽ペラ州(248人)▽サバ州(245人)▽トレンガヌ州(233人) ▽マラッカ州(212人)▽パハン州(157人)▽プトラジャヤ(35人)▽ラブアン(17人)▽ペルリス州(8人)ーーが続いた。新たに3,916人が回復し、累計治癒者は44万32人となった。死者数は59人増えて、累計で2,099人となった。 保健省のノール・ヒシャム事務次官は19日、新たに22カ所のクラスターを確認したと明らかにした。
職場では最も多い8カ所のクラスターを確認。またコミュニティで7カ所、宗教活動で6カ所、教育機関で1カ所のクラスターが発生した。
州別では、セランゴール州で4カ所、ジョホール州とサバ州で3カ所、サラワク州、マラッカ州、クランタン州、KLでそれぞれ2カ所、トレンガヌ州、ラブアン、ペルリス州、ペラ州でそれぞれ1カ所のクラスターが発生した。その一方で3カ所のクラスターが収束した。

保健相発言に小売業者、汚名を着せるものと反発

【クアラルンプール】アダム・ババ保健相の発言はショッピングセンターが新型ウイルスの感染場所になる可能性があると汚名を着せるものと、小売業界が批判している。
アダム氏は17日の定例記者会見で、家庭訪問禁止の規制をかいくぐり、複数の世帯がショッピングモールに集まり、断食明けを祝っていると発言した。
マレーシア・ショッピングモール協会、マレーシア小売業者協会、マレーシア小売チェーン協会、ブミプトラ小売業者団体は共同声明を出し、大臣は誤った情報に基づき発言したと思われると批判した。
アダム氏はホットスポット特定のための早期警報システムHIDEから得られた情報に基づき発言した。
小売業の団体は「ショッピング施設に入った個人が同じ家族の構成員なのか判断はできない。低リスクに分類された人であればだれでも入場できる以上、目的に関係なく、商店側として彼らの入場を止めることはできない」とした。
(マレー・メイル、5月18日)

 

「完全なロックダウン実施には反対」経営者連盟

【クアラルンプール】 マレーシア経営者連盟(MEF)は、新型コロナウイルス「Covid-19」の新規感染者数が多いセランゴール州などを対象により厳格な行動制限令(MCO)を実施する提案には賛同するが、完全なロックダウン実施には反対する考えだ。
MEFのサイド・フセイン会長は、感染の増加曲線を平坦するためにより厳格なMCOを実施することには賛同するとした上で、完全なロックダウンは経済回復を阻害しかねないため反対すると言明。感染拡大抑制のために何らかの緊急措置をとらなければならないことは理解できるとした上で、「企業側のビジネス上の利益と国民の生計を維持することを念頭において決定しなければならない」と述べた。
サイド・フセイン会長によると、昨年3月に実施された最初のロックダウン(MCO1.0)での国内の経済損失は1日当たり24億リンギ程度だったが、現在行なわれている3度目の制限令(MCO3.0)での損失は3億リンギ程度と軽微だ。
セランゴール州の状況については保健省も深刻に受け止めており、アダム・ババ保健相は17日、より厳格なMCOの実施に向けて検討していることを明らかにしている。
(エッジ、5月18日)

セランゴール州の企業ワクチン購入制度、3500社が関心

【シャアラム】 セランゴール州政府が実施を決めた、従業員向けの新型コロナウイルス「Covid-19」ワクチンを企業単位で購入できる制度について、これまで同州内の3,500社が参加の意向を示していることが明らかになった。
同州公衆衛生・団結・女性家族開発委員会のシティ・マリア・マハムド議長が19日の会見で明らかにしたところによると、ワクチン購入制度への参加意向を示している企業に所属する従業員は約100万人。参加企業にはデポジットの支払いを求める方針で、6月の開始を見込んでいる。制度の詳細は近く発表される見通し。同州では従業員150万人に対し250万回分の接種を目指している。
これまで同州でワクチン接種を受けたのは、最前線の医療従事者や高齢者など27万5,000人程度。州総人口の5%未満にとどまっており、クアラルンプール(KL)やラブアン、パハン州よりも低いという。
シティ氏によると、連邦政府が実施する公的ワクチン接種プログラムでは無料で受けられるが、感染者が出て操業停止に追い込まれることを恐れる企業が有料であっても接種を優先したいと考えているという。

■「完全なロックダウンには反対せず」アミルディン州首相■ アミルディン・シャリ州首相は、あらゆる点を考慮した上で国家安全委員会(NSC)及び連邦政府が決定したのであれば、同州を対象とした完全なロックダウンの実施に反対しない考えを明らかにした。 先ごろアダム・ババ保健相が、感染者が急増しているセランゴール州を念頭にロックダウン実施の可能性があると示唆していた。

(東方日報、フリー・マレーシア・トゥデー、5月19日)

感染急増のセランゴール州、専門家からロックダウン求める声

【クアラルンプール】 新型コロナウイルス「Covid-19」の新規感染者数が特にセランゴール州で増加していることから、専門家からは同州を対象に完全なロックダウンを行なうべきとの声が上がっている。
マラヤ大学教授で、科学技術革新省の新型コロナ疫学分析及び戦略タスクフォースの座長を務めるアワン・ブルギバ・アワン・マハムッド博士は、「これまでに見たことのないような感染ケースが指数関数的に増加する懸念があり、我々の医療システムを完全に破壊する可能性がある」と指摘。これまで感染者数が抑制されていたタイで数日のうちに9,635人に急増したことを例に、マレーシアでも同様なことが起きる可能性があると警鐘を鳴らしている。
アワン氏によると、マレーシアでは陽性率が5%を超えている。これは感染検査の数が不足していることを示しており、補足できていない感染者(サイレント・キャリア)が市中に潜在していることを意味している。実際の感染者数は恐らく確認されている感染者数の二倍以上に上るとみられるという。
最近では重症であるカテゴリー3、4、5の比率が非常に高くなっているが、アワン氏は理由は分からないとした上で、症例が増えている変異型には感染力が強い、重症化しやすい、感染力が持続する期間が長いといった特徴があるとし、感染力が持続する期間が最大21日の場合はロックダウンを3カ月続ける必要があるとしている。
重症者の増加により、各地の医療施設の集中治療室(ICU)が満杯に近づいている。セランゴール州の状況については保健省も深刻に受け止めており、アダム・ババ保健相は17日、より厳格なMCOの実施に向けて検討していることを明らかにしている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、5月19日)

新型コロナの新規感染者数、過去最多の6075人

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 保健省(MOH)は19日、新型コロナウイルス「Covid-19」の新規感染者数が6,075人増加し1日あたりで最多となったと発表した。これまでで過去最多だった1月30日の5,728人を超えた。アクティブ感染者数は4万7,340人で、累計感染者数は48万5,496人となった。

州・地域別の感染者数はセランゴール州が最も多く2,251人だった。それに▽クアラルンプール(KL、660人)▽ジョホール州(699人)▽ケダ州(445人)▽クランタン州(441人)▽サラワク州(323人)▽ペラ州(220人)▽トレンガヌ州(203人)▽ネグリ・センビラン州(189人)▽ペナン州(183人)▽サバ州(160人)▽パハン州(150人) ▽マラッカ州(122人)▽ラブアン(14人)▽プトラジャヤ(9人)▽ペルリス州(6人)ーーが続いた。新たに3,516人が回復し、累計治癒者は43万6,116人となった。死者数は46人増えて、累計で2,040人となった。

保健省のノール・ヒシャム事務次官は、18日に確認された死者数が過去最高の47人となったと公表。国内では南アフリカ型変異株(B.1.351)、英国型変異株(B.1.1.7)、インド型の変異株(B.1.617)が確認されているが、多くの陽性者に全く症状がなかったり、関節痛や倦怠感、食欲不振といった症状しか出ておらず、発熱や咳などの症状がないため無意識に感染を拡大していると指摘した。
またノール氏は、変異種は初期に症状はなくても急に重症化することから、死亡率も上がっていると指摘。行動制限令(MCO)を順守し、感染の連鎖を断ち切るために改めて感染予防策を徹底して欲しいと呼びかけた。
18日は新たに19カ所のクラスターが確認された。職場では最も多い7カ所のクラスターを確認。また宗教活動で5カ所、コミュニティで4カ所、教育機関で3カ所のクラスターが発生した。
州別では、ジョホール州で4カ所、トレンガヌ州で3カ所、ケダ州、セランゴール州、サラワク州、KLでそれぞれ2カ所、ペナン州、マラッカ州、ネグリ・センビラン州、ペラ州でそれぞれ1カ所のクラスターが発生した。その一方で6カ所のクラスターが収束した。

政治家のSOP違反相次ぐ、マハティール前首相も

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 新型コロナウィルス(Covid-19)感染者が増加傾向にある中、政治家など模範となるべき人たちが標準的運用手順(SOP)を違反するケースが相次いでいるが、このほどマハティール・モハマド前首相にも違反行為があったことが発覚した。
マハティール氏は、8日に自身の選挙区であるランカウイで行われたラマダン(断食月)関連イベントに出席。追跡アプリ「MySejahtera」による出席記録を行わず、体温測定も行わないまま会場に入る様子が動画で撮影され、ソーシャルネットで拡散した。マハティール氏は違反を認めて謝罪。罰金を払う意向を示した。
マハティール氏は、前々日の10日に特別声明を発表し「国民がSOPを守らなければインドやブラジルのような事態になる」と警鐘を鳴らしたばかり。
先日はナジブ・ラザク元首相が、今回のマハティール氏と同様に「MySejahtera」を使わず、検温も行わないままチキンライス店に入店する様子が動画で撮影され、罰金を支払った。氾マレーシア・イスラム党(PAS)所属のトレンガヌ州議会議員もSOP違反が判明している。

3度目のMCOは中所得国脱却を阻害、世銀見解

【クアラルンプール】世界銀行は、3度目の行動制限令(MCO)実施は高所得国への移行を阻害する可能性が高いとの見解を示した
世銀は3月、マレーシアは25年までには高所得国になるとの予想を示したが、パンデミック期間中、工業化の進展は遅れ、賃金にも悪影響が出たという。
新型コロナウイルスの感染再発はマレーシアに限ったことではないが、独立系シンクタンク、ガレン健康・社会政策センターのアズルル・モハマド最高責任者は「経済の中心地であるクアラルンプールとセランゴール州で感染が最も広がっているため、経済回復が損なわれている。企業は閉鎖し、人は職を失い、貧困レベルに近づいている世帯が増えている」と述べた。
民主主義・経済研究所(IDEAS)のアザム・ワン研究員は、第3次MCOがビジネス容認の姿勢をとっていることは諸刃の剣と指摘。外食業を除き経済の各部門に対する影響は最小限に抑えられるが、感染防止の効果は弱く、パンデミックが長引けば経済回復が遅れると述べた。
(マレーシアン・リザーブ、5月17日)

公立病院での医療従事者不足、改善策を医師会が提案

【クアラルンプール】保健省の地方事務所と公立病院で医師ら医療従事者の不足が顕著になっていることに関し、マレーシア医師会(MMA)は、民間の力を借りるなど保健省は戦略を変えるべきとの提案をスブラマニアム会長名で行った。
MMAによると、地方事務所では医師らは新型ウイルス「Covid-19」接触者追跡だけでなく、Covid-19以外の患者にも対応しなければならず、過重労働で医療の質が損なわれる恐れもあるという。
ウイルス感染者数は増加傾向を続ける見通しのため、保健省はインターン、医学生、看護学生、医療助手らの助けを、特に接触者追跡で借りるべきだという。
MMAは、Covid-19以外の患者の治療を民間病院、診療所に委託することを提案。また症状が軽い陽性反応者の追跡などで書類作業をデジタル化することも提案した。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、5月17日)