新型コロナウイルス「Covid-19」の影響が長期化し、職を失うなどして生活に困窮する人々が増加している中、助けを必要としている人がそれとなく隣人に気付いてもらうようにするために門や玄関に白旗を掲げることを奨励する「白旗キャンペーン」が各地で広がりをみせている。

「白旗キャンペーン」は6月28日にフェイスブック上にグループが立ち上げられ、1日で2,000人以上が参加した。支援を求めている人に対しては「物乞いをしたり、恥ずかしい思いをする必要はありません。ただ白旗を掲げるだけです」と呼び掛けている。

従来型の食糧配給のような政治的・宗教的、組織的なアピール目的の支援でなく、民族や宗教の枠を越えて個人が自分の出来る範囲で困っている隣人を支援しようという点がユニークで、多くの有名人なども賛意を示している。

政府は昨年3月のパンデミック拡大以来、これまでに8回にわたる支援策を発表。特に貧困層を意識して一時金や食糧の直接支援などが盛り込まれたが、支援は遅れがちだ。保健省には今年1月以降に12万2千件ものメンタル相談が寄せられた。1—3月の自殺者数は336件に達している。

政府の支援がアテにできない中、国民同士で助け合おうということで始まった善意のキャンペーンだが、頭越しでこうしたことが行なわれることが自分たちが無能だと言われていると感じたのか、不快感を表明する政治家、宗教指導者などは少なからず出ている。

与党連合・国民同盟(PN)構成党、汎マレーシア・イスラム党(PAS)幹部からは「敗北を認めるもの」とキャンペーンを批判、代わりにアッラーに祈るよう求める発言が出た。

これはさすがに弱者の気持ちが分からない、空気が読めない発言であり、早速「政府の非効率性と失敗を隠蔽するために祈りとか宗教を持ち出すな」、「あなたが支援するというのなら支援しろ。しないのなら黙っていろ」などと批判が殺到した。

PAS所属のケダ州のムハンマド・サヌシ首相は、政策の失敗を強調するためのに行なわれている政治的宣伝だと主張キャンペーンに参加して白旗を掲げている人には公的支援を行なわないと言い放った。同氏の発言には批判の声が殺到しており、マハティール•モハマド前首相までも批判に加わっている。

またキャンペーンに賛同する意向を示した与党政治家も批判の的になっている。キャンペーンを指示する発言を行なったズライダ・カマルディン住宅地方自治相には「あなたがきちんと仕事をしていればこんなキャンペーンは必要なかった」、「それなのに臆面もなくキャンペーンに便乗しているのは恥ずべき」といった批判の声が上がっている。

政治的圧力なのか、地域によっては住民が白旗を掲げることを警察が取り締まる騒ぎまで起きている。

(マレーシアBIZナビ編集部)