新型コロナウイルス「Covid-19」の切り札とされるワクチン接種について、中国シノバック製を使用している各国から、有効性に疑問を投げかける報告が上がっており、シノバック製が大量に使用されているマレーシアでも懸念の声が上がっている。
香港大学医学部は、ビオンテック製と比較するとシノバック製の抗体レベルが低いとの結果が得られたとし、シノバック製を接種した人の一部は3回目の接種が必要になる可能を示していると報告している。タイの研究では、シノバック製を2回接種した人の抗体レベルが40日ごとに半減するとの結果が出たという。
変異型の感染が拡大する中、シノバック製の有効性に対する懸念がますます高まっており、タイ政府はシノバック製を2回接種した後にアストラゼネカ製をブースターと呼ばれる抗体レベルをあげるための3回目として接種すると発表。インドネシアの同様の措置を検討しているという。これに対し製造元の中国・科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)は、有効率は90%に達し、また変異株にも有効だと主張している。
マレーシアはこれまでシノバック製を1,600万回分を発注しているが、マレーシア保健省は15日、在庫が切れた段階でシノバック製の使用を打ち切ると発表した。他社製の供給が十分な量に達しているためだとしており、シノバック製の信頼性が低いためではないと説明している。
ワクチン接種調整担当大臣を兼任するカイリー・ジャマルディン科学技術革新相は、2回目の接種をファイザー製またはアストラゼネカ製に代える、もしくは3回目の接種については現時点で考えていないと述べた。ただシノバック問題にはむしろ地方自治体の方が敏感で、クランタン州は連邦政府に先駆けて7月いっぱいでシノバック製の使用は止めると発表している。
政府が公式使用しなくなったシノバック製について、販売元であるファーマニアガは8月より州政府や民間企業向けに販売を開始する方針を示している。販売するのは政府が購入を中止したため余剰となった1,400万回分だが、これについて「元々全国民への接種費用は国が負担するはずだったのだから、この分も国費で負担すべき」との声も上がっている。
シノバック製に対する懸念の声が上がっていることについて、野党・民主行動党(DAP)のリム・グアンエン書記長は、シノバック製ワクチンを接種した人々の間で疑念を生じさせないように政策の方向性についてきちんとした説明が必要だと指摘している。
なおシノバック製に限らずワクチンの効果が一定レベルに達しない場合に備え、マラヤ大学熱帯感染症研究センター(Tidrec)は、ブースター接種の必要の有無に関する研究に着手している。ワクチン接種を受けた200人のボランティアの抗体レベルがどれぐらい低下するか調べるという。(マレーシアBIZナビ編集部)