【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 イスマイル・サブリ・ヤアコブ内閣が8月30日に正式に発足したが、ムヒディン・ヤシン前内閣から閣僚の顔ぶれに大きな変化がないことから、政策の継続性に安堵する向きがある一方、変化を期待する方面からは失望する声が上がっている。
テンク・ザフルル財務相の留任について、資本市場では財政・金融政策の方向性が継続されるとの安堵感が広がっている。テンク・ザフフル財務相はこれまでの景気対策の実施や省庁間調整・実行部門(Laksana)の責任者、国家復興計画(NRP)調整大臣を兼任している。ブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)代表的指数FBM KLCIはイスマイル首相就任が確定的となった8月20日から上昇を続けている。
カイリー・ジャマルディン前科学技術革新相の保健相への横滑り就任についても、新型コロナウイルス「Covid-19」ワクチン接種プログラムの推進で実積をあげており、適任だと評価する声が上がっている。
一方、いまだに多くの経済・社会活動がストップしている状況を作り出したムヒディン内閣の失政に対する批判から、大きな改革を期待していた向きからは多くの閣僚が留任していることに失望する声が上がっている。
野党連合・希望同盟(PH)を率いるアンワル・イブラヒム人民正義党(PKR)党首(元副首相)は8月25日に就任早々のイスマイル首相と面会した際には、イスマイル首相から野党への歩み寄りが見られたと好意的な見方を示していたが、閣僚の発表を受けて「リサイクル内閣」と批判。「我々は変化を求めていたが失望した」と述べ、イスマイル首相が100日の間に成果を出すことを各閣僚に求めたことについては、ムヒディン内閣で過去1年半も変化がなかったのに100日で成果が出せるのかと酷評した。
マハティール・モハマド元首相は、今回の首相交代と代わり映えしない新内閣陣容でマレーシアが世界中の笑い者になっていると指摘した上で、さらに笑い者にならないためにも内閣信任投票はもはや不要だろうと皮肉った。