「日本からの投資は昨年上回る見込み」髙橋大使

【クアラルンプール】 髙橋克彦駐マレーシア大使は国営「ベルナマ通信」との会見で、今年の日本企業によるマレーシアへの投資は昨年を上回るとの予想を示した。昨年の投資額は52億7,200万リンギだった。

高橋大使は「日本企業は、多様な文化、宗教面の寛容性、英語理解力、地震、津波など激甚災害がないこと、またルックイースト(東方)政策の結果、日本語を話せる国民が多くいることから、マレーシアへの投資に魅力を感じている」と述べた。マレーシアで活動している日本企業は約1,600社で、国・地域別でシンガポール、香港、米国に次ぐ4位の投資元。

高橋大使によると、日本企業は気候変動を念頭にグリーンエネルギー(太陽光、風力、水力、バイオマスなどから作られるエネルギー)への投資拡大に関心を抱いており、住友商事、エネオスおよびサラワク経済開発公社子会社SEDCエナジーの3社によるクリーン水素事業がその好例となっている。デジタル産業も日本企業の関心分野で、NECはジョホール州に情報技術サービスの顧客支援拠点を開設した。イスラム金融、ハラル(イスラム教に沿った)産業でも日本企業はマレーシアを望ましい拠点とみているという。
(ベルナマ通信、マレーシアン・リザーブ、4月15日)

「イラン・イスラエル紛争の影響は最小限」アンワル首相

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 イラン・イスラエル間の紛争について、アンワル・イブラヒム首相は15日、「マレーシア経済への影響は今のところ最小限だ」と述べた。イスラエルは1日、シリアのイラン大使館をミサイル攻撃し、イランは14日、ドローンとミサイルで報復攻撃を行った。

アンワル首相はこれに先立って、アハマド・ザヒド副首相、カレド・ノルディン国防相、サイフディン・ナスティオン内務相、モハマド・ハッサン外務相らが出席した国家安全保障特別会議に議長として出席。マレーシアへの影響や今後の対応について協議した。アンワル首相は、両国紛争のマレーシア経済への影響は小さいが、政府は引き続き注意深く監視し、マレーシア国民の安全、福祉、幸福を確保するために積極的な措置を講じると述べた。

アンワル首相はまた、イスラエルによるイラン大使館への攻撃を野蛮な行為だと非難した上で、イランがイスラエルを報復攻撃したことを正当行為だと指摘。イスラエルからさらなる攻撃がない限り追加攻撃はしないとしているイラン側の対応を評価した。その上でイスラエルに対して、中東情勢をさらに悪化させないためにもイランに対して再報復を行わないよう呼びかけた。

半導体重要拠点としてペナンに脚光、WEFが評価

【ペタリンジャヤ】 世界経済フォーラム(WEF)がビジネス特化型SNS「リンクトイン」のページにペナンに関する動画を投稿し、半導体チップの新たな重要拠点と評価した。アンワル・イブラヒム首相は自身のフェイスブックアカウントでこの動画を共有し「技術革新を動力とする、ハイテクの未来を構築する」とした。

WEFは動画で「世界では1,000億個の半導体が日常的に利用されているが、半導体製造が特定の地域に集中しているためサプライチェーンがぜい弱性を増している。マレーシアは新たな選択肢を探している企業が目指す場所になっている」とした。ペナン州に対する2023年の外国からの直接投資は128億米ドル。うちインテルは新工場の建設に70億米ドルを投じた。

外国メディアもペナン州を取り上げており、過去数年、ペナン州に投資した企業として、米系ラムリサーチ、テキサス・インスツルメンツ、マイクロン・テクノロジー、独系インフィニオン・テクノロジーズ、ボッシュ、台湾系日月光半導体(ASE)を挙げた。マレーシアはチップ組み立て、テスト、パッケージングなど後工程で強みを持つ。設計では内資のオプスター・テクノロジーが注目を集めている。
(ベルナマ通信、フリー・マレーシア・トゥデー、4月12日)

イオンビッグの「ドアマット」にイスラム教神殿、宗教局が押収

【クアラルンプール】 ジョホール州イスラム宗教局(JAINJ)は9日、州民からの苦情を受け、イオンビッグ・バトゥパハ店で、イスラム教の聖地であるカアバ神殿の絵がデザインされているドアマット11枚を押収したと発表した。イオンビッグ関係者を呼び出し、販売する商品にもっと注意するよう警告を行ったという。

イオンビッグ(M)および該当商品のサプライヤーであるA&Rファッション・コレクションはこれを受け、13日に共同声明を発表。この商品は実際は「礼拝用ミニマット」であるが、商品管理システムのミスで「ドアマット」に分類されていたと述べた。イオンビッグは直ちにシステム上で表記を修正したとし、「多民族社会の調和に影響を与えるような憶測がなくなることを望んでいる」と述べた。

声明によると、A&Rはイスラム教徒のブミプトラ(マレー系および先住民)が100%所有する中小企業(SME)であり、2007年の設立以降、シャリア(イスラム法)準拠のムスリム服や、ラグ、カーペット、マットなどの製品を供給している。イオンビッグには2015年から供給を開始し、他小売業者への供給や自社店舗での販売も行っている。

先にミニマートチェーンのKKマートで、アラビア語で神を表す「アッラー」の文字がプリントされた靴下が販売されていたことが発覚し、会社創業者らが起訴され、支店3カ所に火炎瓶が投げ込まれる事件が発生している。バーンズ・ホールディングスが販売していたハイヒールについても、靴底に入ったデザインが「アッラー」の文字に似ているとのクレームが上がったことから、警察が1,145足を押収し、同社の創業者から事情聴取する事態となった。
(エッジ、4月14日、マレーシアン・リザーブ、ベルナマ通信、4月13日)

【従業員の勤労意欲を高めるために】第873回:ライフスタイルとモチベーション(13)留学は無意味?

第873回:ライフスタイルとモチベーション(13)留学は無意味?

前回は、読書が、他者への共感や認知能力を高めるというお話でした。引き続き、最近駐在員の方々に対して行ったアンケート調査の結果を考察しましょう。今回は、過去の海外経験が駐在員のパフォーマンスに与える影響についてです。

調査の結果、海外経験については、仕事か、学びかで対照的な結果になりました。すなわち、過去に仕事で海外に住んだ期間の長さがパフォーマンスの一部と相関するのに対して、留学期間の長さにはそのような傾向がありませんでした。これは、一般的に、留学という行為が様々な形態を含んでいるためかも知れません。以前のシステマティックレビューは、現在駐在している国と文化的に近い国での海外経験は容易に異文化適応に活用できるが、文化的に遠い国での海外経験の活用は難しいことを主張しています(Takeuchi et al., 2012)。或いは、たとえ駐在国と文化的に近い国への留学経験であっても、外国人と触れあう機会が多くあったか、それとも、日本人ばかりと過ごしていたかでは、培われるスキルが大きく異なることを指摘する議論もあります(Takeuchi & Chen, 2013)。

そもそも、現地の人たちに面倒を見てもらうことを前提とした留学と、現地の人たちを管理して成果を生まなくてはいけない駐在とでは、発生し得る責任や軋轢の大きさが異なるので、しばしば前者の経験が活用できないのは当然といえます。一方、駐在員としての仕事の経験であれば、国や文化が異なっても、技術的な問題を解決したり、現地の人材や後任の駐在員を指導したり、本社と連絡を取ったりするなどの共通するタスクが多いことで、こうした経験をある種のパフォーマンスに対して活用し易かったと考えられます。

今回のアンケート調査の結果は、駐在員がパフォーマンスを発揮するうえで留学に意味が無いことを示しているわけではありません。むしろ、留学の内容にまで目を向けずに、「この人は留学経験があるから駐在員の仕事も務まるだろう」と安直に考える姿勢が間違っていることを示しています。一方、今回の調査結果は、駐在員としての仕事の経験がある人に駐在員を任せるのであれば、ある種のパフォーマンスを発揮してくれると期待してもおおよそ間違いが無いことを示しています(本社の人間はそのことを経験的に理解しているので、駐在国を横滑りしながらなかなか日本に帰してもらえない駐在員が少なくないのでしょう)。

Takeuchi, R., & Chen, J. (2013). The impact of international experiences for expatriates’ cross-cultural adjustment: A theoretical review and a critique. Organizational Psychology Review, 3(3), 248-290. https://doi.org/10.1177/2041386613492167 

Takeuchi, R., Tesluk, P. E., Yun, S., & Lepak, D. P. (2005). An integrative view of international experience. Academy of management Journal, 48(1), 85-100. https://doi.org/10.5465/amj.2005.15993143 

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、東北大学客員准教授、国際経済労働研究所理事、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、産業創出学の構築に向けた研究に従事している。
この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

クアラルンプール国際空港で銃撃、1人が重体

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 クアラルンプール新国際空港(KLIA)第1ターミナルで14日午前1時20分ごろ、男が妻を短銃で銃撃する事件が発生。妻のボディガードが銃弾を受けて重体となっている。男は駐車場に停めてあった車で北に向かって逃走した。

警察によるとは発砲したのはハフィズル・ハラウィ容疑者(38)で、到着ホールで帰国する巡礼団を出迎えるために待っていた妻のファラー・モハマド・イサさんを狙って数メートルの距離から短銃を2発発射。ファラーさんには当たらず、2人いたボディガードのうち1人に命中した。ハフィズル容疑者はまた爆竹を投げ込んだため、付近にいた2人も負傷した。

ハフィズル容疑者は、ファラーさんと離婚に向けた話し合いを行っていたとみられ、これに関連してファラーさんを脅迫していたという。このため身の危険を感じていたファラーさんがボディガードを雇っていた。

警察は個人的トラブルが原因で起きた事件であり、テロ組織などとの関連はないとした上で、ハフィズル容疑者が脅迫や窃盗などによる前科3犯で、いまだ武器を所持している危険人物だとして注意を喚起する一方、全力を上げて行方を追っていることを明らかにした。タイ国境でも監視を強めるとしている。

中古品流通のコメ兵、マレーシアに子会社を設立へ

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 中古品流通などを手掛けるコメ兵ホールディングス(本社・愛知県名古屋市)は12日、香港にある連結子会社、コメヒョー・ブランド・オフ・アジアがマレーシアに子会社を設立すると発表した。

マレーシア子会社コメヒョー・マレーシア(仮称)の資本金は600万リンギ。4月中の設立を予定している。宝石・貴金属、時計、バッグの仕入れおよび販売を行う。

コメ兵ホールディングスは、海外ブランドリユース市場でシェアを拡大していくうえで、経済成長が著しいマレーシアは一人あたりの所得が東南アジア諸国連合(ASEAN)の中でシンガポールに次いで高いなど、様々な観点で重要な拠点になるとみて注目していたと説明。子会社設立によりマレーシア国内でのリユース文化の形成を目指し、ASEANにおけるさらなる事業成長と海外ブランドリユース市場におけるシェア拡大を実現していくとしている。

コメ兵グループのブランド・ファッション事業におけるグローバル戦略は、「KOMEHYO」や「BRAND OFF」など複数の屋号と、「買取り」「小売り」「卸売り」「オークション」という4つのチャネルを活用した最適な組み合わせを進出都市に応じて展開することだという。

オンデマンド印刷のアクセア、マレーシア1号店をKLに開設

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 オンデマンド印刷のアクセア(本社・東京都千代田区)は、マレーシア法人アクセア・マレーシアを通じ、15日付けでマレーシア1号店をクアラルンプール(KL)にオープンした。

店舗名は「アクセア・クアラルンプール店」。印刷物、チラシ、ポスター、バナースタンドなどのプリントサービスを提供するほか、全席電源完備、Wi-Fi無料、ドリンク無料のコワーキングスペース「アクセア・カフェ」や貸会議室サービスも提供する。また、無料のビジネスマッチング機能とコワーキングスペース受付決済機能を兼ね備えたアプリ「ビズスポット」により、ユーザー同士の異業種交流、新たなビジネスチャンスの創出、ワークスペースの利用を一元的にサポートする。

営業時間は平日午前8時ー午後8時(土日祝休み)。オープン記念キャンペーンとして、15日より先着100人にオリジナルデザインのマグカップのプレゼント、コワーキングスペースの無料開放(21日まで)などを実施する。

アクセアは今後、マレーシア国内の店舗拡大に加え、東南アジアでの出店拡大も視野に入れながら、事業拡大を推進していく方針だ。

健康美容専門商社の手組、ASEAN4カ国進出支援サービスを開始

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 健康美容専門商社の手組(たくみ)は9日、3月末にマレーシアのケイソン・グループをはじめとするASEAN(東南アジア諸国連合)地域企業4社と戦略的業務提携を締結したと発表した。日系健康、美容、医療、関連メーカーのASEAN4カ国進出を支援する。

手組は健康食品や化粧品などの輸出入、ブランド運営、薬事や市場リサーチなどを行ってきており、ASEANにおいてはAICシンガポールと連携し、各国の美容健康関連企業を訪問し、10年間で約1,000社の現地ネットワークを構築している。

今回、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナムを初期主要4カ国として、ASEAN健康美容コンソーシアムを構築することを決定した。手組が日本語対応可能なジャパンデスクとなり、日本の健康美容関連メーカーの戦略立案サポート、薬事、貿易、マーケティング、テストマーケティング、M&Aなどの支援を行っていく。ASEAN地域の1カ国のみではなく、数カ国に進出を希望する日本企業を対象顧客として想定している。

マレーシアでの提携先であるケイソン・グループは、美容健康関連に特化した企業で、日系製品取り扱い代理商、マーケティング支援、輸入通関代行などに携わっている。ASEANコンソーシアムではマレーシア担当として各種調整を務める。

岡山大学、マレーシア・インドネシアからの日本留学を推進へ

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 岡山大学(本部・岡山市北区)は7日、文部科学省より「日本留学促進のための海外ネットワーク機能強化事業」を受託し、2024年4月ー2029年3月の5年間、オールジャパンで東南アジアから日本への留学を推進し強化することとなったと発表した。

本事業では、マレーシアとインドネシアを最重点国とし、これまでの10年間で培った日本・現地関係機関とのネットワークを活用・拡大しつつ、岡山大学が日本とASEAN(東南アジア諸国連合)のハブとなり、双方向への研究・交流・リクルーティング等に関するコンサルティング機能と業務を担う。
また、優秀なASEAN留学生のリクルーティングから就職までの入口から出口までをオールジャパンで支援することで、「未来を創造する若者の留学促進イニシアティブ(J-MIRAI)」で提言された「2033年までに留学生受入数40万人」目標に貢献する。

岡山大学は2014年度に受託した文部科学省受託事業「留学コーディネーター配置事業(ミャンマー)」で、ミャンマーからの留学生数を3倍に伸ばした実績および、2019年度に受託した「日本留学海外拠点連携推進事業(東南アジア)」で、コロナ禍でも他機関に先駆けてオンライン・ハイブリッドでの日本留学促進とネットワーク構築をオールジャパンで展開した実績などが評価され、今回の採択につながったとしている。