【総点検・マレーシア経済】第494回 2月の製造業生産指数、底打ちの兆し


第494回 2月の製造業生産指数、底打ちの兆し

4月8日、マレーシア統計局は2月の製造業生産指数を前年同月比1.7%増と発表しました。これで、1月の3.4%増に続いて、2ヶ月連続で前年同月を上回りました。先月より上げ幅が縮小していることから、景気の先行きは予断を許さないように見えますが、旧正月の時期のズレを考慮すると、数字よりも状況は良いことが分かります。

2024年の旧正月は2月10日、対して2023年の旧正月は1月22日でした。例年、旧正月の期間には製造業の生産は低下します。したがって、1月は2024年のほうが高い数値が出る傾向があり、2月は2023年のほうが高い数値が出る傾向にあることが分かります。

図1は2022年〜24年の内需向け製造業の生産指数の推移を見たものです。2024年1月は前年同月比8.0%増でしたが、2月は3.8%増にとどまっています。ただし、上記の傾向を踏まえると、2月の数字は実態より下振れしていると考えられ、内需向け製造業は引き続き好調であると言えます。

図2は2022年〜24年の輸出向け製造業の生産指数の推移を見たものです。2024年1月の1.6%増から2月は0.1%減となりました。ただ、これも2月の数字は本来はより高いはずで、旧正月期間にもかかわらず0.1%減にとどまったのは実質的にはプラス相当と評価できます。

図3は2022年〜24年の電子・電機産業の生産指数の推移を見たものです。2024年1月は0.9%増、2月は0.3%増となりました。これも、旧正月の時期を考慮すると、1月よりも2月のほうが状況が改善している可能性があり、電子・電機産業についても底打ちの傾向が見え始めたと言えます。

このところ、マレーシアの景気は内需が牽引し、輸出関連産業が弱い状況が続いていましたが、底打ちの兆しが見えてきました。4月19日に発表される3月の貿易統計が注目されます。

熊谷 聡(くまがい さとる)
Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。
【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp

首都圏MRT、LRT駅まで片道2リンギで送迎するサービスを導入

【クアラルンプール】 首都圏大量高速輸送(MRT)や軽便鉄道(LRT)を運営するラピッドKLは、オンデマンド型交通(DRT)バンのトレック・ライズと提携し、自宅から首都圏のMRT、LRTの駅まで片道2リンギで送迎するサービスを提供すると発表した。

DRTバンは配車サービスと同様、アプリを使用してバンを指定の場所に呼び出すもの。片道2リンギの対象となる駅は、LRTでは、▽バンダル・プテリ駅▽タマン・ペリンダストリアン・プチョン駅▽IOIプチョン・ジャヤ駅▽バンダル・キンララ5駅▽ユニバーシティ駅▽ケリンチ駅▽パンダン・ジャヤ駅▽パンダン・インダ駅▽チェムパカ駅▽チャハヤ駅▽セティアワンサ駅▽ジェラタク駅▽アンパン駅ーーの合計13駅。MRTでは、コクレン駅、 UPM駅の2駅が対象となる。マラヤ大学の学生に対しては、半額の片道1リンギでサービスを提供する。
(ワールドオブバズ、4月5日)

【人生の知恵・仕事の知恵】Assigning task based on what he/she can do

Assigning task based on what he/she can do

★適材適所

先日、あるクライアントで部門責任者の交代がありました。明らかに適性を欠くと思われたので、本人に自覚を確認したところ、大丈夫ということでした。

しかし、上司の次の一言が引っかかり、再考するようにお願いしました。

「彼も、その立場になれば、役割を果たせるだろう。あとは部下たちが支えればいい」

★ミス配置は、最大のリスク

いうまでもなく、役職についてからパフォーマンスを期待するのではなく、そのパフォーマンスが期待できるから登用するのです。

しかし、例えば、人材がいないとか、急を要する時に、「あとは部下が支えれば良い」という部下に過度な負担を強いる人事をすれば、悪しき前例を作るだけではなく、能力不足の上司が基準となってしまいます。

★バーをあげる

人材を登用するとき、適任者がいないという状態を避けるためには、常日頃から、オール3のパフォーマンスを求めるのではなく、本人が少し背伸びをしないと届かないような仕事をやってもらう、あるいは挑戦するように仕向けることが肝要です。

普段から指示待ちの仕事しかしていない社員に、イニシアチブを取らないといけない仕事や、全体を見渡すような役割を求めることは、いくら本人ができると言ってもやらせるべきではありません(その組織が、そういう人を求めているなら別ですが。。。)

日頃から次の登用を考えた人材の育成が求められます。

【湯浅忠雄氏による社員研修がKLで開催!】
2024年4月22日(月)「報連相とPDCA」
2024年4月23日(火)「問題発見と解決の技法」
2024年4月24日(水)「中間管理者の使命と役割」
2024年4月25日(木)「日本人管理者のためのマネジメント研修」
開催時間:各9:00-17:00
使用言語:英語(25日のみ日本語)
会  場:SENTRO ( KL セントラル近くMENALA ALLIANZ38F )
問合せ先:yuasatadao@gmail.com
湯浅 忠雄(ゆあさ ただお)
アジアで10年以上に亘って、日系企業で働く現地社員向けのトレーニングを行う。「報連相」「マネジメント」(特に部下の指導方法)、5S、営業というテーマを得意として、各企業の現地社員育成に貢献。シンガポールPHP研究所の支配人を10年つとめた後、人財育成カンパニー、HOWZ INTERNATIONALを立ち上げる。
【この記事の問い合わせは】yuasatadao★gmail.com(★を@に変更ください)

自動車販売のステランティス、新たに28店舗の開設を計画

【クアラルンプール】 多国籍自動車メーカーのステランティス・マレーシアは今年、マレーシアでディーラー網を拡大していく方針で、東マレーシアにおける5店舗を含め、少なくとも28店舗を新たに設置する計画だ。3月1日付けで正式に設立されたステランティス・マレーシアは現在、半島部に8店舗、東マレーシアに1店舗展開している。

ステランティス・マレーシアは現時点で、プジョー、シトロエン、ジープ、電気自動車(EV)の中国リープモーターの4つのブランドに注力する方針で、厳選された各ブランド・モデルをマレーシア市場および近隣諸国への輸出向けにケダ州グルンの工場で組み立てる計画だ。

販売台数が多くないことから、通常ブランドごとに独立した店舗でおこなう販売は投資に見合わない可能性があるため、南アフリカで採用しているようなマルチ・ブランド販売方式をマレーシアでも採用する。

大型の店舗で様々なブランドを扱うというもので、アフターセールス・サポートも同じくすべてのブランドに対して提供していく戦略だ。
(モタオート、4月4日)

イオンビッグ、今年の売上高4ー5%増を目指す

【クアラルンプール】 イオン・ビッグ(M)は、2024年の売上高について、前年の10億リンギから4ー5%増を目指している。

5日に開催された、ネグリ・センビラン州のショッピングモール「パームモール」内の新店舗開店式典に参加したシェイク・ファローク社長は、顧客の支持を得られていることから、目標達成を楽観視していると述べた。年内にさらに2店舗をオープンし、全国で計24店舗の展開を目指す。2025年は、未進出の州を中心に、少なくとも3店舗のオープンを検討しているという。

同氏は、「パームモール店」については、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた2020年以来初の店舗拡大となり、9年ぶりにネグリ・センビラン州に復帰することになると説明。地元小売業界やセレンバンおよび近隣地域に好影響をもたらすことが期待できるとした。
(マレーシアン・リザーブ、4月6日)

米テスラ、ペナン州初となるスーパーチャージャーを稼働開始

【バターワース】 電気自動車(EV)メーカーの米テスラは、有料の急速充電器「スーパーチャージャー」4基をペナン州のセベラン・ジャヤにあるショッピングモール「サンウェイ・カーニバル」内に設置し、稼働を開始させた。

テスラ車所有者が無料で利用できる「デスティネーション・チャージング・ステーション」については、2月にペナン州内の2カ所に12基を設置していたが、「スーパーチャージャー」のペナン州設置は今回が初となる。

テスラは声明で、今回の設置は、マレーシア国内の充電ニーズに応えるだけでなく、シンガポールからジョホール経由でペナンに向かうユーザーの利便性も向上させられると述べた。

「スーパーチャージャー」の利用料金は1キロワット時(kWh)あたり1.25リンギ。現時点でテスラの国内充電施設は、「スーパーチャージャー」が8カ所・40基、「デスティネーション・チャージング・ステーション」が10カ所・61基となった。
(マレーシアン・リザーブ、モタオート、4月5日)

SOMPO福祉財団、DV被害者支援団体に2.25万リンギを助成

【クアラルンプール】 日本のSOMPO福祉財団は、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国やインド、南アフリカの社会福祉分野で活動する非営利団体を対象とした2023年度海外助成の一環として、女性支援団体のウイメンズ・エイド・オーガニゼーション(WAO)マレーシアに対し、2万2,500リンギを助成した。

2023年度海外助成の対象となったのは全5団体。マレーシア団体への助成は今回で11回目となる。SOMPOホールディングスの傘下にあるマレーシア現地法人ベルジャヤ・ソンポが、ドメスティック・バイオレンス(DV)被害者に対する継続的な支援活動を評価し、WAOを候補として推薦していた。

WAOは、毎年平均100人のDV被害者である女性・子どもにシェルターを提供。女性に対する暴力をなくし、女性の権利促進に向けた啓蒙活動も行っている。助成金は主にDV被害者の生活再建に向け、栄養価の高い食品や生活必需品を中心とした物資、心理的支援、技能向上プログラムなどを提供するために充てられる。

ベルジャヤ・ソンポのタン・セクキー最高経営責任者(CEO)は、DV被害者を支援するというWAOの取り組みに協力できることを光栄に思うとし、被害者が自己信頼を取り戻し生活を再建できるよう、積極的な役割を果たしていきたいと述べた。
(ビジネス・トゥデー、4月4日、カーシフ、4月1日、SOMPO福祉財団発表資料)

UMWトヨタ、第1四半期の販売台数は7%減の2万3444台

【クアラルンプール】 UMWトヨタ(UMWT)は、「トヨタ」と「レクサス」の両ブランドを合わせた2024年第1四半期の販売台数が前年同期比7%減の2万3,444台となったと明らかにした。

3月単月では、「トヨタ」が9,471台、「レクサス」が217台の合計9,688台となった。同社は同月、科学技術革新省と共にサステナビリティに向けた取り組みを行い、水素燃料電池車「ミライ」の試乗会などを実施した。また、商用車のハイエース・パネルバン3.0Lの予約受付を開始。従来の2.5Lモデルから性能を向上させ、環境にも配慮している。

UMWTは4月10ー11日のハリラヤ(断食月明け大祭)に向けたキャンペーンも実施しており、特定車種の100%ローン、最大7,500リンギの割引、「ヤリス」の月額658リンギからの分割支払いなどの特典を用意しているという。
(ザ・スター、4月5日、ポールタン、4月4日)

【従業員の勤労意欲を高めるために】第872回:ライフスタイルとモチベーション(12)読書が異文化理解を高める?

第872回:ライフスタイルとモチベーション(12)読書が異文化理解を高める?

前回は、最近駐在員の方々に対して行ったアンケート調査の結果から、睡眠と食事が、文化的知性や心の知性を高めるうえで効果があることを紹介しました。今回も、このアンケート調査の結果の一部を紹介します。

8か国184人の日本人駐在員が参加したアンケート調査から得られたデータを分析したところ、睡眠や食事と同様に、趣味や学習を行う習慣が、文化的知性と相関することが示されました。この趣味・学習については、その実践により、幸福感の向上や健康の維持などの多面的な効果が期待できることが最近のシステマティックレビューで確認されています(Fancourt et al., 2021)。中には、読書が、他者への共感や認知能力を高めることを示す研究もあります。Kidd & Castano(2013)が行った、18歳から75歳までが参加した5つの介入研究では、小説などのフィクションを読むと、ノンフィクションや、大衆小説、或いは、まったく読まない群と比較して、感情的・認知的テストの成績が向上することが示されました。テストには、例えば、参加者に人の目の白黒写真を見せて、その人の感情を読み取るように求めるものがあります。この研究の結果は、非現実的な要素を含む文学や芸術に触れることで、他人の感情や信念を理解する能力が向上する可能性を示唆しています。

慣習によってステレオタイプ化された我々の社会的経験とは異なり、フィクションの多くは私たちの期待を混乱させます。そのため、読者は、登場人物の感情や考えを推測するために、より柔軟な解釈を行う必要があります。こうした負荷が、感情的・認知的効果の原因の一部にあると論文の著者らは考察しています。従って、こうした趣味を持つ駐在員が、現地の人々の顔の表情などから感情を読み取ることに長けていて、そのことで、異文化に対する学習意欲や知識が高まり易い状態にあったとしても不思議ではありません。皆さんも、何か趣味を持つようにすることで、従業員の気持ちが理解し易くなり、現地での経営もより行い易くなるかも知れません。


Fancourt, D., Aughterson, H., Finn, S., Walker, E., & Steptoe, A. (2021). How leisure activities affect health: a narrative review and multi-level theoretical framework of mechanisms of action. The Lancet Psychiatry, 8(4), 329-339. https://doi.org/10.1016/S2215-0366(20)30384-9
Kidd, D. C., & Castano, E. (2013). Reading literary fiction improves theory of mind. Science, 342(6156), 377-380.https://www.science.org/doi/10.1126/science.1239918 

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、東北大学客員准教授、国際経済労働研究所理事、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、産業創出学の構築に向けた研究に従事している。
この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

在庫利用のオフプライスストア「カラーズ」、KLに2号店開設

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 Shoichi(本社・大阪市)は3月15日、日本国内のアパレル余剰在庫を活用したオフプライスストア「Colors(カラーズ)」のマレーシア2号店をクアラルンプール(KL)のブキビンタンに開店した。

2号店は「スンガイ・ワン・プラザ」のLG階に所在。マレーシア1号店の「ファーレンハイト88」店と同じく、レディース商品がメインで、アパレル・服飾雑貨・コスメを低価格で販売している。また売上の一部は「助け合い0プロジェクト」の一環として現地で活動するNPO、NGOを通じ社会貢献に役立てられている。

マレーシア2号店の開業により、展開中の「カラーズ」海外店舗はマレーシア2店舗、カンボジア2店舗、ベトナム2店舗の計6店舗となった。