第497回 マレーシアの第1四半期のGDP成長率は4.2%、景気は上向きか

5月17日、統計局はマレーシアの2024年第1四半期のGDP成長率を4.2%(前年同期比)と発表しました。これは、先月発表された事前予測値の3.9%からさらに上振れしています。また、2023年は第1四半期のGDP成長率が高く(5.6%)その後低調だったので、その高い前年同期を比較対象としての4.2%という成長率は、予想外に高いものであると言えます。

4.2%成長を部門別にみると、サービス業が4.7%増(事前予測値は4.3%増)、製造業が1.9%増(同1.9%増)、鉱業が5.7%増(同4.9%増)、農業が1.6%増(同3.8%増)、建設業が11.9%増(同9.8%増)と農業と製造業以外は事前予測値を上回っています。

懸念点としては、統計局発表の月別のGDP成長率では1月(4.8%)、2月(5.0%)に対して3月は2.9%と減速している点があります。これにはサービス業の成長率が1月(5.0%)、2月(6.2%)に対して3月は3.0%と減速していることが影響しています。これには自動車販売額が3月は2.8%減となっていることが影響しているとみられます。2023年3月末が自動車販売に掛かる売上税(SST)の免除期限であったため自動車販売が急増しており、その反動であると考えられます。

3月の月別GDP成長率が3.0%となったのをみて、統計局が第1四半期のGDP成長率を事前予測値の3.9%から4.2%に「上方」修正したことからみても、3月の減速は予想外のものではなく、予想されていたよりもやや良かった、という類のものと推測できます。

5月20日に発表されたマレーシアの4月の輸出額は前年同月比9.1%増(2月0.8%減、3月0.8%減)となり、1月の8.7%以来のプラス成長となりました。ただ、1月の増加は旧正月時期のズレが関係している可能性があり、その前のプラス成長は2023年2月まで溯るので、実に1年2ヶ月ぶりのプラス成長ということもできます。不調の電子・電機産業も0.6%増と昨年8月以来9ヶ月ぶりに増加に転じ、ようやく輸出に底打ち感がでてきました。

日本経済新聞は5月20日付けで「タイGDP1.5%増に鈍化、1〜3月 東南ア景気は踊り場へ」と題した記事を掲載し、ASEAN諸国の景気が中国向け輸出の不調とインフレ圧力で踊り場にさしかかっている、と論じました。確かに、タイについては景気が減速気味ですが、少なくともマレーシアについては、不調だった2023年のトレンドから脱し、景気が上向きになってきたことが各種データから読み取れます。

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp