ジョホール経済特区、イスカンダルプテリやペンゲランが対象地域に

【ジョホールバル】 計画中のジョホール・シンガポール経済特区(JS-SEZ)開発プロジェクトについて、ジョホール州のオン・ハフィズ・ガジ首相はイスカンダル・プテリや石油コンビナートのあるペンゲランが対象地域に含まれると明らかにした。

オン・ハフィズ首相は12日に行われた州議会の質疑の中で、JS-SEZ対象地域はジョホールバル、イスカンダル・プテリ、パシル・グダン、クライ、コタ・ティンギの州内5つの自治体にまたがると言明。州と国家に社会経済的な利益をもたらすと期待される16の経済セクターへの注力を提案しており、州内の世帯収入月額1万3,000リンギを目標としていると述べた。

注力セクターとして提案されているものには、電気・電子、医療、製薬、航空、特殊化学品、物流、保健・教育、金融・ビジネスサービス、エネルギー、デジタルエコノミー、観光、食品、農業技術、クリエイティブ、ハラル(イスラムの戒律に則った)産業などが含まれている。

JS-SEZについては、2024年1月11日にマレーシア・シンガポール間で推進覚書(MoU)が締結されており、シンガポールとの正式な交渉セッションは6月に始まる見通し。年内に両国の間で正式な合意が結ばれる予定だ。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、5月13日、フリー・マレーシア・トゥデー、ベルナマ通信、5月12日)

セランゴール州が都市計画案発表、パブリックコメントを募集

【シャアラム】 セランゴール州のアミルディン・シャリ首相は9日、2035年までの都市開発計画である「セランゴール州構造計画2035年」の修正案を発表した。第1次セランゴール計画(対象期間2021-25年)の後継計画で、州の立案、政策、戦略を連邦政府および国際水準に沿ったものにする。

第1次計画は一切変更を加えられておらず、今回が初の見直しだ。州の発展、繁栄を図るための計画で、17の戦略、73の政策、522のイニシアチブで構成する。6月9日まで掲示し、パブリックコメントを募る。

ペタリンジャヤ、シャアラム、ゴンバック、セパンのほか、北部、南部地域の開発案も計画文書に盛り込んだ。
(ザ・サン、エッジ、5月10日、フリー・マレーシア・トゥデー、5月9日)

独VWがマレーシアの域内拠点化を計画=投資貿易産業相

【クアラルンプール】 独フォルクスワーゲン(VW)がマレーシアを域内輸出拠点にすることを目指しており、マレーシア国内で電気自動車(EV)組立を行う計画だ。テンク・ザフルル投資貿易産業相がX(旧ツイッター)への投稿で明らかにした。

マレーシア法人、VWグループ・マレーシア(VGM)幹部と協議を行った際、VGM側がマレーシア国内でエンジン車およびEVを製造する意向を表明したという。ザフルル氏は「これまでVWのモデルはもっぱらマレーシアに輸入されていたが、現在は一部のモデルがマレーシアで組み立てられている。 注目すべきは、『トゥアレグ』が欧州以外で初めて国内で組み立てられていることだ」と述べた。なおどのEVモデルが組み立てられるか、いつ開始されるのかについては言及はなかった。

現在、「アルテオンRライン」、「ゴルフGTI」、「ティグアン・オールスペース・バリアント」、「トゥアレグRライン」がパハン州ペカンのハイコム工場で組み立てられている。
(ポールタン、ビジネス・トゥデー、5月9日)

【総点検・マレーシア経済】第496回 「もしトラ」のマレーシアへの影響は?

第496回 「もしトラ」のマレーシアへの影響は?

最近、「もしトラ」のワードがメディアで報じられることが多くなってきました。「もしトラ」とは、今年11月に行われるアメリカ大統領選挙でトランプ前大統領が再選されるケースをさしています。

現実味を増す第2次トランプ政権の政策の中でも注目を集めているのは、米国の貿易赤字を減らし雇用を増やすために、中国からのすべての輸入品の60%の関税を課し、さらには他のすべての国からの輸入にも一律10%の関税を課すという関税引き上げ政策です。これは、2018年7月に開始された「米中貿易戦争」で米中が交互に多くの品目について25%の関税を課す事態のエスカレート版と言えます。

マレーシアはベトナムと並んで、米中貿易戦争から「漁夫の利」を得た国と考えられています。これは、主にこれまで中国から米国に輸出されていた製品が、マレーシアやベトナムからの輸出によって代替されるために生じる利益です。実際、マレーシアの輸出は2021年、22年と2年連続で約25%増という大幅な増加を記録しました。

「もしトラ」のマレーシアへのどうなるでしょうか。アジ研ポリシーブリーフNo.189として、筆者のチームが試算した「もしトラ」の各国の影響が公開されています。それによると、全世界に対する関税が引き上げられた場合の影響は、米国のGDPが1.9%減、中国が0.9%減、日本が0.0%、ASEAN10が0.3%増などとなっています。

図は「もしとら」のマレーシアに対する影響を産業別にみたものです。中国に60%の関税が課された場合(青棒)、マレーシアのGDPに対する影響は0.5%増、特に電子・電機産業に1.2%増と大きなプラスの影響が出ています。一方で、マレーシアを含むすべての国に対しても10%の関税が課された場合(赤棒)、GDPに対する影響は0.2%増にまで減少、電子・電機産業への影響は0.1%減とマイナスに転じます。一方、農林水産業・食品加工業・その他製造業ではどちらのケースでもプラスの影響を確保しています。

このように、「もしトラ」が現実になった場合にもマレーシア経済に大きなマイナスの影響はなく、「漁夫の利」が得られるという予測が出ています。ただ、マレーシアへの10%の関税が「漁夫の利」を大きく減らすことからも分かるように、中国への制裁を対岸の火事とみていると、マレーシアを含むASEANが次の標的となる可能性は十分にあり、楽観ばかりはできないということになります。

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所海外調査員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp

「対米ドルでのリンギ相場は実体を反映せず」中銀副総裁

【クアラルンプール】 中央銀行バンク・ネガラ(BNM)のアドナン・ザイラニ副総裁は9日、「国家経済フォーラム(NEF)2024」のパネルディスカッションで、「対米ドルでのリンギ相場について多くが取りざたされ、多数がこの相場をマレーシア経済運営の指標とみなしているが、リンギの全体における位置、国内経済の強さ・先行き見通しを無視した不当な評価だ」との見解を示した。

実際、2022年初頭以降、リンギは円、台湾ドル、韓国ウォンに対し値上がりしている。しかし中国人民元、インドネシアルピア、インドルピーに対してはわずかながら値下がりした。

アドナン・ザイラニ氏は「現在は強い米ドルという循環にあり、リンギの価値が低いという話ではない」と指摘。中国経済の先行き不透明感と地政学上の危機が安全資産としての米ドルに対する需要増を招いており、米国の高金利も当分続くとした。

輸出業者も外貨保持の姿勢が強く、リンギ安の要因になっている。こうした状況を打破するため中央銀行として過度な値下がり防止を目的に市場介入を行っている。政府系企業に外貨収入の送金も働き掛けているという。

民間企業は海外における再投資の認可手続きを省くため、在外外貨を保持する傾向があるが、中銀としては本国送金を望んでおり、外貨をリンギに両替した企業には、海外における再投資に対し認可を簡略に済ませるイニシアチブを検討しているという。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、5月10日)

創価大学、国際教養学部内にマレーシア研究拠点を開設

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 創価大学(所在地・東京都八王子市)は、国際教養学部内にマレーシア研究拠点を開設し、4月25日にマレーシアのシャフリル・エフェンディ・アブドル・ガニ駐日大使を招いて開所式を開催した。開所式にはマラヤ大学、マレーシア国民大学(UKM)の関係者も参加した。

マレーシア研究拠点では、人文・社会科学の観点からマレーシアに関する研究や、教育、SDGs(持続可能な開発目標)、ダイバーシティの観点から「創価大学グランドデザイン(10カ年計画)」の達成に向けて、さまざまな取り組みを実施していく。研究には創価大学の教授、准教授に加え、マラヤ大学、UKM、マレーシア科学大学からも教授、准教授、講師が参加する。

蔦屋書店のマレーシア法人、カンボジアに6店舗出店へ

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 「蔦屋書店」などを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC、本社・東京都渋谷区)は9日、マレーシア法人ツタヤ・ブックス・マレーシアが2034年までにカンボジアで6店舗の書店を出店する計画であることを明らかにした。

ツタヤ・ブックス・マレーシアは、CCCと双日(本社・東京都千代田区)の合弁会社。このほどカンボジアでデベロッパー事業やホテル事業などを展開する、アーバン・リビング・ソリューションズ(ULS)とフランチャイズ包括契約を締結した。2034年までにカンボジア国内で「ツタヤ・ブックストア」を6店舗出店する計画だ。契約締結に伴い、2025年に首都プノンペンに1号店を開設する。

CCCは海外事業として、台湾にて「ツタヤ・ブックストア」を計11店舗、中国本土で「蔦屋書店」と「ツタヤ・ブックストア」を計12店舗、マレーシアでは「蔦屋書店」と「ツタヤ・ブックストア」を計2店舗出店している。今後もアジア太平洋地域においてビジネス強化を図って行く方針だ。

食料価格の高騰がKLの貧困層を圧迫=ユニセフ調査

【クアラルンプール】 ユニセフ(国連児童基金)は8日、2023年10月ー11月にかけ、クアラルンプール(KL)の低所得世帯755世帯を対象に実施した調査結果を発表。食費の高騰により、KLの低所得世帯の子どもが食事を満足に摂れていない現状が明らかとなった。

調査報告書によると、生活費の高騰や経済的な制約により、多くの生計維持者(40%近く)が長時間労働を余儀なくされ、支出を減らしている。調査対象の子どもの約52%が1日2食以下の食事しか摂れていなかった。90%の世帯が「生活費、特に食料品価格の上昇の影響を受けている」と答えており、約50%が「2022年よりも経済的に悪化している」と回答した。食生活は顕著に変化しており、卵、米、インスタントラーメンの消費が増加している。また、経済問題は精神的な健康にも打撃を与え、4世帯に3世帯が「生活費の高騰が精神的に影響を与えた」とした。「うつ病を患っている」と回答した世帯の割合は、2020年9月の21%から2023年10月には28%にまで増加した。

ユニセフは、貧困緩和策として、▽育児手当の支給▽障害者手当の支給▽社会的援助の拡大▽性と生殖に関する健康と権利(SRHR)に関する意識の向上▽最低賃金の引き上げ▽社会的保護の改善ーーという6つの提案を行っている。

(ザ・スター、5月9日、マレー・メイル、5月8日、ユニセフ発表資料)

通信アシアタ、インドネシア法人をシナールマス子会社と合併か

【ジャカルタ】 通信大手アシアタのインドネシア法人とインドネシアのコングロマリットであるシナール・マスの通信事業部門がインドネシア政府に合併許可を求めている模様だ。インドネシアのブディ・アリー・セティアディ通信情報技術相が明らかにした。

ブディ大臣はロイター通信の取材に対し、両社の合併により、インドネシアの通信部門は3大企業に統合されるとし、まだ協議中の段階ではあるが、規制当局としてサービスの質の向上につながる合併計画を支持すると述べた。年内にも合併が合意に達する可能性があるとしている。ロイターはアシアタとシナール・マスにコメントを求めたが、回答はなかったという。

ブルームバーグも、情報筋の話として両社の合併により35億ドルの事業体を設立する計画があると報じていた。

インドネシアの通信最大手は国営企業テルコム・インドネシア傘下のテルコムセル。カタール・香港資本のインドサットがそれに続き、アシアタの現地法人XLアシアタは第3位で、5800万人にサービスを提供している。

(ザ・スター電子版、5月8日、ロイター、4月25日)

VSTECS、米AWSのディストリビューターに認定

【クアラルンプール】 情報通信技術(ICT)製品の販売に携わるVSTECSは8日、100%子会社のVSTECS KUが米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の国内初のディストリビューターに認定されたと発表した。AWSの各種クラウド・サービスを国内で販売することが可能となる。

VSTECSのJHソーン最高経営責任者(CEO)は、AWSの認定ディストリビューターとなることで、取り扱うクラウド・サービスの幅が拡大し、プライベート、パブリック、ハイブリッドなど、クラウドのあらゆる要件に対応できるようになると言明。クラウド・ソリューションにおける同社の専門知識を通じて、あらゆる規模の企業がクラウドを活用し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させることができると述べた。

VSTECSは米マイクロソフトのノートパソコン「サーフェス」、半導体設計の米クアルコム・テクノロジーズのノートパソコンとタブレット、米スペースXが提供する衛星インターネット接続サービス「スターリンク」などの国内販売にも携わっている。

(エッジ、5月8日)