首都圏鉄道ラピッドレール、1日の利用者数が100万人突破

【クアラルンプール】 首都圏クランバレーの鉄道運営会社、ラピッド・レールは、5月29日に1日あたりの合計利用者数が初めて100万人を突破し、過去最高を記録したと明らかにした。目標を6カ月前倒しで達成した。

利用者数の内訳は、軽便鉄道(LRT)ケラナジャヤ線が28万7,102人、LRTアンパン/スリペタリン線が22万4,184人、KLモノレールが6万1,236人、大量高速輸送(MRT)カジャン線が27万4,302人、MRTプトラジャヤ線が15万7,767人で、合計100万4,591人。前年の同じ日の73万9,818人から35%も増加した。

ラピッド・レールは利用者の増加について、LRTケラナジャヤ線とMRTカジャン線の輸送量増加、不通となっていたLRTアンパン/スリペタリン線のマスジッド・ジャメ駅とバンダラヤ駅間の2月17日の復旧、沿線における新施設のオープン、スクールホリデーなどが貢献したと説明。毎日鉄道サービスを利用している首都圏の住民からの強い支持の表れだとして、利用者に感謝の意を表明した。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ザ・スター、6月1日、ベルナマ通信、5月31日)

【従業員の勤労意欲を高めるために】第876回:高齢化社会との向き合い方(3)日本の高齢者の元気が無い理由

第876回:高齢化社会との向き合い方(3)日本の高齢者の元気が無い理由

前回は、国民文化としての「男性らしさ」が高齢者差別に関係するというお話でした。

ホフステードの文化軸には「男性らしさ」を加えて全部で6つあり、そのうちの1つに「人生の楽しみ方」があります。この尺度によれば、世界は、充足的な社会と抑制的な社会に分けられます。充足的な社会は、人生を味わい、楽しむことに関わる人間の欲求を自由に満たそうとする社会です。一方、抑制的な社会は、厳しい社会規範によって欲求の充足を抑え、制限すべきだという考え方を持つ社会です。マレーシアは、97ヵ国の中で30番目に充足的な社会(68番目に抑制的な社会)であり、比較的、充足的な社会です。一方、日本は、53番目に充足的な社会(45番目に抑制的な社会)であり、比較的、抑制的な社会であるといえます(Hofstede et al., 2010)。先行研究は、充足的な社会ほど死亡率が低く(Hofstede et al., 2010)、平均寿命が長い傾向にあることを示しています(Gamlath, 2017)。この原因については、充足的な社会では、通常、主観的な幸福感が高く、また幸福であることを肯定的に捉えるため、心血管疾患などのストレス関連疾患による死亡が抑制されるためであると考えられています(ただし、充足的な社会には、ファーストフードやソフトドリンクをより多く消費する傾向があるため、肥満になる可能性が高いという負の側面があります)。

つまり、人生を楽しむ充足的な社会は、高齢者にとって生き易い社会といえます。高齢者がイキイキとした社会であれば、年齢を理由とした差別や偏見も起こり難いと考えられます。日本は健康的な食生活や高い医療技術のお陰で長寿を維持していますが、抑制的な文化がマイナスに働くことで、高齢者は、生き長らえながらも、イキイキとしていないのかも知れません。耐え忍ぶことを良しとする社会から、人生を楽しむことを良しとする社会に変わることで、高齢者が元気になり、差別を受け難くなると考えられます。

 

Gamlath, S. (2017). Human development and national culture: A multivariate exploration. Social Indicators Research, 133, 907-930. https://doi.org/10.1007/s11205-016-1396-0

Hofstede, G., Hofstede, G. J., and Minkov, M. (2010). Cultures and Organizations: Software of the Mind. Revised and expanded 3rd edition, New York: McGraw-Hill.

 

 

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、東北大学客員准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、産業創出学の構築に向けた研究に従事している。
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【イスラム金融の基礎知識】第545回:イスラム銀行の普及のカギとなるデジタル銀行

第545回:イスラム銀行の普及のカギとなるデジタル銀行

Q: イスラム式のデジタル銀行の意義は?

A: 前回(544回)は、イスラム銀行の普及に関する若者世代を対象としたアンケートについて取り上げた。その中でイスラム銀行が身近にあるかどうかが重視とされることを指摘したが、重要なのは街の銀行とともに、オンライン銀行やネット銀行、デジタル銀行といったパソコンやスマートフォンで利用できる銀行の存在である。

2024年からマレーシアでイスラム式のデジタル銀行をてがけるイオン・ ファイナンシャル・サービスは、今年1月のニュースリリースの中で「店舗を持たない銀行であり(中略)アプリ等を通じて(中略)一連の工程が完結する金融サービスを提供」する銀行としている。マレーシアでは、五つの従来型銀行とイスラム銀行が順次開業することになっており、銀行の利用率のさらに高まることに期待がかかっている。

他方イギリスでは、何らかの形でインターネットにて利用可能な銀行は、およそ100行は存在するとみられているが、このうちイスラム式のデジタル銀行の有力4銀行が知られている。すなわち、カタール資本のアル・ラヤン銀行とカタール・イスラム銀行、およびクウェート資本のゲートハウス銀行とノモ・バンクである。これらの銀行はデジタル銀行という点で共通しているものの、個人向けに特化した銀行や企業向け融資を行う銀行、預金だけでなく不動産や債券などを対象とする投資型預金を行う銀行、英ポンドだけでなく米ドルやユーロ建で預金ができる銀行、そしてアプリから海外送金ができる銀行など、それぞれの特性に合わせた個性的な銀行となっている。

デジタル銀行が身近になるには、インターネットとデバイスの普及が必須となるが、近年はいずれの国でも大幅に高まっている。様々な金融商品・サービスの提供や、色々な方法でアプローチできるアクセス方法などの多様性が、イスラム銀行の普及につながると言えるだろう。

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。

パナソニック製造、1ー3月期は2.4倍の増益

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 パナソニック・マニュファクチャリング・マレーシアは5月30日、同社2024年度第4四半期(2024年1ー3月)の売上高が前年同期比6.1%増の2億750万リンギ、純利益は前年同期比2.4倍の1,758万リンギとなったと発表した。

ラマダン(断食月)明け祝祭シーズンの中東市場や、エルニーニョ現象による高温が続くASEAN(東南アジア諸国連合)における扇風機製品の輸出拡大、中東市場への掃除機輸出拡大などが売上高アップに貢献した。純利益は売上高の向上に加え、材料費の減少、関連会社からの利益分配の増加により拡大した。

2024年度通期(2023年4月ー2024年3月)では、売上高は前年比8.7%減の9億569万リンギ、純利益は同15.6%増の9,265万リンギとなった。キッチン家電製造事業からの撤退やベトナム市場の扇風機需要の減速の影響で売上高は減少したが、材料費の減少、金利収入の増加、関連会社からの利益分配の増加が純利益増につながった。

同社は今後について、世界経済には地政学的緊張、インフレ率上昇、金融引き締めなどの下振れリスクがある一方、労働市場や貿易の回復に支えられ成長が継続すると予想。不安定な事業環境の中で事業競争力を維持するため、新製品の生産や既存製品のラインナップの拡充を行っており、生産性向上や効率化に向け、製造施設におけるテクノロジー活用を進展させると同時に、コスト削減策を継続的に実施し、収益性を改善していくとした。

スバル、東南アジア市場でのCKD事業を来年終了へ

【クアラルンプール】 スバルは5月30日、マレーシアを含む東南アジアにおける現地組立(CKD)事業を2025年に終了すると発表した。

同社とタンチョン・インターナショナル・リミテッド(TCIL)が共同で香港証券取引所に宛てた声明によると、長期的に持続可能ではないと考えられるCKDを段階的に廃止し、事業転換を行う。具体的には、タイ、ベトナム、マレーシア、カンボジア市場で、日本からの輸入完成車(CBU)販売に移行する。

スバルとTCILは、2017年にタイでのCKDに向け、合弁会社タンチョン・スバル・オートモーティブ(タイランド)(TCSAT)を設立した。マレーシアでは、タンチョン・モーター・ホールディングスの子会社タンチョン・モーター・アセンブリーズがクアラルンプールのセガンブット工場で第2世代「XV」を生産している。かつては第4世代「フォレスター」の組立も行っていた(第5世代はタイでのCKDとなっている)。

スバル車のマレーシア販売代理店であり、アフターサービスを提供するTCスバル(TCS)も、2025年より国内販売される新型スバル車はCBUとなると発表した。
TCSは声明で、スバル認定技術者の専門知識およびスバル純正部品により、全国のスバル販売店で引き続き包括的なサポートやサービスを提供していくと述べた。
(ポールタン、5月31、30日)

乳飲料のダッチレディ、新製造施設を正式開業

【クアラルンプール】 オランダ系ダッチ・レディ・ミルク・インダストリーズは30日、ネグリ・センビラン州バンダル・エンステックで5億4,000万リンギをかけて開発を行ってきた最新鋭製造施設を正式開業した。開所式には同州統治者のムフリズ殿下、ジャック・ヴェルナー在マレーシア・オランダ大使らが出席した。

新製造施設の面積はセランゴール州ペタリンジャヤにある現製造施設の3倍にあたる13.2ヘクタール。生産ライン8本を備えており、生産能力は2倍に拡大する。ハラル(イスラムの戒律に則った)に対応しているほか、インダストリー4.0テクノロジーと統合されており、マレーシアおよび域内の長期的な需要に対応している。

ラムジート・カウル・ヴィリック社長によると、7月までにフル稼働する予定。第1期開発はすでに完了しており、6月までに全従業員がペタリンジャヤ工場からの移転を終える。生産移転が順調に進めば、ペタリンジャヤ工場は第3四半期に閉鎖する。土地に余裕があるため、需要が高まれば生産能力をペタリンジャヤ工場の4倍にまで拡大できるという。
(ザ・スター、ニュー・ストレーツ・タイムズ、5月31日)

ジョホール港、グリーン認証取得PKSを日本向けに初輸出

【クアラルンプール】 コングロマリットのMMCグループの子会社であるジョホール港は、FGVパーム・インダストリーズ(FGVPI)のゴールデン・グリーン・ラベル(GGL)認証パームヤシ殻(PKS)を日本に初輸出した。

日本では、2024年4月以降に行われる燃料取引において、固定価格買取制度(FIT)・フィードインプレミアム(FIP、補助金上乗せ)制度の適用を受けている全バイオマス発電事業者に対し、第三者認証の取得を義務づけている。FGVPIは、日本輸出に向け、持続可能性、環境管理、社会的責任に関する基準を満たした企業に与えられるGGL認証を取得し、今回初輸出を行った。FGVPIは、2万トンのGGL認証PKSを月2回、日本へ出荷することを目標として掲げている。

ジョホール港のデリック・バシル最高経営責任者(CEO)は声明で、PKSは同港が扱うドライバルク貨物の一部であり、2024年はドライバルクにとって有望な年となり、取扱量が前年比で15%増加する見込みだと言明。FGVPIのような持続可能性に注力する企業を支援できることを誇りに思うとし、今後も経済成長と環境保全を促進するような協力関係を構築していきたいと述べた。
(マレーシアン・リザーブ、マレー・メイル、5月30日)

富裕層向け日本ツアー、伊勢丹マレーシアの外商顧客に販売へ

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 宿泊施設運営のカソク(本社・東京都新宿区)は30日、グループ会社のTriX(本社・東京都新宿区)が、アジアの富裕層向けラグジュアリーツアーサービス「リュクスジャパン」をリリースし、また海外投資家に対する日本国内の投資用不動産の仲介・コンサルティングサービスの提供も開始すると発表した。

「リュクスジャパン」は、三越伊勢丹ホールディングスのマレーシア現地法人イセタン・オブ・ジャパンやシンガポール国内百貨店と提携し、外商顧客への提案を強化していく。6月22―23日には伊勢丹KLCC店で開催される得意客限定イベントにブース出展する。

イセタン・オブ・ジャパンの浅子堅一郎氏は、マレーシアの富裕層である伊勢丹の外商顧客から、日本の四季や食を体験することのできる、特別感ある日本の旅行への希望が多く寄せられているとし、今回のイベントを通じて、日本の新たな魅力を再発見できるラグジュアリーツアーの機会につながることを期待していると述べた。

マレーシア味の素、土地売却益で第4四半期の利益が16倍に

【クアラルンプール】 マレーシア味の素は、同社第4四半期(2024年1―3月)決算を発表。売上は前年同期比3.3%減の1億5,276万リンギにとどまったものの、純利益は前年同期の15.8倍に当たる3億6,421万リンギに跳ね上がった。

国内および輸出市場での調味料の販売量が減少したことで売上が減少した。営業利益は前年同期の1,050万リンギを上回ったものの1,210万リンギにとどまったが、3億9,140万リンギに上る巨額な土地売却益が最終利益の大幅な押し上げに貢献した。

2024年度(2023年4月―24年3月)通年の売上は前年度比5.4%増の6億3,645万リンギ、純利益は第4四半期の巨額の土地売却益が貢献して前年の14.6倍の4億142万リンギとなった。

マレーシア味の素は今後の見通しについて、地政学的紛争が引き続き輸入コストと利益率に重くのしかかると予想。「政治およびビジネス環境の動向を注意深く監視し、事業への影響を検討し、利益率と収益性を維持するために適切な措置を講じる」と述べた。
(エッジ、5月29日、マレーシア味の素発表資料)

米グーグル、マレーシアに94億リンギを投資へ

【クアラルンプール】 米グーグルは、マレーシアに94億リンギを投資し、データセンターとグーグル・クラウドのリージョン(接続先エリア)を設立する。テンク・ザフルル投資貿易産業相が30日に発表した。

ザフルル大臣によると、本投資により全国で医療、教育、金融分野を含む2万6,500人の雇用機会が創出され、総額150億4,000万リンギの経済効果が見込まれる。
データセンターを設置するのは、サイム・ダービー・プロパティが開発するセランゴール州のエルミナ・ビジネス団地。グーグルは11カ国にデータセンターを設置しており、マレーシアは12カ国目となる。グーグル・クラウドでは41番目のリージョンとなる。

アンワル・イブラヒム首相は昨年9月の訪米時に、グーグルおよびその親会社アルファベットのルース・ポラット社長兼最高投資責任者(CIO)と会談。同11月にはグーグルとデジタル人材育成に向けた戦略的協力を行うと発表した。今年5月7日にもアンワル首相がポラット社長とオンラインで再度会談していた。

米テクノロジー大手企業は東南アジアへの投資を強化しており、マイクロソフトや半導体大手のエヌビディアもマレーシアへの投資を発表している。
(マレー・メイル、ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、エッジ、ベルナマ通信、5月30日)