【従業員の勤労意欲を高めるために】第879回:高齢化社会との向き合い方(6)高齢者が差別されない未来

第879回:高齢化社会との向き合い方(6)高齢者が差別されない未来

前回は、日本は高齢化の速度も高齢者の割合も世界最高水準であり、そのためエイジズムは強くも弱くもなり難いというお話でした。

前回の話を踏まえれば、日本のエイジズムの将来を予測することも不可能ではありません。まず、内閣府(2024)によれば、高齢化率(65歳以上の全人口に占める比率)は今後も上昇し、2020年の28.6%から2070年の38.7%へと上昇すると予想されています。一方、高齢化速度(直近10年間の高齢化率の変化)は、実は既に2010年代でピークアウトしていて、今後は大きく低下することが予想されています。そのため、図に示すように、エイジズムは、今後、高齢化速度の低下に引きずられるようにして年を経るごとに弱まるはずです。ただし、団塊ジュニア世代が高齢者入りをする2040年代に高齢化速度が一時的に高まるので、お荷物感がぶり返し、昨今、一部の識者によって発せられ物議を醸したように、高齢者への攻撃的論調が一部で復活する可能性があります。

※高齢化率と高齢化速度の単位は%で、内閣府(2024)のデータから算出。エイジズムの2010年の値はInglehartら(2014)に収録の「Older people are a burden on society(お年寄りは社会のお荷物である)」の回答を1~4点に換算して算出。他の年のエイジズムは、United Nations(2024)および World Bank(2024)に収録の59ヵ国分の高齢化率および高齢化速度データを用いてエイジズムを予測する回帰式を導出することで推計。エイジズムの推計には、回答者の当事者意識を極力排除するために60歳未満の回答データを用いた。

内閣府(2024)令和5年版高齢社会白書(全体版)、内閣府。
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2023/zenbun/05pdf_index.html

Inglehart, R., Haerpfer, C., Moreno, A., Welzel, C., Kizilova, K., Diez-Medrano, J., Lagos, M., Norris, P., Ponarin, E., & Puranen, B. et al. (eds.). (2014). World Values Survey: Round Six – Country-Pooled Datafile Version, Madrid: JD Systems Institute.
https://www.worldvaluessurvey.org/WVSDocumentationWV6.jsp

United Nations (2024). World Population Prospects 2022, United Nations.
https://population.un.org/wpp/

World Bank (2024). World Development Indicators, World Bank.
https://datatopics.worldbank.org/world-development-indicators/

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、東北大学客員准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、産業創出学の構築に向けた研究に従事している。
この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

2019年に発行のサムライ債の利息、円安で負担減少

【クアラルンプール】 マレーシア政府は2019年3月に日本で発行した10年物円建て債券(サムライ債、2,000億円)に対し、2024年3月時点で1億9,210万リンギ(64億9,000万円)の利息を支払った。財務省が下院での議員からの質問に文書で回答した。

マハティール政権時代の起債で、利率は年0.53%。日本の対外経済政策の遂行を担う国際協力銀行(JBIC)が保証する債券で、保証手数料は0.1%。マレーシアの負担は年0.63%になる。質問したのは起債当時、財務相だった民主行動党(DAP)のリム・グアンエン氏。

利払いは3月と9月の年2回で、支払額は外国為替相場に左右されるため、2022年3月以降の日本円に対するリンギ高で、同月から2024年3月までの利払い負担が軽減された。
マレーシア政府は2029年3月に利払いを終え、元本も返済する。
(エッジ、7月15日)

ハラル製品輸出、25年には650億リンギに=MATRADE

【クアラルンプール】 マレーシア外国貿易開発公社(MATRADE)によると、マレーシアのハラル(イスラムの戒律に則った)製品輸出額が2023年の540億リンギから、2025年には650億リンギに拡大する見通しだ。

英字紙「ザ・サン」のインタビューに対しMATRADEのアブ・バカル・ユソフ輸出促進担当副最高責任者(CEO)は、「世界のハラル製品市場規模は2030年までに5兆米ドル(23.3兆リンギ)に達すると予想されている。昨年のハラル市場規模は3兆米ドルだった。マレーシアがこの成長機会を生かす余地は大いにある」と言明。 「イスラム開発局(JAKIM)のハラル認証が国際ビジネス界で高く評価されているため、マレーシアは有利な立場にある」と述べた。

またアブ・バカル氏は、マレーシアが世界のハラル市場で強みを持つのは、イノベーション、研究開発の取り組み、国際パートナーとの連携によるものだと指摘。「現在、MATRADEは国内消費者だけでなく世界市場にも対応する、高付加価値食品・飲料(F&B)業界に重点を置いている」と述べ、高付加価値のF&B製品は従来の製品に比べて大幅に変化しており、先進技術を採用し、綿密な研究や品質管理も行われていると述べた。

マレーシアのハラル製品輸出の成功例にはドリアンやツバメの巣などがあり、中国が主要な消費者市場として台頭している。 マレーシアにはハラル認証を受けた企業が約1万社あり、食品・飲料部門が多くを占めている。

またマレーシアのハラル製品輸出は、中東、欧州、アジアの国々からの需要が高まっている、医薬品や化粧品などの分野でも伸びており、ハラル加工食品の輸出額は昨年300億リンギだったが、非食品も240億リンギに上ったという。
(ザ・サン、7月16日)

トランスヌサ航空、8月1日にスバン空港にジェット機就

【クアラルンプール】 インドネシアのトランスヌサ・アビエーション・マンディリ(トランスヌサ航空)は、15日からジャカルタ―スバン(スルタン・アブドル・アジズ・シャー空港)間の航空券の販売を開始した。スバン空港へのナロージェット機就航を正式に発表したのは同社が初めて。8月1日に就航する。

機材はエアバス「A320」型機を使用。デイリー1便の運航で、スケジュールは往路の「8B669」便はジャカルタ発16時10分で、スバン着が19時。復路の「8B698」便はスバン発が19時30分で、ジャカルタ着が20時30分となっている。

片道運賃は299リンギからで、チケットはトランスヌサの公式ウェブサイトまたは主要なオンライン航空券販売サイトから購入できる。

スバン空港のナロージェット機乗り入れは26年ぶりで、エアアジア、バティックエア、ファイアフライ、SKSエアウェイズの国内4社が発着枠を獲得した模様。外国の航空会社ではシンガポールの格安航空スクートが発着枠を獲得したとみられている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、7月16日、マレー・メイル、7月15日)

「アッラー」靴下問題、KKマートとサプライヤーに罰金刑

【シャアラム】 ミニマートチェーンのKKマートで、「アッラー」の文字がプリントされた靴下が販売されていた問題で、セランゴール州シャアラムの初級刑事裁判所は15日、イスラム教を侮辱したとしてKKマートを運営するKKスーパーマート&スーパーストアとサプライヤーであるシン・ジエン・チャン社に対し、それぞれ6万リンギの罰金刑を言い渡した。

一方、KKマートの創始者であるチャイ・キーカン最高経営責任者(CEO)と妻のロー・シウムイ取締役、靴下をKKマートに販売委託していた、ジョホール州バトゥパハのサプライヤー、シン・ジエン・チャン社のソー・チンフアット、ゴー・リーフアイ、ソー・フイサンの3取締役の個人の責任については免責を決定した。

問題の靴下はミラノソックというメーカーが製造し、KKマートに委託販売していたもので、くるぶしの辺りにアルファベットで「ALLAH」とプリントされていた。バンダル・サンウェイの店舗で消費者によって撮影された画像がソーシャルネット上で拡散。「イスラムに対する冒涜」といった批判の声と共に、KKマートの不買運動を呼び掛ける声も上がった。

KKマートに対してはイスラム保守派が抗議の声を上げており、何者かがKKマートの店舗に火炎瓶を投げ込む事件が3件も発生した。
(マレー・メイル、エッジ、7月15日)

UMWトヨタ、6月の販売台数は前月比9.8%減の7600台

【クアラルンプール】 UMWトヨタ・モーターは、2024年6月の新車販売台数(トヨタとレクサスの合計)が7,600台となったと発表した。

前月の8,422台からは9.8%減、前年同月比では12.3%減となった。1-6月の累計販売台数は4.7万台となり、前年同期比3.4%のダウンとなっている。

ラビンドラン・クルサミー社長は、7月には販売促進の一環として一部モデルに最大100%のローンを提供し、また、13―14日にショールームで試乗やセールを行うイベントを開催したと述べた。イベントは今後も毎月開催するとし、地域社会との交流の機会を提供していくとしている。

マレーシア自動車協会(MAA)によると、国内の自動車総需要量(TIV)は、2023年に79万9,731台と過去最高を記録し、2022年の72万1,177台を上回ったが、2024年は2023年とほぼ同水準になると予想されている。電気自動車(EV)の売上が増加すると見込まれているが、トヨタはEVを用意しておらず、また、ベストセラーであるディーゼル車のピックアップトラック「ハイラックス」が、ディーゼル補助金合理化により、打撃を受ける可能性もあると見られている。
(ビジネス・トゥデー、ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ポールタン、7月15日)

第4回セランゴール航空ショー、9月12―14日に開催

【クアラルンプール】 セランゴール州政府傘下の投資誘致機関インベスト・セランゴールは、9月12日―14日に、第4回セランゴール航空ショー(SAS2024)を開催すると発表した。

会場はシャアラムのスカイパーク地域航空センター(RAC)で、50機の航空機の静的展示が行われ、成約額は13億リンギになる見込み(昨年の展示数は49機、成約額は8億2,300万リンギ)。

出展社は、米国、英国、中国、シンガポール、ドイツ、フランス、チェコ共和国の7カ国から15社で、米シーラスや米テキストロン、仏ダッソー、カナダのボンバルディアなどの航空機メーカーが参加する。その他にもフォーラム、講演、就職フェア、子供向けアクティビティ、エアショーなどが行われる予定。45カ国以上から2万5,000人が来場すると予想されており、登録者数はすでに約1万2,000人に達しているという。

(ビジネス・トゥデー、マレーシアン・リザーブ、エッジ、7月11日)

充電ステーション設置数が直近の四半期で12.5%増

【イポー】 テンク・ザフルル投資貿易産業相は、電気自動車(EV)の充電ステーションの設置数が、第1四半期に比べてここ2、3カ月で12.5%増加していると公表。政府が取り組んでいる充電ステーション設置プロセスにおける官僚主義的手続きの撤廃が奏功したと強調した。

ザフルル氏は、以前は承認にエネルギー委員会、地方自治体、消防局など複数の省庁・機関が関与していたが、ファディラ・ユソフ副首相が議長を務める会議により、ワンストップセンターが設置されプロセスが合理化されたと指摘。「全国にEV充電ステーションを1万カ所設置する」という目標を維持しており、直流(DC)急速充電ユニットの目標を今年1,000カ所から1,500カ所に引き上げたと述べ、「DC充電器は設置コストが高いが、国民の需要が高いため不可欠だ」と強調した。

2020年に発表された「低炭素モビリティ行動計画2021―2030」では、2025年までに交流(AC)充電器9,000基、DC充電器1,000基、合計1万基のEV充電器を設置することを目指している。投資貿易産業省によると、6月25日時点でラブアンを除く全国で2,585基のEV充電器が設置されている。

(マレーシアン・リザーブ、ビジネス・トゥデー、ベルナマ通信、7月13日)

クラン港の混雑でコンテナ船の待機が長期化

【クアラルンプール】 シンガポール港湾の混雑がセランゴール州クラン港に波及しており、約20隻のコンテナ船が待機している。ジョホール州タンジョン・プルパス港(PTP)も同様に混雑している模様で、この混雑は8月以降も続き、運賃の高騰も続く見通しだ。ブルームバーグが報じた。

混雑の原因は、イスラム組織ハマスとの連帯を掲げるイエメンの反政府勢力、フーシ派による船舶への攻撃により、多数の船舶がスエズ運河を避け、アフリカの喜望峰を回るルートへの迂回を余儀なくされていることにある。待機時間の長期化はサプライチェーンに影響を与え、生活必需品の流通に大幅な遅れが生じている。

報道を受けクラン港湾局(PKA)は12日に声明を発表。過去3カ月の平均待機時間は4月が9.2時間、5月が5.7時間、6月が37.2時間だったとし、近隣港の混雑などの影響で7月15―21日の待機時間は72時間に達する見込みだと述べた。一方、混雑の改善やスケジュール変更などが見込まれるため、8月には状況が改善されるとしている。

PKAは、海運会社、輸出入業者など全関係者が協力し、計画調整を行うよう強く求めるとし、引き続き港湾の効率的な運営に尽力し、状況を注意深く監視し、最高のサービスを提供していくと述べた。

(東方日報、7月12日、マリタイムゲートウェイ、7月11日、エッジ、マレー・メイル、7月10日)

起業支援のツクリエ、マレーシア進出を目指す新興企業2社を支援へ

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 起業支援サービスのツクリエ(本社・東京都千代田区)は12日、日本から東南アジア進出を目指すスタートアップを支援するプログラム「ジャパン・プログラム・ストリーム(JCI)」の採択企業8社を選出したと発表。マレーシアコースでは2社を採択した。

JCIは、日本からインドネシア、シンガポール、ベトナム、マレーシアの東南アジア4か国への進出を目指すスタートアップを支援するプログラム。採択企業には、約7カ月にわたりインキュベーターやアクセラレーターが伴走し、事業ステージ・業種に合わせてさまざまな支援を提供する。

マレーシアコースで採択された2社のうち1社は、知能技術で、製油所、ガス工場、発電所、製鉄所など敷地が広く設備が複雑に配置されたプラント向けに点検者が見つけられない異常や経年劣化を科学的・定量的に見つける、人工知能(AI)を使ったセンサの開発製造を行っている。もう1社は、エピソテックで、手順書・マニュアルの作成に課題をもつ現場作業系事業者向けの動画・拡張現実(AR)手順書システム「ダイブ(Dive)」を提供している。その他3カ国でも2社ずつが採択された。

ツクリエは、9月には現地に渡航し東南アジアの投資関係者を招待したデモデイを開催。その後も2025年1月までの継続的なハンズオン支援・現地企業やVC等とのマッチングサポートなど充実したプログラムで、成果を出すフォローアップを行っていくとしている。