第550回:イギリスの三タイプのイスラム式住宅ローン

Q: イギリスのイスラム式住宅ローンで人気のタイプは?

A: イギリスでは、マレーシアと同様に銀行やノン・バンクからイスラム式で住宅ローンを組める。同国の情報サイトが、住宅購入プラン(HPP)と呼ばれる三つの主要な住宅ローンの特徴と違いを解説している。

イスラム金融機関は、銀行利子に代わり独自の方法を用いる。その際、伝統的な契約形態の名称がそのまま融資の呼び名に採用されている。HPPではムシャーラカ、イジャーラ、ムラーバハの三つの融資が主に用いている。

もっとも多く利用されている手法が、ムシャーラカ契約に基づくHPPだ。これは、まず初めに金融機関と利用者が住宅を共同購入し、その後利用者が金融機関の持分を分割で買い取ることにより、完済後に住宅は利用者のものになる。共同購入時に住宅価格の一部を利用者が負担することで、結果的に頭金として機能するが、住宅価格の5%から20%を利用者が最初に支払うのが標準的とされる。

次に利用されるのがイジャーラ契約に基づくHPPだ。これは、イスラム金融機関が購入した住宅を利用者にリースするもので、利用者からみれば賃貸に相当する。この方法では、利用者は対象住宅を所有できない。ただし、賃貸期間後に中古住宅として利用者が買い取ることも可能である。この方法は、マレーシアではAITABと呼ばれている。

3番目の方法がムラーバハ契約に基づくHPPだ。これは、イスラム金融機関が住宅を購入し、購入原価に金融機関の利益を上乗せした価格で、利用者に割賦販売を行う方法である。イギリスでは、この方式は商業用地・不動産開発に用いられる一方、個人向け住宅で用いられることは多くないという。

イギリスではムシャーラカ融資が主流だが、マレーシアではムラーバハ融資が中心だ。同じ東南アジアでも、インドネシアではどちらかといえばイギリスに近い。国や地域によって、考え方や特性に差があるようだ。

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。