ジョホール港、8月にコンテナ取扱量10万TEUを突破

【クアラルンプール】 ジョホール港の運営を手がけるMMCグループ傘下のジョホール・ポートは、8月にコンテナ取扱量が10万2,324TEU(20フィート標準コンテナ換算)となり、2019年7月の9万9,039TEUを抜いて月間取扱量の最高記録を更新した。

今年年初8カ月(1―8月)の累計取扱量は69万8,914TEUとなり、前年同期比15.7%の大幅増となった。ジョホール・ポートは、ジョホールにおける貿易活動の増加とジョホール港のサービスレベルの向上を反映していると分析。向こう5年間で10億リンギ以上の設備投資を割り当て、インフラ改善と新機器購入により港湾業務の一部を自動化すると明らかにした。

デリック・バシル最高経営責任者(CEO)は、同港が毎日平均1,700人の外部運送業者を管理し、ヤード利用率が最大120%に達したとした上で、同港の貨物処理能力および地元の輸出入業者や産業を支援する能力を示したと述べた。

マレーシア運送業者協会のズルファリク・アブドル・マナップ副会長は、貨物量の急増によりジョホール港を利用する運送業者の数が増えたにもかかわらず、トラックターンアラウンドタイム(TTT=トラックが港に着いてから荷積み・荷下ろしを終えて港を出るまでの時間)は適切に管理され、ほぼすべてのトラックのTTTが45分未満だったと述べた。

(ザ・スター、9月6日)

来年度予算はインフレ抑制と生活費対策に重点=アンワル首相

【ポート・ディクソン】 アンワル・イブラヒム首相は8日、2025年度予算について、インフレ抑制や生活費の上昇に対処する戦略を優先する考えを明らかにした。

ロシアへの公式訪問を終えたアンワル首相は、ロシアのインフレ率は8%である一方、マレーシアのインフレ率は2%と、タイ、インドネシア、シンガポールなどの近隣諸国よりも低く、また安定していると強調。ただし一部の食品部門では3―3.5%となっているため、10月に発表する予算案では、生活費対策に重点を置くと述べた。政府運営でも無駄な出費の削減に向け取り組みを行っていくとしている。

統計局の発表によると、今年5―7月の消費者物価指数(CPI)は、前年同期比2.0%増にとどまっており、特にインフレ率を押し上げているのは、外食・宿泊(3.4%)、家賃・光熱費および雑品・サービス(3.2%)となっている。
(ザ・スター電子版、ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ベルナマ通信、9月8日)

フォレストシティ、マレーシア部門の下に移管

【クアラルンプール】 経営難の中国系デベロッパー、碧桂園控股(カントリー・ガーデン)は先ごろ、ジョホール州で進めている人工島プロジェクト「フォレスト・シティ」を、新たに設立したマレーシア部門の下に正式に移管した。

経済紙「ビジネスタイムズ」によると、「フォレスト・シティ」をマレーシア部門の下に位置づけることにより、同プロジェクトを中国の親会社である碧桂園控股の財務問題から切り離し、間断なく開発を進めることを保証することが狙いだとみられる。「フォレスト・シティ」の現地マネジメントを手掛けるカントリー・ガーデン・パシフィックビュー(CGPV) は、3人の取締役の下で今後、碧桂園控股からの直接的な影響を受けずに現地当局や利害関係者とプロジェクトに関する交渉を担当するという。新設のマレーシア部門は、専用のリソースと地域密着型体制により、「フォレスト・シティ」の開発を継続するとみられる。

ロイターによると、碧桂園控股は2023年、110億ドルのオフショア債券の債務不履行に陥り、オフショア債務の再編を進めているが、同社の株式は4月2日から取引停止となっている。

(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、9月4、6日、ロイター、9月5日)

【従業員の勤労意欲を高めるために】第882回:高齢化社会との向き合い方(9)孤立している高齢者ほどICTを利用しないというジレンマ

第882回:高齢化社会との向き合い方(9)孤立している高齢者ほどICTを利用しないというジレンマ

前回は、ICTの普及により高齢者が犯罪に巻き込まれるリスクが高まるというお話でした。ICTの健全な普及のためには、高齢者への適切な教育や、家族や職場の上司などの周りの人間との信頼関係の構築が必要です。

このようなリスクが伴うものの、前々回に述べたように、ICTには高齢者の孤立を防ぐという良い面があります。しかし、高齢者はしばしばICTの利用を避けます。高齢者がICTを避ける理由についての代表的な議論は、彼らの身体の衰えに関するものです。年齢による身体の変化は、テクノロジーに対する理解や使用を困難にします。例えば、認知機能の低下は、日常活動のパフォーマンスの低下と関連しているため、高齢者による新技術の受け入れに悪影響を与える可能性があります。また、高齢者に多く見られるうつ病は、否定的な感情を高め、新技術への適応を阻害する可能性があります。こうした条件が重なれば、高齢者は、ICTをうまく使えず、そのことに恥ずかしさを感じ、自信が低下し、不安が増大することで、ますます、ICTの使用を避けるようになります。

しかし、加齢による身体の衰えだけが高齢者のICT利用にとっての障壁ではないようです。むしろ、先行研究は、ICT利用に悪影響を与える主な要因が、自己効力感やソーシャルキャピタルの欠如であることを主張しています。すなわち、ICT利用をサポートしてあげられる子や孫などが同居していなかいことで、或いは、ICTを上手く使えているという実感や、ICTの利用により生活が改善されているという実感が得られないことで、高齢者はICT利用に対する意欲を簡単に失います。一方、既存のソーシャルサポートがある高齢者は、ICTのメンテナンスやトラブルシューティングの支援を受け易く、そのため、ICTを多く使用する傾向にあります。
すなわち、現代社会には、孤立している高齢者ほど、孤立を防ぐ可能性のあるICTを利用しないというジレンマがあります。この状況を乗り越えるための方法について、次回考えてみましょう。

Kokubun, K. (2024). How to Popularize Smartphones among Older Adults: A Narrative Review and New Perspectives, Preprints, 2024081157. https://doi.org/10.20944/preprints202408.1157.v1

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、東北大学客員准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、産業創出学の構築に向けた研究に従事している。
この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

 

【総点検・マレーシア経済】第504回 ブミプトラ経済変革計画2035(PuTERA2035)とは何か(1)

第504回 ブミプトラ経済変革計画2035(PuTERA2035)とは何か(1)

マレーシア政府は2024年8月19日に、ブミプトラの経済的地位向上を目指す包括的な計画として「ブミプトラ経済変革計画2035(PuTERA2035: Pelan Transformasi Ekonomi Bumiputera 2035)」を発表しました。この計画は2035年までの約10年間で実施され、ブミプトラの経済参加・所有・支配を拡大し、他の民族との経済格差を縮小することを目的としています。

2023年9月、アンワル首相は第12次計画の中間レビューに際して24年初にブミプトラ経済会議を開催し、ブミプトラ政策の新しい方向性を決めると予告していました。実際には2024年2月29日~3月2日にかけてブミプトラ経済会議が開かれ、今回のPuTERA2035の発表に至りました。

マレー系などの先住民を優遇するいわゆる「ブミプトラ政策」は、新経済政策(NEP: 1971〜1990年)によって開始されました。その後も、国家開発計画(NDP: 1991〜2000年)、国家ビジョン計画(NVP: 2001〜2010年)と、後継の政策が定められました。

ナジブ政権下で定められた新経済メカニズム(NEM: 2011〜2020年)では、ついに本文中でブミプトラ政策を批判する文言が登場しました。しかし、2013年5月の第13回総選挙でナジブ政権が華人の支持を失ったことで政策は大きく転換され、9月にはブミプトラ経済エンパワーメント・アジェンダが発表され、ブミプトラ政策は強化されました。

その後、2019年にマハティール政権下で繁栄の共有ビジョン(Shared Prosparity Vision: 2021〜2030)が発表されましたが、政権交代が続いたことで位置づけが曖昧になりました。そうした中で、今回、ブミプトラの経済政策に特化した計画として、PuTERA2035が発表されたことになります。

アンワル首相は前文で同計画は「ブミプトラ社会のための排他的な経済計画ではない。むしろ、この計画は、疎外された大多数の人々の経済を推進するのに役立つ」と述べています。また、「ブミプトラ関連の政策は…決してインド人、華人、ましてやオラン・アスリやサバ、サラワクのブミプトラの利益を軽視するものではありません」とコメントしています。

PuTERA2035の中にはブミプトラの経済的プレゼンスについての数値目標が多く上げられていますが、その多くは他の民族にかかわらずブミプトラの水準を引き上げることを目指すものです。ただし、いくつか他の民族との分配の問題に関係するものがあり、具体的には以下の3つです:

・ブミプトラの高度技能職従事率を2022年の61%から2035年に70%に引き上げる

・ブミプトラ個人および機関による株式所有比率を2020年の18.4%から2035年に30%に引き上げる

・政府系企業(GLC)および政府系投資会社(GLIC)を通じたブミプトラの参加と支配を20%に引き上げる

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所海外調査員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp

 

イスラム開発局、豚・酒なしの飲食店へのハラル認証義務化を検討

【シャアラム】 マレーシア・イスラム開発局(JAKIM)は、イスラムで禁忌とされる豚肉やアルコールを提供しない飲食店や食品会社に対し、ハラル(イスラムの戒律に則った)認証取得を義務化することを検討している。モハマド・ナイム・モクタル首相府相(宗教問題担当)が明らかにした。

現在、ハラル認証取得は任意であり、飲食店や食品会社にハラル認証取得を義務づける法律は存在しない。ナイム氏は、すべての飲食店にハラル認証取得を義務づけるには、いくつかの法律や法令を改正する必要があると指摘。施行するには多くの機関が関与する必要があると述べた。

その上でナイム氏は、ムスリムコミュニティは、ハラル・マレーシア・ポータルなどJAKIMが提供するプラットフォームを通じて飲食店のハラル・ステータスの確認にもっと積極的になるべきだと指摘。「消費者の意識が高まれば、飲食店経営者にハラル認証を取得するよう圧力をかけることができる」と述べた。

JAKIMは3日、ムスリムがよく利用する人気の外食チェーン6社がハラル認証を受けていないことを確認したと発表した。JAKIMが認証を取得していない飲食店として実名で挙げたのは▽ジョニーズ▽ブラックキャニオン▽ドリー・ディムサム▽ミスター・ダッカルビ▽ブンカス・カウカウ▽アヤム・ぺニェット・ベスト(4店舗を除く)――。

(フリー・マレーシア・トゥデー、9月5日)

南シナ海のEEZ内の探査は継続=アンワル首相

【ウラジオストク/クアラルンプール=アジアインフォネット】 南シナ海の排他的経済水域(EEZ)内でマレーシアが進めている石油・ガス探査について今年2月に中国から抗議文が送られてきた件で、アンワル・イブラヒム首相は、中国の主張に関係なく探査を継続する意向を示した。

ロシアを公式訪問中のアンワル首相は、マレーシアの探査活動は自国の領土内で行われており、友好関係にある中国に対して挑発的・敵対的な意図はないと強調。「我々は自国の海域で活動し、自国の領土内で石油掘削を含む経済的優位性を確保する必要がある」とした上で、「我々は(中国との)協議の可能性を否定したことはない。しかしそれは我々の領海での活動を停止しなければならないという意味ではない」と正当性を主張した。

8月29日付けで中国が抗議文を在中国マレーシア大使館に送付したと報じたのは、南シナ海を巡って中国と対立を深めるフィリピンの「デイリー・インクワイアラー」紙。これを受けてマレーシア外務省は、中国外務省との外交機密文書の漏洩があったとして調査する考えを明らかにした。

報道を受けてアンワル首相は、詳細は伏せた上で、中国がマレーシアに対して石油探査活動を停止するよう1、2通の抗議文書を送ってきたことを認めたが、マレーシア政府は引き続き北京に自国の立場を説明していくと強調した。アンワル政権は経済面を中心に親中政策をとっており、国内的には南シナ海問題では弱腰との批判にも晒されている。

南シナ海について中国は、フィリピン、ブルネイ、マレーシア、台湾、ベトナムが主張するEEZのほぼ全域の主権を主張している。国営石油会社ペトロリアム・ナショナル(ペトロナス)は、マレーシアの南シナ海のEEZ内で石油・ガス田の開発を行っており、近年、中国の巡視船と何度も接触している。

ハーグの常設仲裁裁判所は2016年、中国が主張する南シナ海の約90%に対する権利は国際法上根拠がないとの判決を下したが、中国側はこの判決を認めていない。

マレーシアでの事業拡大計画は変更なし=米インテル

【クアラルンプール】 半導体大手の米インテルは、ペナン州における新チップのパッケージングおよびテストプロジェクトを部分的に停止するとの一部報道を否定。「マレーシアにおける事業計画の変更はない」との声明を発表した。同プロジェクトは、インテルが2021年に発表したマレーシアにおける70億ドル(303億リンギ)の投資計画の一部。

インテルは2025年までに全世界で全従業員の15%に当たる1万5,000人を削減する計画を明らかにしているが、先ごろ英字紙「ザ・スター」は情報筋の話として、インテルがマレーシアだけでなく世界の他の地域でも新たな投資を再検討しているとし、ペナン投資の部分停止を報じていた。インテルはマレーシアでは1万4,000人を雇用している。

インテルのペナン事業の拡大は、ペナン工場を米国外で初となる高度な3Dチップパッケージング施設にすることを目指したもので、インテルの世界的な人員削減計画を受けたペナン州のチョウ・コンヨウ首相は、「同州における人員削減の計画についてはインテルからは何も知らされていない。同州での事業拡張計画は進められており、人員削減よりもむしろ採用を増やすと予想される」と述べていた。

インテルは1972年に米国外で初の製造施設をマレーシアに開設。ペナンはインテルにとって米国以外で最大の拠点となっている。

(エッジ、9月5日、ザ・スター電子版、9月4日)

イオンマレーシア、創立40周年を記念して植樹を実施

【クアラルンプール】 イオン・カンパニー(M)は4日、創立40周年を記念して、植樹プログラム「未来への成長の種を植える:学校に庭園を」を全国で開始した。教育省との協力によるもので、同社の地域開発と環境保全に対する取り組みの一環。

第1弾として、クアラルンプール(KL)ケポンにあるタマン・ブキマリ国民学校での植樹が行われ、約100人の生徒と30人のイオンボランティアが300本の苗木を植えた。今後全国27校でも植樹が行われ、約1万本の苗木が植えられる予定。イオンは1984年にマレーシアで事業を開始して以来、さまざまな活動を通じて55万本以上の植樹を行っている。

岡田尚也社長は、地域社会への還元という意義ある形で40周年を迎えられたことをうれしく思うとし、屋外活動は生徒たちに自然の大切さや学校・環境への貢献について学べる機会を提供すると言明。イオンは、生態系に関わるさまざまな取り組みを通じて、前向きな変化をもたらすことに引き続き尽力していくと述べた。

(マレーシアン・リザーブ、9月5日)

老舗4つ星のコンコルドホテルKL、7億リンギで売り出し

【クアラルンプール】 クアラルンプール(KL)の老舗4つ星ホテル、コンコルド・ホテルKL(客室数581室)が、隣接する土地と共に7億リンギで売り出されているもようだ。経済紙「ビジネス・タイムズ」が関係者の話として報じた。

同ホテルのオーナーは、シンガポールを拠点とするマレーシアの実業家オン・ベンセン氏。KL市中心部のジャラン・スルタン・イスマイルに面した立地にある。買い手が見つかればホテルは取り壊され、跡地で数十億リンギ規模の総合開発が予定されている。ホテルと土地は自由土地保有権付きの物件で、総面積は約4.5エーカー。

オン氏とパートナーは、他の投資に回すためホテル資産の現金化を検討しているとみられる。ただ情報筋の1人は「絶好のロケーションであるため複数の投資家が再開発に関心を示しているが、オーナーは魅力的なオファーがない限り、急いで売却するつもりはない」と話している。

1957年から1990年まで「マーリン・ホテル」として営業していた同ホテルは、1990年代半ばのKLの経済ブームの時期に、新興5つ星ホテルとの競争が激化したため、戦略的に上層階をプレミアムスイートに改装していた。

(ニュー・ストレーツ・タイムズ、9月4日)