メイバンク・イスラミック、フィリピンでイスラム銀行業務を開始

Q: メイバンク・イスラミックがフィリピンでイスラム銀行業務を開始しましたが?

A: マレーシア資本のメイバンクは8月、フィリピンのザンボアンガ支店にイスラム窓口を(イスラミック・ウィンドウ)設置した。同国にとって外国銀行によるイスラム銀行業への参入は初の事例となる。

本連載でもこれまで触れてきたように、フィリピンでは2019年にイスラム銀行法が施行され、市場が民間に解放された。これを受けて今年1月にローカル資本のCARD銀行が、初のイスラム銀行業専業支店を設けた(第535回)。また中央銀行関係者からは、CARD銀行の後に続く銀行が複数存在し、そのうちの一つがマレーシア資本のメイバンクであると示されていた(第543回)。

中央銀行やメインバンクの関係者の話によれば、今年7月にメイバンクが、イスラム銀行業を営めるイスラム銀行部門の設立許可を取得、翌8月にはザンボアンガ支店内にイスラム窓口を設置した。業務は、当面の間は普通預金と当座預金の預金業務のみとし、十分な資金が確保できたところで融資業務を行うとしている。同銀行は、ムスリムと非ムスリムの双方が利用できるとしており、支店に両者が足を運べるような形となっている。ザンボアンガ支店は、ミンダナオ島最西部のザンボアンガ空港からほど近い場所に位置する。首都マニラよりもスールー諸島やボルネオ島の方がはるかに近く、またCARD銀行のコタバト支店とは200kmほどの距離にある。

開設式でメイバンク・フィリピンのアビゲイル社長兼CEOは、「フィリピンへの進出は単に自社の利益拡大だけでなく、公明性、透明性、地域社会の福祉に対するコミットメントを示すものである」とし、ムスリムが多く住む地域でイスラム窓口が設置することの社会的意義を強調した。中央銀行は他にも市場に参入する銀行があることを明らかにしており、今後の動向にますます注目が集まるだろう。

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。