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【イスラム金融の基礎知識】第555回「マレーシアのイスラム金融の父」が死去

「マレーシアのイスラム金融の父」が死去

Q: アブドゥル・ハリム・イスマイル氏の業績は?

A: マレーシアの主要メディアが報じたところによると10月26日にバンク・イスラム・マレーシアの元社長(MD)のアブドゥル・ハリム・イスマイル氏が亡くなった。85歳だった。一部のメディアでは「マレーシアのイスラム金融の父・開拓者」と呼んでその業績を称え、その死を悼んである。

バンク・イスラムやゆかりの財団によると、アブドゥル・ハリム氏は1939年にケダ州で生まれた。1965年にマラヤ大学で経済学の学士号を取得、イギリスのオックスフォード大学では博士号を取得した。マレーシア国民大学(UKM)で教鞭をとった後、ブミプトラ銀行(後のCIMB銀行)チーフ・エコノミストに転身した。そして1983年、新設されたマレーシア最初のイスラム銀行であるバンク・イスラムの初代社長に就任した。イスラム銀行業の実務経験はなかったものの、彼がマラヤ大学で学んでいた時期は、タブン・ハッジの理論提唱者であるウンク・アブドゥル・アジズ氏が副学長に就く前(1968年就任)であり、在学時に彼からイスラム金融の薫陶を受けていただろうと推察される。

バンク・イスラムの社長に就任すると、同銀行を通じてイスラム銀行業だけでなく、イスラム式の保険会社や証券会社なども創業した。彼は、グループを通じてイスラム銀行産業からイスラム金融産業へと業務を拡大し、国内に根付かせることに尽力した。創業から市場開放までの10年間、バンク・イスラムが市場の先鞭をつける役割を果たし、1992年に社長職を辞した。

こうした業績が認められ、アブドゥル・ハリム氏は、マレーシアにおける金融やイスラムに関する様々な賞を受賞した。彼の死去に伴いバンク・イスラムの現CEOは「晩年まで、私たちへのアドバイスをとても熱心に語ってくれた」との思い出をメディアに語った。

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。
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