マレーシア人訪日者数、10月は22.0%増の5.5万人

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 日本政府観光局(JNTO)が発表した2024年10月の訪日者数統計(推計値)によると、マレーシアからの訪日者数は5万5,100人となり、前年同月比で22.0%の大幅増となった。

JNTOによると、査証免除措置による訪中旅行への人気の高まり、機材繰りなどに伴う一部航空会社の運航規模縮小などあるものの、祝日などの影響もあり、訪日外客数は10月として過去最高を記録した。 クアラルンプール―羽田間の増便などもあり、日本への直行便数は前年同月を上回った。年初10カ月の訪日者数は37万3,200人で、前年同期比23.0%増となった。

10月の世界全体の訪日者数は、前年同月から31.6%増の331万2,000人、新型コロナ前の2019年同月からは32.7%増となり、過去最高であった2024年7月の3,29万2,602人を上回り、単月過去最高を記録した。1―10月の累計では3,019万2,600人となり、過去最速で3千万人を突破した。

家電のダイソンがマレーシア業務縮小を検討、消息筋情報

【クアラルンプール】 革新的な掃除機などで知られる家電のダイソンが、ジョホール工場におけるヘアドライヤー関連業務を縮小するもようだ。消息筋の情報としてブルームバーグが伝えた。域内業務再編の一環で、ダイソンは東南アジア業務全体の見直しも進める可能性があるという。

ダイソンは声明で、生産施設の社員のうち47人をジョホールのグローバル開発キャンパスに再配備すると述べるとともに、引き続き数百万の製品を生産しているマレーシアへの投資を継続するとした。

マレーシア業務縮小の理由の一つとして考えられるのが、労働問題をめぐる同社と政府の関係悪化だ。きっかけは19年に人権活動家のアンディー・ホール氏が、ダイソンに部品を納入しているATA・IMSが移民労働者を虐待していると主張したことで、これを受けダイソンはATAからの調達を減らしたが、ATAは虐待の事実はないと主張している。

ダイソンは最近、本拠を構えるシンガポールの社員を解雇。7月には創業地の英国で社員の3分の1近くに当たる1,000人を解雇していた。
(ザ・スター、11月22日、エッジ、マレー・メイル、11月21日)

ジョホール州、金曜の礼拝休憩時間を2時間に延長

【クアラルンプール】 ジョホール州政府は、官民セクターにおいて慣例的に1時間半となっている金曜日の礼拝休憩時間を2025年1月から2時間に延長すると発表した。イスラム教徒が金曜礼拝を行えるようするための措置。オン・ハフィズ・ガジ州首相が21日の州議会における来年度予算案発表の際に明らかにした。

同州スルタン摂政のトゥンク・イスマイル皇太子が10月、現時点で金・土曜となっている週末の公休日について、25年1月1日から土・日曜に戻すと発表したことを受けたもの。オン・ハフィズ氏はこれに合わせて、同州の公共セクターの週の労働日数について、金曜日の午後を半休として4日半とすることも提案した。公共セクターの週労働日数4日半はアラブ首長国連邦(UAE)がすでに導入しているという。

オン・ハフィズ氏は、学校敷地内を含む礼拝スペースの数も増やすと言明。「ムスリム生徒が金曜礼拝を行えるよう、ジョホール州教育局(JPNJ)、イスラム宗教局などが適切な措置を講じる」と述べた。

ジョホール州では建国以前から金・土の公休が実施されていたが、当時州首相だったムヒディン・ヤシン元首相が1994年に土・日に変更。2014年にムスリムにとって金曜日が重要であることへの敬意と、イスラム教を州の宗教として認める印として再び金・土に変更されていた。現在、金・土を公休日と定めているのはジョホール州のほか、ケダ州、クランタン州、トレンガヌ州がある。
(フリー・マレーシア・トゥデー、マレー・メイル、マレーシアン・リザーブ、11月21日)

機械メーカーのCKDがクリム工場竣工、製造拠点を強化

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 機械メーカーのCKD(本社・愛知県小牧市)は21日、マレーシア子会社、CKDマレーシアを通じて、ケダ州クリム・ハイテクパークに生産工場を竣工したと発表した。東南アジア諸国連合(ASEAN)製造拠点を強化する。

新工場の敷地面積は8万7,400平方メートル、建屋面積は1万5,800平方メートル。総投資額は約40億円で、2025年4月の稼働開始を予定している。用地は2023年半ばに買収していた。空気圧機器やバルブを生産する。同日に開催した開所式にはモハマド・サヌシ州首相らが出席した。

CKDは声明の中で、ASEAN地域における機器製品の生産体制を強化し、強固なサプライチェーンで成長市場及び製造業全般のグローバル需要拡大にタイムリーに対応していくとしている。

【総点検・マレーシア経済】第509回 第2次トランプ政権の関税政策がマレーシアに与える影響は?

第509回 第2次トランプ政権の関税政策がマレーシアに与える影響は?

2024年11月の米大統領選挙において、ドナルド・トランプ前大統領が再選を決めました。トランプ次期大統領は、中国製品に対する60%~100%の関税と、その他の国々に対する10%~20%の関税を導入することを掲げています。

マレーシア経済は、2018年から始まった米中貿易戦争の「漁夫の利」を大きく受けた国の一つとされており、実際、近年は米中両国からマレーシアへの大型の投資が相次ぎ、米国向けの輸出は今年8月にシンガポール、中国を上回って国別の輸出先として首位に立ちました。これは、2007年12月以来、実に16年8カ月ぶりのことです。

こうなると、気になるのは第2次トランプ政権の関税政策がマレーシア経済に与える影響です。トランプ次期大統領は文書として公約には掲げていないものの、インタビュー等で中国製品に対して60%~100%の関税を課すことに加え、その他の国々に対しても10%~20%の関税を課すと繰り返し発言しています。

筆者の所属するアジア経済研究所の経済地理シミュレーション(IDE-GSM)チームでは、今年4月に米国が対中関税60%、その他の国に10%の関税を課す場合の国別・産業別の影響の試算を行い、11月には対中関税60%、その他の国に20%の関税が課される場合の試算を行いました。どちらのケースでも中国経済への影響はマイナス0.9%と変わらない一方で、米国経済への影響は10%関税ではマイナス1.9%、20%関税ではマイナス2.7%と、高い関税率を他国に課すほど、自国経済への影響のマイナス幅が大きくなることが示されています。

この2つのケースにおけるマレーシア経済への影響を産業別に示したものが図になります。マレーシアを含む全世界への関税が10%の場合(緑棒)、マレーシアではその他製造業(0.8%増)、食品加工業(0.7%増)、農林水産業(0.2%増)などプラスの影響を受ける産業が多く、GDP全体では0.2%増となります。これは、中国への60%関税の「漁夫の利」がマレーシアへの10%の関税のマイナスを全体としては上回っているためです。

一方で、マレーシアを含む全世界への関税が20%の場合(橙棒)、食品加工業(0.6%増)、その他製造業(0.5%増)、自動車産業(0.3%増)などはプラスの影響を受ける一方で、マレーシアの輸出の中心である電子・電機産業への影響はマイナス1.4%とかなり大きくなります。結果、GDP全体への影響はマイナス0.01%とわずかではありますがマイナスとなっています。

これらはあくまでも試算ですが、第2次トランプ政権の関税政策がマレーシア経済に正負どちらの影響を与えるかは関税率次第で、現在のところは見通せないということになります。

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp