【イスラム金融の基礎知識】第557回 グリーンピースからみたイスラム金融

第557回 グリーンピースからみたイスラム金融

Q: グリーンピースはイスラム金融をどう評価していますか?

A: グリーンピースといえば、国際的な環境保護団体であり、特定の宗教・宗派、イデオロギーに依拠せず環境保全の活動を行うNGOとして、世界的に知られている。そのグリーンピースは、イスラム金融についてどのような考え方をもっているのだろうか。11月に更新された同団体のウェブサイトに、イスラム金融についての認識を示す興味深いエッセーが掲載された。

「イスラム金融:気候変動対策のための強力な解決策」と題するエッセーでは、まずイスラム諸国における環境問題、特に水に関する問題を指摘する。すなわち、パキスタンにおける洪水、インドネシアにおける海面上昇による沿岸部の村落水没、中東・北アフリカでの干ばつ・水不足である。また、気候変動は食の安全保障の問題を生み出し、宗教実践をゆがめている。例えばソマリアでは、食糧不足がラマダン月の断食の適切な実践を妨げているとしている。

これらの課題に取り組むことができる存在として、グリーンピースはイスラム金融を挙げた。イスラム金融には、公正さ、社会的責任、環境保護を推進するイスラムの教義があり、これに基づいて金融ビジネスを展開している。その成功例の一つが、マレーシアにおけるグリーン・スクーク・インシアティブ(環境保護に取り組む企業を優先して社債を発行する取り組み)だとしている。また、2027年には世界のイスラム金融の資産残高が6.7兆米ドルに達するため、そのうち5%でも振り向けることができれば、2030年までに4,000億米ドルを環境問題への解決に向けて費やすことができるだろうと期待を寄せている。

グリーンピースは、イスラム金融を倫理的原則と地域社会への責任に根ざしている存在だととらえた上で、その独自の活動を通じて環境問題に成果を出すことに期待しているといえよう。

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。

 

アニメイトがマレーシア初店舗、ららぽーとBBCC内に

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 三井不動産が運営するクアラルンプール(KL)市の「ららぽーとブキ・ビンタンシティセンター(BBCC)」に29日、日本のアニメ専門店アニメイトが開業した。マレーシア初進出で、さらに12月には、ストリート系など3つのファッションブランドも進出を予定。来年1月のBBCC開業3周年を前に、日本の若者カルチャー発信スポットとしてますます注目が高まっている。

アニメイトはアニメやゲーム、キャラクターグッズなどを販売し、日本国内の約120店舗のほか、中国やタイなど10カ国以上でも展開している。オープン初日は、KLを拠点に活動するアイドルグループKLP48のメンバーが参加してイベントも行われた。

12月に開業するのは、日本国内で約170店舗を展開する「WEGO」、原宿を拠点とするストリートブランド「9090」、10ー20代の男女に人気の「Younger Song」。オープンを記念したセールなども予定されている。

自動車同乗者の保険加入義務化を調査=運輸省

【クアラルンプール】 運輸省は、自動車の同乗者に対する保険加入を義務付ける必要性について調査する方針だ。

連邦裁判所が今月下した控訴審判決を受けて、アンソニー・ローク運輸相が28日、記者団に語った。判決では、仕事のため保険に加入した車両が事故に遭い、同乗していた第三者が被害を受けた場合、その第三者は保険会社に補償を請求できる、とした。

ローク氏は、保険費用などに大きな影響を与えかねないとしたうえで、「道路交通法の改正が必要か見極めるため、今回の判決の影響を徹底的に調査する」と述べた。
(フリー・マレーシア・トゥデー、ニュー・ストレーツ・タイムズ、11月28日)

半島部の大規模洪水、過去10年で最悪のレベルか

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 クランタン州、トレンガヌ州を中心に半島部の6州を巻き込む大規模な洪水が発生しており、29日午後4時時点で避難民は約9万5千人、死者は3人に上った。

洪水被害は28日午前9時半時点でクランタン、トレンガヌ州のほか、ケダ、ぺルリス、ペラ、ジョホールの各州に及び、避難民の数は3万7,189人。被災者が最も多いのはクランタン州で3万582人に上った。

避難民はその後増加を続け、29日は午後4時時点で全体で9万4,778人に達した。クランタン州が6万3,761人最も多く、トレンガヌ州が2万2,511人で続いた。

国家災害管理委員会(NADMA)の議長を務めるアハマド・ザヒド副首相は28日、今年の洪水被害が2014末から2015年初頭にかけて発生した大規模な洪水被害を上回るものになるとの見通しを示した。

ザヒド氏は、東海岸の洪水多発州を中心に8万2,794人の人員が救援のために派遣されたと言明。政府は今年の北東モンスーンに備えて、全国で210万人の避難民を収容できる一時避難所(PPS)を8,481カ所確保していると述べ、クランタン州だけでも17万5,000人を収容できるPPSが448カ所、トレンガヌ州では21万4,000人を収用できるPPSが749カ所あると強調した。

数十年で最悪と言われた2014―15年の大規模洪水は、クランタン、トレンガヌ、パハン、ジョホール、ペラの5州に及び、浸水箇所の水位は最大で4メートルに達した。50万人以上が被災し、21人が死亡。経済損失は10億リンギに達した。