【イスラム金融の基礎知識】第558回 フィリピンのイスラム銀行業、CIMBなどが参入検討

第558回 フィリピンのイスラム銀行業、CIMBなどが参入検討

Q: フィリピンのイスラム銀行業の現状は?

A: フィリピンでは今年、イスラム銀行業のライセンスを取得した二つの銀行が、相次いでビジネスを開始したが、これに続く動きがあることが今月になり明らかとなった。

フィリピン中央銀行は12月3日にイスラム金融に関するセミナーを開催、その中でアリファ・アラ副総裁が、二つの銀行がイスラム銀行業のライセンス取得に関心を示していることを明らかにした。正式な申請書が提出されていないため銀行名を明言することはできないとしながらも、一つは国内で業務を行う銀行で、もう一つは海外から新規に参入を検討している銀行だとしている。

副総裁の発言を受けて、マレーシア資本のCIMBバンク・フィリピンのビジェイ・マノラハンCEOがメディアのインタビューに応じ、同銀行が前者の「すでにフィリピンに進出している銀行」であることを明かした。CIMBは従来型銀行やイスラム銀行を傘下にもつ総合金融グループで、東南アジアで積極的にビジネスを展開している。フィリピン国内では、デジタル銀行として従来型銀行業務を行っている。

CEOによれば、ライセンス取得のための書類申請はまだ行っておらず、中央銀行と予備的な協議を行う一方、イスラム銀行ビジネスの可能性について現地調査を実施していることを明らかにした。CEOによれば、フィリピン進出に際しては従来型銀行業を優先している。ただ、ムスリムが多く暮らす南部のミンダナオ島地域にも利用者がいるとしている。CEOは、スマートフォンを通じてサービスにアクセスできるため、南部地域でも顧客が獲得できていることを強調した。

中央銀行側としても、バンサモロ自治地域における銀行口座保有率は8%ほどにとどまっており、この地域を含めフィリピン全体で口座保有率を70%に高めるためにも、ムスリムにとって親和性が高いイスラム銀行ビジネスの普及に期待を寄せた。

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。

アンワル首相、デンマーク外相と2国間の関係強化など協議

【クアラルンプール】 アンワル・イブラヒム首相は11日、来馬中のデンマークのラース・ルッケ・ラスムセン外相と会談し、2国間の関係強化などを協議した。ラスムセン外相は「2国間の自由貿易の交渉再開に大いに期待している」と語った。

クアラルンプールのデンマーク大使館は2021年からコロナ禍で閉鎖していたが、今年8月に業務を再開。会談ではアンワル首相が大使館再開を歓迎した。2022年就任のラスムセン外相にとっては初のマレーシア訪問となった。

さらに、欧州連合(EU)加盟国のデンマークとして、来年マレーシアで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に積極的に協力していくとし、ラスムセン外相は「ASEANとのウィンウィンの関係を促進していきたい」と述べた。

2024年1―10月までのマレーシアとデンマークの貿易総額は、前年同期比12.9%増の21億9,000万リンギ。またマレーシアには100を超えるデンマーク企業が進出しており、2024年6月時点で製造業への投資額は22億リンギを超え、5,024人分の雇用機会を生み出しているという。
(マレー・メイル、12月12日、ベルナマ通信、12月11日)

「168パークセラヤン」の商業モール開業、放棄物件解消にめど

【クアラルンプール】 資金難などで一旦放棄されたセランゴール州セラヤンのショッピングモール、「168パークモール」が12日ソフトオープンし、開業式典に出席したンガ・コーミン住宅・地方行政相は放棄住宅プロジェクトを2030年までにゼロにするという政府目標は達成できる見通しだと述べた。

同モールは、住宅などを備えた複合施設「168パーク・セラヤン」の中核施設。4階建てで総賃貸可能面積23万5,500平方フィート、ビレッジ・グローサー、ミスターDIY、エニタイムフィットネスなどが入居する。2階にはほかにもスポーツセンターが入る。

「168パーク・セラヤン」はもともと「セラヤン・スター・シティ」として開発が始まったが、2016年、すでに680人の住宅購入者がいたにもかかわらず放棄された。その後、不動産開発業者インフラ・セギが友好的買収者(ホワイトナイト)として高等裁判所の承認を得て、2022年からプロジェクト名を改めて開発を引き継いでいた。総開発価値は11億2,000万リンギ。

「168パーク・セラヤン」にあるAーCの住宅3ブロックのうち、Cブロックは今年9月にすでに購入者に引き渡された。Aブロックは完成率75%、入居率96%、Cブロックは完成率35%、入居率45%という

住宅・地方行政省では、放棄されたプロジェクトなどの再建に向け特別タスクフォースを設置しており、 2022 年から今年10月31日までで、862件で総開発価値858億2,000万リンギのプロジェクトを救済し、10万2,808人の購入者が入居できたという。
(エッジ、ビジネス・トゥデー、12月12日)

マハティール元首相が野党連合と共闘、「マレーの敵」に対処

【プトラジャヤ=アジアインフォネット】 マハティール・モハマド元首相とムヒディン・ヤシン元首相ら野党連合・国民同盟(PN)の幹部数人が12日に記者会見を開き、「マレー人の共通の敵」である現アンワル・イブラヒム政権に立ち向かうために団結すると発表した。

同日開催された円卓会議に出席したマハティール氏は、アンワル首相率いる連立政府の下でマレー人は徐々に権利を奪われてきたと主張し、これがコミュニティを擁護するために団結するきっかけとなったと説明。「多くのマレー人が政府の捜査対象になっており、犯罪で告発されている」とし、共通の敵であるアンワル政権に立ち向かうために団結しなければならないと述べた。

記者会見にはマハティール氏、ムヒディン氏のほか、汎マレーシア・イスラム党(PAS)のイドリス・アハマド党首補らが出席した。

マハティール氏は、シンガポールと領有権を争っていたバトゥ・プテ島(シンガポール名・ぺドラ・ブランカ)に対する国際司法裁判所の裁定に対する異議申し立てを独断で取り下げ、この結果領有権を失ったとかつての閣僚数人が証言しており、批判の的に立たされている。これに対しマハティール氏は政権による自身への弾圧だと反発している。

すかいらーくHD、マレーシアでしゃぶしゃぶ店2ブランド展開へ

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 すかいらーくホールディングス(HD、本社・東京都武蔵野市)は12日、マレーシアでムスリム(イスラム教徒)向けしゃぶしゃぶ店などを展開するクリエイトリーズ・コンサルタンシー(セランゴール州)などを子会社化すると発表した。

クリエイトリーズ・コンサルタンシーとグループ会社の計3社について、株式を保有するシンガポールの企業などから来年1月の買収を予定する。買収額は非公表。グループの24年12月期の総売上高は計5億リンギ。

すかいらーくHDは現在、首都圏クランバレーでしゃぶしゃぶ店「しゃぶ葉」を5店舗展開し、中華系の家族連れらに人気だ。一方、クリエイトリーズ・コンサルタンシーグループは「すき屋」のブラントでしゃぶしゃぶ店を10年以上前から運営している。豚肉・アルコールを扱わないためムスリムに支持されており、現在13店舗を構える。すかいらーくHDはターゲットの異なる2ブランドを持つことで、調達や配送などの業務効率化を図りつつ、マレーシア国内に加え、東南アジア諸国への出店も進めていくという。