第3四半期の国内観光客数、前年比22%増=統計局

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 統計局 (DOSM) は19日、2024年第3四半期の国内観光に関する調査を発表。国内観光客数は6,626万人となり、前年同期(5,417万人)から22.3%の増となったが、前期(6,844万人)からは3.2%減少した。

観光客の支出額は256億リンギで、前年同期(201億リンギ)から27.4%増加したが、前期(281億リンギ)からは9.1%の減となった。

観光関連産業の指標では、宿泊施設は前年同期比12.9%、前期比4.2%のともにプラスになった。特に4つ星ホテルの稼働率が前年同期比4.2%、前期比で0.2%プラスとなり貢献した。5つ星のホテルは前年同期比1.1%、3つ星は0.2%それぞれ増えたが、前期比では5つ星、3つ星ともに変わらずの維持だった。

また、テーマパークは前年同期比で7.2%のマイナスで、前期比では8.3%プラス。国内空港到着者数は前年同期から3.5%、前期から5.3%ともに増加した。燃料販売は前年同期比6.3%、前期比0.6%ともに上昇した。

新たな紙幣発行は今後も継続=中銀バンクネガラ

【ジョージタウン】 マレーシア中央銀行バンク・ネガラ(BNM)は、国民の間でキャッシュレス取引が進んでいるものの、新たな紙幣発行を中止することはなく、今後も発行を続けていく意向だ。中銀が最後に新デザインの紙幣を発行したのは2012年。

中銀は、「消費者の間で電子財布やキャッシュレス取引が人気となっているが今後も現金はマレーシア経済における重要な決済手段であり続ける」と言明。新紙幣発行と適切な状態の紙幣の再流通を継続的に行うことで、国民の需要を満たすのに十分な貨幣が流通するようにする」と述べた。

マレーシア中小企業協会(SAMENTA)のSH・ヨー名誉事務局長は、「会員企業の多くがすでにキャッシュレス取引を実施しており、電子取引チャネル利便性の高さからデジタル決済が急速に普及している」と指摘。その一方で、「仮想決済には利便性、セキュリティ、コスト削減など多くの利点があるが、技術的な問題、セキュリティリスク、消費者保護の制限など、考慮すべきいくつかの欠点がある」とし、「キャッシュレス決済が物理的な通貨取引に完全に取って代わるとは考えていない」とした。

調査によると、オンライン銀行振込と電子ウォレットを最も多く利用しているのは25―35歳の年齢層。マレーシア人が最もよく利用する電子ウォレットは「タッチアンドゴー」で、通行料、駐車料金、飲食物や配達サービスのオンライン取引の決済で使われているという。
(ザ・スター、12月20日)

来年は自動車販売減の見込み、ガソリン補助削減が影響か

【ペタリンジャヤ】 金融機関は2025年の自動車販売台数が今年を下回ると予想している。ガソリン補助の部分撤廃と輸入価格(OMV)改定が影響するとみられるためだ。

CIMB証券は来年の販売台数を、今年(推定値)より4%少ない75万5,000台と予想している。一方で電気自動車販売は増加が見込めるという。

OMVは輸入された時点の自動車価格(輸送費、保険料、販売・引き渡しに伴うそのほかの費用を含む)で、マレーシア自動車協会(MAA)はOMV改定により、マレーシアで組み立てた車両の店頭価格は8-20%上昇すると予想していた。しかし改定は延期されている。

ガソリン補助の削減は電気自動車販売にはプラスで、BMW、ミニ、ポルシェ、BYD、ボルボなど多様なブランドを扱うサイム・ダービーは好業績が期待できるという。しかし政府はレギュラーガソリン消費者の85%について、補助を継続する方針で、価格が手ごろな国民車は人気を維持し、シェアはプロトン、プロドゥア2社で65%が予想されるという。

メイバンク・インベストメントは来年75万台の販売を予想している。今年の推定値(80万台)を下回るが、コロナ以前の60万―65万台を上回る。小売価格10万リンギ以下の手頃な価格帯の自動車が販売の中心になるという。
(ザ・スター電子版、12月18日、ポールタン、12月19日)

太陽鉱工が触媒回収工場を起工、東南アジア初

【クアンタン】 希土類元素化合物、ジルコニウム化合物製造販売の太陽鉱工(本社・兵庫県神戸市)はパハン州ゲベン工業団地で使用済み触媒の回収工場を起工した。運転開始は2027年第1四半期の予定。この種の施設は東南アジア初。

建設に当たるのは東洋エンジニアリングのマレーシア法人、トーヨー・マレーシアで、太陽鉱工の鈴木一史社長は「工場建設のための戦略的提携であり、環境持続性の推進と循環経済の育成における重要な一歩だ」と述べた。石油精製プラントで使用済みとなった重油脱硫触媒からモリブデンとバナジウムを抽出し回収する。同社固有の技術で、環境への影響を抑制するだけでなく、そうした希少元素の安定供給にもつながるという。

太陽鉱工の海外工場は初めて。工場は効率的な触媒回収だけでなく、環境への配慮、持続可能性でも新たな基準となることを目指す。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、12月19,20日)

サバ州に中国向け水産物航空貨物ハブ設置を計画=運輸相

【クアラルンプール】 マレーシアは中国向け主要輸出品の出荷量増加を目指しており、サバ州に冷蔵航空貨物ハブを設置して中華圏への水産物輸出を増やす計画だ。アンソニー・ローク運輸相の話として「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。

17日に開催された「マレーシア・中国サミット」に出席したローク氏は、航空貨物はサバ州の水産業を成長させるための次のステップであり、中国市場への迅速かつ直接的なアクセスを可能にすると指摘。「サバ州は多くの水産物を生産しており、中国に輸出できる水産物がたくさんある。我々は州都コタキナバルをより大規模な中国市場に商品を提供するコールドチェーン貨物ハブとして開発することを検討している」と述べた。

サバ州政府によると、同州はマレーシア国内の水産物生産高の約4分の1を占めている。サバ州水産局の最新データによると、中国本土は2022年に約1億7,400万リンギ相当の水産物を輸入し、香港は同年に4,360万リンギ相当を輸入した。
(サウスチャイナ・モーニング・ポスト、マレー・メイル、12月18日)

軽油価格変動制、給油所3500カ所で1.8億リンギの損失

【クアラルンプール】 政府による補助金制度の見直しで、今年6月にディーゼル油(軽油)が変動制になって以降、半島部にあるガソリンスタンド計3,500カ所で1億8,100万リンギの損失を被ったという。英字紙「ザ・スター」が18日、ブミプトラ・ガソリンスタンド運営者協会(ブミペダ)の報告として報じた。

ブミペダのハニー・ジュリア・ハロン事務局長は、「半島部のガソリンスタンドの約98%で損失があった。ガソリンスタンドだけでなく、自動車整備工場や販売店など今後さらに長期的な影響を及ぼす可能性がある」と述べた。

またマレーシアにおける燃料の価格は、1983年に導入された自動価格設定メカニズム(APM)を基に決められているが、これについてハニー・ジュリア氏はAPMの抜本的な見直しの必要性を指摘。「現在の経済の現実を反映するため、APMを国家の年間予算と整合させる必要がある」と強調した上で、コスト構造は米ドルに大きく影響され、ガソリンスタンドと石油会社の両方の利益率に影響を与えると付け加えた。
(ザ・スター、ポールタン、12月18日)

マレーシア人の対中感情、好意的が77%に倍増=ムルデカ調査

【クアラルンプール】 世論調査機関、ムルデカ・センターが発表したマレーシア人の対中感情に関する最新調査によると、マレーシア人の77%が中国に対して好意的だと回答し、2年前の調査の39%から大幅に改善したことが分かった。

同調査はマレーシア・中国国交樹立50周年を記念して行われたもので、全国の成人1,225人を対象に実施。内訳はマレー系52%、華人29%、インド系7%、イスラム教徒の非マレー・ブミプトラ6%、非イスラム教徒の非マレー・ブミプトラ6%だった。前回調査で67%が好意的だった華人は90%に上昇、前回28%だったマレー系も73%に大幅改善した。

両国の関係については84%が「良い」と回答。前回の70%から大幅に増加した。「悪い」は9%にとどまり、前回の20%から減少した。過去2年間で中国への印象が良くなったとの回答は62%に上り、「変わらない、もしくは悪化した」は31%にとどまった。

両国関係の方向性については、「正しい方向」が77%で、「誤った方向」は12%にとどまった。

昨今急増している中国によるマレーシア投資については、「肯定的」が82%で、「否定的」は9%にとどまった。両国の協力分野については、「デジタル経済」が20.0%と最も多く、これにインフラ開発、観光、製造、電気自動車(EV)が続いた。
(フリー・マレーシア・トゥデー、12月18日、ムルデカ・センター発表資料)

e-メタノール生産で東京ガスと協議、サラワク州首相

【東京】 サラワク州のアバン・ジョハリ首相は18日、東京ガスの技術開発拠点、横浜テクノステーションを視察し、木本憲太郎副社長から水素、e-メタノール生産について説明を受けた。州としてe-メタノール生産で東京ガスとの提携を模索するという。

e-メタノールは合成燃料の一種で、再生可能エネルギーによって得られた電力で水を分解し生成された水素と、大気中などから回収した二酸化炭素を合成した液体燃料で「二酸化炭素排出の削減に役立つ未来の重要燃料」(アバン・ジョハリ氏)として州は重要視している。

従来、メタノールは天然ガスを原料として生産される。アバン・ジョハリ氏によれば、日本におけるe-メタノール生産ではまず合成ガスの生産が必要だが、サラワク州は天然ガスが豊富で、製造工程を簡略化できるという。このためe-メタノール生産を望む日本企業は、サラワク州に工場を建設するだけでよく、複数の行程を省くことができる。生産コストもサラワク州が低いという。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ボルネオ・ポスト電子版、12月18日)

【従業員の勤労意欲を高めるために】第889回:やりがい搾取(4)なぜ努力と報酬の「バランス」が大事なのか?

第889回:やりがい搾取(4)なぜ努力と報酬の「バランス」が大事なのか?

前回は、努力と報酬の不均衡(effort-reward imbalance, ERI)ややりがい搾取と、内発的動機づけとの境界は曖昧であることを述べました。

従業員の視点から見ると、ERIはネガティブな経済行動や心身の病気と関連しており、また、やりがい搾取は搾取される人の性格と関連しています。同時に、経営者にとっても、内発的動機づけには協調性の低下などのネガティブな側面があります。これらは、個々の従業員のやりがいと努力に頼る経営は、短期的には成功するかもしれませんが、長期的に維持するのは難しいことを示唆しています。以上を踏まえて、今後は、(1)ERIややりがい搾取についての理解を深める、(2)これらが発生する可能性が高い仕事の種類を特定する、(3)ERIややりがい搾取が仕事によってどの程度許容されるのか、あるいは許容されないのかを明らかにするための研究が必要です。以下では、この3つのポイントを順番に見ていきます。

まず、多くの研究がERIとやりがい搾取がストレスを引き起こすと主張していますが、そのメカニズムは明らかにされていません。なぜ、組織では互恵性が損なわれ、不合理な不均衡が生じるのでしょうか?なぜ、重要なのは努力ではなく、努力と報酬の「不均衡」なのでしょうか?もしも仕事の「量」が大事であれば、重要なのは努力であり、報酬は関係ないはずです。ストレスの潜在的な生理学的指標として知られている毛髪コルチゾール濃度(HCC)を使用したある研究では、仕事の量の大きい労働者のHCCはERIおよび努力と相関しているが、報酬とは相関しないことが示されています。このことから、身体的負荷の大きさを原因とするストレスには、主に報酬よりも努力が関係している可能性があります。

しかし、近年では、努力や報酬だけではなく、両者のバランスが重要であると主張する研究が増える傾向にあります。たとえば、1985年から2005年の間にヨーロッパ6か国で実施された11の独立したコホート研究のデータを使用したメタアナリシスの結果は、職場でERIを経験した人々は、職場で経験したストレスに関係なく、冠状動脈性心臓病のリスクが高いことを示しました。さらに、最近の研究では、努力と報酬のバランスが取れている従業員は、過度の努力をしている従業員と比較して、さらには過剰な報酬を得ている従業員と比較して、仕事への関与が高く、生活満足度が高く、うつ病の症状が少ないことが示されています。ただし、ERIがすべての労働者に同じ影響を与えるわけではないことに注意が重要です。例えば、ある研究は、女性は男性に比べて、仕事を辞める意図に関して、報酬よりも努力に影響を受ける可能性が高いことを発見しました。

しかし、残念ながら、ほとんどの研究は、不均衡がストレスの原因であると決定論的に主張するだけで、この原因を深く掘り下げることを避けています。来週、この問題にもう少し踏み込んでみましょう。

Kokubun, K. (2024). Effort–Reward Imbalance and Passion Exploitation: A Narrative Review and a New Perspective. World, 5(4), 1235-1247. https://doi.org/10.3390/world5040063

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、東北大学客員准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、産業創出学の構築に向けた研究に従事している。
この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

来年の経済成長率、投資銀2行は4.9%を予想

【クアラルンプール】 投資銀行2行はマレーシアの2025年の国内総生産(GDP)成長率を4.9%と予想している。今年1-9月の増加率が前年同期比5.2%だったことを勘案すれば、やや減速の予想だ。

メイバンク・インベストメント・バンクは、強固な内需と、第2次トランプ政権下での貿易政策変更の可能性など外的要因との相互作用が経済の先行きに影響すると述べた。

内需面では設備投資の増加を挙げた。資本財の輸入が増加し、工業施設建設のための融資も増加している。公務員賃金引き上げなど2025年度予算に盛り込まれた所得増の措置が消費をけん引する。低所得層への交付金増額、最低賃金引き上げもプラス要因だという。

ホンリョン・インベストメント・バンクは、米国の貿易政策など外的要因をGDP予想の理由の1つに挙げた。しかし堅調な投資、補助合理化、政治状況が安定を増していることを挙げ、経済成長の基盤はより強固になったとした。
(ザ・スター電子版、ベルナマ通信、12月17日)