第559回 ヨルダン政府、イスラム銀行を通じて再生エネルギー普及に注力
Q: ヨルダン政府の再生エネルギー普及政策でイスラム銀行の役割は?
A: 住宅用ソーラーパネルと太陽熱温水器の普及に力を入れているヨルダン政府は11月、補助金を支給することを発表した。これらを購入する家庭に対して、指定の従来型銀行かイスラム銀行を通じて分割払いを行う場合、30%の補助金を支給する。年内に最大で4千台のソーラーパネルと5千台の太陽熱温水器の設置を目指しており、補助金の総額はそれぞれ850万ヨルダン・ディナール(約1,200万米ドル)と300万ヨルダン・ディナール(約400万米ドル)になるとしている。
現地の報道等によると、このプログラムに参加する銀行は、従来型銀行がカイロ・アンマン銀行、イスラム銀行がヨルダン・イスラム銀行で、補助金はエネルギー鉱物資源省の「再生可能エネルギー・エネルギー効率化基金」が拠出する。エネルギー鉱物資源省と両銀行による調印式で、サーレフ・ハラブシェ担当大臣は「ヨルダン全土に再生可能エネルギーが普及するために両銀行が貢献してくれる」と称賛した。
ヨルダンは、国土が日本の4分の1、人口は日本の10分の1ほどの小国であるが、中東にあって石油が採れない非産油国であるため、エネルギー問題が常に課題となっている国である。そのため、太陽光発電など再生可能エネルギーに早くから注目している国でもある。資料などによれば、国内発電に占める再生可能エネルギーの割合は2014年では2.9%であるが、2030年までに14%に高める目標を、政府は掲げている。この目標のために、過去9年間にわたって基金が1億ヨルダン・ディナール(約1.4億米ドル)を投じており、2017年にはシリア難民キャンプに当時としては世界最大規模の太陽光発電施設を設置した。
大臣によれば、再生可能エネルギーの利用を促進しつつ電気料金を削減することを目指しており、今回はその取り組みの一環だとしている。
福島 康博(ふくしま やすひろ) 立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。 |