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【総点検・マレーシア経済】第512回 2025年のマレーシア経済の見通しは

第512回 2025年のマレーシア経済の見通しは

2025年1月、トランプ政権が発足します。様々な点で米国の経済政策がどうなるか不透明な中、マレーシア経済の2025年はどうなるでしょうか。

マレーシア政府は2025年の経済成長率を4.5%〜5.5%と予測しています。2024年の経済成長率が5.0%を少し上回りそうな中、政府としては2024年とほぼ同様の経済成長率を見込んでいると言えます。

一方で、世界銀行は2025年のマレーシアの経済成長率を4.5%、IMFは4.7%と予測しています。これは、マレーシアの政府の予測の下限に近いものです。筆者も現在のところ、2025年のマレーシアの経済成長率は政府予測の下限か、それを少し下回るのではないかと考えています。4.2%〜4.7%程度ではないかと予想します。

理由は以下の通りです。まず、現在のマレーシア経済は民間消費が徐々に減速する中で、投資が二桁の伸びを示して経済を支えています。産業別に見ると製造業もサービス業も強いとはいえない状況の中で、建設業が20%近い伸びを示しています。世界経済についての不透明感が強まる中で、これ以上の速度で投資が伸びる可能性は低いと筆者は考えます。

そうなると、これまでのように民間消費や投資が経済を支えつつも、輸出が伸びていかなければ5%台の経済成長は難しいことになります。そこで障害となるのがトランプ政権の関税政策の不透明性です。

図1はマレーシアの国別輸出のトップ3であるシンガポール・中国・米国向けの輸出の推移です。次期大統領がトランプ氏になる可能性がでてきた10月、それが決まった11月と、米国向けの輸出が大幅に伸びていることが分かります。

図2はマレーシアの米国向けの輸出の過去3年間について比較したものです。10月は前年同月比32.5%、11月はと57.3%もの伸びを示しています。つまり、減速気味だったマレーシアの輸出が直近で持ちこたえているのは、トランプ政権の関税引き上げを見越した米国向けの輸出の「前倒し」がひとつの要因になっていることが分かります。

こうした米国向け輸出の「前倒し」はいつまでも続くものではありません。いずれ、前倒しの反動が出る時期がやってきます。つまり、2025年のマレーシアの米国向けの輸出は、通年では2024年第4四半期のように大幅に伸びることは期待できません。

本連載509回で述べたように、トランプ政権の関税政策がマレーシア経済に与える影響はそれほど大きくなることはないと考えられます。しかし、その不確実性が世界経済にマイナスに作用する中で、2025年マレーシア経済は減速気味に推移するものと考えられます。

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp
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