ジョホール州公務員、週末公休日移動に伴い1月6日を休日に

【ジョホールバル】 ジョホール州政府は、今月からの週末公休日の土・日曜への移行を円滑に行うため、1月6日を州公務員の特別振替休日とすると宣言した。6日は学校も休校となるが、実施中のマレーシア教育修了試験(SPM、高等中学卒業試験)は予定通り行われる。

州投資・貿易・消費者問題・人材委員会のリー・ティンハン議長(国政の閣僚に相当)は、移行が行われる1月第1週に6日間勤務する必要があるため、6日を公務員専用の代替休日に指定することを明確にする新たな指令を出したと説明した。

これまで金・土曜となっていた週末公休日の変更は、2024年10月に同州スルタン摂政のトゥンク・イスマイル皇太子が発表した。同州では建国以前から金・土の公休が実施されていたが、1994年に土・日に変更。ムスリムにとって金曜日が重要であることへの敬意と、イスラム教を州の宗教として認める印として、2014年に再び金・土に変更されていた。ジョホール州の再々変更により、金・土を公休日としているのはケダ州、クランタン州、トレンガヌ州だけとなる。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ザ・スター電子版、マレー・メイル、エッジ、1月2日)

軽便鉄道KLCC駅で火災、一時混乱もけが人なし

【クアラルンプール】 首都圏軽便鉄道(LRT)ケラナ・ジャヤ線KLCC駅で2日午後4時15分ごろ、火災が発生した。火はすぐに消し止められたが、列車が緊急停止し、一時的に駅が閉鎖されるなど混乱した。けが人はなかった。KLCC駅は同日午後5時半過ぎに運用を再開した。

消防レスキュー局によると、地下のポンプ配電盤付近が燃えており、詳しい原因を調べている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、フリー・マレーシア・トゥデー、マレー・メイル、1月2日)

【総点検・マレーシア経済】第512回 2025年のマレーシア経済の見通しは

第512回 2025年のマレーシア経済の見通しは

2025年1月、トランプ政権が発足します。様々な点で米国の経済政策がどうなるか不透明な中、マレーシア経済の2025年はどうなるでしょうか。

マレーシア政府は2025年の経済成長率を4.5%〜5.5%と予測しています。2024年の経済成長率が5.0%を少し上回りそうな中、政府としては2024年とほぼ同様の経済成長率を見込んでいると言えます。

一方で、世界銀行は2025年のマレーシアの経済成長率を4.5%、IMFは4.7%と予測しています。これは、マレーシアの政府の予測の下限に近いものです。筆者も現在のところ、2025年のマレーシアの経済成長率は政府予測の下限か、それを少し下回るのではないかと考えています。4.2%〜4.7%程度ではないかと予想します。

理由は以下の通りです。まず、現在のマレーシア経済は民間消費が徐々に減速する中で、投資が二桁の伸びを示して経済を支えています。産業別に見ると製造業もサービス業も強いとはいえない状況の中で、建設業が20%近い伸びを示しています。世界経済についての不透明感が強まる中で、これ以上の速度で投資が伸びる可能性は低いと筆者は考えます。

そうなると、これまでのように民間消費や投資が経済を支えつつも、輸出が伸びていかなければ5%台の経済成長は難しいことになります。そこで障害となるのがトランプ政権の関税政策の不透明性です。

図1はマレーシアの国別輸出のトップ3であるシンガポール・中国・米国向けの輸出の推移です。次期大統領がトランプ氏になる可能性がでてきた10月、それが決まった11月と、米国向けの輸出が大幅に伸びていることが分かります。

図2はマレーシアの米国向けの輸出の過去3年間について比較したものです。10月は前年同月比32.5%、11月はと57.3%もの伸びを示しています。つまり、減速気味だったマレーシアの輸出が直近で持ちこたえているのは、トランプ政権の関税引き上げを見越した米国向けの輸出の「前倒し」がひとつの要因になっていることが分かります。

こうした米国向け輸出の「前倒し」はいつまでも続くものではありません。いずれ、前倒しの反動が出る時期がやってきます。つまり、2025年のマレーシアの米国向けの輸出は、通年では2024年第4四半期のように大幅に伸びることは期待できません。

本連載509回で述べたように、トランプ政権の関税政策がマレーシア経済に与える影響はそれほど大きくなることはないと考えられます。しかし、その不確実性が世界経済にマイナスに作用する中で、2025年マレーシア経済は減速気味に推移するものと考えられます。

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp

【従業員の勤労意欲を高めるために】第890回:やりがい搾取(5)残業するホモ・サピエンス?

第890回:やりがい搾取(5)残業するホモ・サピエンス?

あけましておめでとうございます。本年も何卒宜しくお願いします。前回は、努力と報酬の不均衡(effort-reward imbalance, ERI)がストレスや病気の原因であるというお話でした。なぜでしょうか。

この問を解く手がかりは、狩猟採集で生活している先住民が、がん、心血管疾患、高血圧、2型糖尿病などのERIに伴う病気に苦しむことがほとんどないという事実にあるのかもしれません。これらの病気は、農業が私たちの生活に定着し、定住生活を送り始めた頃に発症するようになりました。ある文献によれば、私たちの脳と体は、約20万年前に現生人類であるホモ・サピエンスがアフリカに現れて以来、ほとんど変わっていません。彼らのように狩猟中心の生活を送っているのなら、報酬に見合った努力をするだけでバランスが崩れることを心配する必要はありません。お腹が空いたら生き残るために動物を攻撃し、お腹がいっぱいになると、またお腹が空くまで狩りをしません。私たちの心と体は、狩猟によって生きるようにプログラムされているのかもしれません。

しかし、我々は、しばしばこの生物学的法則に反し、近い将来に必要のない報酬を求めて努力します。例えば、組織内で良い評判を得ることが、今は重要でなくても、将来の昇進の機会に関係しているからかもしれません。あるいは、今は非効率的で時間がかかっていても、将来の海外展開のためには、グローバルな倫理基準を遵守する必要があるからかもしれません。その結果、長時間残業、休日労働など、報酬に反映される組織の期待を超える努力をしてしまい、また、疲れた心身を癒すためにアルコールや甘いものを過剰に摂取してしまい、さらなる心身の不調を引き起こしてしまうことがあります。このように、人間が作り出した社会システムに対する脆弱性が、ERIによる心身の崩壊にかかりやすい原因なのかもしれません。したがって、この未解決の問題に取り組むためには、進化生物学や脳科学など、人間の特殊性に関連するさまざまな分野の視点を取り入れる必要があるかもしれません。次回に続きます。

 

Kokubun, K. (2024). Effort–Reward Imbalance and Passion Exploitation: A Narrative Review and a New Perspective. World, 5(4), 1235-1247. https://doi.org/10.3390/world5040063

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、東北大学客員准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、産業創出学の構築に向けた研究に従事している。
この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

 

 

タワウ、サンダカン、ラハダトゥ、危険レベル2に引き下げ

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 在マレーシア日本大使館は、マレーシアの危険情報を2024年12月23日付けで更新し、サバ州東側のバンジ島及びバラムバンガン島、サンダカンからセンポルナまでの沿岸の危険レベルを3から2に引き下げると発表した。

危険レベル3は「渡航中止勧告」で、危険レベル2は「不要不急の渡航中止」。サバ州東側における、バンジ島及びバラムバンガン島を除く島嶼についてはレベル3を継続する。またサバ州東側のその他の地域についてはレベル2を維持する。

これによりタワウ、サンダカン、ラハダトゥは危険レベル2となるが、スクーバダイビングの拠点として知られるマブール島、カパライ島、シパダン島などのセンポルナ沖の島々は引き続き危険レベル3となる。

日本大使館は、サバ州東側の沿岸及びその周辺の島嶼では2020年1月以降身代金目的の誘拐事件は発生していないが、バンジ島及びバラムバンガン島を除く島嶼は依然リスクが見られると説明。バンジ島及びバラムバンガン島を除く島嶼については、暴力犯罪発生件数も減少傾向にあることから、危険レベルを引き下げるとしている。

クランタン州、全飲食事業者にハラル認証取得を近く義務化

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 クランタン州政府は、州内のすべての飲食店経営者に対し、事業免許の更新においてハラル(イスラムの戒律に則った)認証取得を義務付ける方針を明らかにした。マレー語紙「ウトゥサン・マレーシア」が報じた。具体的な実施時期は明らかにされていない。

同州イスラム開発・宣教活動・情報・地域関係委員会のアスリ・マット・ダウド議長(国政の閣僚に相当)は、コタバル市議会が最初に新たな事業免許更新要件を施行すると言明。「州内の他の地方議会もこれに倣うことになるだろう」と述べた。アスリ氏によると、2024年にはクランタン州全体でホテル、薬局、美容院を含む453の施設がハラル認証を取得した。このうち405カ所はマレー人が所有し、48カ所は非イスラム教徒が所有している。

同州マレー飲食業者協会(PERMEKA)のニック・ハッサン会長は州政府に対し、ハラル認証の義務化を2026年1月まで延期するよう要請。「多くの飲食業者は準備ができていない。当局は施行の6カ月前に発表すべき」と述べ、中小経営者にとっての懸案事項として設備改修や認証にかかる費用を含む財政上の課題を挙げた。

ハラル認証取得は1974年以来、連邦レベルでは任意となっているが、マレーシア・イスラム開発局(JAKIM)は2024年9月、イスラムで禁忌とされる豚肉やアルコールを提供しない飲食店や食品会社に対し、ハラル認証取得を義務化することを検討していることを明らかにし波紋が広がった。これを受けてアハマド・ザヒド副首相はハラル認証取得を任意とする現行制度を今後も維持していくと述べていた。

半島部の基本電気料金、7月から14%値上げ=TNB

【クアラルンプール】 マレーシア半島部の基本電気料金は7月から、1キロワット時(kWh)あたり45.62センとなる。現行(39.95セン)から14.2%の値上げ。政府系電力会社テナガ・ナショナル(TNB)が、政府のインセンティブベース規制(IBR)の枠組みのもと、2025年から2027年までの第4次規制期間(RP4)の設定として昨年12月26日に発表した。

マレーシアの電気料金は、基本料金と、燃料価格の変動に合わせて料金を調整する不均衡価格転嫁(ICPT)制度に基づく料金で構成される。基本料金は、石炭やガスの予想価格や、運営経費、収益率などを勘案しながら3年ごとに見直される。今回、規制対象事業の設備投資(CAPEX)は428.2億リンギ、運営費は207.8億リンギで、RP3の205.5億リンギと176.9億リンギから、それぞれ上昇した。また収益率は変更なく7.3%に据え置かれた。

2025年上半期(1―6月)については、エネルギー移行・水利転換省(PETRA)が先月、ICPT制度に基づく部分の料金据え置きを発表していた。基本料金部分も同様で、その差額については電力業ファンド・グループ(KWIE)を通じて賄われるという。
(フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、ベルナマ通信、12月26日)

アンワル首相新年メッセージ、「昨年は改革の序章」

【プトラジャヤ】 アンワル・イブラヒム首相は12月31日、新年メッセージを発表。昨年は改革の序章、礎の年だったとし、一段の改革推進を表明した。23年7月に打ち出した政策理念(MADANI)について、アジアで指導的経済体になるための指針、慈悲、正義に基づく経済システムを築くための指針だと強調した。

アンワル氏は、すべての政府施策が国民に支持されるとは限らないが、大多数の国民の利益を念頭に置いて政策を実行していると強調した。一例として論議を呼んだディーゼル油、電力補助の合理化を取り上げ、以前は一律補助だったため、富裕層、外国人が恩恵を受ける結果を招いたと指摘。そうした財政の漏出を抑制するためだと述べた。

低所得層に対する現金給付については、予算枠を30%、額にして30億リンギ増やし、支援総額を130億リンギにすると表明した。

演説の締めくくりにアンワル氏は国家としての団結、統治の重要性を強調。国としてのまとまり、統治を改善し、汚職を根絶して初めて、独立した、責任ある主権国家として尊敬を得ることができると述べた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ベルナマ通信、マレー・メイル、12月31日)

【イスラム金融の基礎知識】第559回 ヨルダン政府、イスラム銀行を通じて再生エネルギー普及に注力

第559回 ヨルダン政府、イスラム銀行を通じて再生エネルギー普及に注力

Q: ヨルダン政府の再生エネルギー普及政策でイスラム銀行の役割は?

A: 住宅用ソーラーパネルと太陽熱温水器の普及に力を入れているヨルダン政府は11月、補助金を支給することを発表した。これらを購入する家庭に対して、指定の従来型銀行かイスラム銀行を通じて分割払いを行う場合、30%の補助金を支給する。年内に最大で4千台のソーラーパネルと5千台の太陽熱温水器の設置を目指しており、補助金の総額はそれぞれ850万ヨルダン・ディナール(約1,200万米ドル)と300万ヨルダン・ディナール(約400万米ドル)になるとしている。

現地の報道等によると、このプログラムに参加する銀行は、従来型銀行がカイロ・アンマン銀行、イスラム銀行がヨルダン・イスラム銀行で、補助金はエネルギー鉱物資源省の「再生可能エネルギー・エネルギー効率化基金」が拠出する。エネルギー鉱物資源省と両銀行による調印式で、サーレフ・ハラブシェ担当大臣は「ヨルダン全土に再生可能エネルギーが普及するために両銀行が貢献してくれる」と称賛した。

ヨルダンは、国土が日本の4分の1、人口は日本の10分の1ほどの小国であるが、中東にあって石油が採れない非産油国であるため、エネルギー問題が常に課題となっている国である。そのため、太陽光発電など再生可能エネルギーに早くから注目している国でもある。資料などによれば、国内発電に占める再生可能エネルギーの割合は2014年では2.9%であるが、2030年までに14%に高める目標を、政府は掲げている。この目標のために、過去9年間にわたって基金が1億ヨルダン・ディナール(約1.4億米ドル)を投じており、2017年にはシリア難民キャンプに当時としては世界最大規模の太陽光発電施設を設置した。

大臣によれば、再生可能エネルギーの利用を促進しつつ電気料金を削減することを目指しており、今回はその取り組みの一環だとしている。

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。