三菱商事とサラワク州、持続可能なエネルギーで協力へ

【クチン】 三菱商事の菊地清貴常務執行役員(シンガポール支店長)が3日、サラワク州のアバン・ジョハリ首相を表敬訪問し、多様な分野における協力関係の継続を表明した。カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質的な排出量をゼロにする取り組み)に重点を置くという。州広報部が発表した。

菊池氏によれば、将来の戦略、双方にとっての利益を話し合ったが、具体的なプロジェクトは協議しなかった。

サラワク州はカーボンニュートラルにおいて東南アジアの中心地になる潜在性を持つとされており、持続可能なエネルギーの分野において、将来持つ会合において具体的協力の形を協議することになるという

三菱商事とサラワク州の協力関係は50年に及ぶ。具体的事業では、三菱商事はビントゥルの焼き畑跡地における熱帯林再生プロジェクを支援。サラワク生物多様性センターとは共同で、藻類培養設備を建設した。またサラワク州の液化天然ガス権益を保有している。
(ボルネオ・ポスト電子版、2月3日)

今年の自動車総需要量、アナリストは前年下回ると予想

【クアラルンプール】 金融アナリストらは2025年の自動車総需要量(TIV)について、81万台超と過去最高の販売台数を記録した前年を下回る73万―80万5,000台程度と予想している。

最も高い前年並みの80万5,000台と予想したのはケナンガ・インベストメント・バンク。現地組立 (CKD) 車に対する物品税免除措置の延長に伴う需要を見越したもので、CKD比率の高いダイハツ系プルサハアン・オトモビル・クドゥア(プロドゥア)がその恩恵を受ける可能性が最も高いとしている。一方で、所得上位15%(T15)や中所得層40%(M40)では、レギュラーガソリン「RON95」補助金合理化に伴い、新車購入控えや、小型車へのダウングレード、ハイブリッドを含めた電気自動車(EV)への乗り換えが進む可能性を指摘している。

逆に、前年比11%減の73万台と予想しているRHBグループは「2024年の高水準の維持が期待できるような、説得力のある要因が見当たらない」と分析。「非国産車部門で価格競争が続き、受注数が軟化しており、引き続き慎重な見通し」としている。またEV販売は成長するものの、市場はまだ小規模で全販売台数に大きな変化をもたらすほどではないとの見方を示している。

CIMB証券は前年比7%減の76万台と予測している。特に、市場の75%を占める価格が10万リンギ以下の車の需要は堅調だとし、この価格帯の車の8割が国産車、残り2割を日本と中国のブランド車が分け合っていると指摘。政策金利も安定が予測されることから「市場全体でも国産車が優位を維持し、64.5%のシェアを獲得する」と予測している。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、1月31日、エッジ、ベルナマ通信、1月28日)

新たな国境管理機関が発足、国境検問所の管理を一元的に

【セパン/ジョホールバル】 新たな国境管理機関、マレーシア国境管理・保護庁(AKPS)の発足式が2日、クアラルンプール新国際空港(KLIA)で行われた。ファディラ・ユソフ副首相は「円滑な国境管理の枠組みを構築する」と述べた。

これまで複数の政府機関が担っていた国境管理機能を一元的に引き受け、全国114カ所の国境検問所の管理を段階的に引き継ぐ。国境管理には人工知能(AI)を活用し、検問、通関をスムーズにする。初代長官はハザニ・ガザリ氏。

ファディラ副首相は「友好的で能率の良い国境を確保する。マレーシア観光年の2026年は多数の旅客の来訪が予想され、入国時に良い印象を持ってもらうよう努める」と語った。

国境管理の一元化で円滑な検問の実現を特に期待しているのがシンガポールとの国境検問所利用者で、バスを利用し第2リンク経由でシンガポールに通勤している土木技師のカレズ氏は、週末や祝祭シーズンの混雑にAKPSが有効に対処することを望むと述べた。
(ザ・スター、2月4日、ザ・サン電子版、ベルナマ通信、2月2日)

【イスラム金融の基礎知識】第561回 アフガニスタンとトルコ、イスラム銀行の連携強化

第561回 アフガニスタンとトルコ、イスラム銀行の連携強化

Q: アフガニスタンのイスラム銀行はトルコと連携を強める目的は?

A: 2021年にタリバンが政権を獲得して以来、いまだ混乱が続くアフガニスタンであるが、12月29日にアフガニスタン中央銀行が発表した声明によれば、トルコのイスラム銀行関係者による3日間のトレーニングが実施され、アフガニスタンのイスラム銀行の従業員が受講した。

アフガニスタン中央銀行の副総裁などが列席して華々しく開催された3日間のプログラムにおいては、イスラム銀行の原則や、ハナフィー法学派にもとづくイスラム法に準拠した金融商品のあり方について、集中的なトレーニングが行われた。プログラムは、トルコ参加銀行協会(トルコではイスラム銀行のことを参加銀行と呼ぶ)で指導経験があるインストラクターによって実施された。

アフガニスタン中央銀行幹部によれば、国内において利子の伴う取引はすでに全て停止されている一方で、イスラム金融商品・サービスの能力の強化も必要であることから、職員の能力強化のために今回のプログラムが実施されたという。この点に関して、従来からイスラム金融の強化を目指して各国や国際機関に支援を求めていた。IMFや世界銀行といった国際通貨機関と関係が悪化している現状では、イスラム諸国との連携を模索している。すでにカタールやイスラム開発銀行との関係は確固たるものであるが、今回の従業員の能力開発については、トルコのイスラム銀行の団体に協力を求めた。

昨年6月にアフガニスタン中央銀行が発表したところによれば、アフガニスタン通貨の対米ドルレートが安定してきていることから、イスラム式の預金残高は対前年比で4%拡大するなど順調に発展している。金融資産、とりわけ民間の預金は治安が回復し経済が安定して初めて拡大することが可能になる。今回のプログラムが、安定拡大に技術的に貢献することに期待がかかる。

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。

 

近日開業のKLGCCモール、タイの屋内遊戯施設など出店

【クアラルンプール】 今年第3四半期に開業予定のショッピングモール「クアラルンプール・ゴルフ&カントリークラブ(KLGCC)モール」には、高級スーパーのジャヤ・グローサーや、タイで人気の屋内遊戯施設「ハーバーランド・キッズプレイランド」のマレーシア1号店などの出店が予定されている。

開発を手がける不動産開発大手のサイム・ダービー・プロパティはこのほど、アンカーテナント5社との間で調印式を行った。ジャヤ・グローサーやハーバーランド以外のアンカーテナントはセカイグループ、ACEハードウェア、アジア・バレエ・アカデミー。

KLGCCモールは、クアラルンプール市西側に位置し、延床面積は60万平方フィートで、80以上のテナントが入居する。小売りや国内外の料理を楽しめる飲食店など、すでに7割近くのテナントが決まっているという。サイム・ダービーにとって、KLイーストモール、エルミナ・レイクサイド・モールに次ぐ3番目のモールとなる。既存のゴルフ場やホテル、中高層の高級住宅とともに一体的な開発を行っている。
(ザ・スター、1月24日、エッジ、1月23日)

EC運営代行のサイバーレコード、KLに拠点設立

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 EC運営代行のサイバーレコード(本社・熊本県熊本市)は1月29日、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域での事業拡大を目指し、クアラルンプール(KL)に海外初拠点を設立したと発表した。

マレーシア新会社の名称はサイバーレコード・マレーシアで、市場調査・情報収集・マーケティングを行う。ASEANにおいて幅広いサプライチェーンとテクノロジーを有する事業パートナーとともに、B2B、B2Cでの効率的なオムニチャネル販売ソリューションを日本の事業者に提供していく。また、同地域での事業を起点として、順次、他地域への事業展開を推進していく。越境事業拡大においてカギとなる海外パートナーアライアンスの拡充とマーケティング活動を推進する体制を整える。

サイバーレコードは、Eコマース及びオフライン小売市場進出で重要戦略の一つと位置づけているASEAN域内で戦略的パートナー連携を構築しつつ、同社の越境ECと商社事業を迅速に展開していくための第一歩となると指摘。日本の多様なカテゴリーの事業者とのネットワークを活かし、日本の魅力ある商材をASEAN市場に浸透するビジネスモデルを確立するとしている。

大阪万博マレーシア館、進捗率86.7%=副首相

【クアラルンプール】 4月に開幕する大阪・関西万博について、ファディラ・ユソフ副首相は1月28日、マレーシア館の建設の進捗率は現在、86.7%と明らかにした。一方で、130億リンギを目標に掲げる貿易・投資誘致額に向け取り組みを強化する必要性を強調した。

ファディラ副首相はこの日、テンク・ザフルル投資貿易産業相やファーミ・ファジル通信相らとともに大阪・関西万博の国内組織委員会の会議に出席後、進捗状況について予定通り最終段階を迎えており「今後は運営準備を中心に移行する」とソーシャルメディアに投稿した。

また、貿易・投資誘致額について、前回ドバイ万博の83億リンギを上回る、130億リンギを掲げているが、そのためには「投資貿易産業省、マレーシア投資開発庁(MIDA)、マレーシア外国貿易開発公社(MATRADE)が協力して、戦略策定の取り組みを強化する必要がある」と述べた。さらにマレーシア館への来場者として、ビジネス、非ビジネスに関わらず計約150万人の目標達成に向け、館内プログラムなどを充実させていくとしている。

万博は4月13日―10月13日までの6カ月間開催される。
(ベルナマ通信、1月28日)

ディープシークAIの影響、マレーシア政府が調査

【シャアラム/ニューヨーク】 政府は中国の人工知能(AI)開発スタートアップ、ディープシークの言語モデルがマレーシアに与える影響の調査を開始した。「政府はディープシークとそのプラットフォームに重大な注意を払っている」(ゴビンド・シン・デオ デジタル相)という。

ディープシークはオープンソースの大規模言語モデル(LLM)開発を行っており、最新の言語モデルR1は1月20日にリリースされた後、アップルのアップストア無料アプリでダウンロード数トップになり、チャットGPTのライバルとして存在感を高めている。ディープシークの強みはコストの低さ。昨年12月に発表した「V3」モデルの開発費用は推定560万ドル。一方、チャットGPTなどは開発に数億ドルを要したとされる。

米国政府はバイデン政権末期に、安全保障上の脅威を理由に、先端半導体とAI技術の対中輸出を制限した。マレーシアへの先端技術輸出も制限した。米商務省は中国への輸出が禁止された半導体をディープシークが利用していないかの調査を開始しており、消息筋によると、中国への密輸拠点としてマレーシア、シンガポールなどが取り沙汰されているという。
(エッジ、2月2日、ザ・スター、1月30日、ストレーツ・タイムズ電子版、1月27日)

【総点検・マレーシア経済】第514回 2024年のマレーシアの貿易はどう変化したか:輸出編

第514回 2024年のマレーシアの貿易はどう変化したか:輸出編

マレーシアの2024年の輸出は前年比5.7%増の1兆5077億リンギとなり、前年の8.0%減からやや持ち直しました。ただ、これには「トランプ関税」に備えた第4四半期の駆け込み輸出が含まれており、今後どうなるかは予断を許しません。連載の今回と次回では、マレーシアの2024年の米中向けの貿易がどのように変化したのかを品目別に分析していきます。

表1,表2はそれぞれ2024年のマレーシアの対米国、対中国の輸出額を上位10品目を前年との比較でみたものです。2024年のマレーシアの対米輸出は前年比23.2%増加し、国別ではシンガポールに次いで2位となり、3位の中国を上回りました。アメリカ向け輸出が通年で中国を上回ったのは2008年以来16年ぶりとなります。

品目別にみると、全般的に大きく増加していますが、記憶装置・記憶媒体の輸出が2.8倍に増えているのが目立ちます。一方で、上位10品目で唯一減少しているのが半導体デバイスで22%減となっています。内訳を詳しく見ると、太陽光パネルモジュールが33.1%と大幅減、一方で未組み立ての太陽光発電セルが58.4%増となっています。ここからは、米国の太陽光パネルに対する制裁を回避するため、マレーシアから完成品ではなく部品を米国に送っていることが読み取れます。

一方、中国向けの輸出は前年比2.2%減となりました。対中輸出は大幅に落ち込んでいるわけではありませんが、減少が目立つのは輸出額1位の集積回路で、前年比15.6%減となっています。内訳を詳しく見ると、集積回路の完成品の輸出額は前年並みなのに対し、半導体の部品は前年比57.2%減と大幅に減少しています。これは、米中対立で中国産の半導体を米国に輸出することが困難になっていることで、その生産に用いる部材のマレーシアからの輸出が大幅に落ち込んでいると推測できます。

このようにみてくると、2024年のマレーシアの米中向け輸出の変化は、米中対立と米国の通商政策に敏感に反応してたものといえます。2025年はトランプ政権下でどのような通商政策が打ち出されるか不透明で、マレーシアの米中向けの輸出もそれに対応して大きく変化する可能性があります。

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp

今年の新規株式公開、証取は60社を目標

【クアラルンプール】 ブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)のムハマド・ウマル最高経営責任者(CEO)は27日、決算発表の席上、今年は60社による新規株式公開(IPO)を見込んでいると語った。同60社の上場時の時価合計は402億リンギを予想している。

昨年のIPOは55社で、資金調達額は計74億リンギ、時価合計は314億リンギだった。55社の上場は過去19年で最多。今年は健康、エネルギー、建設、貿易など多様な分野から上場が期待できるという。注目は国内最大の港湾運営会社MMCポーツの再上場だ。

アブドル・ワヒド会長によると、1部メイン市場には既に2社が上場許可を得ており、2部ACE市場には15社の上場が決まっているという。ウマル氏は3月をもって退任する。
(ザ・スター、1月28日、ベルナマ通信、ビジネス・トゥデー、1月27日)