来年からQRコードによる入国審査を外国人にも拡大

【クアラルンプール】 政府は、2026年1月1日からQRコードによる入国審査の対象を外国人にも拡大する。サイフディン・ナスシオン内務相が4日、下院議会の答弁で明らかにした。

当初の対象となるのは、63カ国・地域の外国人。現在、パスポートを使った自動ゲートの対象国も同じく63カ国・地域のため、日本も含まれるとみられる。

QRコードと生体認証システムが組み合わされた「Myボーダーパス」というアプリを利用。パスポートを携帯する必要はあるが、審査時はパスポートは不要でQRコードの提示だけで済む。審査時間は、自動ゲートの15― 25秒に対し、5―7秒にまで短縮されるという。

現在はマレーシア国民のみが対象で、クアラルンプール国際空港(KLIA、第1ターミナル、第2ターミナル合わせ)と、ジョホール州の陸路からの入国審査場でバスとオートバイ利用者に限定して実施されている。今年1月に導入されて以来、約79万人がアプリをダウンロード。KLIAのマレーシア人利用者のうち、QRコード利用は25%、自動ゲートが60%、審査官が15%だったという。

今後、ペナン、コタキナバル、クチン、ランカウイの各空港への拡大を検討していく。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、3月4日、チャンネル・ニュース・アジア、3月6日)

イスラム開発局、外国のハラル認証機関の認定手続きを見直し

【クアラルンプール】  マレーシア・イスラム開発局 (JAKIM) は、外国のハラル(イスラムの戒律に則った)認証機関(FHCB)の認定手続きを見直し、それらの機関が世界のハラル基準に適合しているかどうか確認を行っている。

モハマド・ナイム・モクタル首相府相(宗教問題担当)は5日の下院質疑の中で、現在までに47カ国・85のFHCBに対して認定を付与しており、それらが認証したハラル商品がマレーシアに輸入されていると言明。「JAKIMはマレーシアのハラル基準が引き続き遵守されるように、FHCBの定期的な監査と検査も実施している」とし、文書監査、製造業者の施設への訪問、FHCBの継続的な監視を行っていると述べた。

その上でナイム氏は、JAKIMが行っているFHCB認定申請用のオンラインシステム「MyIHAB」の開発が最終段階にあると言明。同システムは、FHCB申請プロセスの管理における効率性と完全性を向上させることを目指しているとした。
JAKIMは先ごろ、▽中国の中国イスラム協会(CIA)▽クロアチアのハラル品質認証センター(CHQC)▽フランスのリヨン大モスク儀式協会(ARGML)――のFHCB3機関の認定を取消、これらが認証したハラル製品のマレーシアへの輸入を禁止すると発表していた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ザ・スター電子版、マレーシアン・リザーブ、3月5日)

「メナラムルデカ118」への専用道ベルフィールドトンネル開通

【クアラルンプール】 超高層ビル「メナラ・ムルデカ118」に車でアクセスするためのベルフィールド・トンネルがこのほど開通した。ビルの高層階を占める5つ星ホテル「パークハイアット・クアラルンプール」のオープンを今年第2四半期に控え、クアラルンプール(KL)の新たなランドマークとして開業準備が進んでいる。

ベルフィールド・トンネルは、クラン川沿いのジャラン・サイード・プトラとジャラン・ダマンサラの2つの入口からアクセスできる。長さ約1キロで、ビルの地下駐車場に直結した2層式専用道になっている。地下駐車場には最大8,000台分の駐車スペースがある。このトンネルにより、ビル周辺の渋滞緩和も期待されている。

ビルを運営する、政府系投資会社ペルモダラン・ナショナル(PNB)の子会社PNBムルデカ・ベンチャーズによると、パークハイアットホテルに続き、来年6月にショッピングモール「118モール」も開業を予定している。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、3月2日、ポールタン、3月5日)

【従業員の勤労意欲を高めるために】第895回:やりがい搾取(10)海外駐在員とやりがい搾取

第895回:やりがい搾取(10)海外駐在員とやりがい搾取

前回は、「許容できる不均衡を見つけるための研究」の必要性を述べました。こうした研究は、特に日本において強く求められていると考えられます。日本の付加価値に占める人件費の割合、いわゆる「労働分配率」は一貫して低下傾向にあり、とりわけ、1996~2000年から2016~2020年までの低下幅はOECD諸国の中でも上位に入るほどの大きさです(厚生労働省, 2023)。言い換えれば、今日の日本は、以前の日本よりも搾取的であり、世界の趨勢を逸脱しています。しかし、日本企業の国際競争力の低下という事情に照らせば、ある程度の賃金抑制はやむにやまれぬものであったという側面もあります。厚生労働省の分析によれば、労働分配率の低下は主に賃金の伸び悩みによるものであり、(1)先行きの不透明感による企業の内部留保の増加、(2)労働組合組織率の低下による労使間交渉力の低下、(3)産業構成・勤続年数・パート比率等の雇用者構成の変化を原因としています(厚生労働省, 2023)。

努力と報酬の不均衡(ERI)への労働者の耐性を考えるうえで、読者の皆さんのような海外駐在員の働き方を考えるのは良い出発点です。海外子会社に派遣される駐在員は、ERIに対する耐性が低い仕事の代表例といえるかもしれません。駐在員の使命は、3年から5年の任期中に本社から与えられた任務を遂行することです。駐在員に過剰な権限が与えられると、現地法人の活動が本社の意図から逸脱し、エージェント(現地子会社または駐在員)が自分の利益を優先してプリンシパル(本社)の利益を損なう、いわゆる「エージェンシー問題」が発生します。日本企業はこの問題に特に敏感であり、その結果、他の先進国の企業よりも現地化に消極的であることが知られています。また、内発的な意欲や情熱は、面白くない仕事をする人への差別や、自信過剰、協調性の欠如につながり易いことが先行研究から明らかです。

現地の文化を理解し尊重しながら現地人材と協力して働く必要がある駐在員が過剰な熱意を持っていると、 日常の管理業務に支障をきたす可能性があります。ERI、すなわち、労働条件に反映された本社の期待を超えた努力が発生する状況では、トラブルが発生し、駐在員の業務遂行能力が低下すると考えられます。しばしば取り沙汰される駐在員の不適応による健康状態の悪化、早期帰国、自殺などの問題も、ERIによって引き起こされる可能性があります。こうした問題が起きないために、日本本社は、現地に派遣する駐在員の人選に慎重を期すとともに、駐在員への期待する働き方を明確に提示して、求められる努力に相応しい待遇や労働環境を用意する必要があります。

Kokubun, K. (2024). Effort–Reward Imbalance and Passion Exploitation: A Narrative Review and a New Perspective. World, 5(4), 1235-1247. https://doi.org/10.3390/world5040063

厚生労働省(2023).令 和 5 年 版 労働経済の分析-持続的な賃上げに向けて〔概要〕令和5年9月、厚生労働省.https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/001149098.pdf

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、東北大学客員准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、産業創出学の構築に向けた研究に従事している。
この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

財政赤字3.8%の目標は守る=第2財務相

【クアラルンプール】 アミル・ハムザ第2財務相は3日、下院で補足歳出案を第2読会に付した際の演説で、政府は今年度の財政赤字を国内総生産(GDP)比で3.8%に引き下げるとの約束を守ると表明した。

アミル・ハムザ氏は「アンワル政権が成立した2022年に引き継いだ政府債務は1兆リンギだった。予算赤字を続ければ債務は増加する。マレーシアは1998年から赤字続きだが、経常支出を賄うためではなく開発事業を推進するための借り入れだった」と説明。財政責任法に示したように、28年には3%への縮小を図ると述べた。

2024年の政府債務は1兆2,000億リンギでGDP比64%。現在の政府には経常支出を賄うだけの歳入があるので、財政赤字は22年の5.5%に対し2023年は5%に縮小。2024年は4.1%で、目標の4.3%を上回った。各年の政府借り入れも減少傾向にあり、2022年の1,000億リンギに対し、2023年は926億リンギ、2024年は770億リンギだった。
(ザ・スター、3月5日、ビジネス・トゥデー、3月4日)

経済成長の勢いは持続する=IMF報告

【クアラルンプール】 国際通貨基金(IMF)理事会は、マレーシア政府との第4条協議の終了を受け、評価報告書を公表した。短期的に経済成長の勢いは続き、今年の国内総生産(GDP)増加率は4.7%が見込めるという。

IMFは、債務削減、歳出抑制を柱とする財政責任法の制定を評価。同時に、迅速かつ完全な施行を政府に要請した。財政健全化では、電力、ディーゼル油補助など補助合理化に加え、残りの燃料補助も段階的に廃止するのが望ましいとした。

消費者物価指数(CPI)でみたインフレは昨年、1.8%に低下したが、今年はガソリン補助合理化が見込まれるため、2.6%に上昇する見通しだという。経済成長は下振れリスクが大きく、その理由として、主要貿易相手国の成長鈍化、地政学上の紛争激化が挙げられるという。インフレは、世界的な一次産品価格の変動、国内要因では賃金上昇圧力など、上昇リスクが多い。

報告は、政府がとっている中立的金融政策は適切で、銀行も健全性を維持していると評価した。
(ザ・サン、ザ・スター、3月5日、ビジネス・トゥデー、3月4日)

宇宙ベンチャーの天地人、USMとインフラ評価の共同研究

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が出資するスタートアップ企業、天地人(本社・東京都中央区)は4日、マレーシア科学大学(USM)と人工知能(AI)技術と衛星データを活用したインフラ評価の共同研究についての覚書(MoU)を締結したと発表した。

天地人は衛星データとAI技術を活用し、上下水道管の漏水リスクが高いエリアを図示するマッピングサービス「宇宙水道局」を運営し、注目されている。MoUの締結で、宇宙水道局のマレーシアでの展開や、再生可能エネルギーの適地選定などを目指していく。

今回の取り組みは、経済産業省による日ASEAN経済産業協力委員会(AMEICC)の委託事業「日本のスタートアップによるASEAN企業との協業を通じた海外展開促進事業」に採択されており、MoUは2月25日に締結された。

ペナン島内の公共駐車場料金、3日から50%値上げ

【ジョージタウン】 ペナン島市議会(MBPP)は3日からの公共駐車場の料金50%値上げを決めた。長時間駐車や渋滞緩和のためで、値上げは11年ぶり。

駐車料金は、30分あたりで40センから60センに、1時間あたりで80センから1.2リンギに、1日料金は6リンギから9リンギに、それぞれ引き上げられた。ただし月極め料金は150リンギに据え置かれた。

ラジェンドラン・アンソニー市長は、「半日近く車を停めたままにする人がいて、駐車スペースを探すドライバーで渋滞が悪化している」と説明。エリアによっては駐車時間の制限を設けることも検討しているという。

また、違法路上駐車の取り締まりなどを強化。商業ビルなどの民間駐車場にも、同じ料金体系を採用するよう協力を呼びかけている。一方で、駐車スペースの拡充にも取り組んでいくとしている。
(ザ・スター、フリー・マレーシア・トゥデー、マレー・メイル、3月2日)

ジョホールのアウトレットに500台の最大級EV充電ハブ

【クアラルンプール】 ジョホール州のジョホール・プレミアムアウトレット(JPO)に500台分の電気自動車(EV)充電施設が整備される。JPOを運営するゲンティン・サイモンは、一般利用可能な施設としては東南アジア初となる出力1メガワット(MW)の充電器など、エリア最大級の急速EV充電ハブを目指す。

設置されるのは、出力280キロワットから1MWのDC(直流)急速充電器。石油・ガス(O&G)のインソン傘下のチャージEVと、ジョホール州のバス事業者ハンダル・インダーの子会社DCハンダルが協力する。すでに両社で約30基の充電器が稼働しているという。

1MW充電器は主にEVトラック向けだが、JPOと公共交通機関や入国管理事務所などを結ぶシャトルバスのEV化が計画されており、その利用も想定されている。

さらに、時間単位から借りられるEVレンタカー業者もすでに営業所を開設している。

ゲンティン・サイモンのジャン・マリー社長兼最高経営責任者(CEO)は「JPOはマレーシアやシンガポールから多くの人が訪れており、EVインフラを備えることで、ネットゼロ(二酸化炭素排出実質ゼロ)に貢献していきたい」と語った。
(ソヤチンチャウ、2月28日、モタオート、3月2日)

QRコードによる陸路での入国審査、年内に自動車にも拡大へ

【クアラルンプール】 政府は、シンガポール間の陸路でのQRコードを利用した入国審査について、現在は対象はバスとオートバイ利用者に限られているが、年内にも自動車利用者にも拡大する方針だ。ファディラ・ユソフ副首相が3日、述べた。

政府は昨年6月、陸路国境にあたるジョホール州バングナン・スルタン・イスカンダル(BSI)およびスルタン・アブ・バカル・コンプレックス(KSAB)での入国審査において、マレーシア国民はQRコードを利用できる制度を試験導入していた

ファディラ副首相はこの日、シンガポールとのコーズウェイ(連絡道)の渋滞に関する特別委員会に出席。1日50万人の越境者の80%がバイクとバスの利用者とし、QRコードの導入でバイク1台が通過するのに3秒しかかからなくなったと説明。「以前は15分間にレーンを通過できるバイクは90台だけだったが、導入後は150台が通過できるようになった」と付け加えた。

さらに、この実証実験の成功に基づき、年内には対象を自動車の利用者にも拡大。2026年にはマレーシア観光年(ビジット・マレーシア2026)も控えていることから、合わせてジョホール州だけでなく、クランタン、ペルリス、ケダの各州の入国審査や、クアラルンプール国際空港(KLIA)など国内の主要空港への拡大も検討していくとした。
(ザ・スター、3月4日、ベルナマ通信、3月3日)