第518回 マレーシアの投資の状況

3月25日、バンク・ネガラは2024年の経済・金融レビューを発表しました。これは年間の経済・金融システムの総まとめであり、バンク・ネガラが重要視するテーマについての分析も掲載されています。

その中から、今回は「マレーシアの投資サイクルの謎を解く」という記事を紹介します。近年のマレーシア経済は内需主導から投資牽引型へと変化しています。記事によると、マレーシアの投資は他のASEAN諸国と比べて長く低調でしたが、2023年後半から明らかな上昇トレンドに入りました。

マレーシアには過去に2度の投資上昇局面がありました。1度目は1980年代後半から1997年のアジア通貨危機までで、外資系製造業とインフラ建設が中心でした。2度目は2011年から2015年で、石油・ガス部門と不動産投資が主導しました。

現在の第3の投資上昇局面には3つの特徴があります:

  1. サービス部門の成長と製造業投資の拡大:今回はサービス業が68%、製造業が20%と比率が高まっています。製造業では電子・電機、光学製品、輸送機器の投資が拡大しています。
  1. 機械・設備投資の増加とインフラ開発の継続:労働者一人当たりの機械・設備投資は7.3万リンギから8.3万リンギまで増加し、産業高度化や生産性向上に貢献しています。また、交通インフラと環境関連投資も拡大しています。
  1. 民間部門投資の増加:民間投資の比率は77%に上昇し、投資認可額における外国直接投資の比率も45%に達しています。

バンク・ネガラは、投資プロジェクトのスムーズな実施による現在の上昇サイクルの維持と、投資の高度化やサプライチェーンのローカル化を通じた便益最大化を提言しています。

製造業とインフラ投資の活発化は1990年代の高成長期を彷彿とさせますが、当時と異なり輸出の大幅な伸びは見込めず、民間消費も落ち着いているため高度成長の再現は難しいでしょう。しかし、世界経済が不安定な中、こうした生産的な投資が経済を牽引し、マレーシアが今回の投資上昇サイクルの間に高所得国入りを達成できれば理想的であると筆者は考えます。

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp