【クアラルンプール=アジアインフォネット】 アブドラ・バダウィ元首相が14日午後7時ごろ、クアラルンプールの国立心臓病研究所で亡くなった。85歳だった。アブドラ氏は呼吸困難を起こして13日に入院していた。娘婿であるカイリー・ジャマルディン氏(元保健相)が明らかにした。
アブドラ氏は統一マレー国民組織(UMNO)の政治家であったアハマド・バダウィ氏の長男として1939年にペナンで出生。マラヤ大学卒業後、外交官などを務めたのちに66年に政界入りし、78年に初当選。81年にマハティール・モハマド政権下で初入閣(首相府相)を果たした。その後、教育相や国防相、外相、内相などを歴任し、2003年に副首相に指名された。
突然辞任を発表したマハティール氏の指名を受けて、2003年に第5代首相に就任。マハティール政権時代の縁故主義や汚職対策を公約に掲げて2004年の総選挙では圧勝し、穏健なイスラム主義の下で東海岸経済地域(ECER)などの地域経済対策に注力した。またマハティール首相時代に悪化したシンガポールとの関係改善にも尽力した。
しかし政策を巡って元老的立場のマハティール氏との関係が悪化。2008年の総選挙では一転して与党連合・国民戦線(BN)が過半数を失ったことで与党内部での求心力も低下し責任論も浮上、2009年4月に待望論が高まっていたナジブ・ラザク副首相(当時)に禅譲するかたちで辞任した。
政界引退後はほとんど表舞台に出ることはなく、近年では体調悪化が伝えられ、カイリー氏は22年9月、アブドラ氏が認知症を患っていることを公表。家族の名前が分からず会話も困難な状態で、車椅子生活だったという。