第一生命経済研究所レポート「政策運営は外部環境次第」

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 中央銀行バンク・ネガラ(BNM)による政策金利の3%据え置きに関し、第一生命経済研究所は22日、経済分析レポートを発表。主席エコノミスト、西濵徹氏は「ほかのアジア新興国では利下げの動きが広がるが、マレーシアは先行き不透明感を踏まえ慎重姿勢を堅持したとみられる」とした。

ほかのアジア新興国の利下げについて、インフレが鈍化していることに加え、昨年後半の米連邦準備理事会(FRB)による利下げで自国通貨安圧力が後退したことも重なり、景気下支えに舵を切る流れが広がったと分析した。

一方でマレーシアの場合、インフレは落ち着きを見せたものの、もともと外需依存度が極めて高い構造で、米のトランプ大統領の就任で、外需を巡る環境が厳しさを増していることや、内政では財政健全化が急務となっていることから、インフレにつながる材料が山積していると指摘。このため、現時点では物価動向を警戒して慎重姿勢を維持したと説明した。

さらに、プラス4.5―5.5%という政府と中銀の2025年成長率見通しについて、西濵氏は「内・外需双方に不透明要因が山積するなかで、ハードルは高いと見込まれる。しかし、今後も政策運営は外部環境に手足を縛られる展開が続くことは避けられない」と締めくくった。

5Gを優先導入する工業地域67カ所、通信省が特定

【マラッカ】 通信省は、第5世代移動体通信(5G)インターネットサービスを優先して導入する全国の工業地域67カ所を特定した。ファーミ・ファジル通信相が明らかにした。投資貿易産業省(MITI)との協力を通じて決定したという。

マラッカで開催された通信省の2025年戦略作業方針会議に出席したファーミ氏は、「5Gは中小零細企業(MSME)に大きなメリットをもたらすため、これらの地域を優先することが我々の目標だ。工場が5Gによる高速接続を活用できるようにしたい」と述べた。ファーミ氏によると、一般市民の5G利用の普及率も毎月2―3%増加しており、全国で53.3%に近づいている。

一方で通信省は5Gへのアップグレードを進める前に、農村部のコミュニティが少なくとも第4世代(4G)サービスを教授できるよう取り組んでいると強調。「これまで進められてきた国家デジタル・ネットワーク(JENDELA)第1期の下で、今年6月までに通信塔1,661基が完成する予定で、第2期ではインターネットアクセスがない農村部の2,500―3,000カ所が通信塔設置対象になる」と述べた。
(ザ・スター電子版、ベルナマ通信、1月25日)

ペナン空港、昨年の旅客数がコタキナバル空港抜き2位に

【ジョージタウン】 マレーシア民間航空局(CAAM)のデータによると、2024年のペナン国際空港(PIA)の旅客取扱数は747万3,462人となり、2023年の697万9,748人から7.07%増となった。ペナン州観光・創造経済委員会のウォン・ホンワイ議長(国政の閣僚に相当)が明らかにした。

PIAはサバ州コタキナバル国際空港(KKIA)を抜き、クアラルンプール新国際空港(KLIA)に次いで国内第2位に浮上した。週当たりの便数は565便で、前年の523便から8.03%増加した。特に国際線は前年の259便から304便に17.37%も増加し、昨年8月以降は上海やドバイ、厦門、香港などの海外都市を結ぶ新たな12の直行便が開設された。現在、深セン、広州、シンガポール、バンコク、プーケット、ジャカルタ、台北、ドーハ、チェンナイ、重慶など20都市に直行便を運航している。

またPIAは航空機発着回数が6万4,507回で、コタキナバル国際空港の6万3,822回をわずかに上回って2位となり、5万9,929回だったセランゴール州スバン空港(スルタン・アブドル・アジズ・シャー空港)や、5万4,969回を記録したクチン国際空港も上回った。トップはKLIAで36万6,895回だった。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、マレー・メイル、エッジ、ベルナマ通信、1月24日)

事業サポートのDKSH、興和との提携拡大

【ペタリンジャヤ=アジアインフォネット】 DKSHマレーシアは興和(本社・愛知県名古屋市)との提携を拡大し、興和の高脂血症治療剤パルモディア(一般名ペマフィブラート)の流通を手掛ける。

DKSHマレーシアは、マーケティング・販売など市場拡大サービスを包括的に提供する。パルモディアは中性脂肪を減らし善玉コレステロールを増やすためのダイエットや、薬剤を用いない運動療法などの補助的療法との位置付けで、脂質異常症の人向け。DKSHのサンディープ・テワリ副社長(ヘルスケア担当)は「優れた医薬品をマレーシア人患者に提供する」と述べた。

DKSH(本社スイス)はアジアを中心に、企業向けに事業を包括的にサポートするサービスを提供する商社で、日本で創業された。興和は商社活動のほか、医薬事業部で医薬品、ヘルスケア、サプリメント、医療用医薬品、医療機器を開発・製造している。

【従業員の勤労意欲を高めるために】第892回:やりがい搾取(7)努力に見合った報酬が得られないと脳が混乱する

第892回:やりがい搾取(7)努力に見合った報酬が得られないと脳が混乱する

前回は、進化生物学のタームである「間接互恵性」がやりがい搾取や努力と報酬の不均衡(effort-reward imbalance, ERI)に関係する可能性があることを述べました。

一方、脳科学では、努力と報酬に関わる脳領域の解明が進められています。ERIモデルの支持者は、社会的交換の失敗による不平等の経験が脳の報酬回路、視床下部-下垂体-副腎軸を過剰に活性化し、体内のいくつかの調節システムにストレス過負荷の状態を引き起こす可能性があると主張しています。これと一致して、以前の研究では、努力と報酬の計算に関与する皮質-線条体ネットワークの障害が疲労と有意に関連していることが示唆されています。最近のメタアナリシスでは、より具体的に、補足運動野は努力と関連しており、腹内側前頭前野と腹側線条体は報酬の正味値から努力を引いたものと関連していることが示されています。同様に、最近の研究では、ERIが、左淡蒼球の灰白質体積の減少と、前頭前野、線条体、および小脳の機能的接続性の変化に関連していることも示されています。これらの研究は、ERIが、特に線条体において脳の報酬系を損ない、仕事へのモチベーションを低下させ、不健康な生活習慣を促進する可能性があることを示唆しています。

なぜ努力ではなく、努力と報酬の不均衡が心身の異常をもたらすのかについては直感的に理解し難いですが、このように、脳の報酬系が混乱を起こし不健康な行動への抑制が働かなくなると考えれば、生物学的に合理的な説明が可能です。

 

Kokubun, K. (2024). Effort–Reward Imbalance and Passion Exploitation: A Narrative Review and a New Perspective. World, 5(4), 1235-1247. https://doi.org/10.3390/world5040063

 

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、東北大学客員准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、産業創出学の構築に向けた研究に従事している。
この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

第13次5カ年計画では政策の羅列から脱却、民間の力を活用

【クアラルンプール】 ラフィジ・ラムリ経済相は23日、産業界首脳との懇談会で、第13次マレーシア計画(13MP、対象期間2026-30年)では、政策、プログラムの羅列や、単なる公共事業の提供から脱却し、新たな奨励策を導入すると明らかにした。

ラフィジ氏によると、持続可能な、より競争力のある経済に移行するための政策推進が狙いで、行動の変化を企業に促すものになるという。公共事業などを通じた資金配分、単なる政策や事業の羅列から脱却し、経済構造の変化につながるような行動を促す政策を中心に据える。

民間セクターが経済成長の中心的役割を果たせるようにするためで、政府は政策、プログラムを通じこれを後押しする形をとる。このため民間セクターに重荷となっている規則の改正など、省間の調整を進めるという。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、1月24日、ベルナマ通信、マレーシアン・リザーブ、1月23日)

世界各国からのムスリムのマレーシア観光を推進=副首相

【クアラルンプール】 2026年のマレーシア観光年(ビジット・マレーシア・イヤー)に向け、政府は世界各国からのムスリム(イスラム教徒)の観光に力を入れる方針だ。22日にあったイスラミクルーズ・インターナショナルと、サウジアラビアのアロヤクルーズの提携調印式に出席したアハマド・ザヒド副首相が述べた。

ザヒド副首相によると、2024年にマレーシアを訪れたムスリムは11月時点で482万人で、150億リンギを超える支出があったと推定される。前年通年の450万人、推定支出額147億リンギをこの時点で上回った。

インドネシア、ブルネイ、パキスタン、サウジアラビア、カザフスタンが上位5カ国を占めた。

イスラミクルーズとアロヤクルーズの提携は、そうしたムスリム観光の一環で、最大で4,500人の乗客を収容できるクルーズ船をチャーターし、ネグリ・センビラン州ポートディクソンとサウジアラビアのジェッダを結ぶ。オマーン、モルディブ、インドネシアに寄港しながら、ムスリム向けのプログラムを提供する。

ムスリム旅行客の観光インフラを評価する世界ムスリム旅行指数(GMTI)で、マレーシアは昨年、世界145カ国中のトップにも選ばれた。ザヒド副首相は「市場予測では、ムスリム観光は年間約1.2%の成長が見込まれる」とし、マレーシア政府観光局、イスラム観光センター(ITC)、マレーシア文化芸術省などと協力しながら、さらに促進していくとした。
(マレーシアン・リザーブ、1月23日、ベルナマ通信、1月22日)

KLIAエアロトレイン、再開は第2四半期中の見込み

【クアラルンプール】 故障続きで2年にわたって運休が続いているクアラルンプール国際空港(KLIA)のメイン・ターミナルとサテライトを結ぶ無人列車KLIAエアロトレインは、今年第2四半期中に運行再開する見通しだ。当初の計画ではシステム交換作業は1月31日に完了する予定だった。

空港運営会社マレーシア・エアポーツ・ホールディングス(MAHB)のモハメド・イザニ・ガニ社長は24日に行ったエアロトレインに関する最新説明会の中で、「(エアロトレインの)すべてのテストを4月までに完了させる予定だ。第2四半期中に運行再開できると確信している」と言明。当初アンソニー・ローク運輸相が示した期限は「厳しすぎた」とし、技術的要件を順守すると特定のプロセスで遅延が発生することがあると説明した。

エアロトレインは運転中の故障を繰り返し、2023年3月から運転が停止され、バスによる代替輸送が行われている。システム交換の総費用は4億5,600万リンギ。最初の再開目標は2024年7月で、その後の業者との納入契約問題などの遅延が発生したことで先送りされており、ローク運輸相がMAHBの対応を非効率で遅れていると強く批判していた。
(マレー・メイル、エッジ、1月24日)

旧正月の有料道路は半額、27、28日のみ実施=公共事業相

【クアラルンプール】 連邦政府は、今年の旧正月連休の帰省ラッシュに合わせて有料道路の通行料金を50%割引すると発表した。半額となるのは27日深夜零時1分から28日午後11時59分までの約2日間のみ。

対象はクラス1の乗用車のみ。シンガポールとの国境を結ぶ有料道路は割引対象外となる。今回の割引により連邦政府が高速道路運営会社の利益補填のため2,008万リンギを負担することになるという。

アレキサンダー・ナンタ・リンギ公共事業相は、今後の祝祭シーズンについては全面的な通行料減免を行わず、「より的を絞ったアプローチ」に置き換えると言明。新たなシステムは後日発表すると述べた。祝祭シーズンの通行料免除を廃止することで、年間1億9,000万リンギを節約できるという。

政府はこれまで、旧正月、ハリラヤ(断食月明け大祭)、ディパバリ、クリスマスの期間中、有料道路の通行料を無料化し、有料道路運営業者に補助金を提供してきた。2023、24年は祝祭シーズンの通行料免除により、連邦政府が合計3億5,618万リンギを負担していた。
(フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、1月24日)

中小零細企業の支援で取り組み強化=起業家開発協同組合相

【クアラルンプール】 起業家開発協同組合省(KUSKOP)は、中小零細企業(MSME)の国内総生産(GDP)への貢献度について、第12次マレーシア計画(12MP)で設定されている目標数値を今年中に達成するよう、支援の取り組みを強化する。KUSKOPのイーウォン・ベネディック大臣が22日、記者会見で述べた。

2023年度のMSMEのGDPは6,131億リンギで、GDP全体の39.1%を占めた。輸出は1,522億リンギで総輸出の12.2%だった。これに対し、12MPでは2025年までにGDP全体貢献度で41%、輸出貢献度15%という目標が設定されている。

KUSKOPは昨年、204のプログラムを実施。13万2,453人が能力開発プログラムを受けたほか、5万1,221人が新たに起業したという。また、昨年33万3,653人の起業家と協同組合が総額95億8,000万リンギの資金援助を受けた。

さらに、2025年戦略計画「卓越性のための変革」を発表。特に、議長国として今年に開催されるASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議の関連イベントを通じ、多額の資金提供が計画されていることなどから、2027年までにMSMEの事業成長率を5%にすることを目標に掲げている。
(ザ・サン、ベルナマ通信、1月22日)