アストロ、ネットフリックスの料金値上げを発表

【クアラルンプール】 有料テレビ放送のアストロ・マレーシア・ホールディングスは14日、提携する米動画配信サービス「ネットフリックス」のマレーシア国内での料金プランの値上げを発表した。

モバイルプランはこれまでの月額17リンギから18.9リンギに、ベーシックプランは月額28リンギから29.9リンギに値上げされた。また、スタンダードプラン(2台まで同時視聴可)は45リンギから49.9リンギに、プレミアムプラン(4台まで同時視聴可)は55リンギから62.9リンギになった。スタンダードまたはプレミアムプランで、世帯外の人と共有する場合は、1人に対して月額13リンギの追加料金が必要になる。

新規加入者は14日から、既存の加入者は21日以降の請求時に適用される。またテレビ放送のアストロとネットフリックスがセットになっているプランの加入者は、来年3月1日までは据え置かれる。
(ビジネス・トゥデー、ソヤチンチャウ、ローヤットドットネット、アストロ発表資料、11月14日)

【従業員の勤労意欲を高めるために】第887回:搾取の標的になりやすい人

第887回:やりがい搾取(2)搾取の標的になりやすい人

前回は、「努力と報酬の不均衡(effort-reward imbalance, ERI)」の議論を紹介して、努力にふさわしい報酬が得られないと様々な問題が発生することを述べました。努力と報酬の不均衡は、「やりがい搾取(passion exploitation)」という別の概念で議論されています。やりがい搾取とは、雇用主が従業員に、不当に長時間かつ低賃金で働かせることで、従業員のやりがいを搾取する慣行を指します。今日、このような慣行に従事する企業は「ブラック企業」と呼ばれ、日本を含む儒教社会の特徴である集団主義や同調圧力との関連で議論されることがあります。しかし、同様の慣行は世界中で見られ、たとえば、ある研究は、米国の情報技術(IT)ベンチャーが家族のような雰囲気を作り出し、従順な従業員を飼い慣らし、搾取する実態について証拠を示しています。

さらに、このような慣行はすべての労働者を同じ程度にターゲットにしているわけではないことが明らかになっています。これまでの研究では、物語の登場人物に共感できる度合いを実験的に測定することで、忠実な人や寛大な人が搾取の標的になりやすいことが示されています。興味深いことに、これらの研究は、搾取される労働者の多くが、搾取を強いられているからではなく、搾取されることを半ば望んでいるために、搾取されていることを描いています。たとえば、上司は忠実な部下をターゲットにして、本来の役割を超えた仕事を与えますが、ターゲットとなった部下は、そのような余分な仕事を引き受けることが美徳であると信じ、忠実であるという評判を得るために進んで余分な仕事を引き受けます。

このように、やりがい搾取は、たとえそれが悪循環を伴っても、組織と従業員の両方の同意を得て成立します。最近のメタアナリシスの結果によると、人々は、情熱的な労働者が劣悪な待遇(職務内容に関係のない屈辱的な仕事や無給残業など)を受け入れることを当然と見做す傾向があることも示されています。これは主に、情熱的な労働者にとっては仕事自体が報酬であるという信念に基づいています。裏を返せば、やりがいは、労働者に対する劣悪で搾取的な待遇の受け入れにつながる可能性があります。

筆者が日系現地法人で従業員にアンケート調査を行うと、時々、「日本人の上司は頼み易い人に仕事を頼むので、特定の人に仕事が集中する」という不満の声が返ってきます。これも、一種のやりがい搾取といえます。不慣れな異文化環境で日本人駐在員の気持ちを察して、進んで手助けしてくれる現地人材の存在は有難いものです。しかし、有難いで済ませると、職場のモラルが崩壊して、やがて前回述べたように様々な問題が発生する可能性があります。

 

Kokubun, K. (2024). Effort-reward imbalance and passion exploitation: A narrative review and a new perspective. Preprints 2024, 2024090721. https://doi.org/10.20944/preprints202409.0721.v1

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、東北大学客員准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、産業創出学の構築に向けた研究に従事している。
この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

クリムハイテクパーク、2期開発で面積倍増を計画

【クアラルンプール】 1996年にマレーシア初のハイテクパークとして開設されたケダ州クリム・ハイテクパーク(KHTP)で2期開発として、現在の総面積5,557エーカーを、1万2,000エーカーに倍増させる計画が進められている。

1期では、これまでに工業用地2,161エーカーが4つのフェーズに分け開発され、半導体大手の米インテルを皮切りに、すべて入居済みだ。現在は4Aフェーズとして247エーカー、10区画の整備工事が進められている。この用地も2025年までには埋まる見込みで、早ければ2026年には稼働するとみられる。

KHTPはケダ州開発公社の完全子会社クリム・テクノロジー・パーク(KTPC)が開発・運営を担当。工業用地以外に、レクリエーションや研究開発、トレーニングなどの施設や、住宅、公共機関などの用地も備える。

1996年の開設当初は、年数社程度の投資しかなかったが、2021年の投資額は655億リンギを記録するなど近年は好調を維持。投資額(認可ベース)は2022年が108億リンギ、2023年201億リンギ、2024年上半期は303億リンギに達している。

2期開発はこうした状況を受けたもので、2016年には州政府が2,800ヘクタール(7,000エーカー)の土地を特定したと報じられた。経済紙「エッジ」は今年3月、アブラヤシ農園事業を手掛けるブーステッド・プランテーションズが、総額4億リンギで1,200エーカーの土地の売却交渉を進めていると報じた。

拡張計画についてKTPCのモハマド・サヒル最高経営責任者(CEO)は、「詳細はまだ明らかにできないが、KHTP隣接エリアに限らず、拡張に向けて複数の場所を検討中」と述べるにとどまった。課題となる資金調達については、アンワル・イブラヒム首相が2025年度予算で、KHTP拡張への資金割り当てを提案している。
(エッジ、11月13日)

年初10カ月のベストセラー車はプロドゥア「ベザ」

【クアラルンプール】 道路交通局(JPJ)の最新登録データによると、2024年年初10カ月で最も売れている車種は、ダイハツ系プルサハアン・オトモビル・クドゥア(プロドゥア)の「ベザ」(販売台数:8万1,946台)となった。自動車情報サイト、ポールタンによると配車サービス用として人気があるという。

トップ10車種のうち半数の5車種をプロドゥアが占めた。「ベザ」以外では、「アジア」(7万3,185台)、「マイヴィ」(5万9,736台)が2、3位に入り、「アルザ」(3万5,841台)が5位、「アティバ」(3万355台)が6位に入った。

プロトン・ホールディングスは「サガ」(5万8,455台)の4位が最高で、パートナーである中国・吉利汽車のリバッジモデルは「X50」(1万8,513台)の10位が最高で、「X70」などはランク外だった。

非国産車ではトヨタ「ヴィオス」(2万2,905台)が7位となり、非国産車でトップ。「ハイラックス」(1万9,917台)は9位(非国産車3位)に入った。ホンダは「シティ」(2万2,757台、ハッチバック含む)が8位(非国産車2位)に入った。

非国産車では11位までを日本車が占め、12位にようやく中国・奇瑞汽車(チェリー)の「欧萌達(オモダ)5」(6,784台)が入った。

政府が力を入れている電気自動車(EV)だが、年初10カ月の販売台数は1万7,403台。中国BYD(比亜迪汽車)の「アット3」(2,559台)がトップで、同社の「シール」(2,534台)も2位に入ったが、全体では20位にも入っていない。
(ポールタン、11月12日、ソヤチンチャウ、11月10日)

宅配の香港系ララムーブ、配車サービスに参入

【クアラルンプール】 オンデマンド配送サービスの香港系ララムーブは、マレーシアで自社「ララムーブ」アプリを使った配車サービスに参入する。先ごろ同社のブログとソーシャルメディアで新サービス「ララムーブ・ライド」の開始を発表した。

「ララムーブ」アプリ上の「ライド(乗車)」をタップすると、配車サービスにアクセスできる。目的地と乗車場所・時間を入力する。支払いはアプリ内のウォレットまたは現金で行うことができる。予約が確定すると、乗車状況をリアルタイムで追跡できるようになる。操作手順や機能はグラブなどの競合他社とほぼ変わらないが、現時点ではサービスエリアは首都圏クランバレーに限定されている

配車サービスについては先ごろ欧州エストニア発祥の配車サービス「Bolt」が、首都圏での参入を発表していた。マレーシアでは現在34の配車サービスが営業登録を受けている。
(ザ・スター電子版、ローヤット・ドット・ネット、マレー・メイル、11月12日)

ダイム元蔵相が死去、資産公開拒否の罪で係争中

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 1980年代から2000年代初頭にかけてマハティール・モハマド元首相の片腕として活躍し、現在資産公開を拒否した罪で係争中のダイム・ザイヌディン元蔵相が13日早朝、入院中のセランゴール州ペタリンジャヤの病院で亡くなった。86歳だった。

ダイム氏は経済界から政界入り。下院議員初当選は1982年で、2004年まで5期務めた。1984年からマハティール政権下で蔵相を務め、財政建て直し、経済改革で手腕を発揮した。1991年に財政状況改善を理由にいったん辞任したが1999年に返り咲き、2001年までアジア通貨危機への対応などに取り組んだ。

政界を引退していたダイム氏だが、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が2021年10月から公表を開始した租税回避行為に関する機密文書(パンドラ文書)にダイム氏の名前が記載されており、マレーシア汚職摘発委員会(MACC)が捜査を開始。MACCは今年1月、ダイム氏と妻のナイマ・アブドル・カリド氏を資産申告を怠った罪で起訴した。これに対しダイム氏側は、政治的弾圧だと主張。次回公判は11月20日に予定されていた。

プロトン組立工場がエジプトに開設、アンワル首相が訪問

【カイロ】 国民車メーカー、プロトン・ホールディングスが、エジプト・カイロのギザに左ハンドル車組立工場を開設し、同国を公式訪問中のアンワル・イブラヒム首相が12日に行われた開所式に出席した。同工場を近隣諸国向け左ハンドル車の製造センターと位置づける。

12月からAセグメントセダン「サガ」の完全ノックダウン(CKD)生産を開始する。2026年までに左ハンドル車1万6,000台、価値にして5億7,000万リンギ相当を生産する予定。スペアパーツの販売でも2,000万リンギの売り上げを見込んでいる。
プロトンのサイド・ファイサル・アルバール会長は、「ギザの地域組立センターは同社の左ハンドルモデルにとって海外初のセンターとなる。中期的にはエジプトを北アフリカ地域の主要拠点にする予定だ」と述べた。

アンワル首相は「プロトンは単なる自動車会社ではなくマレーシアの誇りであり、国のアイデンティティの一部でもある」と言明。エジプト地元産業の発展にとっても極めて重要だと述べた。

アンワル首相は10日から4日間の日程でエジプトを訪問しており、モハマド・ハサン外相、テンク・ザフルル投資貿易産業相らが随行している。10日にはシシ大統領と会談し、同大統領にBRICS(ブリックス)の正式メンバー入りへの支援に感謝したほか、両国間の戦略的パートナーシップ強化に関して意見を交換した。
(ザ・スター電子版、フリー・マレーシア・トゥデー、ベルナマ通信、11月12日)

首都圏の鉄道・バス乗り放題のMYツーリストパス発売

【クアラルンプール】 公共輸送機関を管轄するプラサラナ・マレーシアは10日、首都圏クランバレーを訪れる国内外の観光客向けに、鉄道・バスが最大で3日間乗り放題になる「MYツーリストパス」を発売した。

乗り放題になるのは、軽便鉄道(LRT)、大量高速輸送(MRT)、モノレール、ラピッドKLバス、高速バス(BRT)、MRTフィーダーバス。ムルデカ広場周辺やペトロナス・ツインタワー、KLタワー、サンウェイ・ラグーンなど主要な文化・商業地区をなど巡りやすくなるだけでなく、それらの観光スポット、ショッピングセンター、飲食店で割引などの特典を受けることができる。

パスは1日、2日間、3日間の3種類があり、料金は外国人がそれぞれ40、60、80リンギ、マレーシア人はそれぞれ20、30、40リンギ。ただし12月9日まで特別キャンペーンとして外国人はそれぞれ35、50、65リンギ、マレーシア人は15、25、35リンギで購入できる。主要駅で販売される。

来年の東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議、続く2026年の「ビジット・マレーシア・イヤー」(マレーシア観光年)を意識した取り組みで、発売記念式典に出席したファディラ・ユソフ副首相は「このような取り組みを通じ、より多くの観光客がマレーシアに訪れるよう支援していきたい」と話した。
(ベルナマ通信、ポールタン、プラサラナ・マレーシア発表資料、11月10日)

米国新政権の経済政策を注視=第2財務相

【ジョージタウン】 マレーシアは、来年米国で誕生するトランプ新政権が新たな経済政策を打ち出すのを見守る。アミル・ハムザ第2財務相が11日、ペナン州で開かれた銀行主催の会議に出席した際の会見で表明した

アミル・ハムザ氏は「次期大統領のトランプ氏は組閣中だ。トランプ氏が就任後に打ち出す経済政策を注視し、世界経済をけん引するものかを判断する。就任は1月であり、まだ先の話だ」と語った。

アミル・ハムザ氏はまた、マレーシア経済は多様化しており、高い経済成長を維持できると確信していると強調。年初9カ月の国内総生産(GDP)成長率は前年同期比5.1%で、9月の物価上昇率は1.8%、失業率は3.2%と低水準にあることを指摘した。
(ザ・スター、11月12日、ベルナマ通信、エッジ、11月11日)

ペナン軽便鉄道、2025年初頭に着工予定=運輸相

【バターワース】 ペナンで計画されている軽便鉄道(LRT)ムティアラ線について、アンソニー・ローク運輸相は2025年初頭に工事開始予定だと明らかにした。いくつかの解決すべき問題について元請業者と協議を行っており、最終的に財務省の承認を得てから開始することになるという。

メディアが年内にも着工にもされると報じたことについてローク氏は、「必要なプロセスがすべて今年末までに完了することを期待する」と述べた上で、プロジェクトを州政府から連邦政府が受け継いだために新たな手続きが必要になったと指摘。「元請業者に変更はないが、ルートや計画に変更があり、詳細な費用計算、建設費に関してもすべて再協議して最終決定する必要があった」と着工が遅れている理由を説明した。

第1フェーズはペナン国際空港(PIA)からコムタ(ペナン州政府合同庁舎ビル)までの区間で、プロジェクト実施機関であるMRTコープと、元請業者のSRSコンソーシアムが詳細に向けて協議を行っている

第2フェーズは海峡を超えて本土側バターワースのペナン・セントラルまで接続する区間で、アンワル・イブラヒム首相の指示により実現した。

第1、2フェーズを合わせた全長は約29キロメートルで、2030年までの運行開始が予定されている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ビジネス・トゥデー、マレー・メイル、11月11日)