TRXで新オフィスビル建設、会計事務所のPwCが主要テナント

【クアラルンプール】 クアラルンプール(KL)の国際金融地区「トゥン・ラザク・エクスチェンジ(TRX)」内で新たなオフィスビルの建設が計画されている。世界的会計事務所のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)・マレーシアが主要テナントとして入居する見込みだ。

TRXは70エーカーからなり、財務省所有企業のTRXシティーをメインデベロッパーに、約10年の開発期間を経て、今年2月に開所式が行われた。中核施設となるショッピングモール「エクスチェンジTRX」は先月末で開発開業1周年を迎え、にぎわっている。

新たなオフィスビルは、HSBCマレーシアの本社が入る「メナラIQ」に隣接する 「ロットC7-10」という区域で、総賃貸可能面積80万平方フィート。PwCは総賃貸可能面積の25%にあたる20万平方フィートのリース契約を結び、現在のKLセントラルにある本社を移転するとみられる。

これに対し、経済紙「エッジ」はTRXを含めKLではオフィススペースが余り気味で、新ビルの動きは注目されると報じた。例えば、TRX内の35階建てのメナラ・アフィンも入居率65%で、まだ30万平方フィートが賃貸可能とされる。

特に、2019年に完成した高層ビル「エクスチェンジ106」は苦戦し、総賃貸可能面積260万平方フィートのうち、まだ120万平方フィートの空きがあるという。デベロッパーのムリア・プロパティは、財務省が51%、インドネシアを拠点とする不動産開発業者ムリア・グループが49%を所有する。ムリア・プロパティによると、中国のフィンテック大手アント・インターナショナルが3フロア計6万2,000平方フィートに、来年前半に入居を予定。入居が完了すると入居率は52%になり、さらに2025年末までに70%に達すると見込んでいるという。
(ザ・スター、12月13日、エッジ、12月16日)

プロトン、初のEVモデル「e.MAS7」を発表

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 国民車メーカー、プロトン・ホールディングスは16日、同社の電気自動車(EV)ブランド「e.MAS」の初モデルであるCセグメント・スポーツ車(SUV)、「e.MAS7」を発表した。発表会に出席したアンワル・イブラヒム首相はマレーシアが来年議長国となる東南アジア諸国連合(ASEAN)会議で「e.MAS7」をオフィシャルカーにすると宣言した。

バージョンは「プライム」と「プレミアム」の2種で、価格はそれぞれ10万5,800リンギ、11万9,800リンギと外国メーカーのEVに対抗できる価格設定とした。先着3,000人には4,000リンギの割引が適用される。安全性にも配慮しており、ASEAN NCAP(東南アジア諸国向け新車アセスメントプログラム)で5つ星評価を獲得した。車体色は▽プラチナシルバー▽ターコイズグリーン▽スレートグレー▽リチウムホワイト▽クォーツローズピンク――の5色を用意した。

フロントに搭載された電気モーターは定格出力218PS(215hp、160kW)、トルク320Nmを発揮。0-100㎞/h加速は6.9秒とプロトン車で過去最高を記録、最高速度は175㎞/hとなっている。

「プライム」は吉利汽車のAegisショートブレード・リチウム鉄リン酸 (LFP) バッテリーの49.52キロワット時(kWh)バージョンを採用しており、WLTP定格の航続距離は345km。「プレミアム」はより大きな60.22kWhパックを搭載し、最大410kmの航続距離を実現した。

プロトンは「e.MAS7」を近い将来、トリニダードトバゴ、ネパール、シンガポール、モーリシャスなどに輸出する方針だ。

複合企業の日系テクスケム、ポリマー&工業事業を拡大へ

【ジョージタウン】 日系コングロマリットのテクスケム・リソーシズは、医療、ライフサイエンス、ウエハ半導体分野への参入を目指し、2025年にポリマーエンジニアリングおよび工業部門を拡大する方針だ。10月に正式に就任した小西雄馬グループ最高経営責任者(CEO)が「ザ・スター」のインタビューで明らかにした。

小西氏は、グループは製造部門と流通部門のシナジーを生み出し、製品ポートフォリオを拡大する計画だと言明。「2025年には過去数年間に成功裏に発売されたデータメモリ、データストレージ、医療およびライフサイエンス関連製品から利益を得るだろう」とし、「マレーシアはデータセンター、半導体、医療技術産業への多額の外国直接投資からも恩恵を受けている。ポリマーおよび工業部門への潜在的なシナジー効果に期待している」と述べた。

小西氏はまた医療・ライフサイエンス分野では、戦略的ビジネスモデルとして、使い捨て医療機器の契約開発・製造にさらに注力していくと言明。また革新的なクリーンルーム静電気制御パッケージ製品シリーズを通じて、データメモリおよび半導体分野にも注力すると述べた。
(ザ・スター、12月16日)

BRICSとASEANとの提携が重要、華人商工会の新会頭

【ペタリンジャヤ】 このほど マレーシア華人商工会議所(中華工商聯合会、ACCCIM)の会頭に就任したン・イーピン氏は会の先行き方針について、BRICSおよび来年発足のトランプ政権が世界貿易に与える影響の中をどう航行するかが課題になるとの認識を示した。

ン氏はマレーシアは対米貿易で多額の黒字を計上しており、貿易面での事柄に警戒を怠らず、即応することが重要だと指摘。多数の中小企業が存在する小国のマレーシアは現状に甘んじることはできず、世界的な流れの変化に即対応し、国の利益を守らなければならないとした。

マレーシアは、ブラジル、ロシア、インド、中国など9カ国が加盟するBRICSへの加盟を申請しており、また中国が東南アジア諸国連合(ASEAN)に進出する際の主要玄関口としての潜在性を持っているため、BRICSとASEANの提携は大きな潜在性が期待できるという

両組織の人口を合わせると世界人口の45%で、巨大市場が誕生する。またBRICSにイラン、アラブ首長国連邦が加盟した結果、世界の石油生産の半分近くを占める、巨大資源組織になったからだ。
(ザ・スター、12月16日)

KL国際モビリティショーの来場者18万3,221人

【クアラルンプール】 第10回クアラルンプール国際モビリティショー2024 (KLIMS2024) は、今月5―11日の7日間で18万3,221人が訪れ、盛況のうちに閉幕した。

KLIMS2024は、「モビリティを超えて」をテーマに、6年ぶりに開催された。70社が出展。ホンダのバッテリー電気自動車(BEV)「e:N1」を含め2025年に国内市場に投入される最新モデルが披露されるなど、注目を集めた。

また、主催のマレーシア自動車協会(MAA)は各賞を発表。権威あるベストブースデザイン賞の相手先ブランド生産(OEM)部門(400平方メートル以上)ではUMWトヨタ・モーター(UMWT)が1位に選ばれた。
(ポールタン、モタオート、ベルナマ通信、12月13日)

第3四半期の住宅売買、件数、額とも10年来で最高

【クアラルンプール】 第3四半期の住宅取引は7万520戸、売買額は290億リンギと四半期ベースで10年来で最高だった。前年同期比ではそれぞれ2.9%、1.3%の増加だった。財務省鑑定・不動産サービス局(JPPH)が発表した。

ほかの不動産も含めた同期の取引件数は同3.1%増の11万2,305件、額は0.3%増の約573億リンギだった。売れ残り物件数も減少傾向にある。

住宅取引のうち、最多は30万以下の価格帯で全体の53.4%を占めた。次いで30万超-50万リンギが23.8%、50万リンギ超が22.8%。住宅の種類別ではテラスハウス(低層の連棟住宅)が住宅取引の42%を占めた。

州別で取引戸数最多はセランゴール州で1万4,902戸(全体の21.1%)、次いでジョホール州の1万2,616戸(同17.9%)。取引額も同様で、セランゴール州が84億リンギ(29.2%)、ジョホール州が約58億リンギ(20.2%)を占めた。

売れ残り住宅物戸数は3%の減少だった。竣工、着工、計画戸数はいずれも増加したが、新築物件の売り出し数は1万3,708戸でわずかに前年同期を下回った。
(マレー・メイル、ベルナマ通信、12月13日)

【イスラム金融の基礎知識】第558回 フィリピンのイスラム銀行業、CIMBなどが参入検討

第558回 フィリピンのイスラム銀行業、CIMBなどが参入検討

Q: フィリピンのイスラム銀行業の現状は?

A: フィリピンでは今年、イスラム銀行業のライセンスを取得した二つの銀行が、相次いでビジネスを開始したが、これに続く動きがあることが今月になり明らかとなった。

フィリピン中央銀行は12月3日にイスラム金融に関するセミナーを開催、その中でアリファ・アラ副総裁が、二つの銀行がイスラム銀行業のライセンス取得に関心を示していることを明らかにした。正式な申請書が提出されていないため銀行名を明言することはできないとしながらも、一つは国内で業務を行う銀行で、もう一つは海外から新規に参入を検討している銀行だとしている。

副総裁の発言を受けて、マレーシア資本のCIMBバンク・フィリピンのビジェイ・マノラハンCEOがメディアのインタビューに応じ、同銀行が前者の「すでにフィリピンに進出している銀行」であることを明かした。CIMBは従来型銀行やイスラム銀行を傘下にもつ総合金融グループで、東南アジアで積極的にビジネスを展開している。フィリピン国内では、デジタル銀行として従来型銀行業務を行っている。

CEOによれば、ライセンス取得のための書類申請はまだ行っておらず、中央銀行と予備的な協議を行う一方、イスラム銀行ビジネスの可能性について現地調査を実施していることを明らかにした。CEOによれば、フィリピン進出に際しては従来型銀行業を優先している。ただ、ムスリムが多く暮らす南部のミンダナオ島地域にも利用者がいるとしている。CEOは、スマートフォンを通じてサービスにアクセスできるため、南部地域でも顧客が獲得できていることを強調した。

中央銀行側としても、バンサモロ自治地域における銀行口座保有率は8%ほどにとどまっており、この地域を含めフィリピン全体で口座保有率を70%に高めるためにも、ムスリムにとって親和性が高いイスラム銀行ビジネスの普及に期待を寄せた。

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。

アンワル首相、デンマーク外相と2国間の関係強化など協議

【クアラルンプール】 アンワル・イブラヒム首相は11日、来馬中のデンマークのラース・ルッケ・ラスムセン外相と会談し、2国間の関係強化などを協議した。ラスムセン外相は「2国間の自由貿易の交渉再開に大いに期待している」と語った。

クアラルンプールのデンマーク大使館は2021年からコロナ禍で閉鎖していたが、今年8月に業務を再開。会談ではアンワル首相が大使館再開を歓迎した。2022年就任のラスムセン外相にとっては初のマレーシア訪問となった。

さらに、欧州連合(EU)加盟国のデンマークとして、来年マレーシアで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に積極的に協力していくとし、ラスムセン外相は「ASEANとのウィンウィンの関係を促進していきたい」と述べた。

2024年1―10月までのマレーシアとデンマークの貿易総額は、前年同期比12.9%増の21億9,000万リンギ。またマレーシアには100を超えるデンマーク企業が進出しており、2024年6月時点で製造業への投資額は22億リンギを超え、5,024人分の雇用機会を生み出しているという。
(マレー・メイル、12月12日、ベルナマ通信、12月11日)

「168パークセラヤン」の商業モール開業、放棄物件解消にめど

【クアラルンプール】 資金難などで一旦放棄されたセランゴール州セラヤンのショッピングモール、「168パークモール」が12日ソフトオープンし、開業式典に出席したンガ・コーミン住宅・地方行政相は放棄住宅プロジェクトを2030年までにゼロにするという政府目標は達成できる見通しだと述べた。

同モールは、住宅などを備えた複合施設「168パーク・セラヤン」の中核施設。4階建てで総賃貸可能面積23万5,500平方フィート、ビレッジ・グローサー、ミスターDIY、エニタイムフィットネスなどが入居する。2階にはほかにもスポーツセンターが入る。

「168パーク・セラヤン」はもともと「セラヤン・スター・シティ」として開発が始まったが、2016年、すでに680人の住宅購入者がいたにもかかわらず放棄された。その後、不動産開発業者インフラ・セギが友好的買収者(ホワイトナイト)として高等裁判所の承認を得て、2022年からプロジェクト名を改めて開発を引き継いでいた。総開発価値は11億2,000万リンギ。

「168パーク・セラヤン」にあるAーCの住宅3ブロックのうち、Cブロックは今年9月にすでに購入者に引き渡された。Aブロックは完成率75%、入居率96%、Cブロックは完成率35%、入居率45%という

住宅・地方行政省では、放棄されたプロジェクトなどの再建に向け特別タスクフォースを設置しており、 2022 年から今年10月31日までで、862件で総開発価値858億2,000万リンギのプロジェクトを救済し、10万2,808人の購入者が入居できたという。
(エッジ、ビジネス・トゥデー、12月12日)

マハティール元首相が野党連合と共闘、「マレーの敵」に対処

【プトラジャヤ=アジアインフォネット】 マハティール・モハマド元首相とムヒディン・ヤシン元首相ら野党連合・国民同盟(PN)の幹部数人が12日に記者会見を開き、「マレー人の共通の敵」である現アンワル・イブラヒム政権に立ち向かうために団結すると発表した。

同日開催された円卓会議に出席したマハティール氏は、アンワル首相率いる連立政府の下でマレー人は徐々に権利を奪われてきたと主張し、これがコミュニティを擁護するために団結するきっかけとなったと説明。「多くのマレー人が政府の捜査対象になっており、犯罪で告発されている」とし、共通の敵であるアンワル政権に立ち向かうために団結しなければならないと述べた。

記者会見にはマハティール氏、ムヒディン氏のほか、汎マレーシア・イスラム党(PAS)のイドリス・アハマド党首補らが出席した。

マハティール氏は、シンガポールと領有権を争っていたバトゥ・プテ島(シンガポール名・ぺドラ・ブランカ)に対する国際司法裁判所の裁定に対する異議申し立てを独断で取り下げ、この結果領有権を失ったとかつての閣僚数人が証言しており、批判の的に立たされている。これに対しマハティール氏は政権による自身への弾圧だと反発している。