外国人向け特別パス、来年からオンライン申請可能に

【クアラルンプール】 出入国管理局は2025年1月から、30日以内のマレーシア滞在を外国人に認める特別パスのオンライン申請を受け付ける。

現在、特別パスの審査は入管カウンターで行われているが、ソーシャルビジットパス、専門職者パスを扱うカウンターの50%が特別パスの申請処理で、混雑の原因になっていることから、オンライン方式を導入する。昨年の特別パス交付数は約14万件だった。

ザカリア・シャーバン入管局長によると、入管サービスの90%はオンライン処理またはデジタル化されており、外国人向け短期就労パスの申請、更新もオンライン化されている。入管から許可を受け取った申請者は自身でパスを印字する。外国人全般の入国でも、QRコードを使ったオートゲート方式に移行するという。

入管が構築中の国家統合出入国システム(NIISe)は2028年に統合作業が終わる予定だ。出入国管理を一本化したシステムで、国家登録局、警察など関連機関が持つデータを統合する。システムには人工知能(AI)を導入し効率向上を図る。
(ビジネス・トゥデー、セランゴール・ジャーナル、11月24日)

ハラル食品の冷凍ハブ施設、ネグリセンビラン州で着工

【クアラルンプール】 ハラル(イスラム法に準拠した)食品の冷凍ハブ施設の起工式が23日、ネグリ・センビラン州ニライで行われた。

この施設は、冷凍配送を手がけるゴログが4億リンギをかけ、18カ月以内の完成を目指している。「スマートRHDC」と呼ばれ、原材料、半製品、完成品の高度な保管ソリューションを提供する。マレーシア初の人工知能搭載自動冷蔵倉庫も備え、8万4,000枚分のパレットを収容でき、積載ベイは60カ所ある。連邦農産物マーケティング庁(FAMA)とも協力し、事業主や農家も利用できるようにするという。

起工式に出席したアンソニー・ローク運輸相は、同州ニライかエンステックに新たなハラル食品専用の物流ハブの建設に向け、州政府と協議を始めた、と記者会見で語った。ローク氏は「クアラルンプール国際空港(KLIA)に近く、マレー半島の北部、南部、東部、西部を結ぶ高速道路で戦略的に接続しており、物流の強化に理想的だ」と述べた。

ローク氏はさらにハラル認証は食品だけでなく医薬品や化粧品などの製品にも適用され、市場機会が広がると強調。「中国のようなイスラム教徒が過半数を占めない地域でも、ハラル製品の重要性は理解されている。専用の物流ハブができれば、さらに多額の投資を引き寄せ、ハラル製品生産のリーダーとしての地位を確立できる」と付け加えた。
(エッジ、マレー・メイル、11月23日)

KLとバンコクに格安航空ハブ、エアアジア創業者が構想

【クアラルンプール】 格安航空エアアジア・グループの創業者、トニー・フェルナンデス最高経営責任者(CEO)は、クアラルンプール(KL)とタイ・バンコクにドバイのような格安航空ハブを建設する構想を明らかにした。

フェルナンデス氏は、エアアジアにとって最適なのは所要時間1時間半から6時間のフライトだとした上で、様々な目的地に向かう乗り継ぎ客をKLやバンコクのハブに誘導することを目指すと言明。「私がやろうとしているのは、世界で初めてドバイやカタールのようなハブをクアラルンプールとバンコクに作ることだ。ハブのようなものはバンコクやシンガポールにもあるが、これらはプレミアム航空ハブだ。誰も低コストのハブを実現したことはない」と述べた。KLとバンコクの格安航空ハブを経由してネットワークを拡大するとともに、チェンマイ―中国線のような地方都市への路線を増やすことで成長を図るという

フェルナンデス氏は、「我々は(新型コロナ禍の)5年間、地獄の日々を過ごした。しかし我々は復活しさらなる成長を目指している」と言明。コロナ禍で解雇した2,600人の従業員全員を再雇用し、現在は2万3,000人を雇用していると述べた。

エアアジアは新型コロナ禍で大きな打撃を受け、債務再編、従業員の解雇、一部機材のリース会社への返却を余儀なくされた。親会社であるキャピタルAは上場計画を断念し、代わりに姉妹会社のエアアジアXと合併して大幅原資を行い、財政難カテゴリーから脱却を図る方針だ。
(ブルームバーグ、フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、11月22日)

中電工、設備会社IAQの株式40%を買収

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 中電工(本社・広島市)は21日、マレーシアの設備会社、IAQテクノロジー・インターナショナルの株式40%を買収すると発表した。同日、株式譲渡契約を締結し、IAQと業務提携契約を締結した。

IAQは、主にマレーシアおよびシンガポールにおいて半導体工場・データセンターを中心に、設計・調達・施工やプロジェクト・マネジメントなど、顧客のニーズに応じた総合設備ソリューションを提供している。クリーンルームを中心とする設備工事に強みをもっており、欧米系多国籍企業の旺盛な建設需要を背景に、業績を拡大している。傘下子会社に、設備工事を手掛けるIAQソリューションズ、プロジェクトマネジメントを手掛けるIAQエンジ二アリング・プロジェクト・マネジメント、省エネ事業を手掛けるIAQエナジー・ファシリティ・マネジメントなどを持つ。

中電工はIAQとの業務提携により、現地法人の中電工マレーシアおよびRYBエンジニアリング(シンガポール・マレーシア)との施工面での協業関係を構築し、より付加価値の高い総合設備工事サービスの提供に取り組むとしている。

セランゴール州、モビリティ基本計画が近く完成

【シャアラム】 セランゴール州は2035年までに公共交通機関の利用率を60%にする目標達成に向け、モビリティ・マスタープランを策定中であることを明らかにした。22日の州議会質疑で投資・貿易・モビリティ評議会のン・ツェハン評議員が明らかにした。近く完成予定だという。

同マスタープランにはバス、鉄道、タクシー、配車サービスなどの交通手段だけでなく、バス停、マイクロモビリティ(電動キックボード、電動アシスト自転車などの個人用乗り物)、歩行者用通路などのインフラも組み込まれている。

最新データによると、セランゴール州の公共交通機関の1日の平均乗客数は、軽便鉄道(LRT)や首都圏大量高速輸送(MRT)、モノレールやバスを含め約110万人。ン氏は、8月にワークショップとセランゴール州のすべての地方自治体との協議が行われたと明らかにした。委託条件を確立し、調査の包括性を確保したと付け加えた。
(マレー・メイル、セランゴール・ジャーナル、ベルナマ通信、11月22日)

マレーシア人訪日者数、10月は22.0%増の5.5万人

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 日本政府観光局(JNTO)が発表した2024年10月の訪日者数統計(推計値)によると、マレーシアからの訪日者数は5万5,100人となり、前年同月比で22.0%の大幅増となった。

JNTOによると、査証免除措置による訪中旅行への人気の高まり、機材繰りなどに伴う一部航空会社の運航規模縮小などあるものの、祝日などの影響もあり、訪日外客数は10月として過去最高を記録した。 クアラルンプール―羽田間の増便などもあり、日本への直行便数は前年同月を上回った。年初10カ月の訪日者数は37万3,200人で、前年同期比23.0%増となった。

10月の世界全体の訪日者数は、前年同月から31.6%増の331万2,000人、新型コロナ前の2019年同月からは32.7%増となり、過去最高であった2024年7月の3,29万2,602人を上回り、単月過去最高を記録した。1―10月の累計では3,019万2,600人となり、過去最速で3千万人を突破した。

家電のダイソンがマレーシア業務縮小を検討、消息筋情報

【クアラルンプール】 革新的な掃除機などで知られる家電のダイソンが、ジョホール工場におけるヘアドライヤー関連業務を縮小するもようだ。消息筋の情報としてブルームバーグが伝えた。域内業務再編の一環で、ダイソンは東南アジア業務全体の見直しも進める可能性があるという。

ダイソンは声明で、生産施設の社員のうち47人をジョホールのグローバル開発キャンパスに再配備すると述べるとともに、引き続き数百万の製品を生産しているマレーシアへの投資を継続するとした。

マレーシア業務縮小の理由の一つとして考えられるのが、労働問題をめぐる同社と政府の関係悪化だ。きっかけは19年に人権活動家のアンディー・ホール氏が、ダイソンに部品を納入しているATA・IMSが移民労働者を虐待していると主張したことで、これを受けダイソンはATAからの調達を減らしたが、ATAは虐待の事実はないと主張している。

ダイソンは最近、本拠を構えるシンガポールの社員を解雇。7月には創業地の英国で社員の3分の1近くに当たる1,000人を解雇していた。
(ザ・スター、11月22日、エッジ、マレー・メイル、11月21日)

ジョホール州、金曜の礼拝休憩時間を2時間に延長

【クアラルンプール】 ジョホール州政府は、官民セクターにおいて慣例的に1時間半となっている金曜日の礼拝休憩時間を2025年1月から2時間に延長すると発表した。イスラム教徒が金曜礼拝を行えるようするための措置。オン・ハフィズ・ガジ州首相が21日の州議会における来年度予算案発表の際に明らかにした。

同州スルタン摂政のトゥンク・イスマイル皇太子が10月、現時点で金・土曜となっている週末の公休日について、25年1月1日から土・日曜に戻すと発表したことを受けたもの。オン・ハフィズ氏はこれに合わせて、同州の公共セクターの週の労働日数について、金曜日の午後を半休として4日半とすることも提案した。公共セクターの週労働日数4日半はアラブ首長国連邦(UAE)がすでに導入しているという。

オン・ハフィズ氏は、学校敷地内を含む礼拝スペースの数も増やすと言明。「ムスリム生徒が金曜礼拝を行えるよう、ジョホール州教育局(JPNJ)、イスラム宗教局などが適切な措置を講じる」と述べた。

ジョホール州では建国以前から金・土の公休が実施されていたが、当時州首相だったムヒディン・ヤシン元首相が1994年に土・日に変更。2014年にムスリムにとって金曜日が重要であることへの敬意と、イスラム教を州の宗教として認める印として再び金・土に変更されていた。現在、金・土を公休日と定めているのはジョホール州のほか、ケダ州、クランタン州、トレンガヌ州がある。
(フリー・マレーシア・トゥデー、マレー・メイル、マレーシアン・リザーブ、11月21日)

機械メーカーのCKDがクリム工場竣工、製造拠点を強化

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 機械メーカーのCKD(本社・愛知県小牧市)は21日、マレーシア子会社、CKDマレーシアを通じて、ケダ州クリム・ハイテクパークに生産工場を竣工したと発表した。東南アジア諸国連合(ASEAN)製造拠点を強化する。

新工場の敷地面積は8万7,400平方メートル、建屋面積は1万5,800平方メートル。総投資額は約40億円で、2025年4月の稼働開始を予定している。用地は2023年半ばに買収していた。空気圧機器やバルブを生産する。同日に開催した開所式にはモハマド・サヌシ州首相らが出席した。

CKDは声明の中で、ASEAN地域における機器製品の生産体制を強化し、強固なサプライチェーンで成長市場及び製造業全般のグローバル需要拡大にタイムリーに対応していくとしている。

【総点検・マレーシア経済】第509回 第2次トランプ政権の関税政策がマレーシアに与える影響は?

第509回 第2次トランプ政権の関税政策がマレーシアに与える影響は?

2024年11月の米大統領選挙において、ドナルド・トランプ前大統領が再選を決めました。トランプ次期大統領は、中国製品に対する60%~100%の関税と、その他の国々に対する10%~20%の関税を導入することを掲げています。

マレーシア経済は、2018年から始まった米中貿易戦争の「漁夫の利」を大きく受けた国の一つとされており、実際、近年は米中両国からマレーシアへの大型の投資が相次ぎ、米国向けの輸出は今年8月にシンガポール、中国を上回って国別の輸出先として首位に立ちました。これは、2007年12月以来、実に16年8カ月ぶりのことです。

こうなると、気になるのは第2次トランプ政権の関税政策がマレーシア経済に与える影響です。トランプ次期大統領は文書として公約には掲げていないものの、インタビュー等で中国製品に対して60%~100%の関税を課すことに加え、その他の国々に対しても10%~20%の関税を課すと繰り返し発言しています。

筆者の所属するアジア経済研究所の経済地理シミュレーション(IDE-GSM)チームでは、今年4月に米国が対中関税60%、その他の国に10%の関税を課す場合の国別・産業別の影響の試算を行い、11月には対中関税60%、その他の国に20%の関税が課される場合の試算を行いました。どちらのケースでも中国経済への影響はマイナス0.9%と変わらない一方で、米国経済への影響は10%関税ではマイナス1.9%、20%関税ではマイナス2.7%と、高い関税率を他国に課すほど、自国経済への影響のマイナス幅が大きくなることが示されています。

この2つのケースにおけるマレーシア経済への影響を産業別に示したものが図になります。マレーシアを含む全世界への関税が10%の場合(緑棒)、マレーシアではその他製造業(0.8%増)、食品加工業(0.7%増)、農林水産業(0.2%増)などプラスの影響を受ける産業が多く、GDP全体では0.2%増となります。これは、中国への60%関税の「漁夫の利」がマレーシアへの10%の関税のマイナスを全体としては上回っているためです。

一方で、マレーシアを含む全世界への関税が20%の場合(橙棒)、食品加工業(0.6%増)、その他製造業(0.5%増)、自動車産業(0.3%増)などはプラスの影響を受ける一方で、マレーシアの輸出の中心である電子・電機産業への影響はマイナス1.4%とかなり大きくなります。結果、GDP全体への影響はマイナス0.01%とわずかではありますがマイナスとなっています。

これらはあくまでも試算ですが、第2次トランプ政権の関税政策がマレーシア経済に正負どちらの影響を与えるかは関税率次第で、現在のところは見通せないということになります。

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp