インド公式訪問で貿易80億リンギ、投資45億リンギを確保=首相

【クアラルンプール】 アンワル・イブラヒム首相は、インドのナレンドラ・モディ首相の招きにより19日から3日間の日程でインドを公式訪問した。首相就任後初めての訪問となる。

公式訪問により、覚書8件を締結し、潜在的貿易80億リンギ、投資45億リンギを確保した。企業間でも7件の覚書が締結されている。

アンワル首相によると、8件の覚書は、労働者採用、伝統医療、デジタル技術、文化、観光、公共行政など幅広い分野にわたるもので、両国の協力関係の促進が期待できるという。

アンワル首相はまた、パーム油・パーム油製品、化学製品、石油・ガス、航空機部品の分野において、80億リンギの潜在的貿易を確保したと言明。IT企業大手のタタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)およびHCLテクノロジーズ 、食用油のエマミ・アグロテックの代表との会談や他企業との懇親会により、総額45億リンギの投資も確保したとした。

(マレー・メイル、エッジ、マレーシアン・リザーブ、ベルナマ通信、8月21日)

セランゴール州開発公社、キャリー島を湾岸都市として開発へ

【クアラルンプール】 セランゴール州開発公社(PKNS)は、同州キャリー島を湾岸都市として開発する計画を進めている。マフムド・アッバス最高責任者が明らかにした。

マフムド・アッバス氏は、経済紙「エッジ」の取材に対し、PKNSは現在、キャリー島での新港建設に必要な面積について調査しているとし、州政府から開発用地として水面下の土地の所有を認められたと述べた。

新港の岸壁の総延長は約16キロメートル(km)で、クラン港のコンテナヤードを上回る。コンテナ処理能力も、拡張工事が進められているクラン港以上の年間3,000万TEU(20フィート標準コンテナ換算)になると想定されている。開発は4期に分けて行われ、第1期は2030年、全体としては2060年までに完成する予定。開発費用は約280億リンギとなる見込み。アンソニー・ローク運輸相が昨年9月に同港の実現可能性調査の完了を発表し、同10月にはセランゴール州のアミルディン・シャリ首相が開発に向けた提案依頼を行う準備ができていると述べていた。

マフムド・アッバス氏はまた、埋め立て地に建設される新港は、総面積1万3,000ヘクタールのキャリー島の一部しか使用しないため、別途湾岸都市の開発も検討していると述べた。

(エッジ、8月20日)

疑わしい金融取引を検出する「国家詐欺ポータル」運用開始

【クアラルンプール】 中央銀行バンク・ネガラのアブドル・ラシード総裁は20日、人工知能(AI)を活用して疑わしい金融取引を検出する「国家詐欺ポータル(NFP)」の運用を開始したと発表した。

アブドル・ラシード総裁は、NFPはモジュール設計を採用することで継続的に機能を改善できるようにしていると説明。現在、16の金融機関が参加しているが、さらに多くの機関が近く参加する予定だとした。

同氏はマレーシアでは金融詐欺による損失は金融取引全体から見ると比較的小さいものの、国内の金融システムへの信頼性を確保するためにも、脅威を特定し克服することが必要だと指摘。サイバー犯罪は今後もテクノロジーを悪用することが予想されるため、金融詐欺との戦いは継続するとし、テクノロジーの最適化、官民協力体制の育成、消費者の権利強化という3方面から詐欺撲滅を図っていくとした。

NFPの運用開始により、盗まれた資金を複数の金融機関や決済システムにまたがり追跡する機能が自動化されるため、国家詐欺対策センター(NSRC)の機能が強化される。また、被害者がNSRCホットラインに連絡することで、盗まれた資金のシステム外への移動も防ぐことができるようになり、資金を取り戻せる可能性も高まったという。

(ザ・スター電子版、ベルナマ通信、8月20日)

マレーシアはAI技術トップ20カ国入りを目指す=首相

【シャアラム】 アンワル・イブラヒム首相は19日、マレーシアは、人工知能(AI)技術でトップ20カ国入りを目指しているとし、目標達成に向け、AI関連技術の研究者、開発者、政策決定者が協力するよう呼びかけた。

アンワル首相は同日マレーシア工科大学(UTM)シャアラム校で開催された国際会議でのスピーチで、責任ある倫理的なAI開発促進には関係者間の協力が不可欠だと言明。政府は国家AIエコシステムの構築に向け取り組んでいるとし、AI研究教育センターや独自のAIクラウドシステムの開発を計画しているとした。

一方、ディープフェイク技術を用いた偽画像・動画など、AIの危険な側面にも注意が必要だとし、政府は政策や法律を通じて、AIが社会に及ぼす悪影響を最小限に抑え、強固なAIガバナンスを確保することを目指すと述べた。具体的には、ASEAN(東南アジア諸国連合)内でのデジタル経済協力、個人情報保護法の改正、サイバーセキュリティ法案やデータ共有法案の策定に取り組んでいるという。

(ビジネス・トゥデー、エッジ、ベルナマ通信、8月19日)

ペナン港で浮体式太陽光発電所の建設計画が浮上

【ジョージタウン】 ペナン港で、停泊中の国際クルーズ船に再生可能エネルギー(RE)を供給するための、浮体式太陽光発電所の建設計画が浮上している。英字紙「ザ・スター」が報じた。2030年以降、RE電力が供給できない港湾にはクルーズ船が寄港しなくなる可能性があるためだという。

ペナン港沖のサッカー場3個分に相当する4ヘクタールに及ぶエリアに浮体式太陽光発電所を設置するというもので、晴れた日には6,000世帯に電力を供給できる規模の30メガワットの発電量が見込まれるという。ペナン本土沖のノースバターワース・コンテナターミナル(NBCT)とデルマガ・ダラムの間の海域が候補地となっている。今後、事業化調査が行われるという。

スウェッテナム・ピアクルーズ・ターミナル(SPCT)に寄港するクルーズ船にRE電力を供給することが狙いで、RE電力の利用を希望する国際クルーズ会社にとってペナン港が魅力的なものとなると期待されている。

港湾におけるRE電力供給は、国際海事機関(IMO)が2030年を目標にしている温室効果ガス(GHG)40%削減の達成に向け、船舶に供給する電力の少なくとも5-10%削減を目標に掲げており、RE供給インフラがない港湾にはクルーズ船が寄港しなくなる可能性があるという。

(ザ・スター、マレー・メイル、8月20日)

マレーシア、個人認証およびデジタルIDにワールドコインを採用

【クアラルンプール】 デジタル省傘下の研究開発組織マレーシア・マイクロエレクトロニクス・システム研究所(MIMOS)は16日、仮想通貨(暗号通貨)のワールドコイン財団、その開発組織であるツールズ・フォー・ヒューマニティ(TFH)、電子政府サービスの現地企業MyEGサービシズとの間で覚書(MoU)を締結した。仮想通貨「ワールドコイン」の虹彩スキャン技術を個人認証やデジタルIDに活用する。

「ワールドコイン」は、生成人工知能(AI)開発に携わる米オープンAIの創設者であるサム・アルトマン氏らが立ち上げたもの。MIMOSは、TFHの最先端虹彩認証デバイス「オーブ」を活用することで、国内のデジタル認証を改善できるとしている。また、「オーブ」の共同製造、ワールドチェーンとマレーシアの国家ブロックチェーン・インフラの接続、ワールドコイン技術のオープンソース利用などについても検討する。

TFHはオーブやアプリに関する技術知識とサポートを提供し、MyEGは技術統合とハードウェア展開に取り組む。

ワールドコインは欧州やラテンアメリカなどでサービス拡大を行っているが、一部の国では生体認証データの収集に関する懸念も高まっており、香港やスペインなどでプライバシー条例違反の疑いでサービス停止に至っている。一方、ワールドコインは5月、生体認証データシステムを一般公開することで、ユーザーが古い虹彩コードを安全に削除できると発表し、一時サービスを停止していたケニアでは利用が再開されている。

(コインテレグラフ、クリプトステート、8月16日)

シンガポール大手行のUOB、一部業務をマレーシアに移管

【クアラルンプール】 シンガポール大手銀行の大華銀行(UOB)は、利益率維持を目的として、バックオフィス、ミドルオフィス業務の一部をマレーシアに移管する。

リー・ワイファイ最高財務責任者(CFO)の発表によると、2026年まで費用対収益比率の40%維持を図る。主にクアラルンプールに業務を移管する。シンガポールの経費が高いための決断だ。バックオフィス業務は顧客に直接、接する機会が特にない事務管理部門を、ミドルオフィスは経営企画や広報、マーケティングなど、直接部門がより高い成果を生むためにサポートする部門を指す。

東南アジア諸国連合(ASEAN)業務の拡大、金利収入以外の業務の拡大と合わせ、株主資本利益率(ROE)も同年まで14%前後の維持を図る。

UOBはASEANではインドネシア、マレーシア、タイ、ベトナムに注力しており、2026年には連結決算に占める利益の割合が30%に達すると予想している。また資産管理、トレードファイナンス、財務管理サービス部門の収益増を計画している。

(シンガポール・ビジネス・タイムズ、フィンテック・ニュース、8月15日)

中銀がメイバンクとCIMBに罰金、長期のシステム中断で

【クアラルンプール】 中央銀行バンク・ネガラ(BNM)は14日、長期にわたるサービス中断が金融サービス法違反にあたるとして、国内大手銀行であるメイバンクとCIMBにそれぞれ432万リンギ、76万リンギの罰金を科したと発表した。

BNMは声明で、全金融機関が業務中断に対する高レベルの技術的回復力を維持し、金融サービスの継続的な利用を保証することを期待しているとし、金融機関が規制当局の期待に達しない場合には、適切な監督および執行措置をためらうことなく講じると強調した。また、ダウンタイムへの適切な対応やコンプライアンス違反回避の失敗、サービス中断の深刻度や影響、過去の執行措置の履歴などを考慮し、罰金額を定めたとしている。両行はすでに罰金を支払ったという。

BNMによると、今回は、「2013年金融サービス法」、「2013年イスラム金融サービス法」、「テクノロジー・リスク管理(RMiT)規約」への違反となる。RMiT規約では、予定外のダウンタイムを12カ月間累計で最大4時間、1回あたり120分以内までに抑えることが義務づけられている。

CIMBは2024年4月にシステム障害によるサービス中断が発生し、オンラインバンキングやATM、デビットカード、クレジットカードが一時使えなくなった。メイバンクは2023年6月―2024年5月にかけ、複数回のシステムダウンを発生させていた。両行は、システム強化によりシステムダウンを最小限に抑える措置を講じたとしている。

(エッジ、マレー・メイル、マレーシアン・リザーブ、ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、8月14日)

物流のテレポート、サバ州に輸出向け冷凍貯蔵施設を設立

【コタキナバル】 キャピタルAの貨物・物流部門であるテレポートは、サバ州で輸出向けの冷凍貯蔵施設を設立したと発表した。今回が1カ所目で、同州内で合計3カ所の建設を予定しているという。

キャピタルAのトニー・フェルナンデス最高経営責任者(CEO)は、新施設は、サバ州の農家や漁業従事者が中国や日本の市場に農産物・水産物を販売するのを支援するものだと説明。サバ州がブルネイ・インドネシア・マレーシア・フィリピンから成る東ASEAN(東南アジア諸国連合)成長地域(BIMP-EAGA)における物流の中心になり、アジアと豪州間の物流を促進できると述べた。生産拠点である同州タワウやサンダカンにも冷凍貯蔵施設を建設していくとしている。

フェルナンデスCEOはまた、サバ州内に航空機の保守、修理、オーバーホール(MRO)施設を設置する計画もあるとし、ジョホールバルには14ベイの格納庫があるが、さらに28ベイが必要であるため、サバ州での設置に向け、州政府と協議すると述べた。
(マレー・メイル、8月13日)

技術革新指数の順位引き上げを推進、独自の指数を作成へ

【クアラルンプール】 政府はグローバル・イノベーション・インデックス(GII)の順位引き上げを目指し国全体での取り組みに着手する。チャン・リーカン科学技術革新相が12日、マレーシア商業化サミットで発表した。

チャン氏は省としてマレーシア独自のイノベーション・インデックスの開発に取り掛かっていると明らかにした。戦略策定を支援するツールとし、GII順位の上昇につなげる。行政部門、産業界、学術界にイノベーションを促す。世界知的所有権機関が2023年末に発行したGIIでマレーシアは36位だった。GIIでは132の経済圏のイノベーションエコシステムを調査し、ランキングを作成している。1位から5位は、スイス、スウェーデン、米国、英国、シンガポール。

アンワル・イブラヒム首相は「順位はマレーシアの潜在性を反映していない。あらゆる方法を講じ順位を上げるとの決意、努力が必要だ」と言明。さらにスタートアップのためのビジネスエコシステムでマレーシアはまだ多くの機会をとらえていないとし、科学技術革新省に国内だけでなく、国外でのネットワーク構築も促した。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、8月13日、ベルナマ通信、8月12日)