米半導体大手のエヌビディア、YTLと協業でAIインフラ構築へ

【クアラルンプール】 半導体大手の米エヌビディアは8日、YTLグループと協業し、2024年半ばまでにマレーシアに人工知能(AI)インフラを構築すると明らかにした。同社のジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)のマレーシア初訪問に合わせ、YTLが発表を行った。

AIインフラは、ジョホール州のYTLグリーン・データセンター・パークに設置される予定。YTLグリーン・データセンター・パークは、YTLパワーが開発した500メガワットの施設で、電力はすべて太陽光エネルギーで賄われる。YTLパワーの通信子会社YTLコミュニケーションズがAIインフラの管理を担当する。

YTLは声明で、全国の科学者、開発者、新興企業にグリーンでエネルギー効率に優れたAIインフラを提供するだけでなく、一般消費者向けにもAIを活用したアプリやサービスを提供していくと述べた。エヌビディアの高速な画像処理用演算プロセッサ(GPU)やAIエンタープライズ・ソフトウェアを導入し、マレー語の大規模言語モデル(LLM)を開発する計画もあるとしている。

フアンCEOは2日間のマレーシア滞在でアンワル・イブラヒム首相やテクノロジー業界関係者と会談を行った。なお、今月5日には日本を訪問し、日本に研究開発拠点を設置する意向を示している。10日にはベトナムも訪問し、ベトナム拠点の設立を目指すと発表した。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、12月11日、ザ・スター、12月9日)

ケダ州、来年からレアアースのロイヤルティ収入見込む

【アロースター】 ケダ州政府は、2024年より同州シクの希土類元素(レアアース、REE)採掘に伴うロイヤルティ収入を見込んでいる。ロイヤルティ率は15%に設定している。

ムハンマド・サヌシ州首相が26日に行った、2024年度の同州予算案発表の中で明らかにした。同州は2022年8月に希土類元素の抽出に関する承認を与えており、2024年半ばには収益を上げ始めると見込まれている。

同州は連邦政府からペラ州に次ぐ2番目の希土類元素探査承認を受けて、パイロットプロジェクトの対象州として選ばれた。ケダ州の希土類元素の総埋蔵量は120万トンと推定されており、鉱物地球科学局の推定では25万トンの希土類鉱物採掘が可能とみられる。
(マレー・メイル、エッジ、ベルナマ通信、11月26日)

MATRADE、中堅企業のドイツ視察ツアーを実施

【ペタリンジャヤ】 マレーシア外国貿易開発公社(MATRADE)は、マレーシアの中堅企業(MTC)を対象とした5日間のドイツ市場視察ツアーを開始したと発表した。欧州連合(EU)が6月に可決した企業持続可能性デュー・デリジェンス指令(CSDDD)に沿った、持続可能な調達拠点としてのマレーシアのブランド強化を目指す。

視察には、機械設備、プラスチック・ゴム部品、電気・電子産業のマレーシアMTC6社が参加する。11月26ー30日の日程で、ベルリン、ボルフスブルク、フランクフルトの3都市でドイツ企業のシーメンスやフォルクスワーゲン、サッカークラブのVfLボルフスブルクを訪問し、ドイツ企業の持続可能な調達要件を学び、新たな輸出機会を発見し、マレーシアの産業能力を示す。また、ドイツの貿易業者や政策立案者、業界団体、中小企業との間のネットワークづくりも行う。

MATRADEのアブ・バカル・ユソフ副最高責任者は、MTCが持続可能性への対応を進めることで、ドイツのバイヤーに対し、より付加価値を提案できるようになると述べた。

CSDDDは人権・環境双方の観点から、持続可能で責任のある企業行動を促進することを目的としたもので、EU企業と取引のある海外サプライヤーも自社の労働条件や環境保護に関する調査報告が必要となる。
(ザ・サン、11月28日)

ペナン州政府、海底トンネルの設置を検討

【ジョージタウン】 ペナン州は23日、北バタワース・コンテナターミナル(NBCT)拡張計画がペナン港湾委員会(SPPP)により12月に最終決定された後、海底トンネルの設置について検討することを明らかにした。

海底トンネルの設置は、交通渋滞解消に向け計画されている、総額460億リンギのペナン交通マスタープラン(PTMP)の一環。トンネルの全長は6.5キロメートル(km)、設置費用は63.4億リンギ。

州インフラ・交通・デジタル経済委員会のザイリル・キール・ジョハリ委員長は、船舶航行の安全に向け(確保が重複していたので短くしました)、北方海域の船舶航行幅2.2kmを確保する必要があると説明。また、船舶が大型化する傾向があるため、入出港する船舶の大きさは積載量にして1万3,000ー1万5,000TEU(20フィート標準コンテナ換算)規模に達し、喫水は最大16メートル(m)になると予想されるため、安全な水深は23mと想定しておく必要があるとした。海底トンネルは、追加埠頭の拡張の障害にならないような線形にする必要があるとしている。

ザイリル氏はまた、ペナン島南部における人工島造成計画「ペナン・サウス・アイランド(PSI)」プロジェクトの進捗状況について、7月21日に環境管理計画が承認された後、シリコン島(旧A島)の埋め立てが9月に開始されたと言明。プロジェクト用地を示すブイや、埋め立て作業中の沈泥拡散を防ぐシルトカーテンが設置されたと述べた。砂の充填作業も開始され、現在までに島の敷地には約3エーカーの土地が形成されたという。第1期の埋め立て工事は2025年12月に完成する予定だとしている。
(ザ・スター電子版、エッジ、11月23日)

越境運送の円滑化を来年開始、500台に許可証発行へ=運輸相

【クアラルンプール】 アンソニー・ローク運輸相は21日、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国における貨物の移動を促進する「物品の越境の円滑化に関する枠組協定(AFAFGIT)」について、マレー半島部で2024年1月1日から実施すると発表した。

AFAFGITの運用に向け、ASEAN税関通過システム(ACTS)を導入する。ACTSの導入により、原産国、経由国、目的国まで、途中での再申告や車両乗り換えの必要がなくなる。ASEAN加盟各国は、ASEAN物品輸送車(AGVCB)許可証を500件発行する資格を有し、全加盟国の同意により発行数を増やすことも可能。

ローク運輸相は、国内では公共陸運局(APAD)がAGVCB許可証を発行し、関税局がACTSの運営を担当すると述べた。2024年1月1日以降、条件を満たした貨物自動車運行会社は、APADにオンライン申請書を提出することができる。また、東マレーシア(サバ、サラワク、ラブアン)では、ブルネイ、インドネシア、フィリピンのACTS導入後に運用を開始するとした。

AFAFGITは、ASEAN自由貿易地域(AFTA)の実施に向け、輸送・貿易を促進する目的で1998年12月に締結されている。
(エッジ、ベルナマ通信、マレーシアン・リザーブ、11月21日)

エアアジアX、注意市場銘柄「PN17」の指定が解除

【クアラルンプール】 中・長距離格安航空会社のエアアジアXは21日、早急な財務改善が求められる注意市場銘柄「PN17」の指定について、ブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)がエアアジアXによる解除要請を受け入れて、22日午前9時付けで解除すると発表した。

エアアジアXによると、ブルサはエアアジアXグループが2023年度第3四半期(7ー9月期)の純利益を計上することを条件に、同グループの「PN17」指定解除の訴えを許可し、正常化計画の実施免除を決めた。

エアアジアXの7ー9月期の売り上げは、海外旅行の回復を背景に前年同期の約6倍に当たる6億4,836万リンギとなり、純利益は556万リンギだった。

エアアジアXは2021年11月、監査法人、アーンスト・アンド・ヤング(E&Y)が財務監査において意見不表明を決めたことから「PN17」指定を受け、債務再編と資金調達を進めていた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、11月22日、エッジ、11月21日)

サイムが病院事業から撤退、コロンビアと株式売買契約

【クアラルンプール】 複合企業のサイム・ダービーは10日、合弁会社であるラムゼイ・サイムダービー・ヘルスケア(RSDH)の持ち株売却を通じて、ヘルスケア事業から撤退すると明らかにした。

同日、完全子会社のサイム・ダービー・ホールディングスが、売却先のコロンビア・アジア・ヘルスケアと株式売買契約を締結した。サイム・ダービーは、関連規制当局の承認を条件として、売買取引が2024年第3四半期に完了すると見込んでいる。

RSDHは、2013年にサイム・ダービーと豪州ラムゼイ・ヘルスケアが折半出資で設立した合弁会社。病院をマレーシアで4カ所、インドネシアで3カ所運営している。総売却額はラムゼイの出資分を含めて57億リンギで、サイム・ダービーは20億リンギあまりの売却益を得るとみられる。

サイム・ダービーは、今後は中核事業である自動車および工業製品の販売に注力していくとした上で、ヘルスケア事業売却により経営資源を中核事業に集中できるようになるとしている。

コロンビア・アジアは、マレーシアを拠点とする国際民間ヘルスケア企業で、コロンビア・アジア・ヘルスケア (CAHSG) の完全子会社。CAHSGの親会社はHLTヘルスケア・ホールディングスで、HLTヘルスケアには、マレーシアの複合企業ホン・リョン・グループとTPGが管理するファンドが所有・管理するワン・ヘルス・ホールディングス(OHH)が共同出資している。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ザ・スター、11月11日)

プロトンの新型セダン「S70」、月間2千台を目標

【タンジョン・マリム】 国民車メーカー、プロトン・ホールディングスは、10月31日に出荷が始まった新型Cセグメントセダン「S70」について、月間販売台数2,000台を目標としていることを明らかにした。

ロスラン・アブドラ副最高経営責任者(CEO)によると、予約受付は11月1日から手付金500リンギで開始し、最初の1週間で予約台数が400台に達した。発売日や価格については後日発表するとしている。

「S70」は、2016年8月に「ペルソナ」が発表されて以来、プロトンが発表した初の新型のセダン。スポーツ多目的車(SUV)の「X50」、「X70」と同じく、プロトンに49%出資する吉利汽車をベースに開発したもので、2021年8月に中国で発売された4代目「エムグランド」がベース車となっている。

一方、配線の欠陥によるリコールが発表されていた同社初のハイブリッド車であるDセグメント・スポーツ車(SUV)「X90」については、対象車両の93%ですでに修理が完了した。「X90」の累計販売台数は約3,000台に上っている。
(ザ・スター、11月10日、マレーシアン・リザーブ、ベルナマ通信、11月9日)

リンギが値上がりに転じる、1ドル=4.3リンギの年末予想も

【クアラルンプール】 マレーシア・リンギが8日まで、7日を除き3日連続で対米ドル相場で上昇に転じた。これ以上の米国の利上げは年内にはないとの市場予想が背景にある。先週末の相場1米ドル=4.7265/7320リンギに対し、6日は4.6340/6400リンギだった。

米連邦準備理事会(FRB)は10月31 日と11月1日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を5.25─5.50%で据え置き、パウエルFRB議長は、堅調な経済統計のみを根拠に金利を上げる必要を認めないと発言していた。

SPIアセット・マネジメントのスティーブン・イネス代表は「FRBは再利上げを行わないと市場は確信しており、米国との金利差が拡大しないためリンギが買われた。マレーシア中央銀行バンク・ネガラ(BNM)への圧力も緩和されるため、BNMは景気刺激の方向に転じることができる」と述べた。

イネス氏は年末までに1米ドル=4.55-4.60リンギのリンギ高になると予想しているが、さらに強気なのが政府系金融機関MIDFの投資銀行部門で、同4.3リンギを予想している。ほかの新興市場通貨も値上がりするという。

バンク・ムアマラット・マレーシアのアフザニザム主任エコノミストによれば、リンギ上昇はFOMCの決定が主因で、来年はFRBが利下げを開始するとの予想も影響したという。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、11月8日)

年末にかけリンギは対米ドルで上昇、MIDF見解

【クアラルンプール】 政府系金融機関MIDFの投資銀行部門は、対米ドル相場で10月に過去最低を更新した通貨リンギは、年末にかけて上昇するとの分析を示した。年末予想は1米ドル=4.3リンギ。

MIDFによると、米国の金利はほぼピークに達し、現在の誘導目標金利が長期にわたり維持される見通しのため、短期資金が新興市場に流入し、新興市場通貨の値上がりが予想されるという。

マレーシア中央銀行バンク・ネガラ(BNM)は翌日物政策金利(3%)を維持する見通しで、米国の誘導目標金利とマレーシア金利との差はこれ以上拡大しない見通しで、リンギ上昇要因となる。

リンギ上昇予想のほかの根拠としてMIDFは、強じんさを示す国内経済、回復の兆しが見える中国経済、一次産品価格の上昇、電気・電子製品輸出の増加を挙げた。

一方で、米国債利回りの上昇、パレスチナ・イスラエル戦争を背景に、リスク回避から新たなドル買いが起こる可能性もあるという。

リンギは10月3日、1米ドル=4.79リンギまで値下がりしたが、11月に入り持ち直している。

リンギの今年の下落幅は7.5%で、リンギより下落幅が大きかったのは円の13.6%のみ。
(ザ・サン、ザ・スター、11月7日)