ボルネオ横断鉄道、来年に実現可能性調査を実施

【ミリ】 ハスビ・ハビボラ副運輸相は10月31日、ボルネオ横断鉄道について、来年実現可能性調査を開始する予定だと明らかにした。連邦政府が調査費用を負担する。

ボルネオ横断鉄道の建設は、サラワク州のアバン・ジョハリ首相が今年5月、連邦政府に提案したもので、サバ・サラワク両州とボルネオ島のインドネシア領地域を結ぶもの。実現すれば、ボルネオ島での初の鉄道路線かつ東南アジアで最長の路線となる。インドネシアの新首都ヌサンタラや主要港を結ぶため、大きな経済効果も見込まれるという。

ハスビ氏は、首相府経済企画局(EPU)に実現可能性調査の予算請求を行っており、現在、首相府からの承認待ちの状態だと説明。承認を得られ次第、サバ・サラワク両州の州政府と協議の上、調査を進めると述べた。また、海外の鉄道専門家から調査に関する提案もすでに受けており、本プロジェクトは海外からの関心も集めているとした。
(ザ・バイブス、10月31日)

政府機関のキャッシュレス化、セランゴールとペナン州が90%超

【クアラルンプール】 銀行間決済システムを運営するペイメント・ネットワーク・マレーシア(ペイネット)によると、政府機関におけるキャッシュレス決済の導入率は、セランゴールとペナンの両州ですでに90%以上に達している。

一方、他州ではまだ導入率が低く、ケダ州が80%、ペルリス州が60%、ジョホール州が50%、ペラ州が49%にとどまっている。セランゴール州やケダ州では州首相自らがキャッシュレス決済の推進活動を行うなど、トップダウンでの導入推進が功を奏したという。公共部門全体のデジタル決済普及率は81.3%に達した。

政府機関のキャッシュレス化に協力しているペイネットのファルハン・アフマド最高経営責任者(CEO)は、キャッシュレス決済が拡大することで、2032年までに国内総生産(GDP)への貢献が2.6%増加し、雇用人数は9万2,000人増加、年間賃金上昇率0.16%、年間生産性向上率0.15%が見込まれると述べた。

100%のキャッシュレス決済導入を達成した8つの政府機関の一つである、出入国管理局のザカリア・シャアバン副局長は、キャッシュレス決済導入当初は、一般市民からの反発や地方におけるネットワーク・インフラの不足が問題となっていたが、新型コロナウイルス「Covid-19」の感染が急拡大した2020年より完全導入が進み、そのおかげで、これまで悩まされてきた、小切手の不渡り、不正決済、現金損失などの問題がすべて解消したと述べた。
(ザ・サン、ザ・スター、ニュー・ストレーツ・タイムズ、10月31日、マレーシアン・リザーブ、10月30日)

ジョホール・シンガポール経済特区、実現可能性調査を実施へ

【シンガポール】 シンガポールを訪問したマレーシアのアンワル・イブラヒム首相と、シンガポールのリー・シェンロン首相は10月30日、共同で会見を開催。ジョホール・シンガポール経済特区(SEZ)の設立に向けて合意したとした上で、両国間のエコシステムの改善を図るため実現可能性調査を実施し、調査が終わり次第、来年初めにも覚書を締結すると明らかにした。

共同声明によると、イスカンダル・マレーシア合同閣僚委員会(JMCIM)が実現可能性調査を実施する。SEZでは国境を越えた物品や投資、人々の流れを改善し、両国の補完的な強みを活用して、経済の連結性を促進する。

アンワル首相は、来年初めの覚書締結に向けて、可能な限りプロセスを迅速化するとした。

SEZの設立は9月に発表されたもので、SEZ設立に向けて、特別タスクフォースが設立されていた。
(ザ・スター、ニュー・ストレーツ・タイムズ、ザ・サン、10月31日、ベルナマ通信、マレー・メイル、マレーシアン・リザーブ、10月30日)

マレーシアには政策実行を評価する手段が必要、世銀の松田専門官

【クアラルンプール】 世界銀行のカントリーマネジャー松田康彦氏は28日、青年経済フォーラムで、マレーシアが「マダニ経済政策」の目標を達成するには、政策を評価する手段が必要だと語った。

「マダニ経済政策」の「マダニ」とは、持続可能性、繁栄、革新、尊敬、信頼、思いやりのマレー語の頭文字から付けたアンワル政権の政策理念。

松田氏は「中小企業向けのプログラムは連邦、州政府の両方で101件あるが、これらの計画が目的を達成しているかを精査する手段を知らない」と述べた。

その上で、プログラムが実行されているかを確かめる作業が必要で、そのための唯一の方法は、実施状況をよく見て、その効果を評価することだと語った。

「マダニ経済政策=国民力の強化」の下、政府は10年以内に世界経済大国上位30位入りを目指す。

このほか、世界競争力指数で12位以内、国内総生産(GDP)比での従業員給与の割合を45%に引き上げ、女性の労働力参加を60%に引き上げ、健康、教育、生活水準の側面から国の発展度合いを測る人間開発指数で世界25位内、などの目標を掲げている。
(マレーシアン・リザーブ、10月28日)

リンギの対シンガポールドル為替、過去最安値水準に

【クアラルンプール】 通貨リンギの対シンガポール・ドル為替が下落を続けており、24日午前には過去最安値となる1シンガポール・ドル=3.5086リンギを記録。初めて3.5リンギ水準を突破した。

SPIアセット・マネジメントのスティーブン・イネス氏は、「シンガポール金融管理局(MAS)がマレーシア中央銀行バンク・ネガラ(BNM)に比べてより積極的な政策をとっているからだ。これは基本的にマレーシアの中国経済への依存度がより大きくなった結果だ」と分析。シンガポールの銀行が堅調なことと、中国経済の減速がマレーシアにとって逆風となっており、比較的安全な通貨としてシンガポール・ドルが魅力を増していると説明した。

CIMBバンクやRHBバンクなどのマレーシアの銀行がシンガポールドル建てで4.0%という高い定期預金金利を打ち出しており、2.0ー2.75%という低い金利のマレーシアから資金が流れていることもシンガポール・ドルに対するリンギ安に拍車をかけているという。

UCSIマレーシア大学のリュー・チーヨーン准教授は、シンガポールドルに対するリンギ安は経済成長、インフレ、金利差の違いに起因する可能性があると指摘。長期的には事業運営の拠点に関するシンガポール企業の決定に影響を与える可能性があり、事業コストを安くするためマレーシアへの投資を増やす可能性があると述べた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、10月25日)

記録的リンギ安も危機には陥らない=中銀総裁

【クアラルンプール】 通貨リンギの対米ドル安がアジア通貨危機以来の安値となっている件について、中央銀行バンク・ネガラのアブドル・ラシード総裁は、「マレーシアには回復力のある経済、強固な銀行システム、強力な対外セクターがあり、それゆえ危機に陥っていない」と述べた。

アブドル・ラシード総裁は、第3四半期の国内総生産(GDP)成長率の事前予測値が3.3%と第2四半期の2.9%を上回るなど経済が安定成長していることを指摘した上で、「マレーシアには、アジア通貨危機の時と違って、高水準の資本と健全な資産に支えられた強固な銀行システムがあり、マレーシアの経済成長を支えるために経済に資金を提供する用意がある」と言明。加えてマレーシアの資本、対外部門も非常に好調で、資本収支は黒字だと述べた。

その上でアブドル・ラシード総裁は、リンギ安には米国の金融引き締めや好調な経済指標のほか、地政学的な展開を含む世界的な展開も影響を及ぼしているが、世界のほぼすべての通貨、特に新興国通貨が軒並み米ドルに対して値を下げており、マレーシア・リンギだけに限ったものではないと指摘。 中銀は必要に応じてリンギ高に誘導する様々な策を持っているとし、こうした方策によりリンギを秩序ある方法で安定させ、それに伴いビジネス活動が促進されるよう必要な措置は何でもとるつもりだと述べた。

米国の10年国債の利回【クアラルンプール】 通貨リンギの対米ドル安がアジア通貨危機以来の安値となっている件について、中央銀行バンク・ネガラのアブドル・ラシード総裁は、「マレーシアには回復力のある経済、強固な銀行システム、強力な対外セクターがあり、それゆえ危機に陥っていない」と述べた。
アブドル・ラシード総裁は、第3四半期の国内総生産(GDP)成長率の事前予測値が3.3%と第2四半期の2.9%を上回るなど経済が安定成長していることを指摘した上で、「マレーシアには、アジア通貨危機の時と違って、高水準の資本と健全な資産に支えられた強固な銀行システムがあり、マレーシアの経済成長を支えるために経済に資金を提供する用意がある」と言明。加えてマレーシアの資本、対外部門も非常に好調で、資本収支は黒字だと述べた。

その上でアブドル・ラシード総裁は、リンギ安には米国の金融引き締めや好調な経済指標のほか、地政学的な展開を含む世界的な展開も影響を及ぼしているが、世界のほぼすべての通貨、特に新興国通貨が軒並み米ドルに対して値を下げており、マレーシア・リンギだけに限ったものではないと指摘。 中銀は必要に応じてリンギ高に誘導する様々な策を持っているとし、こうした方策によりリンギを秩序ある方法で安定させ、それに伴いビジネス活動が促進されるよう必要な措置は何でもとるつもりだと述べた。

米国の10年国債の利回りが5%に達したことを受け、リンギの対米ドル・為替レートは23日18時時点で、1米ドル=4.7900/7975リンギまで値を下げた。

サイバーセキュリティ専門家、1.2万人が不足=通信相

【クアラルンプール】 マレーシアにはサイバー攻撃の脅威に対応できるサイバーセキュリティの専門家が約1.2万人不足している。ファーミ・ファジル通信デジタル相が明らかにした。

ファーミ大臣は、国営放送「ベルナマTV」のインタビューで、国内にサイバーセキュリティ専門家が約2.7万人必要だが、現状では1.5万人しかおらず、1.2万人が不足していると説明。企業、特にデジタル経済分野の企業はサイバーセキュリティを最優先しており、専門部門の早急な設立を望んでいると述べた。企業規模にもよるが、1企業あたり20ー30人は専門家が必要で、特に中小企業における人員補給が急務となっていると述べた。

ファーミ大臣はまた、通信デジタル省は、サイバーセキュリティ・マレーシア(CSM)を通じ、サイバー攻撃から企業を守るための取り組みを行っているとし、国公立および民間の高等教育機関の協力や、海外からの専門家の招聘によって攻撃に対抗できると述べた。2024年度予算案の中にもサイバーセキュリティ専門家の海外からの誘致に関する項目が含まれているとしている。
(デイリーエクスプレス・オンライン、10月22日、ベルナマ通信、10月21日)

豪ライナス、炭酸塩処理工場を除くマレーシア事業を一時停止へ

【クアラルンプール】 パハン州で希土類元素(レアアース)精製工場を運営する豪ライナス・コーポレーションは、混合レアアース炭酸塩処理工場を除くマレーシアでの全事業の操業を11月中旬から一時停止する。

ライナスは最新の四半期報告の中で、操業停止中は西オーストラリア州カルグーリーにおけるレアアース処理施設立ち上げ事業を支援するためにマレーシアの主要なC&L(クラッキングおよび浸出)要員が派遣されると説明。あくまで操業停止は一時的なものだと強調した。

ライナスはまた、ネオジム・プラセオジム(NdPr)の生産能力を年間約1万500トンに増やすために、下流事業のアップグレードを実施する計画だと明らかにした上で、マレーシアでの事業ライセンスが更新され、来年1月1日からランタノイド精鉱の継続的な輸入と加工が許可される場合に必要な追加能力になると説明。継続的な輸入と加工が認められれば、分解・浸出施設の保守作業も引き受けると述べた。

ライナスの事業認可を巡っては、マレーシア原子力庁(AEM)傘下の原子力認可委員会(AELB)が今年3月、向こう3年間の更新を承認したが、更新条件にランタノイド精鉱の輸入加工の禁止、パハン州ゲベンの施設では中間材料のみを精製することなどが盛り込まれていた。これに対しライナスは不服を申し立てた上で、更新条件が7月1日時点で撤廃されていない場合、マレーシアでの事業を一時的に停止するか、生産期間短縮を行う計画だと明らかにした。

ライナスの不服申し立ては却下されたが、チャン・リーカン科学技術革新相は世界のレアアースのサプライチェーンへの影響を避けるためC&L事業期限を12月31日まで6カ月間延長する決定を行っていた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、ロイター、10月20日)

リンギが最安値を更新、一時的に1ドル=5リンギの可能性も

【クアラルンプール】 マレーシアの通貨リンギは19日、対米ドル為替で1米ドル=4.7703リンギと過去最安値を更新した。前回の最安値は、アジア通貨危機が発生した25年前の1998年で、1米ドル=4.725リンギだった。対米ドル相場で今年、円に次ぐ大幅下落となっている。

リンギ下落はイスラエル・ハマス紛争などを背景に、安全資産としての米ドルに資金が流れているためで、最大の貿易相手国である中国の経済減速もあって、マレーシアの輸出が9月まで7カ月連続して減少したことも要因となっている。

サンウェイ・ビジネス・スクールのイア・キムレン教授は、一層の利上げ観測を背景に米ドルは値上がりを続けており、1米ドル=5リンギまでリンギは下がる可能性があると指摘。ただ米経済の基礎的条件は弱まっており、米ドルが現在の水準を維持することはできず、景気の冷え込みとともに下落し、リンギを含むほかの通貨が米ドルに対し値上がりしていくと述べた。

マレーシア科学技術大学のジェフリー・ウィリアムズ教授も同様に、1米ドル=5リンギまで下落する可能性があるとの意見だが、これは地政学的な不確実性とより安全な市場に投資が向かうための一時的なものだとし、長期的には4.0-4.5リンギの範囲で推移するとみている。
(フリー・マレーシア・トゥデー、マレー・メイル、10月19日)

独系物流企業DHLサプライチェーン、1.3億ユーロを投資

【バヤンレパス】 独系物流企業DHLサプライチェーンは、マレーシアに1億3,100万ユーロ(約6億5,107万リンギ)の投資を行う計画を明らかにした。

同社の東南アジアへの投資額としては最大となる。近隣国に対しては、シンガポールに1億400万ユーロ、フィリピンに8,000万ユーロ、インドネシアに3,500万ユーロを投じる計画で、投資総額は3億5,000万ユーロとなる見込み。

具体的には、ペナンに2カ所、クアラルンプールに1カ所、ジョホールバルに1カ所、新施設を設置し、倉庫容量を現状の21万7,300平方メートルから11万3,000平方メートル増加させる。ペナン州バヤンレパスに建設中のペナン・ロジスティクス・ハブ5(PLH5)に高度なオートメーション設備も導入する。PLH5は2024年に完成予定。クアラルンプールにも5G網などに接続したコントロールタワーを建設予定で、標準化・集中化された輸送サービスの提供を目指す。また、最新の自動パレット保管・検索システム、ロボット技術などのデジタル化への投資も継続し、デジタル化・自動化の推進により、2024年までに450人の雇用を創出する見込み。

DHLサプライチェーン東南アジアのアンドリース・レティーフ最高経営責任者(CEO)は、東南アジアにおける倉庫容量や労働力を増加させ、持続可能性への取り組みを拡大するため、今後5年間で投資を行っていくと説明。サプライチェーンの世界的な再編成が進んでおり、マレーシアでは特に製造業においてその恩恵を受けるとし、数多くの自由貿易協定に参加しているマレーシアは、調達先の多様化を目指す企業にとって魅力的な選択肢となっていると述べた。
(エッジ、10月17日)