貿易開発公社とハラル開発公社を統合、市場参入機会を拡大

【クアラルンプール】 マレーシア外国貿易開発公社(MATRADE)とハラル開発公社(HDC)が統合される。投資貿易産業省(MITI)が統合に向け作業委員会を設けた。より強固なハラル(イスラム法で許されたもの)産業を構築するとの意向は、アンワル・イブラヒム首相が新年度予算案の発表に際し言及していた。統合による職員の解雇はない。

MITIによると、統合でMATRADE の輸出能力がHDCの知識で補完され、一方でMATRADE が展開する世界49の事務所を通じ、マレーシアのハラル商品・サービスの海外市場参入が容易になる。

ハラル産業が拡大し、輸出が増加すれば、ハラル業に従事する中小企業にも恩恵が及び、雇用機会が生まれるという。

MITIは、統合による資源の最適利用、生産性の改善を見込んでおり、より強固なハラル産業が構築され、マレーシアの国際認知度も上がるとした。
(ビジネス・トゥデー、ベルナマ通信、エッジ、10月25日)

エアアジアXマレーシア、第3四半期の旅客数が34%増

【クアラルンプール】 中・長距離格安航空のエアアジアXマレーシアは、ネットワーク拡大と運航頻度の増加により、2024年第3四半期の旅客数が108万4,049人に達し、前年同期の80万7,004人から34%増加したと発表した。

同期の座席数は128万4,871席となり、前年同期の101万4,432席から27%増加した。有効座席キロ(ASK)は51億4,100万席となり、前年同期の44億1,200万席から17%増加。有償旅客キロ(RPK)は42億7,100万席で、24%増加した。ロードファクター(座席利用率)は84%となり、4ポイント改善した。

既存路線の半分で便数が増加したことに加え、新型コロナ禍で非稼働だった航空機の再稼働が貢献。中国・長沙線(週4便)、サウジアラビア・メディナ線(週2便)の運航を開始し、台湾・台北と大阪(週7便)路線を再開した。 また、中国線で最も収益性の高い杭州及び西安線をそれぞれ週6便と週4便に増やした。

9月30日現在の保有機数はエアバスA330型機18機で、16機が稼働中。
(エッジ、10月24日、エアアジアX発表資料)

サラワク州政府、今度は海洋温度差発電の研究を開始

【クチン】 水素生産など再生可能エネルギー(RE)に意欲的なサラワク州政府は、今度は海洋温度差発電に乗り出す計画で、アバン・ジョハリ州首相が経済企画部に事業化調査を指示した。

海洋温度差発電は、海の表層部の摂氏25-30度の温かい海水を温熱源とし、深さ800-1,000メートルの深層部にある摂氏5-7度の海水を冷熱源として使用する発電システム。火力発電や原子力発電と同様に蒸気を発生させてタービンを動かして、発電する仕組み。

アバン・ジョハリ氏はマレー人団体のイベントで「水力、太陽光発電に続く、持続可能なエネルギー源の追求だ。サラワク州は大陸棚が利用でき、マレーシア半島より優勢性がある」と述べた。

米国エネルギー情報局などによると、現在の技術では、表層海水と深層海水との温度差が20度以上ある亜熱帯、熱帯地帯でのみ発電が可能。世界では建設可能な国はおよそ100カ国で、発電ポテンシャルは1兆キロワットに達するという。天候に左右され、連続運転が困難な風力や太陽光に比べ、常に一定の電力を供給できる点が特徴だ。
(ボルネオ・ポスト電子版、ビジネス・トゥデー、フリー・マレーシア・トゥデー、10月26日)

 

KLセントラル駅再開発、2025年に開始=ローク運輸相

【クアラルンプール】 アンソニー・ロ―ク運輸相は、クアラルンプール(KL)の主要交通ハブであるKLセントラル駅の再開発に関する交渉が年内に完了し、2025年にも開始される見通しだと明らかにした。同プロジェクトについては昨年8月に閣議で了承されていた。

現在、プロジェクトのデベロッパーであるマレーシアン・リソーシズ・コーポレーション(MRCB)と首相府の官民パートナーシップ(PPP)部門が、再開発プロジェクトの民営化条件について最終調整している段階。ローク運輸相は「交渉が2―3カ月内に完了することを期待している。順調にいけば年末か来年初めまでにプロジェクトを開始できるだろう」と述べた。

KLセントラル駅の再開発費用は10億リンギと見込まれているが、公的資金は使わずMRCBが全額負担することになる。その見返りにMRCBは駅ビルの開発権と隣接地での複合開発権を得ることになる。

KLセントラル駅は、面積29.14ヘクタールの国内最大の交通ハブで、KL新国際空港(KLIA)、プトラジャヤ、首都圏のその他の主要経済地域を結ぶ鉄道が乗り入れている。10億リンギ以上の開発費をかけて2001年に開業し、当初は1日あたり10万人の乗客が利用していたが、現在は1日あたり約20万人が利用している。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ビジネス・トゥデー、エッジ、10月24日)

電力のシンガポールへの供給、3社が資格審査を通過

【クアラルンプール】 再生可能エネルギー(RE)による電力をシンガポールに供給するため今年6月に実施した試験プロジェクト入札で、応募した3社が要件を満たした。

シンガポールなど近隣国に売電するためのマレーシア・エネルギー取引所(ENEGEM)を通じた電力融通で、エネルギー移行・水利転換省によると、シンガポールの2社が100メガワット(MW)の電力確保に成功した。現在、国境を超えた送電を実現するための交渉を持っている。送電には既存の2国間送電線を利用する。

ENEGEMの設立は域内での電力融通と、マレーシアのエネルギー移行の推進が狙いで、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国間で送電網をつなぐ「ASEANパワーグリッド(APG)構想」に沿ったもの。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、10月24日、ベルナマ通信、エッジ、10月23日)

新たな投資優遇政策は来年初頭発表、租税免除以外の措置に

【クアラルンプール】 投資貿易産業省は、アンワル・イブラヒム首相が2025年度予算案で明らかにした新たな投資優遇措置の枠組みを、2025年第1四半期に発表する。2025年からグローバル・ミニマム課税を導入することに備えるもので、テンク・ザフルル投資貿易産業相は「租税免除のような税制面の優遇措置での投資誘致はもはやできない」と語った。

GMTは企業が最低限負担すべき法人税の割合を15%に定める仕組みで、多国籍企業の最低税率がマレーシアで満たされない場合、マレーシア当局はトップアップ税を課し不足分を補う。付加価値の高い投資に的を絞って優遇措置を提供する。二酸化炭素排出の少ない分野への投資のみ認める。

ザフルル氏は、外国からの投資は地元企業を潤し、高度な職の機会を提供するものでなければならないと強調。人材育成、環境配慮にかかわる投資を優遇すると述べた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、10月22日、エッジ、ビジネス・トゥデー、10月21日)

プロドゥア初のEV発売計画、投資貿易産業省が支援

【クアラルンプール】 テンク・ザフルル投資貿易産業相は、第2国民車メーカーのダイハツ系プルサハアン・オトモビル・クドゥア(プロドゥア)が掲げる、2025年末までにマレーシア初の電気自動車(EV)を10万リンギ以下の廉価で発売する計画を支援すると述べた。

ザフルル氏は同省によるプロドゥア支援の理由について、同社の初EVを手頃な価格にしたいためだと説明。「プロドゥアと協議を続けており、2025年末までに目標を達成するという同社の計画を楽観視している」と述べた。

プロドゥアの同社初EV「EMO-1」は、今年5月に開催された「マレーシア・オート・ショー2024」で試作車が展示された。プロドゥアのBセグメント・ハッチバック「マイヴィ」をベースにしたもので、バッテリー容量は55.7キロワット時(kWh)。最高出力68PS(50kW)、最大トルク220ニュートンメートル(Nm)、航続距離350キロメートル(km)を発揮するとされる。ただその後の変更については明らかにされておらず、開発の進捗状況も不明だ。

ザフルル氏はまた、バッテリー式EV(BEV)の新車登録台数が9月時点で約1万6,000台に達し、2023年通年の約1万3,000台を上回ったと公表。「2030年までに新車販売全体の20%をEVにするという目標に近づいた」と述べた。

充電インフラについては、わずか3カ月間で565基の充電チャージャーが新たに設置され、9月末時点で公共充電ステーションの総数は約3,200カ所に達した。政府は2025年末までに公共チャージャーを1万基設置し、充電器とEVの比率を1対9にすることを目指しているという。
(ザ・スター電子版、ポールタン、マレー・メイル、エッジ、10月21日)

経常黒字は今年と来年は増加、財務省経済見通し

【クアラルンプール】  財務省は18日に発表した「経済アウトルック2025」の中で、経常収支の黒字が2023年に282億リンギと26年ぶりの低水準に落ち込んだが、今年と来年は増加が見込めるとの予想を示した。

経常収支の今年の黒字は434億リンギ、来年は491億リンギが見込めるという。国民総所得(GNI1)比でそれぞれ、2.3%、2.4%になる。

サービス収支はインバウンド需要で赤字の縮小が見込める。所得収支は直接投資の増加で赤字継続が予想される。上半期の経常黒字は192億リンギで、下半期は242億リンギが見込めるという。

今年通年の貿易黒字は1,151億リンギの予想。工業品や農産物、天然ガスなど鉱業品の輸出増以上に、輸入が増加する見通しのためだ。来年は1,256億リンギが見込める。

旅客運賃の受け取り・支払い、外国人旅行者・海外旅行者の宿泊費の受け取り・支払いなどサービス収支の赤字は今年、204億リンギ、来年は168億リンギに改善するという。旅行収支が改善するためだ。

直接投資収益など対外金融債権・債務から生じる利子・配当金の収支を示す第一次所得収支の赤字は今年、488億リンギに改善し、2025年は565億リンギが予想されるという。
(エッジ、10月18日)

バティックエア、来年第1四半期までに東ティモールに就航

【プノンペン】 バティック・エアは、クアラルンプール(KL)と東ティモールの首都ディリを結ぶ路線を2025年第1四半期までに就航する計画だ。アマルジット・シン在マレーシア・東ティモール大使が明らかにした。ディリ乗り入れはマレーシアの航空会社では初めて。バティック・エアは、ディリに就航する航空会社としては5番目となる。

マレーシア・東ティモール両国は今年6月に航空サービス契約に署名。マレーシア運輸省とマレーシア航空委員会(MAVCOM)はバティック・エアの就航をすでに承認しており、フライトスケジュール、運輸権(トラフィックライト)、就航時期に関する協議が最終段階にある。現在、両国の当局者が就航に向けた最終手続きを行っている。

クアラルンプールとディリ間のフライト時間は約4時間となる見込み。アマルジット大使は旧正月(1月29日)前になると見込んでいると述べた。
(マレーシアン・リザーブ、ベルナマ通信、10月17日)

2025年度予算案発表、予算規模は4210億リンギに拡大

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 アンワル・イブラヒム首相(兼財務相)は18日、下院議会に2025年度(2025年1月1日ー12月31日)予算案を提出した。

来年の国内総生産(GDP)が世界貿易の改善と電気・電子(E&E)の需要増に支えられて4.5―5.5%成長するとの見通しを背景に、予算規模は4,210億リンギと今年度の3,938億リンギ(補正後は推定4,075億リンギ)を上回り、過去最高となった。

経常予算は3,350億リンギで、今年度の当初予算3,038億リンギを上回った。省庁別では教育省が150億リンギで最も多く、国防省が123億リンギ、保健省が69億リンギで続いた。一方開発予算は860億リンギで、今年度の当初予算の900億リンギを下回った。

歳入予想は3,400億リンギで、今年度の見通しである3,220億リンギ(当初予想は3,080億リンギ)を上回る見込み。財政赤字の対国内総生産(GDP)比率は2022年の5.5%、2023年の5.0%、2024年(見込み)の4.3%を下回る3.8%に収まる見通しだ。政府の借入金は800億リンギで、2024年の850億リンギを下回る見通し。

売上税(SST)は2025年5月1日付けで課税対象を拡大する。ただ国民生活への影響を考慮し、主要食品は課税対象からを外す。サーモンやアボカドのような高級輸入食材はSST課税対象とする。またサービス税の適用範囲は、手数料ベースの金融サービスなどの事業を含む商業サービスに拡大する。

10万リンギ超の配当所得を対象に2%の配当税を課す。但し従業員積立基金(EPF)配当金や海外での所得は対象外とする。

注目されていたレギュラーガソリン「RON95」の補助金制度については、当面現状維持するが、2025年半ばをメドに対象を絞った補助金制度を導入する。詳細は明らかにされていないが、上位15%の高所得者層のみが影響を受けることになる見通し。

最低賃金は来年2月1日付けで現在の1,500リンギから200リンギ引き上げて1,700リンギとする。ただし従業員5人未満の事業所に対しては8月まで6カ月の猶予期間を設ける。人的資源省は賃金の参考とするため、工場・生産技術者の初任給は2,290リンギ、機械エンジニアの初任給は3,380リンギ、クリエイティブコンテンツデザイナーの初任給は2,985リンギ、といったような初任給のガイドラインを発表する。

EPFについては、外国人労働者も段階的に加入を義務化する。

また外国人労働者の人頭税について、2025年半ばをメドに多層式課税システムを導入する。外国人労働者への依存を減らすための措置で、税収は自動化・機械化導入の補助に充てる。

鉄鋼業・エネルギー業界を対象に、2026年から炭素税を導入する。税収はグリーン研究・技術プログラムに充当する。

肥満などの生活習慣病増加による医療費支出削減に向け、現在、1リットル当たり50センとなっている砂糖入り飲料に対する物品税を、段階的に40セン引き上げる。
電子インボイス制度の導入に伴う、2年内のICT機器、ソフトウェア導入費用やコンサル費用について加速償却を認める。