世銀が経済成長予想を上方修正、高所得国入りは28年

【クアラルンプール】 世界銀行グループは8日、10月度経済モニターを発表。今年のマレーシアの国内総生産(GDP)成長率予想を半年前の4.3%から4.9%へ上方修正した。

会見でマレーシア担当のアプルバ・サンギ首席エコノミストは、国民1人当たりGDP成長率がコロナウイルス禍以前より12%高いことを取り上げ、為替相場を1米ドル=4.54リンギと想定して、マレーシアは2028年には高所得国入りを果たすと述べた。

サンギ氏は成長見通しを引き上げた理由として、国内要素では経済の活性化、政治的安定、投資に有利な政策を挙げた。外需面では、世界的にインフレは後退しており、成長への機運が特に工業先進国で見られるという。

通貨リンギの最近の上昇についてサンギ氏は、第2四半期の国内経済統計の改善、政治改革、米国の金融緩和の3要素で投資家心理が改善し、リンギ需要が高まったと述べた。

投資環境についてサンギ氏は、製造業では直接外国投資に対する制限はないが、流通、電力、金融サービスでは制限が多く、こうした上流部門での制限を緩和すれば、下流部門の生産性は上がるとの見解を示した。
(ザ・サン、ザ・スター、ニュー・ストレーツ・タイムズ、10月9日、フリー・マレーシア・トゥデー、10月8日)

第2四半期の住宅賃料、前期より3.9%上昇

【クアラルンプール】 今年第2四半期の住宅賃貸料の平均は1,995リンギで、前期比で3.9%、前年同期比で2.9%上昇した。不動産仲介のジュワイIQIがマレーシア住宅賃料インデックスとして発表した。

ジュワイIQIは当初、1-3%の上昇を予想しており、3.9%は予想外だった。カシフ・アンサリ最高経営責任者(CEO)によると、年率ベースでの伸び率加速は1年ぶり。25年3月時点のインデックス上昇率は年率で5.5%を予想している。

クアラルンプールの平均住宅賃料は2,863リンギで、全国平均を44%上回った。上昇率も前期比5%と地域別で最大だった。セランゴール州の賃料は1%増の1,899リンギと安定していた。カシフ氏は「セランゴール州はクアラルンプールと比べ賃料が手ごろだ」とコメントした。

賃料は全国平均で新型コロナウイルス禍前より依然、20%(499リンギ)低い。クアラルンプールでは同31%(1,301リンギ)低い。投資イールドは5.2%で前期並みだった。IQIは2018年から統計を取っている。
(ベルナマ通信、マレー・メイル、エッジ、10月8日)

中銀が金融安定化報告、金融市場は秩序を維持

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 中央銀行バンク・ネガラ(BNM)は3日、金融安定化報告書を公表。家計、金融機関の強靭さ、健全性についての調査を概説した。

今年第2、3四半期に世界の金融市場は大きな変動を見たが、国内金融市場は秩序を維持した。通貨リンギは9月30日の時点で今年、米ドルに対し11.4%上昇した。経済の先行き見通しが明るいことから、リンギは強さを維持する見込み。

輸出の回復、内需の増加で上半期の事業活動は拡大した。事業向けローンの減損処理率は2.6%と低水準を維持した。

経済活動の拡大が見込めるため、下半期の事業活動の強靭さは下半期にさらに改善が期待できる。一次産品の値下がりで投入原価は下落が予想される。

家計は、経済、雇用状況が良好なため強靭さを維持する見通しだ。家計債務の対国内総生産(GDP)比は83.8%で、以前と同水準だった。債務不履行の恐れのある家計借り入れの割合は4.4%に低下した。

銀行、保険会社の資本バッファー(不測の事態に備えた、自己資本に上乗せする資本)は潤沢で、不測の事態に対する強靭さは引き続き維持される。

カフェ併設のAmバンク支店、ペタリンジャヤで開業

【クアラルンプール/ペタリンジャヤ】 商業銀行のAmバンクとカフェチェーンのバスク・ベアは1日、カフェを併設したAmバンク支店をセランゴール州ペタリンジャヤのPJニュータウンで開業した。両社がカフェ併設店のコンセプトを打ち出したのは2023年で、既に3支店を開設している。年内に10店まで増やす。

Amバンクのアーロン・ルー代表は、バスク・ベアとの提携を通じ、斬新な顧客体験を提供すると述べた。地域共同体のような環境であり、顧客は銀行サービスを受けながら、コーヒーやトーストを楽しむことができるという。

バスク・ベアを運営するルーブ・ホールディングスのブライアン・ルー最高経営責任者(CEO)は「金融サービスとカフェを融合させることで支店の風景を作り変える」と述べた。

この先、毎年10店のペースで開設する計画で、サバ、サラワク両州を含め全国で展開するという。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ザ・サン電子版、10月1日)

サンウェイ、チェラスで32億リンギ規模の複合開発を計画

【クアラルンプール】 大手デベロッパーのサンウェイは2日、クアラルンプール市チェラスのタマン・テイントンにある面積17.58エーカーの自由土地保有権付き用地を買収すると発表した。総開発価値(GDV)32億リンギ規模の複合開発プロジェクト用地に充てる。

所有者のビバ・インピアンとサンウェイ子会社のサンウェイ・メラワティの間で、用地を3億2,000万リンギで買収することで合意した。ウェルネス中心のコミュニティの構築を目指すサンウェイの持続可能性への継続的な取り組みに沿ったもので、サンウェイの「サンウェイ・デザイン・アンド・デベロップメント・アーキテクチャ (SDDA)」の哲学に基づいた高級サービスアパートとウェルネス重視の小売施設を建設する。

建設地は第2中央環状道路(MRR2)に直結するなど、シャアラム高速道(KESAS)やマジュ高速道路(MEX)などの主要高速道路への接続が良好であるほか、首都圏大量高速輸送(MRT)タマンムティアラ駅から800メートルという公共交通機関へのアクセスが優れた戦略的な場所にある。
(ビジネス・トゥデー、マレーシアン・リザーブ、10月2日)

マレーシア含む4カ国から輸入の太陽光製品、米国が制裁関税

【クアラルンプール】 米商務省は1日、マレーシアなど東南アジア4カ国から輸入する太陽電池モジュールに対する補助金相殺関税を仮決定したと発表した。韓国系ハンファQセルズ、アリゾナ州に拠点を置くファースト・ソーラー、および中小企業数社による申し立てを受けたもので、商務省が今年計画している2つの予備的決定のうちの最初のケース。ロイター通信などが伝えた。

ハンファQセルズなどは太陽製造貿易委員会米国同盟と呼ばれる組織を結成し、東南アジア4カ国で工場を経営する中国企業は不当な補助を進出先の国で受け、生産コスト以下で米国に輸出していると訴えていた。

米商務省はマレーシアからの輸入品に対して9.13%、カンボジアからの輸入品に対して8.25%、タイからの輸入品に対して23.06%、ベトナムからの輸入品に対して2.85%の補助金率を算出した。

マレーシアからの輸入では、中国系ジンコソーラーに3.47%、ハンワQセルズ・マレーシアに14.72%、バオジア・ニュー・エナジーなど3社に123.94%の相殺関税を仮決定した。この調査結果に対し訴えた側のハンワQセルズはコメントを回避した。商務省は4月に最終決定を発表する。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、10月3日)

来年度予算案で「RON95」補助金見直し発表か=CIMB証券

【クアラルンプール】 CIMBセキュリティ・リサーチは、10月18日に国会提出される予定の2025年度予算案に、補助金負担削減に向けて懸案となっているレギュラーガソリン「RON95」補助金制度の見直しが盛り込まれるとの予想を示した。

CIMBリサーチは、燃料補助金合理化計画の発表があれば、インフレ圧力の高まりや消費者心理の悪化を招き、今年第4四半期の新車販売にマイナス影響が出ると予想した上で、この影響を従業員積立基金(EPF)第3口座の導入と公務員給与引き上げが緩和するとの見通しを示した。

マレーシア自動車協会(MAA)は、2024年通年の新車販売が好調だった前年からの反動から4.3%減の76万5,000台にとどまるとの控えめな予想を示しているが、CIMBリサーチはさらに慎重で、売上税免除がないこと、RON95価格が上昇する可能性などを主な要因として、前年比6%減の75万1,000台と予測している。

CIMBリサーチは一方で、来年度予算案に電気自動車(EV)拡大に向けた優遇策が盛り込まれる見通しだとし、「個人向け減税や還付を継続し、新たなEVインフラへの投資も行うと予想している」とした。

2024年度予算で政府は、EV充電設備に対する最大2,500リンギの個人所得税控除を2027年まで延長し、EVレンタルに対する税控除も実施した。
(ザ・スター、10月1日)

予算案にGST再導入が盛り込まれる可能性=RHB投資銀

【クアラルンプール】 RHBインベストメント・バンク(RHB投資銀)は、10月18日に発表される予定の2025年度予算案に、物品サービス税(GST)の再導入、「RON95」レギュラーガソリン補助金の合理化、高額物品税(HVGT、贅沢税)導入――が盛り込まれる可能性があるとの見方を示した。

RHB投資銀のアナリスト、アレクサンダー・チア氏は、アンワル・イブラヒム政権が政権安定を背景に税基盤の拡大を目指していると指摘。財政赤字をさらに削減してインフラ投資の余地を拡大する方針だと確信していると述べた。

その上でチア氏は、まだ決定していない2つの主要な取り組みがRON95の補助金の合理化と電子インボイスの完全導入と両立するGSTの再導入だとした上で、これらが来年度予算案に盛り込まれるだろうと指摘。RON95の補助金合理化については年内に実施されると予想したまたHVGTについても2025年度予算案で発表される可能性があるとした。
(ポールタン、9月26日、ベルナマ通信、9月25日)

「リンギの強さは持続する」中央銀行バンクネガラ見解

クアラルンプール】 中央銀行バンク・ネガラ(BNM)は、経済見通しが良好で、構造改革の効果もあり、リンギは強さを維持するとの見解を示した。ブルームバーグの取材に電子メールで回答した。

第3四半期の新興市場の為替市場ではリンギが対米ドルで最も上昇し、9月25日は1米ドル=4.108リンギまで値上がりし、2021年6月以来、3年3カ月ぶりの高値を記録した。中国政府が24日、経済刺激策を発表し、同国経済の先行き見通しが改善したことが好影響を与えた。中国はマレーシア最大の貿易相手国。

アドナン・ザイラニ副総裁は25日、クアラルンプールで開催されたIFNアジア・フォーラムで演説し、米連邦準備制度理事会(FRB)が0.5ポイントの利下げに踏み切ったためマレーシアとの金利差が縮小し、有価証券市場への資金流入が期待できると発言した。
(エッジ、9月25日)

ハラル見本市の成約額が43億リンギに、前年比34%増

【クアラルンプール】 9月17ー20日の日程で開催されたハラル(イスラムの戒律に則った)製品見本市「マレーシア国際ハラルショーケース(MIHAS)2024」は成約額が43億リンギに達し、目標としていた35億リンギを大きく上回り、前年実績を34%も上回った。

主催したマレーシア貿易開発公社(MATRADE)によると、大幅アップは農産物によるもので、今年の成約額の26.3%を占め、分野別でトップとなった。これに調理済み食品(26.1%)、飲料(12.5%)が続き、医薬品、トイレタリー、化粧品、包装・容器などの新興セクターも貢献した。

20回目の開催となった今回のテーマは「ハラルイノベーションのグローバル化」で、66カ国から2,028社のブースが出展。90カ国以上から4万3,353人の来場者が訪れた。日本貿易振興機構(ジェトロ)クアラルンプール事務所も「ジャパン・パビリオン」を開設した。

テンク・ザフルル投資貿易産業相は、MIHASが「ハラル産業マスタープラン2030 (HIMP 2030) 」と「新産業マスタープラン2030 (NIMP 2030) 」の目標達成に積極的に貢献していると言明。「43億リンギという成約額以上に重要なのは、MIHASが官民連携をさらに促進し、ハラル産業のエコシステムを強化し、より多くのマレーシア企業のグローバル展開を支援していることだ」と述べた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ビジネス・トゥデー、エッジ、ベルナマ通信、9月25日)