燃料価格上昇で観光バス会社が悲鳴、政府が支援策を検討

【プトラジャヤ】 ディーゼル補助金合理化がスタートしたことにより6月10日から大幅に値上がりした燃料価格に観光バス会社が悲鳴を上げており、ファーミ・ファジル通信相は業界に対して何らかの支援策を検討する考えを示した。

ファーミ氏は、燃料価格高騰に対する観光バス事業者の懸念を政府は認識していると言明。「補助金廃止発表は観光バス事業者がある取り決めをしていた時期に行われたため、政府はこのグループを支援できる仕組みを新たに検討するつもりだ」と述べた。

観光バスが対象を絞った補助金制度の対象から外れたことにより、業界ではコストが15―30%上昇すると懸念している。すでに取り決めた旅行代理店との料金を簡単に見直すことができないため、損失を被る必要があるという。

約150社が加盟する半島部観光バス運行協会のスティーブン・チョン会長は、運営コストが最大30%上昇するとした上で、6月11日に観光芸術文化省に善処を求める陳情書を提出したことを明らかにした。

マレーシア観光連盟のタン・コックリャン会長は、半島部における観光サービスのコストが27%上昇すると予想した上で、「ツアーオペレーターは以前に旅行代理店と約束した料金を遵守することになるが、そうなれば我々の側が損失を被ることになる」と述べた。
(ザ・スター、ニュー・ストレーツ・タイムズ、6月13日)

ガソリン補助金合理化、ディーゼルの影響みて実施=第2財相

【クアラルンプール】 ディーゼルに続いて予定されているレギュラーガソリン「RON95」の補助金合理化について、アミル・ハムザ第2財務相は、先に実施したディーゼル補助金合理化による影響が落ち着いた後になるとの見通しを示した。

アミル氏は実施後の影響を見る必要性から、現在は対象を絞ったディーゼル油補助金制度の完全実施に注力していると言明。「影響が収まれば次に為すべきことが分かる」と述べ、「RON95」の合理化はディーゼル油合理化プロセスが完了した後になるとの見方を示したが、具体的な実施日程には触れなかった。

「RON95」の補助金合理化については、先にメイバンク・インベストメント・バンクが、2024年度予算に基づき41億リンギの補助金歳出削減を達成したいのであれば、「RON95」の合理化を7月から開始する場合は補助金なしの小売価格を15.6%、金額にして1リットル当たり32セン、10月から開始する場合は31.7%、65セン、それぞれ引き上げる必要があると報告している。現在の補助金付き価格は2.05リンギ。

またアミル氏は、ディーゼル補助金合理化の影響について、公共交通機関の事業者が補助金価格でディーゼル燃料を購入できると強調。高速バス、スクールバス、救急車、物流輸送会社が含まれるとし、「彼らも補助金価格で燃料を購入しているため、価格への影響は限定的だ」と述べた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ザ・スター、6月13日、フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、ベルナマ通信、6月12日)

AIデータセンター建設に特別優遇措置、デジタル転換を加速

【クアラルンプール】 政府は11日の国家投資委員会(NIC)会合で、AI(人工知能)データセンターの建設に対し特別優遇措置を提供することを決めた。投資貿易産業省傘下のマレーシア投資開発庁(MIDA)が優遇措置の枠組みを決定する。NIC議長であるアンワル・イブラヒム首相、テンク・ザフルル投資貿易産業相がX(旧ツイッター)への投稿で明らかにした。

2021年から23年までのデータセンターおよびクラウド関連投資(認可ベース)は、1,147億リンギで、データエンジニア、サイバーセキュリティアナリストなど2,325人のハイテク領域の雇用機会が創出された。

特別優遇措置では現在の優遇措置に加え、電力や水消費の少ない機器の使用、データセンターに対する再生可能エネルギー(RE)の提供などの便宜を図る。
アンワル首相は投稿で「AIデータセンターへの投資誘致に政府全体で取り組むことを強調した」とした。投資はデジタル化の加速という政府目標の達成に役立ち、高所得経済への移行にも貢献するという。

AIデータセンターは、生成AIの開発や、そのほかのAI関連事業に活用される。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、6月11日)

米MKSインスツルメンツ、ペナンに半導体製造工場を建設へ

【クアラルンプール】 半導体製造装置メーカーの米MKSインスツルメンツは11日、ペナン州にウエハー製造装置工場を設立すると発表した。2025年初頭に起工し、3期に分け建設を行う。

MKSは半導体製造、エレクトロニクス、パッケージング、特殊産業用に基盤技術ソリューションを提供している。

同社のジョン・T・C・リー社長兼最高経営責任者(CEO)は声明で、顧客企業やサプライヤーが集積しており、強固な技術インフラを有するペナンは半導体エコシステムの本拠地だとし、半導体製造装置分野におけるリーダーとしての地位強化を目指すMKSは、マレーシアでの事業拡大を重視していると述べた。

ペナン州のチョウ・コンヨウ首相は、ペナン州は産業エコシステムが発達しており、次世代技術や成長戦略における産業界のニーズをサポートする能力を備えていると強調。MKSのペナンにおける半導体製造装置生産は、「より多くの高価値の雇用機会を創出し、世界の半導体バリューチェーンを向上させる」という州の目標にも合致していると述べた。
(マレーシアン・リザーブ、ザ・スター電子版、ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ベルナマ通信、6月11日)

UMWトヨタ、5月の販売台数は前月比15%増の8422台に

【クアラルンプール】 UMWトヨタ・モーターは、2024年5月の新車販売台数(トヨタとレクサスの合計)が8,422台となったと発表した。「ヤリス」の限定車発売と「ヴィオス」の好調な販売が寄与した。

前月の7,345台からは15%増、前年同月の8,004台からも5%の増加となった。1―5月の累計販売台数は3万9,211台となった。

UMWトヨタは先ごろ、教育省と連携して第23回「トヨタ・エコ・ユース(TEY)」プログラムを開始した。同プログラムは環境問題について若者を教育し、持続可能なソリューション開発への参加を促すことに重点を置いたもので、2001年の開始以来、521校から30万人以上の学生が参加している。

UMWトヨタはまた、マレーシア国立がん協会(NCSM)支援のためのチャリティーラン・イベント「トヨタ・スタート・ユア・インポッシブル・アウトラン2024」を6月23日にクアラルンプール(KL)のムルデカ広場で開催する。
(ジグホイールズ、ビジネス・トゥデー、6月11日)

セブン銀行、セランゴール州にATM1号機を設置か

【クアラルンプール】 セブン銀行はマレーシア初のATMを10ー12月にセランゴール州内に設置する模様だ。英字紙「ザ・サン」が関係筋の話として報じた。
セブン銀行は5月30日付で4社共同出資により、マレーシア現地法人を設立している。海外グループ会社を構えるのは、米国、インドネシア、フィリピンに次いで4カ国目となる。

セブン銀行は声明で、「マレーシアの2023年国内総生産(GDP)成長率は3.7%で、若い世代の割合が高く、人口ボーナス期は2050年まで続くと予想されており、現金流通量も年々増加していることから、マレーシアを有望なアジア市場のひとつと位置づけている」と述べた。マレーシアでは、日常的に現金で支払う人の割合が7割を超えており、ATMを利用した平均引き出し回数も日本や他のアジア諸国に比べて多いという。また、ATMの設置総数は約1万5,000台だが、人口100万人あたりのATM設置台数は446台に過ぎず、ATM事業の成長が期待できるとしている。

セブン銀行は、セブンイレブンの店内に紙幣還流型ATMを設置することを目指しており、順次ATMを設置していく方針だ。
(ザ・サン電子版、6月10日)

武田薬品、マレーシア初のデング熱ワクチンを発売

【クアラルンプール】 武田薬品工業の現地法人である武田マレーシアは11日、デング熱ワクチン「キューデンガ(QDENGA)」の国内販売を開始した。デング熱ワクチンとしてはマレーシア初となる。

4種すべてのデングウイルス血清型により引き起こされるデング熱の予防を目的としたもので、4歳以上が接種可能。3カ月間隔で2回の接種が必要となる。私立病院やクリニックで接種可能となっており、価格は医療機関が決定する。保健省と協力の上、公的医療部門へのワクチン提供も検討しているという。

「QDENGA」は欧州連合(EU)、英国、ブラジル、アルゼンチン、インドネシア、タイ、ベトナムなど30カ国以上で承認されている。臨床試験では、ワクチン接種12カ月後の時点で、症候性症例の80.2%を予防し、4年半後時点では、入院の84.1%、症候性症例の61.2%を予防した。

マレーシアの昨年のデング熱感染者数は前年比86.3%増と急増しており、今年第1四半期の感染者数は4万1,565人、死者は28人に達している。
(ザ・スター電子版、6月11日)

アミタ、サンウェイ大学でごみ分別回収の実証実験を実施へ

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 資源リサイクルのアミタグループ(本社・京都府京都市)は、1日付けで海外統括会社アミタ・サーキュラーデザイン(ACD)が、ごみ分別回収の実証実験に向けてサンウェイ大学と基本合意書を締結したと発表した。

アミタの「めぐるステーション(MEGURU STATION)」(互助共助コミュニティ型資源回収ステーション)を大学内に設置し、約7カ月間の実証実験を行う。同ステーションの海外設置は初となる。実証を通じて、マレーシアにおける一般廃棄物の分別回収のポテンシャル調査と、利用者の行動変容に関する知見の蓄積に取り組む。

アミタグループは、2017年よりマレーシア国内で、現地製造業から排出される指定廃棄物の100%再資源化事業を行っている。指定廃棄物の資源循環ニーズは増加傾向にある一方、一般廃棄物については、分別回収に対する個人の意識差が大きく、リサイクル率の向上に課題を抱えているという。

アミタグループは今後、「めぐるステーション」を活用した資源循環システムの構築を図るとともに、海外での社会デザイン事業の展開を目指すとしている。

サバ海域では基準値超える放射性物質は検出されず=UMS

【コタキナバル】 マレーシア・サバ大学(UMS)ボルネオ海洋研究所のファイハンナ・チン・アブドラ所長は、サバ州海域で基準を超えた放射性物質は検出されていないと指摘。福島第一原子力発電所のALPS処理水の海洋放出後も同州海域は安全だとして心配しないよう州民に呼びかけた。

10日に行われた「核の安全な使用」と題するイベントの開幕式に出席したファイハンナ氏は、国内海域の放射能レベルを監視するために、同州セパンガルのUMS桟橋にはガンマ線スペクトル水監視ステーション(GSWMS)が設置され、昨年、UMSと科学技術革新省が放射能レベルを監視したが、基準を超える放射性物質は検出されなかったと言明。水産業の拠点であるサバ州にとってこれは喜ばしいことだと述べた。

ファイハンナ氏はまた、福島原発処理水の最初の放出は事故から11年経った2023年だったが、放射線レベルは極めて低く、安全基準値の50分の1以下だったと指摘。「排水が太平洋に放出されると、すべて海水に混じるが、福島からサバ州に届くまでには、かなりの時間が必要になるだろう」と述べた。

日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、マレーシア保健省は先ごろ、高リスクとされた日本食品に対する検査レベルについて、放水開始前の水準である「レベル3(モニタリング検査)」に戻した。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、6月11日)

レギュラーガソリン補助合理化、実施は早くで第4四半期の見通し

【クアラルンプール】 政府は10日、補助金なしのディーゼル油(軽油)価格を1リットル3.35リンギに設定し即日施行したが、国民の関心が集まっているのは消費者への影響がもっと大きいレギュラーガソリン(RON95)の補助合理化に伴う価格設定だ。

金融大手CIMBの調査部門は、政府はRON95価格の調整を10月11日の来年度予算案の上程に合わせ行うとの見通しを示した。

軽油補助の対象となる個人(国民)および小規模農家からの補助金申請が今後増えるため、財務省は当面その処理に忙殺されることと、軽油補助合理化が消費者物価指数(CPI)にどの程度影響を与えるかを見極める必要があるためだという。

RON95補助の合理化で小売価格が10%引き上げられれば、CPIを0.5ポイント(軽油の場合は0.002ポイント)押し上げると推測される。RON95補助合理化が家計の購買力に与える影響が軽油より大きいことから、政府は慎重に事を運ぶと考えられるという。

シンガポール系UOB銀行の調査部門は、ガソリン補助合理化の時期は、軽油補助合理化がもたらす影響と、ガソリン補助受給資格を判断するデータベースプラットフォームの準備状況に左右されるとした。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、6月11日)