マレー語以外の文書の受取拒否、首相が政府機関に指示

【サイバージャヤ】 アンワル・イブラヒム首相は、すべての政府機関に対し、マレー語以外の言語で書かれた、いかなる文書も受け取らないよう指示したことを明らかにした。連邦憲法第152条では、マレー語がマレーシアの国語だと規定されている。

アンワル首相は25日、「国語の十年」カーニバルおよび「国民読書の十年」の開会式で行ったスピーチの中で、「我々は国際貿易言語として英語を使用することに同意するが、一部の政府機関、公立・私立大学、民間企業の中には、国語の原則を放棄しようとする行き過ぎた態度がみえる」と指摘。政府機関との間ではマレー語でコミュニケーションすることが義務付けられているとし、すべての政府機関に対し、地元企業や公立・私立大学からマレー語以外の言語で手紙を受け取った場合は、差出人に返送するよう要請した。

その上でアンワル首相は、こうした措置について英語能力の重要性を損なうものではないと言明。自身が米国ジョージタウン大学で講義を行った経験を引用し、英語力の重要性を決して過小評価しているわけではないと強調した。

■サラワク州は従わない方針■
アンワル首相の発言を受け、サラワク州のアブ・バカル・マルズキ州務長官は、地元企業、公的機関、民間団体からの英語による公式通信を受け入れる慣行を維持するとし、同州としてアンワル首相の指示に従うつもりはないと述べた。

独自性を主張するサラワク州のアバン・ジョハリ州首相は昨年6月、州公務員が国語であるマレー語と並んで英語を公用語として維持すると宣言していた。
(ザ・スター、ザ・サン、10月26日)

2024年度予算案発表、歳出規模は3938億リンギに拡大

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 アンワル・イブラヒム首相(兼財務相)は13日、下院議会に2024年度(2024年1月1日ー12月31日)予算案を提出した。

予算案のテーマは「経済改革と国民のエンパワーメント」で、▽サービスの迅速性のための最良のガバナンス▽成長を加速させるための経済改革▽国民生活水準の向上ーーの3つに注力する。

来年の国内総生産(GDP)成長率が4ー5%になるとの予想から、予算規模はGDPの19.9%に相当する3,938億リンギとし、今年度の3,881億リンギを上回った。

歳入予想は3,076億リンギで、今年度の3,032億リンギを上回る見込み。財政赤字の対国内総生産(GDP)比率は2022年の5.6%、2023年の5%を下回る4.3%にとどまる見通しだ。

一般歳出は全体の77.1%を占める3,038億リンギで、今年度の2,891億リンギを上回った。省庁別では教育省が587億リンギで最も多く、保健省が412億リンギで続いた。一方、開発予算は900億リンギで、今年度の990億リンギを下回った。

対象を絞った補助金制度は、来年度から段階的に導入する。補助金合理化による余剰金はラーマ(慈悲)現金援助制度に基づく現金給付予算の増額に当てる。

サービス税を6%から8%に引き上げる。ただし食品・飲料・通信は対象から除外する。

非上場企業株売却におけるキャピタルゲイン税10%を2024年3月1日から実施する。また宝飾品や高級腕時計など一部の高額商品を対象に、5ー10%の贅沢税を課税する。

電子インボイス制度を、年間売り上げ1億リンギ超の会社を対象に、2024年8月1日から義務化する。1億リンギ以下の企業に対しても、2025年7月1日までに段階的に義務化する。

再投資税優遇措置を、70%または100%の再投資税控除の形で「階層化」ベースで実施する。

電動バイクの普及を目指し、年収12万リンギ以下を対象に2,500リンギの補助を行う。また充電施設の使用料につき、4年間で最大2,500リンギを所得税控除とする。ネットメータリング(NEM、太陽光発電と消費電力を相殺する仕組み)を2024年12月31日まで延長する。

社会保障機構(SOCSO)制度における、対象給与の上限を6,000リンギに引き上げる。

グローバル・ミニマム課税(GMT)については、2025年に導入する予定。連結売上高7億5,000万ユーロの多国籍企業(MNC)に対し事業を行う場所で15%課税するというもので、税逃れを防ぐ狙いがある。

2021年10月に大幅に厳格化された、外国人の長期滞在を奨励するマレーシア・マイ・セカンド・ホーム(MM2H)プログラムについては見直しを行う。

東マレーシア向け開発予算をサラワク州に58億リンギ、サバ州に66億リンギをそれぞれ割り当てる。

今後も生活費軽減策を継続=アンワル首相

【クアラルンプール】 アンワル・イブラヒム首相は、国内のインフレが緩和しているが、国家生活費行動会議は、「慈悲(ラーマ)プログラム」や「アグロ・マダニ・セールス」を通した生活費軽減策を継続することを決定したと明らかにした。
国家生活費行動会議の議長を務めたアンワル首相は、生活費軽減策を継続する理由について、国民の生活費上昇に対処するという公約に沿って行うと説明した。また、「マレーシア・マダニ」による福祉の強化のため、連邦政府や州政府など全ての政府機関と非政府組織に協力を呼びかけると述べた。

また会議では、国民が直面している生活費の負担軽減をさらに議論するため、3件の検討文書と2件の通知文書が提出されたと言明。その中には鶏肉や鶏卵、医薬品、砂糖などに関するものが含まれていたとし、鶏肉や鶏卵については2022年2月から実施されている価格規制に関して話し合ったと明らかにした。医薬品については、価格表示メカニズムにより、医薬品販売の透明性を高めることができると指摘。また砂糖に関しては、供給に混乱が生じる可能性を認識しているとし、これらの問題を閣議に提出するとした。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、10月4日、ボルネオポスト、10月3日)

全所得層のEV所有を可能に、金融支援策で=ザフルル大臣

【クアラルンプール】 テンク・ザフルル投資貿易産業相は2日、対象を絞った補助金や金融支援策などを通じ、すべての所得層が電気自動車(EV)を所有できるようにしたいとの考えを明らかにした。

ザフルル大臣は、経済マスタープラン「マダニ経済」に沿い、国内のEV充電インフラを拡大するための取り組みを強化していると言明。EV政策により、EV登録台数は、2022年には3,400台、2023年9月には7,500台を超えるなど順調に増加しており、EV産業への投資も、2018年から今年3月までに262億リンギに達しているとした。

ザフルル大臣はまた、EV政策の推進と同時に「国家エネルギー移行ロードマップ(NETR)」と連動して「送電網のグリーン化」を行う必要があるとし、テスラのマレーシア進出などにより、EVエコシステムを強化し、地域のEV生産拠点としてのマレーシアの可能性を高め、さらなる投資を誘致していくと述べた。EVサプライチェーンの構築が国内企業の繁栄や人材育成につながり、世界に影響を及ぼすようなイノベーションが増えることを期待しているとしている。
(ザ・サン、10月3日、ザ・バイブス、ベルナマ通信、10月2日)

馬・中首脳会談、継続的意思疎通を図ることで合意

【南寧】 中国広西チワン族自治区の南寧で16日に開幕した第20回中国・東南アジア諸国連合(ASEAN)エキスポ(CAEXPO)に出席のため同地を訪問したアンワル・イブラヒム首相は同日、中国の李強首相と会談し、南シナ海問題などを話し合った。アンワル氏によると、同問題について両首脳は、継続的意思疎通を図ることで合意した。

中国は8月末、「2023年度版標準地図」を公表したが、南シナ海の大部分を領海とし、サバ州とサラワク州沖の広範囲の排他的経済水域(EEZ)についても中国の領海と主張。マレーシア政府は正式に反論しており、フィリピンやベトナムも反発している。

アンワル氏は、会談を通じて2国間・域内・国際協力に関し、開放性、礼儀、包括性、相互尊重を原則とする未来を共有する共同体であるとのコンセプトを李首相と共有したと述べ、そうした価値はアンワル氏が掲げたバランス重視の「マレーシア・マダニ」コンセプトとも一致するものだと強調した。

また会談の中で李首相からは、地域の国際安全保障問題に取り組むためのASEAN中心性構想への支持表明があり、米国と中国の対立などから自由なASEAN圏を支持するとの発言があったという。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ザ・スター、9月18日)

野党若手が16日に反副首相デモを計画、支持派も対抗デモ呼びかけ

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 アハマド・ザヒド副首相に対する汚職事件の起訴取り下げに反発する野党連合・国民同盟(PN)青年部が中心となって、9月16日の「マレーシア・デー」に合わせて大規模な抗議デモを計画している。

「セーブ・マレーシア(マレーシアを救え)」の主催グループは、クアラルンプール(KL)のそごうショッピングモール前で行うと発表していたが、警察が許可しない可能性があることから、開催地はブキビンタンなどに変更される可能性があるという。

主催メンバー、バドゥルル・ヒシャム・シャハリン氏は14日、代表が警察から呼び出されて開催しないよう圧力をかけられたと明かした上で、予定通り開催すると言明。開催場所については、間違いなくKL中心部になると述べた。
野党主体の抗議デモに関しては、ザヒド副首相を総裁に頂く統一マレー国民組織(UMNO)青年部などが、これに対抗してザヒド支持のデモの開催を呼びかけている。

UMNOのジャマル・メディ・ユノス氏は、かつて自身が率いた青年部グループによる「赤シャツ隊」の復活を呼びかけた。「赤シャツ隊」は2015年、ナジブ・ラザク首相の退陣を求める大規模集会「BERSIH(クリーン)4.0」に対抗し、「マレーシア・デー」に数万人規模の大規模デモを開催した経緯がある。

第12次マレーシア計画中間レビュー発表、150億リンギを追加

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 アンワル・イブラヒム首相は11日、第12次マレーシア計画(12MP、対象期間2021ー2025年)の中間レビューを下院議会で発表。150億リンギを追加で割り当てると明らかにした。

アンワル首相は、12MPで掲げられた175の目標のうち、現時点で31%がすでに達成され、59%が予定通りに進捗していると説明。12MP全体の開発予算4,000億リンギのうち、これまでの支出額は、2021年に643億リンギ、2022年に716億リンギと全体の34%にとどまっているが、150億リンギを新たに追加することにより、2023ー2025年に毎年900億リンギを支出していく予定だとした。用途としては、貧困の撲滅、老朽化した学校や診療所の補修、清潔な水の供給、イスラム経済の先導など、基本的なインフラ整備や国民の基本ニーズに応じることからスタートするとしている。

アンワル首相はまた、2025年までに▽国際規格「ISO 37122:2019(持続可能な都市とコミュニティースマートシティの指標)」に基づき、5主要都市に対するスマートシティ認定を取得▽洪水対策としての都市排水システム改善▽農民の所得向上に向けた農業近代化▽年間国内総生産(GDP)成長率5%以上▽財政赤字をGDPの3.5%まで縮小ーーを目指すと述べた。

ジョホール州の下院・州議会補選、いずれも与党連合が圧勝

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 9月9日に投開票が行われたジョホール州下院1選挙区および州議会1選挙区の補欠選挙は、いずれもアンワル・イブラヒム首相率いる与党連合・希望同盟(PH)が議席を守った。8月に行われた6州同時州議会選挙で大幅に議席を減らしたPHだが、ようやく踏みとどまった格好だ。

下院議会プライ選挙区補選は、PHが擁立したスハイザン・カイアト氏(国民信任党=Amanah)が得票率61.54%で、野党連合・国民同盟(PN)が擁立したズルキフリ・ジャーファル氏(統一プリブミ党=PPBM)、無所属のサムスディン・マハマン・ファウジ氏を破った。

シンパン・ジェラム選挙区補選はPHが擁立したナズリ・アブドル・ラーマン氏(Amanah)が得票率56.54%で、PNが擁立したモハマド・マズリ・ヤハヤ氏(汎マレーシア・イスラム党=PAS)、無所属のS.ジェガナタン氏を破った。

補欠選挙は、故サラフディン・アユブ国内取引物価相(Amanah)の死去に伴って行われたもので、サラフディン氏は7月23日にケダ州アロースターの病院で脳出血のため亡くなった。

2030年までに全医療施設のデジタル化を目指す=保健相

【クアラルンプール】 ザリハ・ムスタファ保健相は5日、「2030年までに国内の全医療施設のデジタル化を目指す」と明らかにした。

ザリハ大臣は、遠隔医療、電子カルテ、データ分析が、現代医療において不可欠なツールになっているとし、保健省はこれらを国内医療システムに統合するために取り組んできたと言明。技術革新は、患者ケアを向上させるだけでなく、医療の全体的な効率性を高めるもので、高品質なケアを提供しつつ、不必要な管理負担を減らし、プロセスの合理化が望めると述べた。

具体的には、電子カルテや電子医療システムの導入により、煩雑な事務作業を減らし、ミスを最小限に抑え、患者情報へのアクセス性を向上させ、最終的により効率的な医療につなげられるとしている。
医療デジタル化は2020年以降議論されてきており、保健省は今年5月、医療情報交換プラットフォームの開発を行っていると発表している。
(マレーシアン・リザーブ、ザ・サン電子版、ベルナマ通信、9月5日)

ASEANは平和で繁栄する地域、首脳会議でアンワル首相

【ジャカルタ】 インドネシアのジャカルタで5日、開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の全体会合でアンワル・イブラヒム首相は、ASEANは多様性が強みであり、域外の国・地域はASEANを平和、安全で繁栄している、最も成功した地域組織の一つとみなしていると発言した。このため多くの国、組織がASEANに魅力を感じ関係を構築してきたという。

中国が8月末に公表した、国内で使用する地図の統一規格「標準地図」の2023年版についてアンワル氏は、南シナ海における問題は海洋法に関する国際連合条約など国際法に則り、平和的、理性的に対話を通じ処理されるべきだと述べた。

同地図で中国は南シナ海のほぼ全域の管轄権を主張しており、マレーシアなどASEAN加盟国の半数が反発している。

アンワル氏はASEAN・湾岸協力理事会(GCC)首脳会議の調整役としても発言。10月20日にサウジアラビアで首脳会議が開催されると明らかにした。協力の枠組みで合意する予定だという。

26年の議長国は持ち回りで予定されていたミャンマーではなくフィリピンが務める。
(ベルナマ通信、9月5日)