事実上の死刑廃止法、7月4日付けで施行

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 死刑以外の刑罰規定がなかったいくつかの犯罪について裁判官に減刑の裁量権を認める「2023年強制死刑廃止法」が6月30日に官報に公示され、7月4日付けで施行された。同法は4月の国会で可決成立していた。

マレーシアではこれまで33の犯罪に対して死刑が刑罰に含まれていた。強制死刑廃止法により、死刑以外の刑罰規定がなかった麻薬密売、殺人、誘拐、国家反逆罪、組織犯罪、銃火器犯罪、テロ行為やテロ支援を含む11の犯罪に対する強制死刑が廃止され、刑罰は30年以上、40年以下の禁固刑、および12回以上のムチ打ち刑に置き換えられる。また殺人未遂や誘拐など7つの犯罪に対する選択肢としての死刑を完全に削除する。終身刑についても、30年から40年の禁固刑に置き換えられる。

マレーシアで最後に絞首刑が執行されたのは2017年で、2018年7月以降は死刑執行を停止しているが、法律上、強制死刑の規定が維持されていたため死刑囚の数は増加していた。アザリナ・オスマン首相府相(法務担当)によると、法案提出時点で1,340人いる死刑囚、100人いる終身刑受刑者にも法改正が適用されるという。

下期の電気料金、大量消費世帯で増額も産業部門は減額へ

【プトラジャヤ=マレーシアBIZナビ】 ニック・ナズミ天然資源環境気候変動相は23日、今年下期(7ー12月)のマレー半島における電気料金について、消費量が月1,500キロワット時(kWh)、月額708リンギ以上の世帯に対し、1kWhあたり10センの割増料金を設定すると発表した。

ニック大臣によると、対象となる世帯に対しては1kWhあたり2センの割戻金も廃止されるため、電気料金は月額187リンギ(25%)増加することになる。セランゴール州、クアラルンプール、ジョホール州、ペナン州を中心に居住する8万3,000世帯が対象となるが、全体のうち1%に過ぎないという。なお割増料金が発生するのは1,500kWhを超えた月のみで、月1,500kWh未満となった場合には引き続き2センの割戻金が提供される。

一方、産業部門の中・高電圧契約(大規模電力利用者)を対象とした割増料金は1kWhあたり20センから17センに減額し、上下水道事業者に対しても20センから3.7センまで引き下げる。中・高電圧契約の場合には、電気料金が月額28ー35%引き下げられることになるという。中小企業など、低電圧契約の場合は、3.7センのまま据え置く。

ニック大臣は、平均燃料価格が低下したものの、石炭の平均価格は依然高止まりしていることから新たな電気料金体系を決定したとし、上期には価格上昇の影響を抑えるための補助金として約107億6,000万リンギを割り当て、下期にも52億リンギを割り当てる予定だと述べた。

マレーシア経営者連盟(MEF)は、下期の電力補助金52億リンギについて評価し、この補助金がなければ、レストラン、小売店、パン製造、小規模作業、農業・畜産業、植木業などに携わる零細中小企業(MSME)は、電気料金の値上げで負担を強いられることになっていたと述べた。MSMEの事業回復を支援し、労働市場の安定化を支援することが重要だとしている。

一方、サラワク州のアバン・ジョハリ首相は、サラワク州は水力発電ダムによる発電能力を有するため、電気料金の値上げは計画していないと述べた。値上げは投資誘致や請負業者に対し悪影響を与えるとし、ラワスのトゥルサン・ダムやカピットのバレ・ダムのような水力発電ダム数を増やすことで電力供給源を確保できると述べた。

6州議会同時選挙、8月中旬に実施の公算

【クアラルンプール】 6州の州議会選挙について、各州議会の解散時期や巡礼(ハジ)シーズンを考慮すると8月に行われる公算が大きくなっている。州議会選挙は憲法の規定により議会解散から60日以内に実施することになっている。

年央に解散を予定しているのは▽セランゴール▽ペナン▽ネグリ・センビラン▽ケダ▽クランタン▽トレンガヌーーの6州で、これら6州の首相はすでに同時選挙で合意しており、最終的に選挙委員会(EC)が決定することになっている。

すでに6月28日に解散すると発表しているペナン州のチョウ・コンヨウ首相は、遅くとも8月第2週、ペナン州議会の解散時期から5ー6週間後になる可能性があると予想した。

ネグリ・センビラン州はすでに6月30日に解散すると発表しており、クランタン州も14日に6月22日の解散を発表している。その他の州については、セランゴール州議会が6月25日に、トレンガヌ州が6月30日に、ケダ州が7月3日にそれぞれ州議会の任期が切れ、翌日付で自動的に解散となる。

野党側からも8月実施の可能性が高いとの見方が出ている。野党連合・国民同盟(PN)に所属する統一プリブミ党(PPBM)のラザリ・イドリス広報部長は、8月中旬になるとの見方を示した上で「平日でなく土曜日の実施を希望する」と言明。ハジ巡礼は6月28日に最高潮に達し、巡礼者は8月初旬までに帰国するとして、そのタイミングが望ましいとの考えを示した。

選挙アナリストのG.マニマラン氏は、ECによる選挙の準備には約4ー5週間を要することになるとした上で、「8月第2週の終わりがちょうどいい時期だろう」と述べた。
(ザ・スター、6月14日)

船舶入出港に関する行政手続きの一元化、第4四半期に運用開始

【シャアラム】 アンソニー・ローク運輸相は、マレーシアの港湾に寄港する船舶に義務づけられていた複数の関係機関での行政手続きを一元的に行える仕組みである、「マレーシア・マリタイム・シングルウインドウ(MMSW)」の運用が今年第4四半期に開始されると明らかにした。

これまでマレーシアの港に寄港する船舶は事前に12の関係機関に対して異なるプラットフォームを通じて入港許可を取得する必要があったが、MMSW導入で窓口が一本化されることで、手続きの簡素化が期待される。

手続きの一元化(シングルウインドウ化)は「国際海上交通簡易化条約(FAL条約)」に基づき加盟各国で取り組みが進められていたもので、2024年1月1日より国際海事機関(IMO)の加盟国すべてに実施が義務づけられる。

ローク運輸相は、ポートクラン港湾局(PKA)とジョホール港湾局が統一プラットフォームの開発を担当しているとした上で、MMSWにより入港船舶の許可プロセスが合理化され、官僚的なハードルが軽減され、港全体の効率が向上すると言明。データとプロセスを一元化し、不必要な仲介者を排除し、透明性を促進することにより、汚職を大幅に減らすことにも繋がると述べた。
(フリー・マレーシア・トゥデー、6月8日)

インドネシア大統領が訪馬、関係強化に向け協定6件を締結

【クアラルンプール】 インドネシアのジョコ・ウィドド大統領がアンワル・イブラヒム首相の招きにより、7ー8日の日程でマレーシアを訪問した。ジョコ大統領のマレーシア公式訪問は2019年以来4年ぶり。

両首脳は8日、経済や安全保障分野における両国関係を強化する二国間協定6件を締結した。具体的には、▽国境警備▽海上安全保障(2件)▽国境貿易▽投資促進▽ハラル(イスラムの戒律に則った)認証の相互承認ーーに関する協定となった。

両首脳はまた、欧州連合(EU)が昨年12月に発表した、パーム油、牛肉、大豆、コーヒー、ココア、木材などの森林破壊に関連する製品に対する輸入規制は不当な差別だとし、両国のパーム油産業保護に向け協力関係を強化すると言明。EUは、パーム油に対する差別的措置の公正かつ公平な解決に向けて努力する必要があると述べた。

ジョコ大統領は8日、アンワル首相の案内でクアラルンプールのチョウキット市場を訪問。マレーシアで働くインドネシア人を中心とした大勢の人が大統領を一目見ようと詰めかけた。

(ザ・スター、6月9日、ボルネオポスト、ベルナマ通信、6月8日)

ペナン州議会が6月8日に解散へ、15日から郵便投票受付開始

【ジョージタウン=マレーシアBIZナビ】 ペナン州のチョウ・コンヨウ首相は8日、同州議会(定数40)を6月28日に解散する意向であることを明らかにした。州議会解散に伴う州議会選挙の日程を協議するために近くアハマド・フジ・アブドル・ラザク知事と面会する方針だ。同州議会の任期は8月2日までとなっている。憲法の規定で解散後60日以内に選挙を行う必要がある。

ペナン州議会は現在、連立与党の中核である希望同盟(PH)が33議席、連立相手である国民戦線(BN)の中核政党である統一マレー国民組織(UMNO)が2議席、野党・汎マレーシア・イスラム党(PAS)が1議席をそれぞれ確保しており、4議席が空席となっている。

PHペナン支部長であるチョウ氏は、与党連合の議席配分を巡ってBNとの全国レベルでの交渉が進んでいると述べた上で、最終決定は中央が行うと述べた。
今年はペナン州のほか、PHが政権を握るセランゴール州とネグリ・センビラン州、PASが政権を握るケダ州、クランタン州、トレンガヌ州も州議会選挙を行うことになっており、すでにこれら6州が同時開催で合意している。州議会の同時開催時期は7月になるとみられる。

なお選挙委員会(EC)は、6州の州議会選挙に先立ち、6月15日から郵便投票を受け付けると発表した。

国家産業計画など3つの政策、下半期に発表=アンワル首相

【クアラルンプール】 アンワル・イブラヒム首相は、5日に行われたアブドラ国王誕生日の祝賀会で演説し、世界の課題に立ち向かうためにより強力な3つの政策を今年下半期に発表する意向を明らかにした。

3つの政策は、8月に開始される国家産業計画、9月末に予定している第12次マレーシア計画(12MP)の中間見直し、10月に予定しているの第2次マレーシア「マダニ(MADANI)」予算で、アンワル首相は「これらの政策は覇権争いや戦争、世界経済の減速、気候・環境危機など、世界が直面する課題に対処するために必要だ」と説明。 経済回復努力に加えて、連立政権は世界的な問題となっている生活費、物価上昇、食糧安全保障の問題への対応にも注力していると述べた。

その上でアンワル首相は、国民生活に対する支援の一環として、慈悲(ラーマ)保護構想やハリラヤ・セールス・カーニバル、起業家育成プログラムなど、いくつかの取り組みが実施されたと言明。マレーシアが特に国の主権、人道主義、安全保障、災害管理などの問題において、国際的なフォーラムで自らの立場を表明し、国家の利益を守るためにより積極的な役割を果たし続けるだろうと述べた。
(ザ・サン、6月6日、マレーシアン・リザーブ、ベルナマ、6月5日)

スウォッチを家宅捜索、LGBT権利運動支援が理由か

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 マレーシア内務省が5月13、14日の両日、レインボーカラーのプライドコレクションを巡ってスイスの時計メーカー、スウォッチの全店舗を強制捜査したことが明らかになった。マレーシア政府が認知していないLGBT権利運動を支援していると判断されたためとみられるが、強制捜査はやり過ぎだとの声が上がっている。

▽パビリオン・クアラルンプール▽ワン・ウタマ▽サンウェイ・ピラミッド▽セティア・シティ・モール▽ミッドバレー・メガモール▽ミッドバレー・サウスキー▽サンウェイ・プトラ・モール▽そごうKL▽クイーンズベイ▽ファーレンハイト88▽スリア・サバーーの各店舗でレインボーカラーのコレクションが押収され、▽KTCC(トレンガヌ)▽イオンKB▽アマン・セントラル・ケダ▽シティ・スクエア▽ビバシティ・クチンーーの5店舗が警告を受けた。

LGBT権利運動を巡っては、これを支援する英国のバンド、コールドプレイが11月に予定しているコンサートについてイスラム保守派が中止するよう要求しており、スウォッチ店舗の捜索との関連が疑われている。

スウォッチ・グループのニック・ハイエック・ジュニア最高経営責任者(CEO)は失望と懸念を表明する一方でイノベーションと多様性を擁護する同ブランドの精神を強調した。スウォッチグループは押収された時計の返還を求めている。

民主行動党(DAP)サラワク州支部のアラン・リン書記長は、警察には販売店がどの法律に違反したのか説明する義務があるとした上で、国民や観光客の間に不必要な恐怖を引き起こしていると指摘。虹のモチーフは子供の絵画にも見られるもので、虹がダメであれば学校までが強制捜査に遭う恐れがあると批判した。

マレーシア統一民主同盟(MUDA)のアミラ・アイシャ副党首は、何が「有害」と解釈されるか定義が曖昧だと懸念を表明。虹が描かれたものを販売している店舗をすべて捜索するのかと疑問を呈し、サイフディン・ナスティオン内務相に政府の見解を説明するよう求めた。

イスラム党支配の3州が6月にも解散へ、7月に6州同時選挙か

【クアラルンプール】 イスラム原理主義政党、汎マレーシア・イスラム党(PAS)のモハマド・アマル・ニック・アブドラ党首補(クランタン州副首相)は23日、PASが政権を掌握している▽クランタン▽トレンガヌ▽ケダーーの3州について6月末に州議会を解散する考えを示した。

アマル・ニック・アブドラ氏は、希望同盟(PH)が政権を握る▽セランゴール▽ペナン▽ネグリ・センビランーーの3州も6月に州議会を解散することで同意していると報告を受けていると述べ、これにより7月に6州で同時選挙が行われる可能性が高くなったと述べた。

同氏は「クランタン州に関しては6月下旬の解散を既に決定している。他の5州も段階的に解散すると聞いていたが6月に解散することになるだろう」と述べた。

セランゴール州のアミルディン・シャリ州首相は今年2月、今年半ばで任期が切れる6州が6月末の解散を検討する方向で合意に達したことを明らかにしていた。連邦憲法によると、選挙は議会解散から60日以内に行わなければならないことになっている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、4月24日、フリー・マレーシア・トゥデー、4月23日)

ASEANは中立維持を、米中覇権争いについてアンワル首相

【クアラルンプール】 アンワル・イブラヒム首相は米国と中国の対立が強まっている中、東南アジア諸国連合(ASEAN)は独立、中立を維持すべきとの認識を表明した。

中国公式訪問中、中国公共テレビ局の中央電視台との会見で述べたもので、会見の模様は7日夜に放映された。

ASEANは1967年に設立された東南アジア諸国が加盟する地域共同体で、地域の平和と安定、経済成長の促進が目的。

アンワル氏は「地域の平和と安定という目的は変わらない。われわれはすべての国と友好関係にある。地域が軍拡競争の基地となることを望まない」と述べた。
アンワル氏は米英豪の3カ国が21年に立ち上げたインド太平洋地域での安全保障協力の枠組み、オーカスに触れ、「地域の状況を悪化させるもの」と批判した。米英は豪州の原子力潜水艦配備を支援し、中国の軍事活動が活発になっている南シナ海などでの抑止力を高める。

アンワル氏は「オーカスが軍事的緊張になることを望まない」と強調。中国、米国は緊張緩和のため平和的解決法を模索すべきとした。内政については、汚職根絶に注力していると述べた。
(ザ・スター、4月9日)