アンワル内閣が副大臣27人を指名、正副でバランス重視

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 アンワル・イブラヒム首相は9日、保留となっていた副大臣人事について合計27人を起用すると発表した。アンワル首相は12月2日に副首相を含む正大臣28人の指名を行っており、これでアンワル内閣の閣僚人事が完了したことになる。

副大臣は正大臣と異なる政党から選ばれており、バランスを重視した人事となっている。また先の5人の女性の正大臣任命に続いて、8人の副大臣が女性となっている。正副大臣は合計55人となり、ムヒディン ヤシン政権時の70人、イスマイル・サブリ・ヤアコブ政権時の71人からは大幅に減らされている。

財務相を兼務するアンワル首相を支える重要ポストである副財務相ポストには、国民戦線(BN)率いる統一マレー国民組織(UMNO)のアハマド・マスラン書記長と希望同盟(PH)の構成党、民主行動党(DAP)のスティーブン・シム全国党書記の2人が指名された。UMNOからは6人の正大臣、5人の副大臣が起用されており、DAP(正大臣4人、副大臣6人)を上回るポストを獲得することとなった。

このほか大物政治家からは元マラッカ州首相のアドリー・ザハリ氏(国民信任党=Amanah)が副国防相に、リム・チントン氏(DAP副書記長)が副通産相にそれぞれ指名された。

EV導入目標を発表、2025年までに公共充電器1万基設置へ

【クアラルンプール】 テンク・ザフルル通産相は8日、通産省の電気自動車(EV)導入目標について明らかにした。公共EV充電設備について2025年までに1万基を設置する。またEVおよびハイブリッド車が市場総需要量(TIV)に占める割合を2030年までに15%、2040年までに38%にする。

ザフルル通産相によると、これらの目標を達成するために、通産省を中心に関係省庁で構成される国家EVタスクフォース(NEVT)が、EV開発促進や国内EV産業の発展に向けた戦略を実行する。EV現地組立のための投資誘致やアフターサービス促進などについて、業界関係者との話し合いを続けていくという。

前政権が発表した2023年度予算案では、EVを対象とした売上・サービス税(SST)減免措置について、輸入完成車(CBU)に対しては2024年12月末まで、現地組立車(CKD)に対しては2025年12月末まで適用するとされた。新政権での予算案の国会再提出は来年1月になる見込みだが、アンワル・イブラヒム首相は詳細について改善予定ではあるものの、特定の項目を撤回することはないと発言している。
(ポールタン、12月8日)

通信デジタル省、ソーシャルメディア規制に向け法律見直しへ

【プトラジャヤ】 ファーミ・ファジル通信デジタル相は、ソーシャルメディアの法律順守に向け、現行法の見直しを開始したと明らかにした。

ファーミ大臣によると、動画投稿サイトのティックトックでは、11月12ー26日までの第15回総選挙(GE15)期間中に、2,113本の挑発的・過激な動画が自動削除された。このうち、857本は投票日前の11月12ー18日、130本は投票日当日の19日、1,126本は選挙後の11月20ー26日に削除された。自動削除はティックトックの人工知能(AI)システムが行うもの。また、マレーシア通信マルチメディア委員会(MCMC)が1月1日ー12月5日に合計202件の苦情をティックトックに提出したが、そのうち95件はコミュニティガイドライン違反、28件は国内法違反で削除されたものの、79件は何の措置も受けなかったという。

ファーミ大臣は、ソーシャルメディア運営者が投稿コンテンツに対してより責任を持つことを望むとし、5日開催されたティックトック担当者との会議で誤報や過激な内容の流通について協議したと言明。フェイスブックやインスタグラム、ワッツアップ、テレグラムなど他ソーシャルメディアに対しても働きかけているとし、政党によるソーシャルメディアでの世論誘導を規制する法律も検討していると述べた。12月1日に設立したフェイクニュース対策特別チームでは、公序良俗、経済、社会文化、宗教、治安に悪影響を及ぼすフェイクニュースを監視するとした。

ファーミ大臣はまた、省名称について、通信・マルチメディア省を通信デジタル省に改称したと発表。これまで通信・マルチメディア省傘下にあった芸術・文化関連機関は別の省の下に置かれることになるとし、後日、新しく管轄する省からの発表が行われると述べた。
(ザ・サン、ザ・スター、12月8日、マレーメイル、ボルネオポスト、ベルナマ通信、12月7日)

アンワル政権参加政党が近く連立協定締結、5年間は解散なし

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 アンワル・イブラヒム首相率いる連立政権に参加する各政党・政党連合が近く署名する予定の連立協定について、ラフィジ・ラムリ経済相(人民正義党=PKR副党首)は、安定政権をつくるのが狙いだと説明した。与党に参加する各政党は19日に予定されているアンワル首相に対する国会での信任投票の前に署名を済ませる予定。

ラフィジ氏は連立協定の効力は1期5年のみであり、その間は国会を解散しないとの内容が盛り込まれると説明。署名の目的は連立に参加する政党の間に共通の政策基盤を形成し、連立内の意見の相違を管理するための意思決定構造を明確化することにあるとし、所属議員に対する党議拘束も含まれるとした。反・政党鞍替え法に基づき、政府の決定に賛成票を投じない場合には国会議員の資格が剥奪されることになるという。

一方、副大臣人事についてラフィジ氏は、既に人選に着手しているものの、決定には1ー2週間かかる可能性があるとした。アンワル政権はスリムな内閣にすると公言しており、正大臣はアンワル首相を含め28人が指名されている。内訳はアンワル首相率いる最大勢力の希望同盟(PH)から15人、国民戦線(BN)から6人、サラワク政党連合(GPS)から5人、サバ国民連合(GRS)から1人、民間から1人がそれぞれ起用されている。

閣僚月給20%削減、5G計画見直しなどを発表=首相

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 アンワル・イブラヒム首相は、5日に開催された臨時閣議後の記者会見で、新政権の取り組みについて発表した。

経済が回復するまで、閣僚の月給を20%削減する。選挙時の公約に基づくもので、首相就任直後に自身の給与は受け取らないと発表していた。「1980年国会議員(報酬)法」によると、首相の月給は2万2,826.65リンギ、副首相は1万8,168.15リンギ、閣僚は1万4,907.20リンギ。

前政権が導入した5Gネットワーク計画については、透明性が足りないため見直しを行うとした。現在、5G回線は国営デジタル・ナショナル(DNB)による単独卸売制となっているが、各通信企業からその価格や透明性、国による独占について懸念が示されていた。

また、4桁の数字を当てる「4D宝くじ」について、来年以降、特別抽選を年8回に制限するとした。「4D宝くじ」の通常発売は週3回だが、政府は今年、それに加えて特別抽選を22回行う許可を出している。アンワル首相は、以前の希望同盟(PH)政権下では特別抽選が8回だけであったため、その回数に戻すとした。

一方、2023年度予算案については、改善を行う予定だとしたが、特定の項目についての撤回は考えていないと述べた。

来年度予算は早くて1月に再提出=ラフィジ

【クアラルンプール】 2日に発足したアンワル・イブラヒム内閣で初入閣したラフィジ・ラムリ経済相は、2023年度予算案について、国会への再提出が早くても1月初めになる見通しであることを明らかにした。

ラフィジ氏は今月19、20日に開催される初国会でまずは報酬に関する予算を提出し、その後1―2カ月かけて完全な予算案を国会に提出することになると言明。現在詳細に部分に関して検討を行っているとしたが、内容については時期尚早だとして言及を避けた。

来年度予算案は10月7日に前イスマイル・サブリ政権より国会に提出されたが、本格的な審議が行われないまま国会が同月10日に解散となり宙に浮いていた。当時のテンク・ザフルル財務相は通産相に横すべりし、財務相ポストはアンワル首相が兼任している。

またラフィジ氏は、経済相としてマレーシアを高所得国家にすることに注力していくと強調。成長が遅れ貧困者が多い州に重点を置き産業振興に力を入れていくとし、テクノロジーや知識経済だけでなく、持続可能な開発目標にも焦点を当てる必要があると述べた。その上で経済政策の見直しについては、向こう数週間から数カ月内に情報を公開していく考えを示した。

(エッジ、ベルナマ通信、12月5日)

アンワル内閣の陣容発表、副首相にザヒド元副首相起用

【プトラジャヤ=マレーシアBIZナビ】 アンワル・イブラヒム新首相は2日、新政権の閣僚人事を発表した。アンワル首相がすでに約束していた通り、総勢28人の閣僚のみのコンパクトな内閣となった。イスマイル・サブリ・ヤアコブ前政権では正副大臣ポストが67人分も設けられていた。

連携して与党連合・希望同盟(PH)を支えることになった国民戦線(BN)、サラワク政党連合(GPS)から、それぞれアハマド・ザヒド総裁(元副首相、UMNO総裁)、ファディラ・ユソフ前公共事業相(サラワク・ブミプトラ保守党=PBB党首補)を副首相に起用。汚職で裁判を抱えているザヒド氏の起用は反汚職を期待していた有権者や野党から批判を浴びかねない決断だけに一層透明性のある清廉な政権運営が求められそうだ。なおザヒド氏は地方地域開発相、ファディラ・ユソフ氏は農園一次産業相をそれぞれ兼任する。

要である財務相はアンワル首相が兼任する。PH構成党幹部からは、国民信任党(Amanah)のモハマド・サブ党首が農業食糧安全相、人民正義党(PKR)のラフィジ・ラムリ副党首が経済相、サイフディン・ナスシオン書記長が内務相、ニック・ナズミ・ニック・アハマド党首補が環境天然資源気候変動相、民主行動党(DAP)のアンソニー・ローク党首が運輸相に起用された。UMNOからはモハマド・ハサン副総裁が国防相に、カレド・ノルディン総裁補が高等教育相に起用された。

このほかの閣僚人事は次の通り。

◎外務相・・・ザンブリー・アブドル・カディル

◎通産相・・・テンク・ザフルル

◎教育相・・・ファドリナ・シデク

◎保健相・・・ザリハ・ムスタファ

◎公共事業相・・・アレクサンダー・ナンタ・リンギ

◎人的資源相・・・V.シバクマル

◎女性家族相・・・ナンシー・シュクリ

◎通信デジタル相・・・ファーミ・ファジル

◎地方行政開発相・・・ンガ・コーミン

◎科学技術相・・・チャン・リーカン

◎首相府相(法務・制度改革担当)・・・アザリナ・オスマン

◎国内取引物価相・・・サラフディン・アユブ

◎観光芸術文化相・・・ティオン・キンシン

◎青年スポーツ相・・・ハンナ・ヨー

◎起業家開発共同組合相・・・イーウォン・ベネディック

◎国民統合相・・・アーロン・アゴ・ダガン

◎首相府相(サバ・サラワク州問題)・・・アルミザン・モハマド・アリ

◎宗教問題相・・・モハマド・ナイム・モクタル

これに先立ちアンワル首相は、経費削減のため内閣をスリム化する意向を示しており、効果が期待できない特使の指名を控え、極力5年間の任期を全うする考えを示していた。なおアンワル内閣は5日に初閣議を開いて閣僚のムダ遣いをなくすための新たなル―ルを設ける方針だ。

全てのマレーシア人の権利を保証=アンワル新首相

【カジャン=マレーシアBIZナビ】 第10代首相に選出されたアンワル・イブラヒム首相は24日、就任後初の会見を開き、憲法に明記されている公的宗教としてのイスラム教の位置づけやマレー語の公用語としての特別な位置づけ、ブミプトラ(マレー人と先住民の総称)の地位、統治者の地位などを保証しつつ、民族や宗教に関係なくすべてのマレーシア国民の権利を保証することを約束した。

アンワル首相は、政策の焦点を経済に置いているとした上で、貧困者の福祉が守られるよう経済回復に必要な措置をとっていくと強調。大連立政権は、総選挙で82議席を獲得して首位となった自身が率いる与党・希望同盟(PH)と30議席を獲得し第三勢力となった国民戦線(BN)、23議席を獲得し第四勢力となったサラワク政党連合(GPS)で組織するが、他の政党もすでに協力する意思を示していると述べ、良好なガバナンスや反汚職、すべてのマレーシア人のためのマレーシアという原則に従うことを条件にすべての人々を受け入れると表明した。

■12月の初国会で自身への信任投票を実施■
また73議席を獲得し第二勢力となった国民同盟(PN)を率いるムヒディン・ヤシン元首相がアンワル政権の正統性に疑義を申し立てていることについて、12月19日の開会を予定している初国会で、自身に対する信任投票に応じる考えを表明。支持を表明している下院(定数222)議員が過半数を上回る130ー140人に上っていると自信をみせた。
ムヒディン氏は自身への支持がアブドラ国王が名簿提出期限を延長する前にすでに過半数を超える115人に上っていたと主張。改めて国会で信任投票に応じるようアンワル氏に求めていた。

■副首相2人、東マレーシアからも起用■
閣僚人事については、東マレーシアで最大のGPSの協力が欠かせないとして、副首相に半島部と東マレーシアから1人ずつ指名する考えを示した。
前イスマイル政権で国会に提出されたまま宙に浮いている来年度予算案については、新たな予算案もしくは修正した予算案を年明けにも再提出する考えを示した。
アンワル首相はこのほか、28日(月)を休日とすると発表した。

岸田文雄首相は25日、アンワル首相に対して祝意を表する書簡を発出した。

アンワル氏が第10代目首相に就任、大連立政権を樹立へ

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 第10代総理大臣に先の総選挙で最大の政党連合となった希望同盟(PH)のアンワル・イブラヒム会長(元副首相、人民正義党=PKR党首)が選出され、24日、王宮で就任宣誓を行った。

PHを含めた連立政権には第三の政党連合、国民戦線(BN)のほか、第四の政党連合、サラワク政党連合(GPS)やサバ国民連合(GRS)、そして最後までPH主導の連立政権への参加に抵抗していた第二勢力の国民同盟(PN)も合流する意向を示しており、最終的にこれらを糾合した大連立政権を樹立することになる見通しだ。大連立の大所帯を運営するにあたって、アンワル新首相は閣僚ポストを各勢力にどのように配分するか早速手腕が試されることとなる。

19日に行われた総選挙では下院(定数222)でPHが82議席、PNが73議席を獲得したが、いずれも過半数に届かなかった。このため両勢力は過半数掌握に向け、30議席を獲得したBNやサバ・サラワク州の地方政党と水面下での連立交渉を進めていたが、カギを握るBNがいずれの勢力とも連携しないと宣言したため両勢力共に決め手を欠き膠着状態に陥っていた。

打開に向けて仲介に乗り出したアブドラ国王が、各勢力の代表と面会して大連立を持ち掛けたことで事態が動き、方針を巡って内部対立が起きていたBNがPH支持に方向転換したことで過半数獲得のメドがたった。

アンワル氏は1947年8月10日生まれの75歳。イスラム青年組織のリーダーを経て1981年にBNを率いる統一マレー国民組織(UMNO)に入党。すぐに頭角を現して、当時のマハティール・モハマド内閣で文化青年スポーツ相、農業相、教育相などを歴任し、1991年に財務相、1993年には副首相に就任した。しかし1997年に打ち出した縁故主義打破などを謳った改革がマハティール首相の逆鱗に触れ、1998年9月に解任され、同性愛容疑で逮捕・投獄されるという政治的弾圧を受けた。

アンワル氏不在の間は、妻のワン・アジザ氏ら支持者が人民正義党(KEADILAN、後のPKR)を結成。華人系野党・民主行動党(DAP)などと野党連合PHを結成し勢力を拡大し、さらには打倒BNを掲げて仇敵のマハティール氏とも和解を実現し、2018年の総選挙ではついに政権奪取に成功した。アンワル氏はこれに合わせて国王から恩赦を受けて出獄し、PKR党首となってPH政権を支えた。

PH政権で首相となったマハティール氏とは総選挙前に1年後に政権を譲るとの密約があったが、マハティール氏が約束を先延ばししたことで両者の溝が深まり、マハティール氏支持者らがアンワル氏とDAPの排除を目指して野党となったUMNOや汎マレーシア・イスラム党(PAS)を取り込んで政変を起こし(2020年のシェラトン・ムーブ)、アンワル氏は首相になれないまま再び野党の身となっていた。

落選のマハティール氏、今後は執筆活動に注力

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 19日に投開票が行われた第15回総選挙で落選したマハティール・モハマド元首相(祖国戦士党=ペジュアン会長)は23日、長い沈黙を破って声明を発表し、今後は執筆活動に注力していく考えを明らかにした。

総選挙ではペジュアンが中心となって結成した新たなマレー系政党連合・祖国運動(GTA)として合計125選挙区に候補者を擁立したが、すべて落選。マハティール氏は前回総選挙と同じケダ州ランカウイ選挙区から出馬したが、得票率はわずか6.8%で5人の候補者の中で4位に沈んだ。

マハティール氏はフェイスブックへの投稿で、「選挙での敗北は悲しいが、国民の決定を受け入れる」と表明。今後ペジュアンができることは新政権の行動を監視することだと述べ、総選挙の勝者がどの政党連合であるにしろ、直ちに政権を樹立し国が抱える問題を解決することを期待するとした。

また自身の今後の活動については、「英国植民地時代に起きたことを含め、マレーシアで起きた多くの出来事がまだまだ記録されていない」と述べ、マレーシアの歴史と出来事について執筆することに集中する考えを示した。

マハティール氏は総選挙に出馬するにあたって、これが最後の選挙になると述べており、97歳という高齢もあって事実上の引退となる見込みだ。