CPTPPの速やかな批准、製造業連盟が政府に改めて要請

【クアラルンプール】 マレーシア製造業者連盟(FMM)は26日、パンデミックからの経済回復に向け、包括的及び先進的な環太平洋経済連携協定(CPTPP)の可及的速やかな批准が必要との声明を出した。

ソー・ティアンライ会長は、マレーシアのCPTPP参加について、2018年3月の署名から4年が経過しており、批准の更なる遅延により貿易で傍流に追いやられるリスクを負うわけにはいかないと述べた。このままでは輸出企業が東南アジア諸国連合(ASEAN)の他国へ移転したり、海外投資家にとりマレーシアが魅力的な投資先ではなくなってしまう恐れがあると強調。CPTTPへは中国、エクアドル、台湾が昨年加盟申請を行い、英国も加盟交渉途上で、韓国、タイ、フィリピンも加盟に関心を示すなど拡大傾向にあり、加盟が遅れたり、不参加となれば、機会損失となると懸念を示した。

ソー会長はまた、CPTPPにより、これまで自由貿易協定を結んでいないカナダ、メキシコ、ペルーの3カ国への市場アクセスが可能になるとした。世界銀行の2021年データによると、3カ国は合計2億人以上の人口とマレーシア国内総生産(GDP)の9.4倍となる3兆5,000億米ドル(16兆リンギ)以上のGDPを有しているため、国内企業にとって競争力のある価格で原材料を調達できるようになり、マレーシアの競争力と投資先としての魅力が直接的に向上するとした。

ソー会長によると、ASEANのブルネイ、シンガポール、ベトナムもCPTPPに参加しており、マレーシアは批准の遅れのせいでこれらの国に遅れをとっている。例えばベトナムは、2019年1月にCPTPPを批准したことで2019年中にカナダ、メキシコ、ペルーへの輸出を29.7%、全体の輸出成長率を8.5%と大幅に伸ばした。また、ベトナムはCPTPP加盟国からの外国直接投資(FDI)が加速し、2019年のFDI総額の24.2%にあたる390億米ドルをCPTPP加盟国が占め、新型コロナウイルス「Covid-19」の感染拡大の影響で一時減退した貿易回復にも大きく貢献したという。
(ザ・サン、7月27日、ベルナマ通信、7月26日)

1億リンギ相当の公共プロジェクト延期を決定=首相府相

【クアラルンプール】 ムスタパ・モハメド首相府相(経済担当)は、総額1億リンギ相当の公共プロジェクト30件について実施延期を決めたと発表した。財政のさらなる悪化を防ぎ限られた予算を有効に使うためで、いずれも優先順位が低いプロジェクトで、国民生活に直接的に影響を及ぼすものではないという。

ムスタパ首相府相が21日の下院議会で明らかにしたところによると、延期が決まったプロジェクトは、新規または既存プロジェクトで、入札手続きなど調達プロセスがまだ始まっておらず、且つ宣伝も行われていないものに限られている。19日には財務省、公共事業省、首相府経済企画局(EPU)、首相府実施調整局(ICU)、公共事業局と延期に向けた調整を行っており、これらの省庁との話し合いは今後も継続する。

延期が決まった主なプロジェクトには、農園・一次産業省の下で計画されていた統合ゴム処理センターの建設、人的資源省の下で計画されていた電気分野のワークショップの近代化のための調達や海外の高等教育機関とのハイテクトレーニングセンターにおける協力、通産省の下で計画されていた戦略的リサーチプロジェクトが含まれる。首都圏大量高速輸送・環状線(MRT3)や東海岸鉄道線(ECRL)、パン・ボルネオ高速道は継続する。

ムスタパ首相府相によると、連邦政府は2022年に7,243件、額にして756億リンギ相当の開発プロジェクトを承認していた。
(エッジ、マレーシアン・リザーブ、7月21日)

刑罰が死刑のみの重大犯罪、減刑裁量を裁判官に付与へ

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 連邦政府は、刑罰が死刑のみに限定されているテロ行為などの11の重大犯罪に関して、裁判官に情状酌量に基づく減刑の裁量を与える方針を固めた。ワン・ジュナイディ首相府相(法務担当)が明らかにした。8日の閣議で了承された。
刑罰が死刑のみとなっている犯罪は、国王やスルタンに対する暴力行為やテロの実行や支援行為、危険薬物密輸に関するものなど。ワン・ジュナイディ大臣は実現に向けては法改正も含めて様々な検討分野があるとして、いつまでに実施するかなどの詳細については言及を避けた。一方、イスマイル・サブリ・ヤアコブ首相は裁判官に減刑に関する裁量権を与えるだけであって、死刑という刑罰そのものを廃止する訳ではないと説明している。
マレーシア弁護士会は、刑罰が死刑のみの犯罪に対する刑罰に裁量を認める方針を示したことには賛意を表した上で、実施スケジュールが明かされなかったことを批判。速やかにスケジュールを発表し必要な法改正を行うべきだと指摘した。
マレーシア政府は2020年の国連で行われた死刑反対決議に賛成票を投じており、弁護士会や人権団体は死刑廃止に向けた早急な国内法の整備を政府に求めているが、国内では死刑存続を求める声も根強い。
また昨年11月時点で、マレーシア国内にはいまだ1,359人の死刑囚が未決のまま刑務所に収監されており、死刑囚に対して減刑が実施されるかどうかも不透明だ。

外資系など4社にクラウド業務委託、公共業務のデジタル化で

【プトラジャヤ】 行政サービスの近代化を担当する首相府機関のマレーシア行政近代化・管理計画局(Mampu)は9日、内外4社からクラウドサービスの提供を受ける契約を交わした。マレーシア・デジタル経済青写真に盛り込まれた、公共セクターのデジタル転換計画の一環だ。
契約相手は、マイクロソフト(マレーシア)、アマゾン・ウェブ・サービシズ(AWS)・マレーシア、グーグル・クラウド・マレーシアおよびテレコム・マレーシア。これら4社が指名するマネージド・サービス提供業者が実際の業務に当たる。
公共セクター・データセンター(PDSA)で利用されている民間クラウドサービスと融合させ、業務効率を向上させるのが狙いで、Mampuのユソフ・イスマイル局長によると、業務のペーパーレス化を一段と推進する。
政府は年内に公共セクターデータの80%をクラウドに移管する計画だ。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、5月10日、マレーシアン・リザーブ、5月9日)

「マレーシアは中立を維持」外相、露ウクライナ紛争で

【プトラジャヤ】 サイフディン・アブドラ外相はロシアによるウクライナ侵攻に言及し、マレーシアがいずれの側にも付くことなく中立を維持すると言明。その上で戦争を早期に終わらせるために双方への働きかけを続けると述べた。
特別メディアインタビューに応じたサイフディン外相は、紛争を終わらせ人道援助を行うためにいくつかのグループが活動している言明。主権と国家完全性の原則を脅かすいかなる侵略行為も容認できないと述べた。
その上で米国やその同盟国がロシアに対する様々な制裁措置をとっていることに言及。マレーシアは一方的な制裁を認めていないとし、「制裁措置を行う場合は国際連合(UN)の決議が必要だ。決議された場合、マレーシアは国連の加盟国としてそれを尊重し、遵守する必要がある」と述べた。

ロシア在住のマレーシア人に関しては、現時点で彼らの福祉と安全は保証されているとした上で、銀聯サービスを通じてロシアの銀行と金融取引を行うことも可能だと述べた。またウクライナ戦争の影響に関しては通産省よりブリーフィングを受けているとした。ロシアにはマレーシア人816人が居留しているという。

 5月12日、13日には東南アジア諸国連合(ASEAN)米国特別サミットが米ワシントンで開催される予定で、サイフディン外相はイスマイル・サブリ・ヤアコブ首相らと共に出席する予定。
(ザ・スター、ベルナマ通信、5月8日)

次期首相候補にイスマイル現首相を推薦、UMNOが決定

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 連立与党政権の中核を占める国民戦線(BN)の構成党、統一マレー国民組織(UMNO)は、次期総選挙における「顔」となるべき党の推薦する首相候補に現職の首相であるイスマイル・サブリ・ヤアコブ党総裁補を推すことを決めた。

アハマド・マスラン書記長が14日に発表した声明によると、アハマド・ザヒド総裁(元副首相)が議長を務める党最高幹部会議においてイスマイル氏を推すことを満場一致で決定した。また同最高幹部会議では、イスマイル首相が就任時に野党連合・希望同盟(PH)との間で締結した「休戦協定」を継続しないことについても決定した。「休戦協定」は新型コロナウイルス「Covid-19」禍における政治混乱を防ぐために昨年9月に締結したもので、7月31日に失効することになっている。
 声明ではさらに審議入りが7月に延期となっている政党鞍替え防止法案について言及しており、党として法律制定を支持する立場を強調。法案成立を遅らせようとするいかなる党派とも妥協しないとしている。
3月に開催されたUMNO年次総会では、次期総選挙に向けて党内結束を図るため、総選挙から最長6カ月間、党役員選挙を行わないことを決定している。なお団体登録局(RoS)は、すでに延期されている党役員選を今年12月29日までに行うよう求めている。

BNを仕切るUMNOとの関係が悪化している汎マレーシア・イスラム党(PAS)も15日に声明を発表し、UMNOが首相候補としてイスマイル首相を推薦することについて歓迎する意を表明。国の安定や政界の調和に成功していると評価した。

裁判なしの長期拘留規定の延長、下院議会で否決

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 「2012年国家安全(特別措置)法(Sosma)」における裁判なしに最長28日拘留できる規定の延長法案が23日、下院議会で野党による反対多数で否決された。
3分の2の賛成を要する憲法改正以外の一般法案が下院で否決されるのはこれが初めてとみられる。同法は言論弾圧などを目的に悪用される懸念があるとして、野党や人権団体などがかねてから撤廃を要求していた。規定延長法案の廃案に伴い、期限が来る7月31日で無効となる。
同規定は警察が治安維持違反の容疑者を拘束した際、捜査のために必要と判断すれば最大28日間、裁判なしに拘留できるというもので、5年ごとに上下両院の承認がなければ失効することになっていた。50人が欠席したことが影響して賛成は84票にとどまり、野党による反対が86票で上回った。
法案を提出したハムザ・ザイヌディン内務相は、政治的手段として使われるのではないかとの懸念の声があることを認めた上で、2013年のサバ州ラハドダトゥで起きた「スールー王国軍」侵攻事件や2016年のイスラム国(IS)メンバーによるナイトクラブ爆弾テロ事件を例に挙げ、「規定がなくなればテロリストに活動の余地を与えることになる」と懸念を示した。
2016年から今年1月までの間に合計3,717人が同法の適用を受けて拘留された。

ロシア非難決議にマレーシアも賛成、名指し批判は避ける

【クアラルンプール】 3日に行われた国連の緊急特別会合で、ウクライナを軍事侵攻したロシアに対する非難決議が採択され、これまで曖昧な態度をとっていたマレーシアも非難決議に賛成票を投じた。同決議案には141カ国が賛成、ロシアやベラルーシ、北朝鮮など5カ国が反対し、中国やインド、ベトナムなど35カ国が棄権した。
マレーシア外務省は同日声明を発表し、「マレーシアは決議文のすべての言葉に同意したわけではないが、国家の主権、独立、領土保全の原則を一貫して支持するとのマレーシアの長年の立場に則って、それを支持し賛成票を投じた」と説明。ロシアを名指しするような直接的な批判は避けた。
その上で外務省は、「ウクライナ・ロシア両国の強固で緊密な関係、複雑な地政学的文脈を考えると、両当事国の主張の食い違いや安全保障上の懸念は、対話と平和的手段を通じて対処されなければならないと信じている」とし、「その点においてベラルーシで行われている両国の直接交渉を歓迎し、平和的な会談が成功することを期待している」とした。
また外務省は、国連安全保障理事会に対して紛争解決の努力を継続することを求めた上で、安保理は国際平和と安全の管理者としての主要な責任を果たさなければならないと強調。「国連の責任ある加盟国として、マレーシアは紛争の平和的解決への長年のコミットメントを再確認する」と述べた。
ロシアによる軍事侵攻についてイスマイル・サブリ・ヤアコブ首相は、遺憾の意を示し平和的解決を望むとの立場を表明したもののロシアに対する直接的な批判を避けており、在マレーシア・ウクライナ大使館のオレクサンデル・ネチテイロ大使はマレーシア政府に明確な立場を示すよう求めていた。
(ベルナマ通信、3月3日)

ジョホール州議会が解散、2カ月内に選挙実施へ

【ジョホールバル=マレーシアBIZナビ】 ジョホール州議会(定数56)のスハイザン・カイアト議長が23日、正式に議会解散を発表した。憲法の規定に基づき2カ月内に選挙が行われることになるが、昨年12月15日の選挙権年齢の18歳への引き下げ(Undi-18)施行後初の選挙ということで、若者の投票行動に注目が集まっている。
与野党勢力が拮抗していたことから、情勢有利と見た与党連合側が解散・選挙に踏み切った格好。ハスニ・モハマド首相が22日に同州スルタン、イブラヒム殿下に謁見し議会解散を提言。スルタンより同意を得ていた。
同州では昨年12月21日に同州与党連合の構成党・統一プリブミ党(PPBM)所属のオスマン・サピアン議員が死去し、国民戦線(BN)と国民同盟(PN)が組織する与党連合の議席が28議席となり、野党連合・希望同盟(PH)の27議席とわずか1議席差となっていた。
BNの中核で同州第1党である統一マレー国民組織(UMNO)党中央からもゴーサインが出ていた。
昨年8月に非常事態宣言が解除されてから、11月にはマラッカ州、12月にはサラワク州で州議会選挙が行われ、いずれもBNが支援する州与党連合が圧勝していた。

オミクロンの脅威も「制限令の発令はない」=上級相

【クアラルンプール】 新型コロナウイルス「Covid-19」オミクロン株感染拡大の脅威が高まっている問題で、ヒシャムディン・フセイン上級相(兼国防相)は、フルスケールの行動制限令(MCO)を再び発令することはないと言明。ただ水際対策として国境管理をより厳格化すると述べた。
ヒシャムディン氏は、これまでにマレーシア国内で245例のオミクロン株感染が確認されているが、大部分は海外からの入国者に関係したものだと指摘。MCOを再び発令することはないものの、オミクロン株に関する最新の知見を考慮に入れ、ハイリスクリストに入れる国を追加するなどの管理措置が強化されることになると述べた。
その上でヒシャムディン氏は、政府がエンデミック(風土病)の段階に移行することに注力していると強調。インドネシアやタイなどへのワクチン接種完了者向けトラベル・レーン(VTL)拡大に向けて、シンガポールとの間のVTLの状況を注視していると述べた。
(エッジ、ベルナマ通信、1月11日)