洪水被害拡大、政府の初動遅れに批判の声

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 17日から18日にかけての豪雨によりセランゴール州など半島中部の広範囲で洪水被害がでていることについて、政府の初動体制の不備を指摘する声が上がっている。
洪水は▽セランゴール▽パハン▽クランタン▽マラッカ▽ネグリ・センビラン▽トレンガヌ▽クアラルンプール(KL)▽ペラ  に渡って発生し、6万人以上が避難する事態となった。22日午前9時時点で死者はセランゴール州で20人、パハン州で7人に上っている。
特に批判の矛先が向けられているのが首相府傘下の国家災害管理局(NADMA)で、災害発生後にようやく会議を開いたのが20日になってからだった。「フリー・マレーシア・トゥデー」によると、国軍は災害救助の準備をしていたが、NADMAからの指示がないため、ついに独自判断で17日午後に被災地に向かったという。NADMAについては、被災者からの救援を求めるメッセージを管理することもしていなかったとの指摘もある。セランゴール州政府の対応も遅れており、国軍からも批判の声が上がっていたという。
批判を浴びたイスマイル・サブリ・ヤアコブ首相は、政府の救助活動が遅れたことを認めた上で、連邦政府だけの責任ではなく、セランゴール州政府と地区の関連当局にもあるとし、洪水対策を改善することは共同責任であると言明。今回明らかになったウイークポイントについては今後改善することを保証すると述べた。またNADMAについては災害発生時の調整役にすぎないと擁護した。
セランゴール州のアミルディン・シャリ州首相は、洪水への準備はしていたものの通常の6倍もの降雨量が予想外だったと指摘。満潮と重なって被害が広がったとした上で、18日には避難誘導を開始する一方でイスマイル首相に救援を求めたと述べた。

イスマイル内閣、発足後100日間の達成度は90%

【クアラルンプール】 イスマイル・サブリ・ヤアコブ首相は9日、新内閣発足後100日間のパフォーマンスについて評価を行なった結果、目標に対する達成度が90%となったと発表した。
イスマイル首相は8月27日の内閣発足時に各閣僚に対し100日の間に成果を出すことを求め、9月30日の声明で、大臣や各省庁のパフォーマンスを国民が評価できるよう、9月1日からの100日間を対象とする「100日レポート」を国民に発表するように閣僚に指示。「100日レポート」には上級大臣、経済、社会、安全保障、インフラの5分野から31名の大臣が参加し、140の目標が設定された。評価の内訳は、各省の中核サービスが50%、大臣のパフォーマンス評価が25%、大臣・省に対する国民の評価が25%となっている。
イスマイル首相は、達成度90%は成功と言えるが、100日という期間はパフォーマンスを評価するのに十分ではなく改善の余地もまだあるため、政府は国民の利益のために今後も最善を尽くしパフォーマンスを向上させていくとした。さらに、最近の物価の急激な上昇に対しては、必需品目の上限額設定など物価をコントロールするための早急な対策を講じており、経済においても事業の継続のため強力なサポートを継続していくと強調した。
(ザ・スター、ベルナマ通信、フリー・マレーシア・トゥデー、12月9日)

総理大臣任期を最大10年に、来年7月メドに法案化へ

【クアラルンプール】 ワン・ジュナイディ首相府相(法務担当)は、総理大臣の任期を最大10年に制限する方向で、すでに首相府法務部(BHEUU)と司法長官会議が法改正に向けた検討に入っていることを明らかにした。
立法化に当たって国民、政府機関、市民社会組織(CSO)、非政府組織(NGO)の見解を考慮するため、すでに11月23日から12月8日までBHEUUのウェブサイト上で意見を募った。9月の与野党合意に基づき設置された閣外協力協定(CSA)運営委員会の下に立法化に向けた技術委員会が設置され検討が始まっており、2022年7月をメドに修正案を取りまとめる。
首相任期の制限は野党側が強く求めていたもので、9月に樹立したイスマイル・サブリ・ヤアコブ内閣が政権安定のために野党連合・希望同盟(PH)と与野党協力を締結した際、政治改革案の一つとして政府側から提示されていた。
このほかワン・ジュナイディ氏は、議会と司法長官会議が議会の独立性を保証するための「2022年議会サービス法案」の策定及び修正、「2022年議会(特権と権限)(修正)法案」の起草に着手していることを公表。2022年3月の審議入りを予定していることを明らかにした。また9月17日の閣議で議員の政党鞍替えを禁じる法律の策定について閣議決定したことを公表。11月23日から12月7日までBHEUUのウェブサイト上で一般から意見を募ったことを明らかにした。
(エッジ、ベルナマ通信、12月7日)

選挙権年齢の18歳への引き下げ、すべての州が同意

【クアラルンプール】 イスマイル・サブリ・ヤアコブ首相は、13州すべてが選挙権年齢を現行の21歳から18歳に引き下げることに同意したことを明らかにした。各州は実施を可能にするため、それぞれの州憲法の改正に着手することになる。
イスマイル首相が議長となって24日に行われた第137回全国州首相会議で決定した。選挙委員会(EC)による有権者の自動登録を可能にする内容も各州の憲法改正に盛り込まれる。各州に先立ちセランゴール州は11月13日、選挙年齢引き下げのための州憲法改正を11月中に行うと発表。26日に改正案が州議会に提出されることになっている。
選挙権年齢を21歳以上から18歳以上に引き下げる連邦憲法改正法案は2019年7月に可決成立し、2カ月後に発効した。しかし準備不足や新型コロナウイルス「Covid-19」の影響などを理由にECが再三にわたって延期を発表した。しかし実施延期に学生組織や人権団体、野党などが反発。サラワク州の若者5人が今年4月に行政訴訟を起こし、クチンの高等裁判所は9月、年内の選挙権年齢引き下げ実施を命令。これを受けてイスマイル首相が来年1月1日付けで実施すると発表していた。
(フリー・マレーシア・トゥデー、ザ・スター、11月24日)

サラワク州議選の日程発表、12月18日に投開票

【クアラルンプール】 選挙委員会(EC)は24日、新型コロナウイルス「Covid-19」感染拡大を受けて開催が延期されていたサラワク州議会(定数82)選挙について、12月6日を公示日、12月18日を投開票日とする選挙日程を明らかにした。

サラワク州議会は今年6月7日に解散することになっていたが、1月に発令された非常事態宣言の適用を受けて州議会の任期が延長された。全国規模の非常事態宣言が9月1日で解除されたが、州議会選挙が行なわれると新型コロナウイルス「Covid-19」の新たな感染拡大を引き起こすことが懸念されたことから、サラワク州のみ来年2月2日まで宣言が延長されていた。

コロナ流行が終息に向かったことを受けてアブドラ国王の同意の下、11月3日付けで非常事態宣言が前倒しで解除され、これを受けてアバン・ジョハリ州首相が同月5日、州議会解散を宣言していた。

解散前のサラワク州政権は、連邦政府と協力関係にあるサラワク政党連合(GPS)が82議席中67議席を掌握していた。

(マレー・メイル、東方日報、11月24日)

 

マラッカ州議選、同州与党のBNが地滑り的勝利

【マラッカ=マレーシアBIZナビ】 事実上3つの政党連合による争いとなったマラッカ州議会(定員28)選挙の投開票が20日に行われ、同州与党の国民戦線(BN)が21議席を獲得し政権を維持した。投票率が65.85%と2018年総選挙の84.52%から19ポイント近く下がった事が無党派層に強い野党連合・希望同盟(PH)に不利に働いた。
新型コロナウイルス「Covid-19」対策で選挙活動に制限が設けられる異例の状況下、BNは構成第一党の統一マレー国民組織(UMNO)が18議席を獲得するなど、組織力を生かした戦いぶりで大勝。これに勢いづいた党内において次期総選挙の前倒し実施論が強まることが予想される。
国政でBNと共闘関係にあるものの選挙協力協議で決裂した国民同盟(PN)は、BNと同じく全選挙区に候補者を擁立したもののわずか2議席の獲得にとどまる惨敗を喫した。ケダ州政権奪取で勢いづいているPN構成党の汎マレーシア・イスラム党(PAS)は8戦全敗に終わった。
BNとPNがそれぞれ別々の候補者を擁立することになったことで戦前の予想で有利が囁かれていた野党連合PHだが、同じく28人を擁立したものの5議席にとどまった。PHを率いるアンワル・イブラヒム元副首相が党首を務める人民正義党(PKR)は11戦全敗。州議会解散の発端となった与党からの鞍替え議員を受け入れる意向を示したことが有権者の反感を買った。
永年BNの独壇場だったマラッカ州議会は、2018年総選挙でPHが政権奪取に成功したが、2020年2月の政変でPH構成党だった統一プリブミ党(PPBM)が離脱。PH構成党内からも鞍替えが相次いだため第一党に返り咲いたBNが政権を奪回した。しかし今年10月、与党系議員4人がスレイマン・モハマド・アリ州首相への不満により政権から離脱。過半数を割ったことから同州元首であるモハマド・アリ・ルスタム知事が議会解散を宣言していた。

マレーシアとシンガポール間の隔離なし移動、陸路も可能に

【コタティンギ】 ジョホール州のハスニ・モハマド州首相は18日、シンガポールとの「ワクチン接種完了者向けトラベル・レーン(VTL)」について、29日付けで空路・陸路の双方をオープンすると明らかにした。新型コロナウイルス「Covid-19」ワクチン接種を完了したマレーシア人・シンガポール人は入国時の隔離が免除される。
シンガポール民間航空局(CAAS)によると、空路ではクアラルンプール国際空港(KLIA)とシンガポール・チャンギ国際空港にVTLを設置。VTLの利用は、▽エアアジア▽ジェットスター・アジア▽マレーシア航空▽マリンド・エア▽スクート▽シンガポール航空ーーの1日6便の指定便の乗客に限定される。
運輸省の発表によると、ワクチン接種以外の条件として、▽出発前の連続した14日間にシンガポールまたはマレーシアに滞在▽短期滞在者の場合、有効なビザを保持▽往復航空券の購入▽コロナ治療・入院補償付きの最低10万リンギの旅行保険に加入▽マレーシア出発の2日前およびKLIA到着時にRT-PCR検査の受検ーーが必要。KLIAの指定待合所でRT-PCR検査結果を受け取り、検査結果が陰性の場合にのみ空港を出ることができる。シンガポールからマレーシアへの渡航の場合、VTL申請は入国手続きで代行され、出入国許可申請プログラム「マイトラベルパス」での申請も不要となる。マレーシアからシンガポールへの渡航時には、チャンギ空港到着時にPCR検査を受け、結果が出るまでホテル・自宅などでの24時間の自己隔離が求められる。
陸路ではジョホール・シンガポール・コーズウェイ(連絡道)およびマレーシア・シンガポール・セカンドリンクを通じての往来が認められるが、シンガポールまたはジョホールバルで雇用されている長期パス保持者のみが対象となる。
陸路・空路とも、22日午前10時からVTL利用パスの申請を受け付ける。
(ベルナマ通信、ストレーツ・タイムズ、11月18日)

ケダ州、宝くじ店舗の営業を禁止

【アロースター】 ケダ州は、4桁の数字を当てる「4D宝くじ」の販売店について、今後営業許可の更新を行なわないと発表した。
ケダ州のムハンマド・サヌシ州首相は、ケダ州からギャンブルをなくす取り組みの一環だとし、ギャンブルは借金問題を引き起こすだけでなく、家族、ひいては文明さえも破壊するものだと強調。「宝くじを買いたいならペナンに行けばいい」と述べ、ギャンブル関連店舗の経営者は利益を得ているかもしれないが、ギャンブルの悪影響は非イスラム教徒にまで及んでいるとした。
サヌシ氏はまた、農村部での酒類販売制限についても計画しているが、非イスラム教徒が影響を受けないようにすると述べた。酒類販売が許可されているランカウイ島の免税店や無認可で酒類販売を行なっている店舗について州政府内で議論を行なった結果、これ以上公然とした酒類販売は望まないという結論に至ったという
(マレー・メイル、11月14日)

EVの需要増に伴う電力需要に対応、国家政策を策定=通産相

【クアラルンプール】 アズミン・アリ通産相(兼上級相)は、電気自動車(EV)需要の高まりに伴い必要となってくる電力需要に対応するための政策を策定していると国会質疑で明らかにした。
アズミン大臣は、エネルギー効率の高い自動車の需要が高まっており、その中でもEVの導入については慎重にならなくてはならないと説明。首相府経済企画局(EPU)が国家エネルギー政策を策定中であると明らかにした。
またアズミン大臣はEVの開発を成功させるためには政府による政策だけではなく、インフラ開発を進めるために民間部門の協力も必要だと発言。マレーシア・グリーン技術・気候変動センターが民間企業と協力して充電設備を含むインフラ整備の開発に向けて調査を実施していると述べた。
10月29日に発表された2022年度(2022年1月1日ー12月31日)予算案には、2021年12月31日まで延長されている現地組立車(CKD)で100%、輸入完成車(CBU)で50%のSST減免措置を2022年6月30日まで半年延長すること、EVの普及に向け、関税、物品税、売上税を免除することが盛り込まれた。
(ポールタン、11月11日)

CPTPP、2022年半ばまでに批准予定=アズミン上級相

【クアラルンプール】 包括的及び先進的な環太平洋経済連携協定(CPTPP)について、マレーシア政府は、2022年半ばまでに批准する予定だ。アズミン・アリ上級相(兼通産相)が明らかにした。通産省は当初、今年末または来年第1四半期までに内閣に批准に関する委任を求める計画だった。
アズミン上級相は、新型コロナウイルス「Covid-19」パンデミックの影響によりCPTPP批准に向けた諸手続きのプロセスが混乱したためと説明。CPTPP批准に向けて費用便益分析(CBA)を実施したが、パンデミックの影響を受け再度分析しなおす必要があったとした。
新たなCBAは年内に完了する見通しで、内閣に提出して改めて委任を受ける。批准に向けたすべての手続き完了は来年半ばになる見通し。
CPTPPにはマレーシア、日本、シンがポール、オーストラリアなど11カ国が参加し、2018年3月に署名、同年12月30日に発効したが、マレーシアの批准手続きは遅れていた。CPTPPには今年に入ってから英国、中国、台湾が加入を申請している。
(マレーシアン・リザーブ、ボルネオ・ポスト、11月10日)