マレーシアとシンガポール、隔離なしで両国間移動が可能に

【ペタリンジャヤ】 イスマイル・サブリ・ヤアコブ首相とシンガポールのリー・シェンロン首相は8日、両国間の入国規制を緩和し、29日付けで入国時の隔離を免除するという共同声明を発表した。ワクチン接種を完了したマレーシア人、シンガポール人が対象。
29日よりクアラルンプール国際空港(KLIA)とシンガポール・チャンギ国際空港に「ワクチン接種完了者向けトラベル・レーン(VTL)」を設置し、新型コロナウイルス「Covid-19」検査を受けるだけで往来を可能にする。陸路についても別途VTLの導入を検討しているという。
マレーシアではランカウイの「トラベルバブル」で海外観光客の受け入れを再開しているが、VTLはランカウイ以外の地域に海外観光客を受け入れる、パンデミック後初の試みとなる。また、シンガポールは10月27日付けでマレーシア人の入国について隔離期間を10日間に短縮するなど、入国規制緩和を段階的に進めている。
(フリー・マレーシア・トゥデー、マレー・メイル、11月8日)

党が望めば再出馬の可能性も=マハティール氏

【クアラルンプール】 野党・祖国戦士党(ペジュアン)を率いるマハティール・モハマド元首相は、自身としては来年にも実施される次期総選挙への出馬を望んでいないが、党内から強く望まれれば出馬する可能性があると言明した。マハティール氏は現在96歳であり、当選して任期を全うすると100歳を超える計算になる。
マハティール氏は「VICEニュース」とのインタビューの中で、不出馬の意向にも関わらず多くの支持者らから次期総選挙への出馬を望まれているとした上で、自身の出馬によって党が躍進するとの期待が党内で高まった場合にはこれを拒否することはできないと言明。そうなれば最後の手段として出馬することもありうると述べた。
マハティール氏は1964年の初当選を皮切りに通算10回の当選を果たした。統一プリブミ党(PPBM)を率いて臨んだ2018年総選挙では、選挙区をランカウイに変えて出馬して当選していた。
マハティール氏はこのほか、マレーシアで認められていないLGBTの権利問題に関しては「マレーシアの社会は西洋と異なっているという事実に同意する必要がある」と慎重な見方を示した上で、環境や気候変動問題では若者世代と理念を共有できると述べた。
(フリー・マレーシア・トゥデー、10月5日)

閣僚公用車にトヨタ「ヴェルファイア」、4月から既に変更

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 前・希望同盟(PH)政権時代に更新が凍結されていたマレーシア連邦政府閣僚の公用車が、今年4月より国民車メーカー、プロトン・ホールディングス「ぺルダナ2.4L」からトヨタ「ヴェルファイア2.5L」に変更されていたことが分かった。
テンク・ザフルル財務相が国会質疑で明らかにした。「ヴェルファイア」1台当たりの月間リース料は5,759.35リンギで、メンテナンス料907.74リンギを含んでいる。9月までに合計142万リンギを請負会社のスパンコ社に支払った。その他の政府公用車は、プロトン「X70」に切り替えられており、これもスパンコ社が関与している。
公用車変更は、希望同盟(PH)政権下で当時のリム・グアンエン財務相が財政逼迫を理由に凍結しており、質問を行ったシム・ツェツィン議員(人民正義党=PKR)は、新型コロナウイルス「Covid-19」感染拡大で国民が苦しんでいる中、多額の費用をかけて高級車に切り替える必要があったのかと疑問を呈している。
スパンコ社は前・国民戦線(BN)政権時代の1994年から公用車の長期供給契約を受注していたが、契約額が高すぎると再三指摘されていた。希望同盟(PH)政権になって、政府が契約をナザ・ベルジャヤ連合に切り替えると報じられたが、PH政権が倒れBN中心の与党連合・国民同盟(PN)政権となったことでスパンコ社に戻った。

サラワク州議会が解散、非常事態宣言の解除うけ

【クチン=マレーシアBIZナビ】 サラワク州のアバン・ジョハリ首相は、同州に敷かれていた非常事態宣言がアブドラ国王の同意を受けて3日付けで解除されたことを受け、同州議会が解散したと発表した。連邦憲法の規定で60日以内に州議会選挙が開催されることになるが、早ければ12月上旬にも実施されるとみられている。
サラワク州議会は6月6日に任期満了を迎えたが、今年1月に発令された非常事態宣言の適用を受けて州議会の任期が延長された。全国規模の非常事態宣言が9月1日で解除されたが、州議会選挙が行なわれると新型コロナウイルス「Covid-19」の新たな感染拡大を引き起こすことが懸念されたことから、サラワク州のみ来年2月2日まで延長されていた。ただその後は全国的に感染が終息に向かっており、マラッカ州でも州議会選挙実施が決まったことから、サラワク州だけ選挙を延期する大義名分がなくなっていた。
州議会選挙日程は後日、州議会議長から解散通知を受けた選挙委員会(EC)が決定することになるが、連邦憲法の規定で遅くとも来年1月上旬までに実施されることになる。ただ年明けには憲法改正に基づく選挙権年齢の18歳への引き下げ(Undi18)が施行されるため、新たな有権者の票読みが難しくなることを嫌う同州与党・サラワク政党連合(GPS)は年内実施を望んでいるとされる。前政権では82議席中67議席をGPSが掌握していた。

医療観光産業青写真を発表、マレーシアを主要な医療観光地に

【クアラルンプール】 カイリー・ジャマルディン保健相は1日、医療観光を促進するための5カ年計画「マレーシア医療観光産業青写真」(2021ー2025年)を発表した。マレーシアを主要な医療観光地とすることを目指す。
青写真は、医療観光エコシステム、ヘルスケアブランド、市場戦略で構成される3つの柱の下で5つの取り組みを行う。質の高い医療の提供や安全性の確保、デジタル化、手頃な価格の医療サービス提供などを実施。患者満足度を向上させ、ヘルスケア業界の持続可能な未来を構築することを目標としている
カイリー大臣によると、青写真を実行するためには業界全体の努力が必要であると言明。国境を超えた海外との協力も促進させるとし、持続可能な医療提供のためには国々が協力していく必要性があるとの見解を示した。
2019年の外国人医療観光客数は122万人以上で、医療観光収入はおよそ17億リンギだったが、新型コロナウイルス「Covid-19」の流行に伴い2020年は8億リンギに減少した。
(ザ・スター、11月2日、ベルナマ通信、エッジ、11月1日)

KL市、雑貨店やコンビニでのハードリカー販売を禁止

【クアラルンプール】 クアラルンプール市政府(DBKL)は、11月1日付けで酒類販売に関する新たなガイドラインを発表。食料雑貨店、コンビニエンスストア、中医薬局におけるハードリカー販売を禁止すると発表した。
ビールの販売については、午前7時から午後9時までの時間限定で認められるが、他の非アルコール飲料とは別の場所に置く必要があり、販売時間外は施錠する必要がある。購入できるのは21歳以上の成人。また伝統薬酒については、保健省の認可の下で中医薬局で販売することができる。
DBKLは2020年9月、食料雑貨店、コンビニエンスストア、中医薬局における酒類販売ライセンス(リカーライセンス)の更新を行わないと発表。ハードリカー販売禁止を盛り込んだ新たなガイドラインを今年今年10月1日付けで施行する予定だったが、利害関係者との話し合いなどのために1カ月延期していた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ザ・スター、フリー・マレーシア・トゥデー、11月1日)

国外所得課税への変更は税収増に、デロイト見解

【クアラルンプール】 来年度税制で政府はマレーシア居住者が外国で得た所得に課税することを提案しており、外国で活動する企業の税負担は増える見通しだ。会計事務所デロイト・マレーシアのシム・クアンゲク氏は、経済の上向き予想、「富裕税」の導入と相まって、来年度の法人関連税収は8.1%増の655億リンギが見込めるとみている。
マレーシアは国外源泉所得非課税の方式を採用してきたため、国外所得への課税は大きな変化だという。外国で発生した配当をマレーシアで受け取ると課税されることになる。同一の所得が外国で課税されている場合、税額控除が認められるかは財務関連法案で明示される見通しだ。
課税所得が1億リンギ超の企業に課す「富裕税」(税率33%)についてシム氏は、パンデミックで利益が急増した企業を標的にする超過利潤税より施行が容易と評価した。
上場株式の売買では契約書類に課す印紙税を0.1%から0.15%に引き上げ、税額の上限(200リンギ)を撤廃する。キャピタルゲイン税より行政にとり管理が容易とシム氏は指摘した
(エッジ、10月30日)

上場企業に1人以上の女性役員任命、来年9月から義務付け

【クアラルンプール】 ブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)上場企業は、来年9月から女性役員を1人以上置くことを義務付ける。来年度予算案発表の中でテンク・ザフルル財務相が明らかにした。
意思決定プロセスにおける女性の役割を認識し、リーダーシップと役員会を機能を強化すると共に女性の貢献度を高めるのが狙い。達成期限は大企業の場合は2022年9月、その他の企業は2023年6月とする。テンク・ザフルル財務相によると、ノルウェー、スペイン、イタリアなどではこうした規定が既に導入されており、アジアではインドが導入しているという。
「ザ・スター」によると、上場企業926社のうち、役員の30%以上を女性が占めている企業は160社のみで、率にして17.2%。261社は女性役員がゼロだった。トップ100社でみた場合、女性役員の登用率は高めで、役員の30%以上を女性が占めている企業は38社、女性役員がゼロだったのは4社にとどまっている。
企業における女性の地位向上を目指す30%クラブ・マレーシアによると、上位100社の女性役員比率は25.5%に達しており、目標の30%まであと4.5ポイントとなっている。
(ザ・スター、11月1日、フリー・マレーシア・トゥデー、10月29日)

選挙年齢の18歳への引き下げ、来年1月より実施へ

【クアラルンプール】 イスマイル・サブリ・ヤアコブ首相は、選挙権年齢の21歳から18歳への引き下げ(Undi18)について、先のサラワク州クチン高等裁判所の判決に基づき2022年1月から実施すると発表した。1月1日から選挙人名簿への自動登録が開始される。
選挙年齢の引き下げは憲法改正により2019年7月に可決成立していたが、その後も実施は引き延ばされ、選挙委員会(EC)は今年3月には準備に時間が必要であるため2022年9月にならないと実施できないと主張し、閣僚の間からも不満の声が上がっていた。
こうしたことを受けサラワク州の若者5人が、憲法で定められたにも関わらず同州の18歳から20歳までの13万5,000人の若者に選挙権を与えないのは不当だとする行政訴訟を起こし、クチン高裁は9月3日、2021年12月31日までに実施するよう命じる判決を下していた。
イスマイル首相によると、先の閣議でサラワク高裁判決に対して上告しないことを決定した。
(マレー・メイル、ベルナマ通信、10月30日)

2022年度予算案発表、過去最大規模の3321億リンギに

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 テンク・ザフルル財務相は10月29日、下院議会に2022年度(2022年1月1日—12月31日)予算案を提出した。

予算規模は3,321憶リンギで、今年度の3,206憶リンギから増加し、過去最高を更新した。一般歳出は70.3%に当たる2,335憶リンギ、開発支出に756億リンギ、新型コロナウイルス「Covid-19」基金に230億リンギをそれぞれ充てる。分野別では予算全体の40.1%に当たる1,332憶リンギを社会関連に、20.3%を経済関連に、10.3%を安全関連に、4.8%を一般行政にそれぞれ充てる。

今年の財政赤字の見通しは、新型コロナ対策で歳出が3,206憶リンギに拡大した一方で歳入が1.8%減の2,210憶リンギにとどまる見通しであることから、対国内総生産(GDP)比で6.5%に上昇する見込み。2022年は景気回復により歳入が5.9%増の2,340憶リンギに増加すると予想されることから、財政赤字は975億リンギ、GDP比で6.0%に下がる見通し。

■自動車向けSST減免措置を6カ月延長■

2021年12月31日まで延長されている現地組立車(CKD)で100%、輸入完成車(CBU)で50%のSST減免措置を、2022年6月30日まで半年延長する。また電気自動車(EV)の普及に向け、関税、物品税、売上税を免除する。

大きな利益を上げている会社に対して「富裕税」を課す。課税収入1憶リンギまでの法人所得税率は通常の24%でそれ以上は33%とする。

携帯電話やパソコン、タブレットの購入に際しての2,500リンギを上限とした税控除を、2022年末まで延長する。

砂糖の入った飲料の物品税をチョコレートやコーヒー、モルトベースのプレミックス飲料に対象を拡大する。

従業員の従業員積立基金(EPF)最低拠出率を9%に引き下げる措置を2022年6月まで延長する。

海外からオンライン購入する低付加価値商品に対して売上税を課税する。また食品・飲料を除くオンライン購入におけるデリバリーに対するサービス税を導入する。

■来年のGDP成長、5.5ー6.5%と予想■

財務省は同日、「2021/22年経済リポート」を発表。 2021年の国内総生産(GDP)成長率予想についてプラス3-4%、2022年についてはプラス5.5ー6.5%とした。

産業別の今年のGDP成長率は、建設業がマイナス0.8%予想だが、鉱業は1.5%、サービス業が2.6%、製造業が8.1%、農業が0.8%と他は全てプラス成長の見込み。

2022年については鉱業がマイナス0.3%だが、他は建設業が11.5%、サービス業が7.0%、製造業が4.7%、農業が3.8%とすべてプラス成長が見込まれている。

今年の失業率は4.6ー4.8%、来年は4%に下降する見込み。また経済を牽引する内需は今年プラス3.1%となり、来年はさらに6.6%に加速。来年の消費者物価指数(CPI=2010年を100として算出)はプラス2.1%となる予想だ。経常黒字は今年567億リンギで、2022年には556億リンギに減少すると見込まれている。