【号外】ムヒディン首相が辞任発表、現職国会議員から後任指名へ

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 ムヒディン•ヤシン首相が16日、内閣総辞職を発表した。辞表はアブドラ国王に提出され、直ちに承認された。ムヒディン政権は昨年3月1日の発足当初から少数与党であることに起因する不安定な政権運営を迫られていたが、与党内からの離反もあり、17カ月半の短命政権に終わった。

ムヒディン首相は午後にテレビ演説を行い、自身が下院議員の過半数の支持が得られなくなったことを認めた上で、辞表提出は連邦憲法に則ったものと説明。9月に予定されていた信任投票を待つ必要はないと述べた。その上で新型コロナウイルス「Covid-19」の脅威が続く中で、政治の空白ができないよう速やかに新政権が樹立されることを望むと述べた。

王宮側もフェイスブックで国王の声明を発表。次期首相が決まるまでムヒディン首相が暫定首相に就任すると明らかにした。また現時点の総選挙実施は国民の安全を考慮すると最善な選択肢ではないとの考えを示しており、解散はせず現職の国会議員の中から首班が指名される見通しだ。

後任候補としては、副首相を務めるイスマイル・サブリ・ヤアコブ(統一マレー国民組織=UMNO総裁補)や、同じくUMNO長老のテンク・ラザレイ元財務相の名前が上がっているもよう。

ムヒディン首相、野党側に超党派での政治協力を呼び掛け

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 ムヒディン•ヤシン首相は13日に特別演説を行ない、新型コロナウイルス「Covid-19」の危機に直面する中での自身の首相辞任は国政を混乱させることになると述べ、野党側に超党派による政治協力を呼び掛けた。

閣僚らをともなって行なったテレビ演説の中でムヒディン首相は、自身の辞任は内閣総辞職を意味すると指摘。ただ一方で、新首相を指名することに関して国王の同意を得られるような過半数を掌握していると証明できる国会議員も存在しないと述べ、このまま自身が辞任すれば国が混乱に陥ることになるだろうと述べた。

その上で、超党派の支持が得られれば懸案であった首相任期の2期制限や所属政党の鞍替え禁止、18歳以上の選挙権実施などがただちに実現でき、特別委員会のメンバーの半数が野党議員になるだろうと強調。各議員に割り当てられた各選挙区への支援のための年間予算を野党議員にも等しく配分するとし、野党側に政府への協力を求めた。その上で野党側が強く求めている総選挙を遅くとも2022年7月までに行なうと宣言した。

ムヒディン首相率いる与党連合・国民同盟(PN)及び友党は昨年3月、アブドラ国王による議員個別の聞き取りを経て下院の過半数を掌握したと認定され、政権樹立を宣言した。しかしこれに反発する野党連合・希望同盟(PH)などが過半数掌握に疑義を唱えていた。

その後、新型コロナ感染拡大を理由に非常事態宣言が出され、国会が半年以上にわたって休会となり、ムヒディン政権の正統性議論も先送りされていたが、国王の介入もあってムヒディン首相はついに、信任投票実施に同意した。国会は9月6日に再開することになっており、翌9月7日にムヒディン首相に対する信任投票が行なわれることになっている。

ムヒディン首相の信任投票、9月7日に実施へ

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 休会となっている国会が9月6日に再開し、翌9月7日にムヒディン・ヤシン首相に対する信任投票が行なわれることが分かった。
サイフディン・アブドラ通信マルチメディア相が12日、アズハル・アジザン・ハルン下院議長が発表した国会審議の議題に関する通達内容を公表した。会期は9月30日までの延べ15日間。9月6日の開会日はアブドラ国王の演説だけで、翌7日にムヒディン首相の信任投票が行なわれる。
下院(定数222)では議員2人の死去により2議席が空白となっており、ムヒディン内閣が存続するには111人以上の賛成が必要となる。先ごろムヒディン政権を支援してきた統一マレー国民組織(UMNO)が支持撤回を発表したことで、過半数の信任が得られるかは微妙な情勢。首相が信任を得られなかった場合には国会解散・総選挙に打って出ることができるが、国会解散には国王の承認が必要になるため、国王がこれを拒否した場合には総辞職することになる。
ムヒディン首相率いる与党連合・国民同盟(PN)及び友党は昨年3月、アブドラ国王による議員個別の聞き取りを経て下院の過半数を掌握したと認定され、政権樹立を宣言した。しかしこれに反発する野党連合・希望同盟(PH)などが、ムヒディン政権の正統性に疑義を唱えていた。
その後、新型コロナウイルス「Covid-19」を理由に非常事態宣言が出され、国会が半年以上にわたって休会となり、ムヒディン政権の正統性議論も先送りされていたが、世論に押されてアブドラ国王もついに野党や人権団体が唱える国会早期再開及び信任投票実施論を支持。追いつめられたムヒディン首相は8月4日、信任投票実施に同意した。

MM2Hビザ、申請条件変更し10月より新規受付再開

【クアラルンプール】 外国人の長期滞在を奨励する「マレーシア・マイ・セカンド・ホーム(MM2H)」プログラムについて、内務省は申請条件を変更し、10月より新規申請を受け付けを再開すると明らかにした。出入国管理局が申請の受付・管理を行う。
内務省のワン・アハマド・ダーラン・アブドル・アジズ事務次官によると、国家復興計画(NRP)の一環としてMM2Hの改定案を閣議に提出、7月14、30日の会合で承認された。MM2H用のオンラインシステムを立ち上げ、オンラインでの申請受付と管理を行う。また国民の懸念を反映して犯罪歴のない人のみが申請できるようにする。申請者は年間90日以上のマレーシア滞在が義務付けられ、不動産の賃貸・購入の他、医療、保険、教育、飲食、国内観光などへの消費活動により経済への貢献が期待される。
これまでは月1万リンギの海外での所得を証明することが必要だったが、4万リンギに引き上げられる。ビザの期間は5年間で、5年間の延長が可能。また年間料金が90リンギから500リンギに引き上げられ、MM2Hのサービスの質を高めるために、新たに5,000リンギの手数料がかかるようになる。
MM2Hは2002年に外国人による住宅購入と長期滞在を認めるため導入されたもので、昨年8月に一時申請の受け付けを凍結。内務省と観光芸術文化省が見直しを行なっていた。日本は中国に次いで申請者が多い国となっている。
(ザ・サン、ザ・スター、8月12日、ベルナマ通信、フリー・マレーシア・トゥデー、8月11日)

規制緩和指標の見直し、半数以上のワクチン接種が条件

【クアラルンプール】 新型コロナウイルス「Covid-19」感染防止のための行動規制の緩和を意味する国家復興計画(NRP)のフェーズ移行について、新規感染者数ではなく重症に相当するカテゴリー3、4、5の入院患者数を新たな指標とするとしていたが、第1フェーズの場合は成人人口の半数以上がワクチン接種することが条件になる。
NRP調整担当大臣を兼任するザフルル・アブドル・アジズ財務相によると、新規感染者数から重症者数への指標変更が行なわれるのは、第1フェーズの州・地域において成人人口の少なくとも50%が2回のワクチン接種を完了した場合となる。医療専門家からのアドバイスや他国の事例などに基づき、先週の国家安全保障委員会(NSC)会議およびNRP特別会議で決定されたという。6日現在、首都圏では214万人(47.7%)がワクチン2回接種済で、614万人(99.6%)が1回目のワクチン接種を受けている。
現在、NRP第1フェーズにとどまっているのは、▽首都圏クランバレー▽ジョホール州▽ネグリ・センビラン州▽ケダ州▽マラッカ州——のみで、その他の州・地域は、すでに第2、第3フェーズへ移行している。
指標変更後には「ICU稼働率などの公衆衛生システムへの負荷」「成人人口のワクチン接種率」とともに「有症状入院者数」が移行指標となる。具体的には、▽第1フェーズから第2フェーズへの移行には有症状入院者数が1日あたり2千人(10万人あたり6.1人)以下▽第2フェーズから第3フェーズへの移行には有症状入院者数が1日あたり1千人(10万人あたり3人)以下▽第3フェーズから第4フェーズへの移行には有症状入院者数が1日あたり400人(10万人あたり1.3人)以下ーーが必要となる。
同氏は、英国などの海外諸国でも有症状者数を重視し、そのリスク評価に基づいて経済・社会活動の再開を認めていると指摘。これらの新しい指標を使用することで、経済や社会活動の再開を検討する際のリスク評価を改善できると強調した。
(マレー・メイル、8月7日、エッジ、8月8日)

規制緩和発表、「リスクに見合った効果に期待」首相

【クアラルンプール】 ムヒディン・ヤシン首相は、新型コロナウイルス「Covid-19」ワクチン接種完了者に対する規制緩和を決めたことについて、新規感染者が増えるリスクは伴うがワクチン接種の有効性と国民の健康保全、経済的観点から総合的に決定したと説明した。
ムヒディン首相は8日、接種完了者向けの規制緩和策発表を行なった上で、予防接種の有効性及び世界的に適用されている科学的・公衆衛生の原則と国内で収集されたデータが一致したと強調。規制緩和は確かに感染拡大リスクを伴うものの、国民の精神的・肉体的健康に役立つ側面、国家経済に果たすプラス側面を評価した上で慎重な検討の上で決定したと述べた。
ムヒディン首相は、ワクチン接種完了による感染予防効果と重症化リスク低減効果について強調。スンガイブロー病院で60%以上の高齢者の入院数が減少したこと、接種完了した医療従事者24万6,242人のうち感染した者が4,635人、率にして1.88%にとどまったこと、さらに感染者の99.78%が軽症でカテゴリー5(人工呼吸器を装着する必要)はゼロでカテゴリー4(酸素吸入が必要)が0.06%にとどまったことを例に挙げた。
その上でムヒディン首相は、接種完了者が増えるにつれて重症患者が減り、公衆衛生システムへの負担が少なくなると強調。経済および社会セクターを段階的に再開することで、国がより秩序正しく安全な方法でパンデミックから抜け出すことができると述べた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ザ・サン、8月8日)

接種完了者への社会活動制限緩和策を発表、10日付けで

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 ムヒディン・ヤシン首相は8日、新型コロナウイルス「Covid-19」ワクチン接種を完了した人を対象とした社会活動における標準的運用手順(SOP)緩和策を発表した。10日付けで適用される。
ムヒディン首相が発表したのは社会活動に関する緩和策で、経済活動に関する緩和策については国家安全委員会(NSC)で検討した上で近日中に発表される見通し。
ワクチン接種完了の定義は、▽ファイザー▽アストラゼネカ▽シノバック——の2回接種ワクチンについては2回目の接種を受けてから14日以降、ジョンソン&ジョンソン及びカンシノなどの1回接種ワクチンについては28日以降となっており、どの州で接種を受けたかどうかは問わない。
ワクチン接種を完了した人は、すべての州・地区を対象に▽国内在住者はマレーシア人外国人を問わず、海外から帰国した際の「在宅監視命令(HSO)」対象下での自宅での隔離▽単身赴任者が家族と会うために州間・地区間移動▽18歳未満の子供に会うために州間・地区間移動▽各宗教における礼拝所での礼拝——が可能となる。
また国家復興計画(NRP)において第2もしくは第3フェーズに移行した州・地区の在住者にはさらに、▽地区間移動▽飲食店での店内飲食▽午前6時から午後10時までの身体接触を伴わないスポーツ(ジョギング、サイクリング、釣り、乗馬、テニス、バドミントンなど)▽休日での州内旅行・ホテル宿泊——が可能となる。
8日時点で第2フェーズに移行したのは▽クランタン▽トレンガヌ▽パハン▽ペラ▽ペナン▽サバ——の6州、第3フェーズに移行したのは▽ペルリス▽ペラ▽ラブアン——の2州1地区となっており、その他は第1フェーズにとどまっている。

免許の更新猶予は9月30日まで=道路交通局

【ペタリンジャヤ】 道路交通局(JPJ)は、ロックダウンのため更新猶予が設けられている全ての自動車免許について、9月30日までに更新手続きを終えなければならず、猶予期間の延長はしないと発表した。
JPJによると、▽運転免許証(CDL)▽自動車許可証(LKM、道路税)▽物品運転免許証(GDL)▽公共輸送機関(PSV)ーー免許のいずれもが対象となるという。道路税の更新ができない場合は、自動車保険の更新を行ない、路上で警察官から要求があった場合に自動車保険の保険証書(Eカバーノート)を提示する必要がある。
猶予期間は9月30日に終了し、JPJによる違反取締は10月1日以降に開始される。JPJは道路税に関して、MySIKAP(https://public.jpj.gov.my/public/login.zul)あるいはMyeg(https://www.myeg.com.my/からオンラインで更新を行うよう呼びかけている。オンラインでの手続きが難しい場合、予約の上、JPJ窓口での手続きも可能。8月9日からは郵便サービスのポス・マレーシアの全国650以上の支店でも道路税の支払いが可能となる。
一方、サバ州マレーシア華人協会(MCA)は、多くの運転者が9月30日までに免許を更新できない可能性を危惧し、連邦政府に対しJPJ窓口開設を早めるよう訴えている。ルー・イェントン会長は、州内から「9月30日までの窓口予約が取れない」という苦情を多数受けていると述べた。予約が取れたものの、来年5月になってしまった人もいるという。同氏は、新型コロナウイルス「Covid-19」の感染拡大による苦難を強いられている国民に対し、さらなる負担を強いてはならないと強調した。
(ザ・スター電子版、8月4日)

9月の国会で自らの信任投票を実施=ムヒディン首相

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 与野党からこれまでで最大の辞任圧力に晒されているムヒディン・ヤシン首相は4日午後にテレビ演説を行ない、9月の国会で自身に対する信任投票を行なうと言明した上で、それまでは首相の地位にとどまる考えを明らかにした。
永らく下院議会における支持が過半数を割り込んでいると指摘されていながら、これまで審議延期や不信任案審議の無視によって躱してきたムヒディン内閣だが、ついに信任投票を受け入れるまで追いつめられた格好だ。
他の閣僚らと共にテレビ画面に登場したムヒディン首相は、演説に先駆けて面会したアブドラ国王から、統一マレー国民組織(UMNO)所属の下院議員8人が署名した「政権を支持しない」との内容の宣誓供述書を見せられたが、自身もそれを上回る多数の「政権を支持する」との内容の宣誓供述書を受け取っており、いまだに下院議会で過半数の支持を維持していると改めて強調。いま起きている政治的混乱は、困難な状況を利用しようとする一部の政党によって意図的に引き起こされたものだと指摘した。
その上でムヒディン首相は、過半数の支持獲得に関して疑義がもたれていることは自身も重々承知しているとし、アブドラ国王に9月の国会再開の際に自身の信任投票を行なうことを提案。国王から同意を得たと述べた。
ムヒディン政権に対しては、新型コロナウイルス「Covid-19」対策における不手際に対する政権批判に加え、非常事態宣言中に出された緊急令についてアブドラ国王の承認なしに破棄すると発表したことへの批判が強まっていた。
これを受けてムヒディン首相は3日、9月の国会で改めて審議を行なった上で緊急令破棄の判断が妥当だったか明らかにする考えを表明したが、野党側は2日に抗議集会を開いてムヒディン首相退陣を要求。ムヒディン政権を支援していた側のUMNOのアハマド・ザヒド・ハミディ総裁(元副首相)も、政権支持を打ち切ると言明し、UMNO所属の閣僚を含めた議員の動向、ムヒディン首相の対応に注目が集まっていた。

緊急令無効発表に国王が異議、野党の追求で国会は大荒れ

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 政府が非常事態宣言下で出された緊急令を無効にすると発表したことについて、アブドラ国王が自身の承認を得ていなかったとして遺憾の意を表明。この問題を野党が追求、国会敷地内で新型コロナウイルス「Covid-19」感染者が2人出たことも重なって審議が度々中断するなど、29日の国会は大荒れの展開となった。
緊急令の無効化は26日の国会でタキユディン・ハッサン首相府相(法務担当)が述べたもので、これに対し王宮側は29日に発表した声明の中で、アブドラ国王は緊急令の無効化に同意したことはないと主張。一方的な発表が国会を混乱させていると国王が遺憾の意を示していると述べた。
これを野党側が国会で取り上げ、王宮の発表通りであればムヒディン政権による独断専行でだと批判。憲政の危機であり看過できないとして、本当に国王の同意があったのかどうかタキユディン氏を追求した。タキユディン氏は週明けに回答するとして即答を避けた。
ムヒディン・ヤシン首相の責任を問う声も上がっており、野党連合・希望同盟(PH)のリーダー、アンワル・イブラヒム元副首相(人民正義党=PKR党首)は内閣不信任案を提出すると宣言。ムヒディン政権を支持してきた統一マレー国民組織(UMNO)のアハマド・ザヒド・ハミディ総裁(元副首相)も、ムヒディン首相とタキユディン氏の辞任を求める声明を発表した。PHに加わらず独自路線をとるマハティール・モハマド前首相(祖国戦士党=ペジュアン会長)も、ムヒディン首相に辞任を求めた。
29日は国会職員2人が感染していることが判明。国会審議が数度にわたって中断され国会議事堂がロックダウンとなり、議員や職員たちが感染検査を受けて陰性が判明するまで国会内に留め置かれる事態も起きた。