国会でコロナ巡り論戦、保健相が野党から集中砲火

【クアラルンプール】 7カ月ぶりに国会が再開したが、早速新型コロナウイルス「Covid-19」対策を巡って論戦が行なわれ、アダム・ババ保健相が野党から集中砲火を浴びた。
野党・国民信任党(Amanah)のズルケフリ・アハマド議員(前保健相)は、大規模な感染検査の実施が遅れたことで今起きている第三波を引き起こした責任を追求。保健省はようやくクラスターが出てから対象を絞った感染検査と追跡調査を行なっており、クラスターの宣言についても最初の感染から1カ月半もかかることがあったと初動の遅れを指摘した。
野党・人民正義党(PKR)のサイフディン・ナスシオン議員(前国内取引消費者行政相)は、保健省が感染拡大に関する詳細なデータを公表することに前向きでない点に言及し、データ不足と官僚的な形式主義が相まって、科学とデータに基づいた計画を提示することを困難にしたと批判。データ不足のために世界の研究機関が出しているオープンソースに頼らざるを得なかったと指摘した。
アダム保健相は、新型コロナと戦うために政府が生命を保護し、人々の生存と経済の回復を確実にするために包括的なアプローチを取っていると説明。感染者治療のための対策の中には、仮設の低リスク感染者向け隔離および治療センター(PKRC)の設置があり、全国のPKRC稼働率が61%に上っていると述べた。
またアダム氏は、保健省は全国にPKRC132カ所を設置し、合計2万9,835床のベッドを準備したと説明。またコロナ治療を行なう病院は221カ所あり、一般病床が公立病院で1万5,090床、私立病院で1,288床、集中治療室(ICU)病床が公立病院で1,405床、私立病院で128床あるとした。
アダム氏はさらに、保健省がこれまで新型コロナの感染検査と治療のために71.3億リンギ、ワクチン調達及び消耗品のために47.8億リンギの予算を獲得したことを明らかにした。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、エッジ、7月27日)

国会が7カ月ぶりに再開、コロナ対策巡り激論

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 新型コロナウイルス「Covid-19」感染拡大を受けて1月11日に発令された非常事態宣言発令の下、永らく閉会となっていた国会が26日、7カ月ぶりに特別国会として再開された。

会期は26—29日、8月2日の合計5日間。昨年12月29日に閉会して以来となる。閉会中に制定された各種政令や国家復興計画(NRP)、国家予防接種プログラムについて政府が説明を行なうことになっており、26日は早速ムヒディン•ヤシン首相が国家復興計画(NRP)について説明した。

野党側からは、政府の失策を厳しく指摘する声が上がった。かつての師匠であるアンワル•イブラヒム元副首相(野党連合・希望同盟=PHリーダー)が、産業界の制限緩和により工場で感染者が急増した責任についてアズミン・アリ上級相(兼通産相)を激しく追求する場面もあった。

新型コロナウイルス「Covid-19」感染防止の観点から当初検討されていた、本会議場における対面とバーチャルのハイブリッド方式は採用せず、全員が出席できることになった。下院議会の222議席のうち2議席が議員死去のため空席となっているが補欠選挙は延期されており、議員数は220人となっている。

下院議員205人がすでに2回のワクチン接種を終え、12人が1回のみ、3人は受けていない。しかし下院議員2人が陽性であることが判明、3人が感染者と濃厚接触があったとして欠席した。濃厚接触者にはズライダ・カマルディン住宅地方自治相も含まれている。このほかリーザル・メリカン・ナイナ青年スポーツ相が東京五輪視察のために欠席した。

ムヒディン政権は政治的混乱を避けるとの理由で再開に慎重姿勢だったが、アブドラ国王のほか、野党勢力や人権団体、そして与党連合内部からも上がっていた再開を求める声に押し切られた格好だ。

ほとんどの州が10月中に第4フェーズに=ムヒディン首相

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 ムヒディン・ヤシン首相は26日に開幕した特別国会で国家復興計画(NRP)に関する説明を行ない、ほとんどの州が早ければ10月中にも第4フェーズに移行できると述べた。
NRPによると、第4フェーズへの移行すれば可能な限り日常生活に戻すこととなり、すべての経済活動、より多くの社会活動が許可される。また州を越えた旅行が許可され、国内観光旅行も厳格な標準的運用手順(SOP)に従うことを条件に容認するとなっている。
ムヒディン首相は、新型コロナウイルス「Covid-19」感染対策に成功して一旦次のフェーズに移行した州について、出口戦略に重点を置くNRPのアプローチに基づき再び元のフェーズに戻さないことを国家安全委員会(NSC)特別会議で決定したと言明。再び感染件数が増加した場合には地区ごとに移動制限を厳格化することで対処していくと述べた。
ムヒディン首相はまた、現政府は完璧ではないもののワクチン接種率が最も高い国の一つとなっているなど可能な限りの措置をとっていると強調。10月までにはすべての成人に対するワクチン接種が終わるだろうとした上で、困難な時代に立ち向かっていくためには団結することが重要だと述べた。
またムヒディン首相は、保留となっている第12次マレーシア計画(12MP、対象期間;2021ー2025年)については9月20日、来年度予算案に関しては10月29日に国会に上程すると発表した
このほかタキユディン・ハッサン首相府相(法務担当)は、8月1日で期限を迎える非常事態宣言についてアブドラ国王に延長を求める意向のないことを明言。予定通りに非常事態宣言を解除することになると述べた。

段階的に観光活動再開へ=観光芸術文化省

【プトラジャヤ】 観光芸術文化省(MOTAC)は、コロナにより打撃を受けた観光業の復興のため、観光活動の段階的な再開を国家安全委員会(NSC)に提案した。
再開は4段階に分けられ、▽第1段階:地区内の旅行・観光▽第2段階:地区間の旅行・観光▽第3段階:州間の旅行・観光▽第4段階:海外旅行やインバウンド観光——となっている。
MOTACはまた、ワクチン接種を受けた観光客のみを受け入れ、地域内に限定して観光を許可する「Covid-19フリーデスティネーションプログラム」についても、国家復興計画(NRP)に沿って段階的に進めていく。第1段階では、ランカウイ島とクチンで試験的に実施、第2段階では▽ルダン島▽プルヘンティアン島▽パンコール島▽ティオマン島——などの人気リゾートや▽ジョホール州▽マラッカ州▽ペナン州▽サバ州——などの主要観光地にまで対象を拡大、第3段階ではその他の主要観光地を対象とする。
MOTACは、観光業界の負担を軽減するため、ツアーオペレーターおよび観光ガイドのライセンス料免除や観光業の最前線で働く労働者を対象としたワクチン接種促進などにも取り組んでいるという。
(エッジ、マレーシアン・リザーブ、7月22日)

非コロナ患者の首都圏民間病院への転院、保健省が命令

【クアラルンプール】 新型コロナウイルス「Covid-19」感染者の急増で病床不足が深刻化する中、保健省は7月20日付けで、首都圏クランバレーにある民間病院に対し、公立の医療機関に入院している新型コロナウイルス「Covid-19」以外の患者をすべて受け入れるよう命じた。
公立病院におけるコロナ以外の患者を民間病院に移送することで、公立病院でより多くのカテゴリー3、4、5のコロナ重症患者を受け入れられるようにするのが狙い。マレーシア民間病院協会(APHM)のクルジット・シン会長は保健省の命令を受け取ったことを認めた上で、すでに同日から多くの患者が民間病院に移送されていることを明らかにした。
民間病院に移送された患者の治療費は一定限度まで政府が負担するただ患者の治療はガイドラインに基づいて行なわなければならず、限度額を超えた額については当座は民間病院側が負担し、保健省が審査した上で払い戻されるという。
保健省のガイドラインによると、手術料は4万5,000リンギ、手術以外で2万5,000リンギ、最低額の入院費用が5,000リンギとなっている。
21日における新規感染者数は1万1,985人となっており、7月13日から9日連続で1万人を突破している。半数以上をセランゴール州とクアラルンプール(KL)で占めている。
(マレー・メイル、7月21日)

第2フェーズへ移行した州の第1フェーズ再指定はなし

【プトラジャヤ】 国家復興計画(NRP)調整担当大臣を兼任するザフルル・アブドル・アジズ財務相は14日、新型コロナウイルス「Covid-19」感染対策に成功して第2フェーズに移行した州について、その後に条件を維持できなかった場合でも第1フェーズに再指定されることはないと言明した。
ザフルル財務相によると、州が第2フェーズに移行した後に州内の特定の地域で新型コロナウイルス「Covid-19」の感染拡大が起きた場合、州全体ではなく発生した地域のみに強化行動制限令(EMCO)が発令されるという。
現時点で▽ペルリス州▽ペラ州▽パハン州▽クランタン州▽トレンガヌ州▽ペナン州▽サバ州▽サラワク州ーーの8つの州がNRP第2フェーズに移行している。
(ベルナマ通信、7月14日)

2回のワクチン接種完了者への移動規制緩和を検討=首相

【プトラジャヤ】 ムヒディン•ヤシン首相は、新型コロナウイルス「Covid-19」ワクチンの2回の接種を終えた個人を対象に、ワクチンの接種の有無に関係なく居住地の状況によって一律に定められている行動規制を緩和する方向で検討していることを明らかにした。

女性家族共同体開発省が主催する貧困家庭向けの食糧支援プログラムの準備状況を視察したムヒディン首相は、ワクチン接種完了者に対する規制緩和は徐々に通常の生活に戻すという国家復興計画(NRP)の一環だと強調。旅行やショッピング、飲食店における店内飲食などを認める方向で、すでにワクチン供給アクセス保証特別委員会(JKJAV)に検討を指示したことを明らかにした。

2回のワクチン接種を完了した個人を対象にした行動規制の緩和は、ワクチン接種調整担当大臣を兼任するカイリー・ジャマルディン科学技術革新相が6月21日に言及していた。

カイリー氏によると、他国で行なわれている手順なども参考にして、国家ワクチン接種プログラム(NIP)技術作業委員会が検討を始めている。専門家によって構成される作業委員会の検討結果は最終的に国家安全委員会(NSC)に提出され、最終的に実施の可否が決定されるという。

(ザ・スター、マレー・メイル、7月15日)

空気感染対策で室内換気に関する手引き、人的資源省が発表

【プトラジャヤ】 人的資源省は13日、室内空気の質と換気に関する手引きを発表した。新型コロナウイルス空気感染のリスクを減らすためで、職場、健康施設、公共施設、住宅などでの順守を要請する。
ほとんどの施設に共通の指針として同省は、自然換気の最大利用、エアコン使用施設における人の密集の回避、窓やドアの適宜開放、携帯型空気清浄機の利用を挙げた。
空気清浄装置の利用では、米国暖房冷凍空調学会が定めた、エアフィルターの有効性を示す測定スケール(MERV)で13か14のもの、あるいは空気中からごみ、ほこりを取り除き清浄空気にするためのHEPAエアフィルターの使用、および扇風機の使用を勧告するという。
換気努力に加え、ウイルス感染予防のための標準的運用手順(SOP)の順守も必要だという。
(ベルナマ通信、エッジ、7月13日)

14日の閣議、全閣僚がムヒディン首相支持を確認

【クアラルンプール】 14日に定例閣議が開催され、ムヒディン•ヤシン首相を今後も全面的に支持していくことを全会一致で確認した。

全閣僚の名の下で発表された今回の声明文は、ムヒディン首相を支持していくことに加え、政府のすべての決定を関係各所の意見を考慮した上で行なうとした上で、国民の幸福と国の繁栄のために国家復興計画(NRP)を成功させること、及び新型コロナウイルス「Covid-19」を克服することを最優先するとしている。

7日にはムヒディン政権を支えてきた統一マレー国民組織(UMNO)のアハマド・ザヒド・ハミディ総裁(元副首相)がムヒディン首相に対する支持撤回を党として正式決定したと宣言しており、UMNO所属閣僚の動向が注目されていた。UMNO所属閣僚は現在、副首相を含め9人いる。

ザヒド総裁の支持撤回発表にもかかわらず、コロナ禍にあって政治混乱は望ましくないとの立場からUMNO内には当面ムヒディン政権を支えていくべきとの意見も根強い。こうした状況を踏まえてムヒディン首相はザヒド氏の発表に先駆けて、UMNO幹部ながらも政権寄りとされるイスマイル・サブリ・ヤアコブ上級相(兼国防相)とヒシャムディン・フセイン外務相をそれぞれ副首相・上級相に昇格させ、決して一枚岩とはいえないUMNOに揺さぶりをかけている。

(マレー・メイル、星州日報、7月14日)

接種会場への配車サービス利用、セランゴール州が割引制度

【クアラルンプール】 セランゴール州の住民は、州内40カ所のワクチン接種センター(PPV)への往復時に配車サービス「グラブ・カー(Grab Car)」を利用すると、20リンギ相当の割引を利用することができる。事前申請制で9月30日まで。

セランゴール州政府は、これまでは50歳以上に限定して割引クーポンを発行していたが、7月から州内のワクチン接種対象者全員に範囲を広げたと発表した

1人あたり片道10リンギ、往復20リンギの割引が適用される。事前申請が必要で、申請はプラットフォーム・セランゴール(PLATS)のウェブサイト(https://rebatpengangkutangrabvaksin.borangmbiselangor.com/)から行う。割引クーポンはグラブアプリ上から受け取れる。

この取り組みは、ワクチン接種時の交通費負担を軽減することを目的としており、100万リンギの予算が組まれている。州全体で約5万人が対象となる。(ポールタン、7月8日)