ムヒディン首相が早ければ年末の解散・総選挙を検討か

【クアラルンプール】 アブドラ国王の提言を受け早期の国会開催を求める機運が高まる中、少数与党として国会運営で苦しい立場にあるムヒディン・ヤシン首相は、早ければ年末の解散・総選挙を検討している模様だ。

ムヒディン首相が党首を務める統一プリブミ党(PPBM)アイル・ヒタム支部のオスマン・サピアン支部長がマレー語紙「シナル・ハリアン」に語ったところによると、6月16日に開催されたジョホール州支部とのバーチャル会議の中で、ムヒディン首相が示唆したという。

オスマン氏は、来年度予算案が国会に提出された後の11月か12月に総選挙を開催する可能性があるが、国政レベルの予算案承認だけでなく州政府レベルでの予算案承認を待つ必要があると指摘。過去にもそうした例があると述べた。

その上でオスマン氏は、年末年始にはモンスーンのために特に半島東海岸で荒天が予想されるため来年初めになる可能性もあると指摘。また開催条件として、総人口の60—80%が新型コロナウイルス「Covid-19」ワクチンを接種して集団免疫を獲得するか、新規感染者数が大きく減少する必要があると述べた。

現在の野党はムヒディン政権が国会で過半数を掌握できていないと主張。早期の解散・総選挙を求めており、与党連合・国民同盟(PN)に協力する統一マレー国民組織(UMNO)も失地回復が見込めるとして総選挙に前向き姿勢をとっている。 (マレー・メイル、6月22日)

ワクチン接種完了者への移動制限緩和を検討=調整相

【クアラルンプール】 新型コロナウイルス「Covid-19」ワクチン接種調整担当大臣を兼任するカイリー・ジャマルディン科学技術革新相は、2度の接種を完了した個人について州を跨いだ移動を含むいくつかの行動制限の解除を検討していることを明らかにした。

他国で行なわれている手順なども参考にして、国家ワクチン接種プログラム(NIP)技術作業委員会が検討を始めている。専門家によって構成される作業委員会の検討結果は最終的に国家安全委員会(NSC)に提出され、最終的に実施の可否が決定される。

ワクチン接種情報については、スマートフォンにインストールされた情報・追跡アプリ「MySejahtera」に記録されるが、シンガポールなどいくつかの国との間で情報の相互認証の仕組みについて検討が行われている。

カイリー氏によると、「MySejahtera」に黄色のプロファイルが表示されたら2度のワクチン接種が完了したことを示しており、新型コロナ緊急事態管理技術委員会が現在認められていない海外旅行を容認した場合、アプリのQRコードを使うことになる。なおシンガポールとの間の行き来については、「ワクチンパスポート」承認の方向でほぼ合意しているという。 (マレー・メイル、6月21日)

8月のワクチン接種目標を1日40万回に引き上げ=担当相

【クアラルンプール】 新型コロナウイルス「Covid-19」ワクチン接種調整担当大臣を兼任するカイリー・ジャマルディン科学技術革新相は、接種ペースがスピードアップしていることから8月の1日のワクチン接種回数目標を40万回に引き上げると述べた。

カイリー氏は、当初7月中に20万回に引き上げることを目標としていたが、6月15日に前倒しで目標を達成したと言明。これを受けて7月の目標を30万回に引き上げているとし、これに基づき8月の目標を引き上げたと説明した。

またカイリー氏は、集団免疫を獲得したとみなされる接種率80%をラブアンで8月中、セランゴール州、サラワク州、クアラルンプール、プトラジャヤなどでは9月中に達成可能だと述べた。

これまで1日当たりの接種回数は6月17日の22万1,706回が最高。うち17万7,876回が1回目、4万3,830回が2回目の接種だった。ワクチン供給が順調であることと接種センターの接種能力増強により、7月には合計1,280万回、8月には1,440万回の接種が見込まれている。

マレーシアはこれまでに総人口の119.65%をカバーする7,310万回分のワクチンを確保しており、うち640万回分はCovaxファシリティを通じて供給されることになっている。残りは独自で確保したもので、ファイザー(4,480万回分)、アストラゼネカ(640万回分)、シノバック(1,200万回分)、カンシノ(350万回分)——となっている。 (ニュー・ストレーツ・タイムズ、6月20日)

中国政府、マレーシアへシノバック製ワクチン50万本を供与

【クアラルンプール】 ヒシャムディン・フセイン外相は、中国政府が科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)製の新型コロナウイルス「Covid-19」ワクチン50万本をマレーシアに供与すると発表した。

同相は、今回の供与はタイムリーであり、現在進行中のワクチン接種プログラムの強化に役立つと感謝を表明した。

現在、集団免疫の獲得のためにワクチン接種が急がれており、7月以降1日当たり20万人、8月以降は30万人以上の接種が目標として掲げられている。 (エッジ、東方日報、6月16日)

非常事態宣言、統治者会議が延長しないよう提言

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 アブドラ国王の呼び掛けで緊急統治者会議が16日に招集され、8月1日に期限を迎える非常事態宣言を延長しないことなどからなる提言をとりまとめ発表した。

統治者会議に先立ってアブドラ国王は各党派や警察や軍、保健分野などのトップ18人を個別に呼んで意見を聞いており、これに基づき宣言を延長しない方針や早期の国会再開を求めることなどを統治者会議で提案した。統治者会議の出席者らもこれを全面的に支持したという。

統治者会議の事務方トップであるサイド・ダニエル・サイド・アハマド印章管理人によると、統治者会議は人々の生活と生計を他の何よりも優先しなければならないという意見で一致しており、国会だけでなく州議会の開催も直ちに許可するべきとの国王の提案を支持した。

また統治者会議は、政治的対立を緩和すべきとした上で安定政権の重要性を強調。行政、立法、司法の各部門間のチェックとバランスのメカニズムを尊重し、特に財政に関連する問題において透明性を担保し説明責任を果たす統合された行政を保証することが重要だとの認識を示した。

統治者会議の発表を受け、首相府は17日、統治者会議の見解に留意し、憲法・法律に基づいて必要な措置を講じるとの声明を発表した。

国家復興計画、新たな政策打ち出されず国民から不満の声

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 ムヒディン・ヤシン首相が15日、年内の新型コロナウイルス「Covid-19」禍から正常化に向かう道のりを示す「国家復興計画」を発表したが、「道筋」とその指標が示されただけで、政府の具体的な対策について言及がなくネット上では批判の声が相次いでいる。

ネット上ではまず第2フェーズに移行するための目安とされる「1日の新規感染者が4千人以下」がやり玉にあげられた。「フリー・マレーシア・トゥデー」のまとめによると、「4千人で安全になったという科学的根拠はどこにあるのか?」「4千人はまだ多い。規制を緩和したらまたすぐに増える」といった批判の声が目立っている。

テレビ演説まで行って「国家復興計画」と打ち出したにも関わらず、ムヒディン首相は「50億リンギの財政出動を伴う400億リンギの経済対策を打ち出した」と5月末に発表した政策を強調したが、追加対策を期待した国民は落胆を禁じ得なかった。

ラフィダ・アジズ元通産相は、「国家復興計画」に具体的な経済復興政策や雇用機会の増加、これまでの損失をどのように処理するかといった「戦略」が示されず、減税策すら盛り込まれなかったと批判した。

国家復興計画を発表、9月か10月の国会開催を約束

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 ムヒディン•ヤシン首相は15日午後に特別テレビ演説を行い、4つのフェーズから構成される国家復興計画(PKP)の概要を明らかにした。ムヒディン首相は、ほとんどの経済活動を認める第3フェーズへの移行を8月末までに達成することを目標に掲げ、9月か10月の国会開催を約束した。

国家復興計画において、フェーズ移行の指標となるのは▽新規感染者数に基づくコミュニティにおける感染状況▽集中治療室(ICU)病床使用率に基づく公衆衛生システムの対応能力▽2度のワクチン接種した人の割合——の3つ。各フェーズの標準的運用手順(SOP)については、後日、国家安全委員会(NSC)が発表する。

現在の完全ロックダウンである第1フェーズから第2フェーズに移行するための指標は▽新規感染者数が1日平均4千人以下になること▽ICU稼働率を中程度に下げるなど公共衛生システムの危機的状況から脱すること▽総人口の10%のワクチン接種完了——となる。

第2フェーズは第1フェーズの続きとの位置づけであり、社会活動やスポーツ活動は引き続き厳重に管理される。経済活動においても操業可能な業種リストは維持した上で、在宅勤務をサポートする電子機器販売やセメントなどいくつかのセクターを新たに追加。最大80%の従業員の出勤を認めるなど操業条件も段階的に緩和する。ただし州・地区を跨いだ移動は禁止する。

第3フェーズへの移行条件は、▽新規感染者2千人以下▽ICU病床稼働率が適切なレベルに低下▽総人口の40%のワクチン接種完了——で、8月末までの達成を目標とする。

第3フェーズでは感染拡大を引き起こす可能性のある、スパやパブなどのセクターを除いてすべてのセクターでの操業を認める。経済活動においては、第2フェーズに続いて最大80%の従業員の出勤を認める。教育や特定のスポーツ活動や社会活動も段階的に開放する。

第4フェーズへの移行条件は、▽新規感染者500人以下▽ICU病床稼働率が適切なレベルで公衆衛生システムが安全な水準▽総人口の60%のワクチン接種完了——で、早ければ10月末の達成を目指す。

第4フェーズでは可能な限り日常生活に戻すこととなり、すべての経済活動、より多くの社会活動が許可される。また州を越えた旅行が許可され、国内観光旅行も厳格な標準的運用手順(SOP)に従うことを条件に容認する。

国家復興計画を策定中、ポストコロナで=ムヒディン首相

【クアラルンプール】 ムヒディン・ヤシン首相は13日、新型コロナウイルス「Covid-19」からの経済及び国民生活を立て直すための基本方針として、国家復興計画の策定に着手していると明らかにした。

ムヒディン首相によると、国家復興計画はデータ、科学、新型コロナ管理、経済、ワクチン接種プログラムなど多方面にわたる知見に基づいたもの。現在内容について検討中だが、近く国家安全委員会(NSC)に提出する予定だという。

ムヒディン首相は、国家復興計画が国内の新型コロナ管理に関連する状況について国民に知らせることも意図していると指摘。復興計画を成功させるには国民の協力が欠かせないと述べた。

■KLとプトラジャヤ、8月末には集団免疫獲得へ■

ムヒディン首相はまた、ワクチン接種がスピードアップしていることでクアラルンプール(KL)及びプトラジャヤでは8月末にも集団免疫獲得の目安とされる80%の摂取率を達成できるとの見通しを示した。

大規模接種センター(PPV)や移動式接種方式の導入により、より多くの住民がワクチン接種できるようになったという。KLの人口は180万人、プトラジャヤの人口は9万2千人とされる。全国レベルでは7月11日の時点で、総人口3,200万人の13%以上、4,22万7,554人に少なくとも1回のワクチン接種を行っている。 (ストレーツ・タイムズ、ベルナマ通信、6月13日)

マハティール前首相、国王に暫定政府設置を提言

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 マハティール・モハマド前首相は10日、アブドラ国王との謁見後に会見を開き、野党代表も含めた挙国一致の暫定政府、国家行動評議会(NOC、MAGERAN)の設置を提言したことを明らかにした。

野党・祖国戦士党(ペジュアン)を率いるマハティール氏は、1969年の危機の際にはMAGERANが立て直しのために機能したと強調。国家の危機に際して、野党側の意見を政治に反映できるメリットがあるとした。ただマハティール氏は権力を維持している側であるムヒディン•ヤシン政権が同調するとは思えないとし、実現は難しいとの考えを示した。

MAGERANは1969年5月13日に起きた民族衝突事件を受けて発令された非常事態宣言後に設置され、2年後の1971年に解散した。MAGERANが設置されれば議会の停止が非常事態宣言解除後も続くことになるので、早期の解散総選挙を望む与野党各党から批判的な意見が出ている。

国王は、9日からムヒディン・ヤシン首相をはじめとする主要各党党首を相次いで王宮に招いて、8月1日で期限が切れる非常事態宣言の今後の取り扱いについて意見聴取を行っている。

9日にはムヒディン首相のほか、野党連合・希望同盟(PH)を率いるアンワル・イブラヒム元副首相、民主行動党(DAP)のリム・グアンエン書記長、国民信任党(Amanah)のモハマド・サブ党首が王宮をおとずれ、10日午前には汎マレーシア・イスラム党(PAS)のトゥアン・イブラヒム副党首が病気療養中のハディ・アワン党首に代わって国王に面会した。

王宮は、16日に統治者会議を招集すると発表しており、各州の統治者(スルタン、ラジャ)からも非常事態宣言に関する意見を聞く方針だ。

国王が各党派トップと会談、非常事態宣言に関する意見聴取か

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 アブドラ国王が9日からムヒディン・ヤシン首相をはじめとする主要各党党首を相次いで王宮に招いて会見を行っており、その内容に注目が集まっている。

期限が8月1日までとなっている非常事態宣言の扱いや新型コロナウイルス「Covid-19」感染対策などで各党派の意見を聴取しているとみられる。なおサラワク政党連合(GPS)が政権を掌握しているサラワク州政府首相官邸は、14日に国王とビデオ会談を行うことが決まったと明らかにしており、一連の意見聴取が終わるのは来週はじめになるとみられている。

また王宮側は16日に統治者会議を招集すると発表しており、各州の統治者(スルタン、ラジャ)からも非常事態宣言に関する意見を聞く方針だ。

9日朝は一番手として、与党連合・国民同盟(PN)を率いるムヒディン首相が王宮を訪れ、国王に謁見した。王宮側は定例閣議前の通例の訪問だとして会見内容については明かしていない。

ムヒディン首相に続いて国王に謁見したのは野党連合・希望同盟(PH)を率いるアンワル・イブラヒム元副首相で、同氏によると政権交代についての話題は出ず、非常事態宣言の解除に関する話題が中心だった。アンワル氏自身は非常事態宣言を延長しないよう国王に要請し、これに対し国王は立憲君主制の原則に基づき、内閣総理大臣の助言に従わなければならないとの考えを示したという。

このほか同日午後には、野党・民主行動党(DAP)のリム・グアンエン書記長、国民信任党(Amanah)のモハマド・サブ党首が王宮を訪れ、国王に意見を具申した模様だ。

非常事態宣言は、新規感染者が急増したことを受けて今年1月12日に国王の名の下で発令された。発令中は国会が閉会となり、憲法が停止される。このため野党や人権団体は、早期の宣言撤回もしくは延長阻止を訴えていた。