1MDB問題でゴールドマンと最終合意、39億ドル返還へ

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 政府系ファンド、ワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)を巡る資金不正流用問題に関連し、マレーシア政府と米ゴールドマン・サックスは、ゴールドマン側がマレーシア側に賠償金総額39億米ドル支払うことで合意文書を取り交した模様だ。
ブルームバーグが複数の消息筋の話として報じた。ゴールドマンは10日以内に現金25億ドルをマレーシアに支払うことが求められる。幹事・引受行だったゴールドマンは7月24日にマレーシア政府と基本合意したと発表していたが、その際には25億ドルの支払いと、各国の当局によって差し押さえられている14億米ドル相当の資産の返還保証を行なうことで合意していた。マレーシア政府はゴールドマンに対する刑事告発を取り下げ、事件に関与したゴールドマンの元・現取締役17人に対する法的手続きも停止される。
テンク・ザフルル財務相は7月25日、米国司法省からすでに6億2,000万米ドルの返還を受けていることを明らかにしており、今回の合意に基づく返還金をあわせると45億米ドルに達する。これについてマハティール・モハマド前首相は、ゴールドマンが本来返還すべき金額は96億米ドルだと指摘。実際にゴールドマンが返還するのはわずか25億米ドルでしかないとし、和解すべきでないと批判していた。

「レジデンストラック」9月開始で合意、茂木外相が来馬

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 シンガポールとマレーシアを歴訪中の茂木敏充外相は14日、マレーシアでヒシャムディン・フセイン外相と会談し、「レジデンストラック」実施で合意し、9月上旬にも開始することで一致した。
「レジデンストラック」は両国間で駐在員などビジネス上必要な人材交流を目的として例外的に入国を許可する二カ国間の相互システムの一つで、駐在員などの長期滞在者を対象とする。相手国との協議によって実施内容は変わるものの出発前の検査や入国後の検査、14日間の隔離。健康モニタリングなどが求められる。
日本はすでにタイとベトナムを対象に7月29日より試行措置を実施しており、両国以外でも豪州、ニュージーランドなどと協議を行なっている。
両外相は、東シナ海、南シナ海問題や北朝鮮情勢について突っ込んだ意見交換を行い、今後も緊密に連携していくことで一致。茂木外相からは拉致問題の早期解決に向けた理解と協力を求め、ヒシャムディン外相からも理解を得た。
■アズミン上級相とも会談■
茂木外相は14日にはアズミン・アリ上級相(兼通産相)とも会談し、環太平洋経済連携協定(TPP)と東アジア地域包括経済連携(RCEP)の進捗状況、マレーシア・シンガポール間高速鉄道(HSR)計画、マレーシアにおける日本の大学分校の設置、防衛関連分野での協力について意見を交換した。
茂木外相はポスト・コロナの経済回復に向けて、マレーシアに対する主要な投資国として、日本企業によるサプライチェーンの多元化を通じてマレーシアを支援していきたいと表明した。

デジタルエコノミーマスタープラン、10月開始=ムスタパ大臣

【クアラルンプール】 デジタルエコノミー・マスタープランが10月から開始される予定だ。ムスタパ・モハメド首相府相(経済担当)が明らかにした。
ムスタパ首相府相は、通産省(MITI)が前年、インダストリー4.0(IR4.0、第4次産業革命)を推進するためのマレーシアの国家方針を取り纏めた「インダストリー4WRD」を導入したが、これには製造セクターだけが対象となっていたと言明。同マスタープランでは非製造業セクターを含むすべてのセクターを対象にし、全セクターの成長を促進させる狙いだとした。
同プランの詳細については、政府からの承認を取得次第2カ月以内に発表する予定だとし、同プランにはマレーシア・デジタル経済公社(MDEC)、通信マルチメディア省、マレーシア通信マルチメディア委員会(MCMC)、マレーシア行政近代化及び管理計画局(MAMPU)などさまざまな政府機関が関与しており、調整に時間が掛かっていると述べた。新型コロナウイルス「Covid-19」の大流行によりデジタル化が促進され、政府はデジタル部門の後押しに注力しているという。
(エッジ、8月13日)

チャイルドシート着用の義務付け、来年から罰則

【クアラルンプール】 ウィー・カション運輸相によると、1月1日から導入されたチャイルドシートまたは幼児拘束装置(CRS)の着用義務に違反した場合、来年から罰則が科される。
CRSの着用は、車内設置に問題が生じる場合を除き、すべての自家用車に義務付けている。タクシーや配車サービスはチャイルドシートの提供を推奨としている。CRS着用ルールが配車サービスに拡大した場合、乗車料金に1ー2リンギを追加請求する可能性があるという。
同省ではCRSの価格引き下げに向けマレーシア道路安全研究所(MIROS)に、自動車およびCRSの製造、販売、輸入業者と協議を行うよう命じている。
CRS設置の必要性についてウィー運輸相は、国際連合の協定規則第44号(UN R44)および第129号(UN R129)を採用したものであり、国際的な研究においても事故による子供への傷害リスクを軽減できることが証明されているためと説明。CRS着用の義務化は、乗車する子供たちの安全のためであり、罰則を科したり国民に負担をかけることは意図していないと主張した。
(ザ・スター、ザ・サン、ニュー・ストレーツ・タイムズ、8月13日)

コロナ暫定措置法案提出、契約不履行に対する執行を制限

【クアラルンプール】 連邦政府は12日、新型コロナウイルス「Covid-19」感染拡大の経済への影響を軽減するための暫定措置法案「2020年Covid-19影響軽減のための暫定措置法」を下院議会に提出した。今国会中の成立を目指す。

当事者のどちらか一方が契約を履行できない場合において、どちらか一方が一方的に法的措置をとることを禁じる内容が盛り込まれている。法案第9条によると、どちらか一方が契約を履行できない場合は調停において解決を図るとしており、調停者の選択、役割、プロセスなどを担当大臣が決めることができるとしている。

調停後には当事者が合意した新たな条件で別契約を締結することになる。ただし行動制限令(MCO)が発令された3月18日から暫定措置法が発効するまでに行なわれた裁判、裁定、契約終了などの契約不履行に対する措置については遡及しない。

対象となるのは▽工事、建材、機材、作業員を含む建設に関する契約▽建設契約あるいはサービス契約の基づく保証▽専門サービス契約▽非住宅用の不動産リース契約▽ビジネスミーティング、報奨旅行、セミナー、展示会、プロモーション活動、コンサート、パフォーマンス、結婚式、パーティーその他を含む、会場、宿泊施設、施設、交通機関、娯楽、ケータリング、その他の製品やサービス、またはスポーツ、参加者、参加者、ゲスト、観客のための集会及びイベント契約▽1992年旅行業法に基づく旅行会社の契約及びマレーシア観光促進のための契約▽宗教的巡礼に関する契約——の7項目。

(東方日報、ベルナマ通信、8月12日)

グリーンゾーン国の観光客誘致に向け準備=観光相

【クアラルンプール】 ナンシー・シュクリ観光芸術文化相は11日、新型コロナウイルス感染症の抑制に成功したとみなされる「グリーンゾーン国」からの観光客誘致に向けて準備を進めていることを明らかにした上で、実現には国同士のさらなる交渉が必要との認識を示した。
国会の質疑で「グリーンゾーン国」からの観光客を誘致することについて聞かれたシュクリ大臣は、第2波が起きている豪州メルボルンを例に挙げて「一部の国や地域で未だに新型コロナウイルスの感染拡大が発生し続けているため、グリーンゾーン国内のすべての地域から観光客を呼び込むのは現実的ではない」と指摘。グリーンゾーン国内における感染の少ない州や地域のみを対象として観光客を呼び込むことを考えていると説明した。
また外国人観光客誘致のために保健省や外務省と協議し、新たな戦略を策定していると言明。相互主義の原則から、マレーシアが外国人観光客受け入れを再開するためには相手国にもマレーシア人を受け入れてもらえるよう交渉する必要があると述べた。
政府はこれまで、日本、シンガポール、豪州、ブルネイ、ニュージーランド、韓国を「グリーンゾーン国」としている。
(ザ・サン、8月12日、ベルナマ通信、8月11日)

半島南部の鉄道電化複線化、2021年半ばまでに完成

【クアラルンプール】 マレーシア国鉄(マレー鉄道、KTMB)半島西海岸線ゲマスージョホールバル(JB)間電化複線化プロジェクトについて、ウィー・カション運輸相は、11日の下院議会質疑で2021年半ばまでに完成すると言明した。
同路線の電化複線化は2019年末までの完成を予定していたが、2014年に起きた鉄砲水で線路、橋、駅舎が被害を受け工事もストップ。その後工事は再開されたが、天候不順や新型コロナウイルス「Covid-19」流行に伴う行動制限令(MCO)発令、請負業者の問題により大幅に遅延し、ムスタパ・モハメド首相府相(経済問題担当)は今年6月に完成が2022年10月になると述べていた。
ウィー氏は一部の請負業者が1日4時間しか作業を行なわず、一部の区間で25%の工事の遅れが発生したと指摘。納期を守れなかった業者を召還すると述べた。
先ごろ高速電車運行サービス(ETS)を試乗したウィー氏は、現在パダンベサル—ゲマス間での運行をジョホール州南部まで延長する方針を明らかにしている。
(フリー・マレーシア・トゥデー、8月11日)

MM2Hプログラムを一時凍結=観光芸術文化省

【プトラジャヤ=マレーシアBIZナビ】 外国人の長期滞在を奨励する「マレーシア・マイ・セカンド・ホーム(MM2H)」プログラムについて、連邦政府は一時的に凍結することを決めた。担当省庁である観光芸術文化省及び関係機関が同プログラムを包括的に見直す。
観光芸術文化省の声明によると、他国におけるMM2Hと同様な長期滞在プログラムとの条件、優遇措置などを比較し、国際水準のプログラムに見直すことを目指すもので、観光芸術文化省の申請処理がすべてストップするため、すでに申請中のものについても凍結解除後に改めて再申請する必要があるという。新型コロナウイルス「Covid-19」感染拡大予防のために行なっている外国人の入国を禁じる政府方針に沿ったものでもある。
MM2Hの新規申請は最近却下されるケースが増えており新規申請者や斡旋業者が不満を募らせていたが、最近になって観光芸術文化省の申請センターが閉鎖され、申請自体がまったくできない状態になっていた。一方、国外に出国中のMM2Hパス保有者については5月17日から再入国を許可していた。

JB—星間RTS、建設費37億リンギをマレーシアが負担

【ジョホールバル】 2021年初に着工、2026年末までに開業を予定しているジョホールバル(JB)—シンガポール間の高速鉄道輸送システム(RTS)について、ウィー・カション運輸相は、総建設費約100億リンギのうち37億リンギ(39%)をマレーシアが負担すると明らかにした。
全長4キロメートル(Km)のうちマレーシアは2.7km、シンガポールは1.3kmとなる。1時間あたり片道1万人の輸送能力を持ち、1日あたり最大28万8,000人乗客輸送が可能だ。運賃については、プロジェクトがほぼ完了した時点で発表される予定で、40%の低所得者層(B40)を含むすべての人々が考慮されるという。
また、JBのブキ・チャガルとシンガポールのウッドランズにそれぞれ税関、税関・出入国管理局・検疫(CIQ)施設を建設する予定で、ブキ・チャガルのCIQには商業用スペースや1,500台が収容できる公共用駐車場を設ける。両当局が共同で管理するメンテナンスおよび運転施設は、JBのワディハナに設立する。これらの施設において少なくとも1,500人の雇用機会の創出および、プロジェクト全体で少なくとも150の裾野産業に利益をもたらすことが見込まれている。
両政府間において、▽シンガポールの首都圏大量高速輸送(MRT)トムソン・イーストコースト線(TEL)システムから軽便鉄道(LRT)システムへの変更▽マレーシア側のインフラ会社を、プラサラナからマス・ラピッド・トランジット・コーポレーションの子会社であるマレーシア・ラピッド・トランジット・システムに変更ーーの2件の変更が同意された。またシンガポールSMRT RTSープラサラナRTSオペレーション間における合弁契約の締結および二国間協定の修正の下で両国は、30年間の運転をRTSオペレーションズに指名することでコンセッション契約に合意した。
RTSについてウィー運輸相は、両国を結ぶ連絡道(コーズウェイ)の交通渋滞を緩和するために不可欠であると言明。プロジェクトが予定通りに実行されることを保証するためのコミットメントを両政府が表明したと明らかにした。
(ザ・スター、7月31日、マレー・メイル、7月30日)

ナジブ元首相有罪判決、野党連合「国民の大きな勝利」

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 ナジブ・ラザク元首相が28日、国営投資会社ワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)巨額資金不正流用事件に関連して高裁で禁固12年、罰金2.1億リンギの有罪判決を受けたことについて、各方面から様々な反応が上がっている。
ナジブ氏の汚職を追及してきた野党連合・希望同盟(PH)の構成党党首会議は、公正な裁判を評価した上で、国民にとって大きな勝利と宣言。国民戦線(BN)政権時期の政治的堕落を繰り返さないために包括的な制度改革が行われなければならないとした。
ナジブ氏の部下であった与党・国民連盟(PN)構成党・統一マレー国民組織(UMNO)のアハマド・ザヒド・ハミディ総裁(元副首相)は、判決後にナジブ氏から「これで終わった訳ではない」と上訴の意向を示されたことを明らかにし、党として近く何らかの重大決定を行なう方針を示した。
一方、かねてから党の長老支配に異を唱えていたカイリー・ジャマルディン前UMNO青年部長(科学技術革新相)は、「ナジブ氏を支持する権利は誰にでもあるが、私はこの裁判に党が引きずられないことを望んでいる」と言明。これを機に党の若返りを図るべきだと述べた。
PN政権を率いるムヒディン・ヤシン首相は、「友人たち(ナジブ氏支持者)の感情は理解するが、政府は常に法の支配の原則を支持する」と述べるにとどまった。
■控訴審では逆転のチャンスある=首席弁護人■
首席弁護人のムハンマド・シャフィー・アブドラ弁護士は、「ナジブ氏の失敗は過度に1MDBやSRCの役員たちを信頼し過ぎたこと。彼は1MDBの内情や送金に関する実情は知らなかった」と主張。判決に関しては「合理的な疑いがある場合には棄却しなければならない」という刑法の原則を裁判官が理解していないと批判し、控訴審では十分に逆転するチャンスがあると述べた。
在宅起訴されていたナジブ氏はただちに控訴する方針を示しており、裁判所は100万リンギの保釈金を条件に保釈を認めた。同氏の国会議員の資格は判決が確定するまで維持される。